ホーム → 大学に関わる情報メモ → New Education Expo 2013<今後の看護教育、ICTを通じた大学の様々な取り組み>
公開日:2013年6月28日
New Education Expo 2013大阪会場[1, 2]で見聞きした内容の記録。2013年6月22日(土)に2種類のセミナーに参加した。①今後の看護教育、②ICTを通じた大学の様々な取り組み。
[1]New Education Expo 2013”未来の教育を考える” 教育関係者向けセミナー&展示会
[2][PDF]New Education Expo 2013大阪会場プログラム
①
看護師は与えるだけではダメで、受けることの大切さ・喜びを知ってこそ良いケアにつながる。タブレット端末は看護の実習に役立つ。
②
ICT機器を業者任せにせずに自分たちでも考えることが必要。使いやすい・わかりやすいが大切。ICT機器で何ができるかではなくて、ユーザーがしたいことをICT機器でどのように実現できるか。クリッカーは小テストよりコミュニケーション促進に使うとよい。SNSを使うときはリアルとバーチャルを組み合わせる。Twitterを使って、一緒の授業を受けているという雰囲気を高める。
理由は2つありました。
①看護教育では何が求められているのかを知りたいと思ったからです。勤務先の京都光華女子大学には看護学科があります。看護学という分野で、どのようなことが教えられているかを知る機会はあっても、看護師という職業に何が求められているのかについて、現場の方からお話を聞く機会はあまりないので、興味を持ちました。
②[自ら学ぶ姿勢]をICTで支援している事例を知りたいと思ったからです。京都光華女子大学では学生さんの主体的な学びを支援することを計画し、文部科学省の私立大学教育研究活性化設備整備事業(平成24年度)で「アクティブラーニング促進と主体的な学びを支援する学習環境整備」という取り組みが採択されました。そして取り組みの中で、自ら学ぶ姿勢を後押しするツールとして、PF-NOTEやiPadなどのICT機器を導入しました。それらの機器がより効果的に使われる環境を作るため、事例を知りたいと考えました。
New Education Expo 2013で見聞きした内容のうち、おもしろいなと思ったもの、参考にできそうだなと思ったものなど、興味を持った内容をセミナーごとにメモしました。
■ 今後の看護教育
○秋山智弥先生(京都大学医学部附属病院看護部)
- 与えることと受けること
・ [与えることで自分がうれしい]だけでは自分の方ばかり向いていることになる
・ 受けることの大切さ・喜びを知ってこそ、よいケアにつながる
- 患者さんには必要なときに必要なものを与えて、後は自立を促す
- 心地よさ → 安心希望 → 意欲 → やる気
・ 不安な状態から順に状態が移っていく(触診の手の温もりで安心するなど)
・ 悪いときは逆の流れになっている
- 看護側がしんどい/しやすいときは患者もしんどい/楽
・ 体勢を変えるときなど
- ナースコールが鳴るようでは遅い
・ 患者はぎりぎりまで我慢している
・ 鳴る前に気づく
- 看護師全員に役割を振る
・ 部分的なプライマリナーシング
・ 勉強にあまり熱心でない者には企画(飲み会)担当など
- 看護の専門性(例:褥瘡で入院・治療・退院を繰り返す)
・ 医師の関心:治療
・ 看護師の関心:どのような生活をしているのか
- 看護の良さ・やりがいなどは経験者でないとわかりにくい
・ 伝えるのが難しい
- 部分の集まりは全体ではない
・ 部分がそろってみて、初めて見えてくるものがある
- カニッツァの三角形
- Cureとcare
・ Cureできないものはある
・ Careできないものはない
- 理論と実践
・ まずは不十分ながらでも、理論に基づいて自分なりに実践する
・ 実践から理論化してみる
・ その理論を実践に活かす
・ 繰り返し
- 『看護実践の職務』(日本看護協会)
・ 患者の擁護者
・ 看護の提供者
・ 医療の調整者
- 看る
・ 点ではなく線で見ている
- 京大附属病院看護部の教育はマングローブ型
・ まっすぐな1本の木ではない
・ いろいろな根がある
・ それぞれの根が自立している
- 自立 → 自律 → 専門性 → 社会に還元
- 新人看護師がリアリティショックを受ける頃に話し合いの機会を設ける
・ 不安の共有など
- バッジで技術レベルがわかるようにしている
・ 医師にとっては指示が出しやすい
・ 看護師にとってはモチベーションになる
- 感想
・ お話されていたのはケアについての考え方でしたが、学生支援を考えるときにも役に立つ内容でした
- 看護学の「ケア」について一度調べてみようと思います
- また勤務先の看護学科の先生にも教えてもらおうと思います
・ [個人的な話→本題]という流れがとても自然でした
- 説明やプレゼンなどの際に、普段自分が何を考えているのか、これまでどのようなことを感じてきたのかを伝えることは大切だと知ることができました
○吉田雅俊先生(中京学院大看護学部)
- 自己学習にモバイル端末を使う
- お金をかけずに行う
- 現状
・ 限られた時間の中に学習内容を詰め込んでいる
