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教職員の会議で行ったファシリテーションの記録

公開日:2013年7月23日 

概要

教職員で話し合いをするときに、参加者全員がアイデアをたくさん出し、参加全員が納得した上でアイデアをまとめられるような場を作りたいと思い、ファシリテーションの技術を使いながら、話し合いの「進め方」に注意を払いながら会議を行った。まず1人でブレインストーミングとKJ法を行って自分の中でアイデア出しと考えの整理をしておいた。続いて、話し合いを始める前に、職員メンバーの間で何のために話し合いをするのか、今回の会議でどこまで決めるのか、どのようにアイデアを発散・収束させるのか、時間配分をどうするのかなどについて確認しておいた。そして、事前に確認しておいた議論の目的・範囲などに沿って話し合いを行った。その結果、ほぼ予定通りの時間の中で、参加者全員がアイデアをたくさん出し、参加全員が納得した上でアイデアをまとめることができた。

ファシリテーションの技術を使ってみようと思った理由

教職員で話し合いをするときに、参加者全員がアイデアをたくさん出し、参加全員が納得した上でアイデアをまとめられるような場を作りたいと思ったからです。

以前、職員の勉強会で今回と同じように[参加者全員がアイデアをたくさん出し、参加全員が納得した上でアイデアをまとめられるような場]を作ろうとしたことがあります。そのときはKJ法を使ってみたところ、新しいアイデアがたくさん出て、さらに参加者間で考えを共有することができました(職員勉強会で行ったKJ法の記録)。振り返って考えてみると、話し合いをするための「道具」を試していたと言えます。

前回は職員で行う勉強会だったのに対して、今回は教職員で行う会議です。教員と職員では、日々行っていることが異なるので、興味を持つところ・気にするところに違いがあることが多いと思います。そこで、参加者全員が同じ方向を見ながら考えをより深く共有していくため、今回は話し合いの「道具」ではなく、別の切り口として話し合いの「進め方」に焦点を当ててみることにしました。使ってみたのは「ファシリテーション」[1]の技術です。これまでに読んでいたファシリテーションに関連する文献[2-14]に書かれていたことの中から、自分の環境で使えそうなものを選んで試してみることにしました。

実際に行ったファシリテーションの手順について書く前に、上記の「教職員で行う会議」について少し説明します。その会議は学内のあるプロジェクトを進めるために行われました。プロジェクトは3つのチームで構成されています。1つのチームのメンバーは数名で少数となっているところが特徴です。プロジェクトは職員が中心となって進めていて、そこに教員が別の視点を加えるという形式で進められています。プロジェクトの詳細については、未確定の部分があるため、まだ詳しく書くことができません。ただ、今回のプロジェクトが目指すもの、進め方は、他大学の方々に参考にしていただける部分があると思っています。そこで、時期が来れば事例報告などの機会を見つけて、発表できればと思っています。

行った手順

自分の中で考えを整理

まずは自分の中で[①プロジェクトの目的、自分たちのチームが扱う主な範囲][②プロジェクト期間内に決める必要がある内容][③今回の会議で決めること][④話し合いでアイデアを発散・収束させる手順][⑤時間配分]をじっくり考えることにしました。考えるときは1人でブレインストーミングとKJ法を行いました。まず、自分の机の上にA3の白紙を広げて、①~④に関係しそうなことを思いつくままに書き出してみました。また、書き出した後に全体を眺めてみて、思いつくことを追記しました。ここまでで頭が少し整理できました。続いて、書き出した内容を付箋に1項目1枚の形で清書しました。清書することで頭の整理が進みました。そして、会議室に移動し、大きな机の上に模造紙を広げて、書き写した付箋を並べていきました。場所を変えると頭も切り替わり、新たな視点から考えることができました。①~④の観点で付箋を整理し、そこから追加で思いついたことをさらに付箋に書いて並べました。以上の作業で考えがずいぶん整理できました。最後に、手書きでA4×1枚にまとめました。

事前の打ち合わせ

会議が始まるまでにチームメンバーの職員が集まって[①プロジェクトの目的、自分たちのチームが扱う主な範囲][②プロジェクト期間内に決める必要がある内容][③今回の会議で決めること][④話し合いでアイデアを発散・収束させる手順][⑤時間配分]を事前に確認しておきました。

[①プロジェクトの目的、自分たちのチームが扱う主な範囲]
先に述べたように、プロジェクトは3チームで構成されています。そこで、まず3つのチームが全体として何を目指しているのかを確認しました。そして、自分たちのチームが扱う主な範囲は何かを確認しました。それらの確認によって、大きな枠組みとして自分たちのチームで何を考えないといけないかをはっきりさせることができました。

