ホーム → IRなどについての文献メモ → McGuire, M. D. (1992). Faculty demand.
公開日:2012年10月15日 最終更新日:2013年2月23日
教員採用を計画するためにIR担当者が知っておく必要がある情報を紹介。教員を採用する背景には[欠員の補充]と[分野の補強]がある。過去の動向を知り、それを参考にして将来の見積もりをする。役職ごと、学科ごとに過去の教員数の増減を表にまとめる。増減の表には退職、昇進、非常勤割合などの情報を入れるとよい。得られた情報は大学の方向性を決める権限のある人や人事などに提供する。感覚的にわかっていたことであっても、数字であらためて示すことが大切。
IRについて初歩的なことを丁寧に書いている文献を探していました。そんなとき、ちょうど学内の図書館にそれらしい文献が所蔵されていることがわかったので、読み始めることにしました。その中の第4章です。
IR入門書に教員の採用計画、教員の給与についての話が出てくるのは意外でした。日本でIRの話がされるときには、あまり出てこない気がします。最近の文献でも扱われている内容なのか確認してみると、The Handbook of Institutional Research(2012年出版)にも教員募集~退職までを扱った章がありました。
教育を途切れることなく提供するためには、教員が不足してはいけません。しかし人件費などの制約のため、教員が多ければ多いほどよいというものでもありません。そのため、数字を使って根拠を示しながら教員数の増減を計画することに関心が持たれているようです。
本章の時代背景(アメリカ、1992年出版)として、近い将来に教員が不足するという状況があります。そこはあまり気にせず、教員採用を計画するために、どのような数字が必要になるのかに注目して読めばよいと思います。
また本章は教員の採用計画をするときに必要となる情報の話をしていますが、職員についても同じ話ができるのではないかと思います。
○扱う内容
- 今後、教員が不足すると予想されているため、教育の質が低下するのではないかと心配されている
・ 橋本の注:本書はアメリカの状況について書いている1992年出版の文献です
- その状況に対して、IR担当者は以下のことを知っておく必要がある
1.国全体でどれくらい不足するのか
2.自分たちの地域にどれくらい影響があるのか
3.自分たちの大学は今後20年で何人雇う必要があるか
4.教員の不足と教育の質の低下に対してどのような対策をするか
○扱うデータ
- 地域/国全体での教員の不足については関心を持たれるところが違う
・ ただし、地域だけではなく国全体の動向も知っておいた方がよい
・ 理由1:自分の大学で教員を募集する時期が、国全体で最も教員が不足する時期に重なってしまうことがあるため
・ 理由2:採用計画から実施までの間に不足の状況が悪化することがあるため
- 学内の教員需要について2つの見方がある
1.欠員補充
2.分野の強化
- 数字を使って分析するために、学内の状況を知っておく必要がある
・ 例:採用時の年齢・役職、退職時の年齢、入学する学生数、お金の出入り(学費/学費以外)
- これまでの状況を知るために、まず過去10年間の採用人数を調べるとよい
・ そのとき、とくに直近の2~3年に注目する
・ 全役職の増減を表にまとめるとよい
・ また全学科を対象にして作るとよい
・ 表を作るときは年齢ではなく役職にするとよい
- 採用は年齢よりも役職に関係することが多いため
- 表の作り方(省略;実際に表をご参照ください)
・ [Excelファイル]McGuire_1992_faculty_demand.xls
○分析
- 表を作ったら5つの見方で分析してみる
1.退職理由
- 理由を定年とそれ以外で分ける
2.昇進
- 全体で見た教員数には影響しないが、将来の減少に関係する
3.役職
- 教員の補充と関係する
4.教員数の増減
- 全役職を合計した値
- 学科の動向がわかる
5.非常勤
- 教員数に占める割合
- 過去・現状の教員数の動向を分析したら、将来の予測をしてみる
・ これまでに集計てきた値が経年の表になっているので、その続きとして将来についても書く
○得られた結果の使い方
- 過去・現在・未来の教員数の動向を分析した後、誰に何を伝えるか
1.大学の方向性を決める権限のある人
- 教員を確保し、よりよい職場にしていくために何が変えられるかを伝える
2.人事
- どの分野でいつ需要が増えるかを伝える
- データを使ってモデルを作ることは、教員の採用計画が適切に行われることにつながる
・ 上層部、人事に提案を伝えると「それは何となく気づいていた」と言われることがある
・ ただ、思い込みなどにより、その気づきが正確ではないことがある。データで示すことは大切