・ 実習の後に講義があるときは着替えのために早く切り上げることもある
・ 実習時に十分な数の教員がいない
- 看護師役・患者役・観察者役に分かれて実習する
- 質問できない
- 曖昧な理解のまま実習・相互評価を進める
- 対策
・ いつでも繰り返して学習ができる環境にする
・ 教科書とは別に解説する資料を用意する
・ 求める特徴
- 使いやすい
- 繰り返し使える
- 安い(導入コスト・ランニングコストがかからない)
・ iPadを実習用ベッドの台数(12台)分購入した
- 約50万円(当時44,800円×12台)
- iPadにした理由
・ 教育分野で利用実績がある
・ 医療系アプリが充実している
・ 4人(実習時の1グループあたりの人数)で同時に画面を見ることができる
・ 教材作りが簡単
- iBooksを使っている
- 本をそのまま取り込んだだけでは意味がない(それでは軽くなっただけ)
- 教材を作らないと意味がない
・ 実習先にかさばる参考図書を持ち込まなくて済む
- 授業用とは別に、実習用として用意した
- 実習先に事前確認しておく
・ 持ち込みの許可
・ 管理は学生自身が行う
- iPadの管理
・ 収納用の箱に入っている
- 箱から出ているUSBとPCをつないでデータをやりとりする
・ 鍵
- 教員と学生部が管理
- 授業のときは教員の鍵を使う
- 学生の自主学習のときは学生部で鍵を貸し出す
・ 1つ1つに番号を振る
- 貸し出し簿と紐付け
- 教材の作り方
・ 看護技術の一連の流れを動画に撮る
・ ポイントごとに分ける
・ 説文を作る
- 電子書籍の特徴
・ 目次から該当ページにジャンプできる
・ しおり機能
・ 練習問題を作れる
- 学生による評価
・ 自己学習に役立つ
・ 興味を持てる
・ 音声が聞き取りにくい
- iPadのビデオ撮影機能
・ ビデオカメラと違って、撮影・見るがすぐできる
・ 振り返りのツールとして使いやすい
- オフラインでも十分使える
・ 無線LAN対応をしていなくても大丈夫
- 感想
・ 最初から最後までわかりやすい表現・伝え方でした
・ 自ら学ぶ意欲がないのではなく自ら学ぶのが難しい環境にある→そこでiPadを使って自ら学べる環境を作る、と理解しました
■ ICTを通じた大学の様々な取り組み
○「次世代型アクティブラーニング教育実施に伴うICTを活用した教室の整備」寺尾徹先生(香川大学教育学部)・八重樫理人先生(香川大学工学部)
- 業者からの提案を丸のみしない
・ 自分たちで考えて、それを発注する
- 実際に運用できることを重視する
- 鍵の貸し借りをなくす
・ 全教職員のICカードを利用
- わかりやすいインターフェイス
・ たくさんあったリモコンを不要にした
- 他のキャンパスから遠隔操作ができるようにした
・ 香川大学は複数のキャンパスがあり、それぞれが離れている
・ 教室準備に職員が立ち会わなくて済む
・ codemari(AV制御システム、株式会社内田洋行)
- iPadなどで簡単に操作できる
・ まず主電源を入れる(画面にボタンは1つだけ)
・ 次に使い道を選ぶ
- マイクのみ
- 映像も使う など
- 電源を落とすと初期設定に戻る
・ 前の授業の設定が残らない(大きな音量設定など)
- 本当にユーザーが使いたい機能を作っているかを考える
・ 新しい機能を優先させていないか
- 要求工学
○中島平先生(東北大学大学院教育情報学研究部)
- PF-NOTEの開発に携わっている
- PF-NOTEの機能紹介
・ PF-NOTE=クリッカー+授業収録装置
・ 使用者が聞き手を意識するように仕組みを作っている
- 優れた授業実践のための7つの原則
- クリッカーの特徴
・ 匿名(挙手では聞きにくい質問でもクリッカーならできる)
・ 可視化
- クリッカーは小テストよりもコミュニケーション促進に使った方がよい
・ 小テストに使ってみようと思う人が多い
- プレゼンなどに対して評価する際、どこがよい/悪いのかを具体的に示すことができる
- 評価の違いを可視化できる
・ 教員と学生
・ 初期と学習後
・ 医師と患者
※ 設定方法の例
- A(教員) よい:1 わるい:3(教員の評価が学生とは別に表示される)
- B(学生) よい:4 わるい:6
○「京都外国語大学におけるICTを利用した教育実践」村上正行先生(京都外国語大学マルチメディア教育研究センター)
- 学内のスペースが限られている → 隙間に自主学習スペースを作る
- 授業と連動したSNS
・ 先輩の経験談
- 成功経験はよく語られる
- 最初の頃の大変な経験は忘れられがち
・ SNSを書いてもらう工夫
- リアルとバーチャルの組み合わせ
・ 日本語教員養成
- 事前ワークショップ → 交流 → 事後ワークショップ
・ 海外フィールドワーク
- 行く前に交流
・ テレビ会議
・ Facebookグループ
・ Twitter活用
- 一緒の授業を受けているという雰囲気を高める
- 学生同士のコミュニケーション
- 共同してノートを取る
- バックチャネル
- 事前に協力者に依頼しておく
・ 内容をまとめる
・ 発言してもらう
- インフォーマルな情報提供
- いろいろな人がいることに気づいてもらう
- 学生のメディア利用の変化は早い