[②プロジェクト期間内に決める必要がある内容]
プロジェクトは活動する期間が決まっています。そこで、期間内に話し合う必要がある内容を確認しました。確認するときに気をつけたことは、抜け・漏れがないか、話し合う内容の順序に無理がないかです。抜け・漏れについてのチェックでは[①自分たちのチームが扱う主な範囲]で確認したことを参照しながら、必要なものが欠けていないかを確かめました。話し合う内容の順序についてのチェックでは[その話し合いをするためには何が決まっていないといけないか]に注意しながら確認を行いました(例:ABCDについて話し合うとして、Dを考える前提としてCが決まっている必要がある)。

[③今回の会議で決めること]
今回の会議では、先ほどの[②プロジェクト期間内に決める必要がある内容]で確認した順序のうち、最初のものを決めることを確認しました(例:プロジェクト期間内にABCDについて決めるとして、今回はAについて結論を出す)。

[④話し合いでアイデアを発散・収束させる手順]
会議の参加メンバーの話し合いは限られた時間の中で行います。そのため、限られた時間の中でメンバー全員がアイデアをたくさん出すためにはどうすればよいか、出てきたアイデアをまとめていくにはどうすればよいかを確認しました。確認した内容は、まず[各メンバーが個々で考え、出てきたアイデアを付箋に書き出す]、次に[1枚ずつ内容を説明してもらう]、そして[質問に答える]、最後に[アイデアをまとめる]というものでした。

[⑤時間配分]
ここまでに確認してきたことを踏まえて、①~④にどれくらい時間がかかるかを予想しました。まず[①自分たちのチームが扱う主な範囲][②プロジェクト期間内に決める必要がある内容]を話し合いの参加メンバーに説明するためには5分かかるかと予想しました。次に[③今回の会議で決めること]の説明をするのに5分、またメンバー全員の同意を得るために5分かかるかと予想しました。そして[④話し合いでアイデアを発散・収束させる手順]では考える時間が5分、発表する時間が25分(5分×5人;チームメンバーは5人)、説明する時間が10分、質問に答える時間が10分、アイデアをまとめる時間が10分、予備が15分と予想しました。合計は90分となりました。今回の参加メンバーは意思疎通ができているので①~③が15分で済むと予想しました。しかし、初対面のメンバーで話し合う場面であれば、もっと時間をかける必要があると思います。

以上の①~⑤の事前確認のために、だいたい40分ほどかかりました。上記では煩雑さを避けるために、あっさり「確認しました」としていますが、実際にはメンバー間で、考えてきたことを持ち寄って、ああでもないこうでもないと、お互いの意見を出し合いながら話をしました。また、それらの話をホワイトボードに書いて整理しながら話を進めました。

会場の準備

話し合いが始まる10分前に部屋に行き、自分が座る席の近くにホワイトボードを寄せておきました。また、マーカーのインクが切れていないことを確認しておきました。マーカーの色の使い分けは自分の中で次のように決めておきました:基本は青色、決めたこと・強調したいことは赤色、順序など数字は黒色(アイデアを羅列した後に順序を決めるときなどに使う、黒色は意外と目立つ)。メンバーが集まるまでにホワイトボードに書いておいた内容は次の通り:左上にプロジェクト名・日付・開始時間(終了時間は空けておく)、その下に赤色で「今日決めること⇒」と書いて枠で囲っておく(何を目的にした話し合いなのかを常に意識できる、枠は目立たせるために立体的に描く)。また、参加メンバー名を書くスペースを空けておきました。話し合いが終わった後にスマホで撮影して、簡易版議事録として配信するつもりで書きました。

また、念のため次のものを用意しておきました。ホワイトボードマーカー(会議室備え付けのマーカーがインク切れでも大丈夫、文字の形を変えやすいので平芯、赤・青・緑・黒×複数本)、ホワイトボード消し、付箋(大・小、黄・青・ピンク×複数セット)、模造紙(折りたたんで小さくしておく)、落書き帳(B4サイズ)、付箋用水性ペン(油性と違い裏写りしない、赤・青・黒×複数本、細字)、模造紙用水性ペン(8色×1セット、上下が太細に分かれている、商品名PROCKEY)、丸型マグネット(紙を留める以外に投票用としても使える、同色×たくさん、同色なら誰が投票したかわからない)、シール(投票用、1枚の台紙に小さい☆がたくさん)、ハサミ(シール台紙を切り分けるなどに使う)、キッチンタイマー(時間を区切って作業するときは手元の時計よりも音が鳴るキッチンタイマーの方が場面を切り替えやすい)。これらは話し合いのときに何かと便利なので、袋に入れてまとめて携帯できるようにしています。

話し合いの流れ

メンバーの教職員が全員集まり、話し合いが始まりました。先に述べた通り、メンバーはこれまでに数回話し合いをしていて意思疎通ができているので、特別なアイスブレイクを行う必要はありませんでした。ただし、いきなり本題に入らずに世間話から始まっていたので、自然な形でのアイスブレイクのような時間はありました。

世間話の後、「今日決めること⇒」の枠を指し示しながら、[③今回の会議で決めること]を最初にはっきりさせておく必要がある、と話し始めました(「さて、いろいろと決めていくべきことがありますが、今日は○○について決めるというのはどうでしょうか」)。

次に、今回の話し合いで、なぜそれを最初に決める必要があるのかを説明するために、まず[①プロジェクトの目的、自分たちのチームが扱う主な範囲]を確認しました(「改めての確認ですが、このプロジェクトでは●●をしようとしていて、3つのチームに分かれて、それぞれ□□、△△、◇◇を担当します、このチームでは□□を目指して話し合おうとしています」)。

続いて[②プロジェクト期間内に決める必要がある内容]を確認しました(「そして□□に辿りつくためには、ABCDについて決めていく必要があり、BCDを決めるためには最初にAを固めておく必要があります」)。

ここまでで問題がないかを確認した後、[④話し合いでアイデアを発散・収束させる手順]について説明しました(「それでは付箋を配るので5分で1人5個以上書いてみてください、後ほど書いた内容について1人ずつ説明をしてもらいます、アイデアを出すときは質より量が大事というルールでいきましょう」)。書かれた付箋をホワイトボードの余白に全て貼り出しました。そして、質疑応答は説明の後でまとめて時間をとると説明した上で、順に内容を説明してもらいました。説明してもらうときは、内容だけでなく、なぜそのようなアイデアを思い付いたのかも説明してもらいました。

予定では、質疑応答の後に、メンバーの話を聞いて新たに出てきたアイデアなどを追加で付箋に書き出してもらおうと考えていました。しかし、メンバー全員の考えが同じ方向だということが、説明・質疑応答を進める中ではっきりしてきました。そのため、追加で書き出すことはしませんでした。

各メンバーの考えている方向が同じだとわかったこと、また残り時間が少なくなってきたことを踏まえて、アイデアをまとめるタイミングだと思い、[③今回の会議で決めること]を改めて確認した上で、2通りのまとめ方を提案しました。1つは[出てきたアイデアを参考にしながら、新たに今日の結論を書く]、もう1つは[出てきたアイデアで良いと思うものに投票して今日の結論を選ぶ]というものでした。全員が結論の出し方に同意することは大切だと思ったので、二者択一で提案してみました(「どうやって結論を出したらいいでしょうね」ではなく「どちらの結論の出し方がいいと思いますか」)。結果は、全員が前者[出てきたアイデアを参考にしながら、新たに今日の結論を書く]でした。理由としては、わざわざ投票するまでもなく結論は出せるだろうというものでした。そして、その予想通り、結論はすぐに出ました。

[③今回の会議で決めること]が無事決まったので、これからの進め方として[②プロジェクト期間内に決める必要がある内容]のうち、次回の話し合いで決める内容を確認しました(「ABCDのうち、今回はAが決まったので、次はBについて話し合いましょう」)。最後に次回の日時・場所を決めて終了となりました。

先に書いた通り、事前の時間配分では話し合いにかかる時間は90分くらいだろうと予想していました。そして、ほぼその時間の中で同意・結論が出るところまで進めることができました。

ホワイトボードは簡易版議事録としてスマホで撮影して、参加メンバーに配信しました。付箋の内容は読みにくいので、別途テキストデータとして保存しておきました。

感想

教職員で話し合いをするときに、参加者全員がアイデアをたくさん出し、参加全員が納得した上でアイデアをまとめられるような場を作りたい、という目標は実現できたと思います。また、話し合いの目的は何なのか、どういう方法・手順・時間配分で進めるのかなどについて、事前の打ち合わせをしっかりしておくと、実際の話し合いが順調に進むという経験をすることができました。

今後も同じような話し合いの機会がたくさんあると思います。そのときには今回の経験を活かすことができそうです。

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