ホーム → 大学に関わる情報メモ → 教学マネジメント特別委員会(第1回)議事録
公開日:2019年1月31日
・ 委員会の設置の経緯と、今後検討する審議内容などが共有され、各委員から意見が述べられた。
・ 委員会で検討するのは「教学マネジメントの確立のための指針」と「学修成果の可視化と情報公表の促進」。
・ 教学マネジメントはそれぞれの大学が自律的に確立するもの、指針は特定の取り組みを強制するものではない。
・ 学修成果の可視化と情報公表では、学生がどのような能力を身に付けたのか、大学がどのような成果を上げたのかを扱う。
○ 日比谷座長
- 中央審議会で「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」が取りまとめられた
・ 学修者本位の教育への転換こそが求められている
- 全く予測ができない時代を生きる人を育てていくため
・ そのためには,様々な方策がある
・ そのうちこの委員会で扱うこと
- 全学的な教学マネジメントの確立
・ それぞれの大学が自律的に教学マネジメントを確立していくことこそ重要
・ 他律的に外から与えられたものであっては,持続ができない
- 学修成果の可視化と情報公開の促進
○ 義本高等教育局長
- 「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」答申
・ 学修者本位の教育への転換が一つの大きなメッセージ
・ その方策として
- 教育の質の保証
- 学修成果の可視化
- 情報公表
- 大学教育の質を保証していくために第一義的に必要になること
・ 3ポリシーを定めて,これに基づいて体系的で組織的な教育を展開していく
・ 教育の成果を踏まえた不断の改善に主体的に取り組んでいく
- 本委員会が設置された理由
・ 教学のマネジメントに係る指針を整備する
- 各大学が教学面での改善・改革に係る取組を進めていく上でどのような点に留意すべきか
- どのような点から充実を図っていくべきか など
・ それらの取組の参考として情報をどのように把握・活用していけばよいのか
- 学生の学修成果に関する情報
- 大学全体の教育成果に関する情報
- 指針を作成する目的は各大学における改善・改革の取組を支援すること
・ 指針は,特定の取組を大学に強制するものではない
・ 教学マネジメントの確立はあくまでも大学が自主的に行うもの
- 望ましい情報公表の在り方についても検討する必要がある
○ 平野大学改革推進室長
- 本特別委員会の設置の経緯,また,今後検討する審議内容等について説明する
- 設置の経緯
・ 平成29年3月 「我が国の高等教育の将来構想について」の諮問
・ 平成29年3月 大学分科会の下に将来構想部会が設置
・ 平成29年5月 制度・教育改革ワーキンググループでの議論が開始された
- 教育制度の改善ということを審議
・ 平成30年11月26日 グランドデザイン答申が取りまとめられた
- 大学の教育の質の保証,情報の公表がトピックになっている
- 今後検討する審議内容等
・ 教学マネジメントの確立のための指針を作る,情報公開の在り方について議論する
- 特別委員会は審議を行い,その結果を適宜大学分科会に報告,分科会の方で内容を決する
・ グランドデザイン答申の関係する部分について説明
- 資料4 この委員会で議論する上での一つの前提(世界観)が示されている
・ 「はじめに」には実現すべき高等教育の方向性
- 高等教育機関が多様なミッションに基づき,学修者が「何を学び,身に付けることができるのか」を明確にする
- 学修の成果を学修者が実感できる教育を行っていく
- 多様で柔軟な教育研究体制が各高等教育機関に準備される
- このような教育が行われていることを確認できる質の保証の在り方へ転換されていく
・ 高等教育が目指すべき姿
- 「何を教えたか」から,「何を学び,身に付けることができたか」への転換
- 単に個々の教員が教えたい内容ではなく,学修者自らが学んで身に付けたことを社会に説明し納得が得られる体系的な内容になるように構成する(教育課程の編成)
- 個々人の学修の達成状況がより可視化されることが必要となる(学修の評価)
・ 我が国の質保証の取組状況
- 現状,教育の質を保証するための取組は不十分な状況がある
・ 授業以外の学修時間が非常に短い
・ 密度のある学修体制をどのように整えていくのか(学生が受講する科目が多く,授業以外の学修時間の確保を難しくしている)
・ 大学教育の質の保証
- 改善に真剣に取り組む大学と改善の努力が不十分な大学とに二極化しているのではないか
- 全体として十分な信頼が得られているとは言いがたい状況にあるのではないか
・ 保証すべき教育の質(各高等教育機関が自らの強みとして発信・情報公表を徹底することが求められる)
- 何を学び,身に付けることができるかが明確になっているか
- 学んでいる学生は成長しているのか
- 学修の成果が出ているのか
- 大学の個性を発揮できる多様で魅力的な教員組織・教育課程があるか
・ 大学が行う「教育の質の保証」と「情報公表」
- 大学教育の質を保証するためには,第一義的には自らが率先して取り組むことが重要
- 各大学においては,それぞれの学位プログラムレベルのみならず,全学的な内部質保証を推進することが求められる
- 国の役割
・ 教学マネジメントの確立の支援を一層進めること
- 各大学の役割
・ 3つの方針に基づく体系的で組織的な大学教育を進めること
・ 点検・評価を行うことで,不断の改善に取り組むこと
- 教育の質の保証と情報公表ということを進めていかない大学については,社会からの厳しい評価を受けることになる
・ 結果として撤退する事態もあり得ることも覚悟しなければならない
・ この特別委員会で具体的に検討するトピック
① 全学的な教学マネジメントの確立
・ 先ほどの二極化の話題
・ これまでの答申で示された内容や手法というものは,教学マネジメントという観点から一元的に記載されたものになっていない
- 過去の答申が出された時期に応じて更に手法が開発され,進化しているものもある
- キャッチアップができているのかどうかという課題
・ 国として教学マネジメントの確立の支援を一層進めていく必要があるのではないか
- 大学が本来持っている組織としての力を十分発揮できるように,大学の自主性の中で教育活動の不断の改善を進めるための素材を提示
・ 教学マネジメントの指針を大学分科会の下で作成して,各大学に一括して示す必要があるのではないか
- 各大学における取組に際してどのような点に留意して,どのような点から充実を図っていくのかということを網羅的にまとめた指針
・ 教学マネジメント指針に盛り込むべき事項の例
- 総論
・ プログラムとしての学士課程教育と3つの方針の策定
・ 全学的な教学マネジメントの確立
- 個別
・ カリキュラム編成の高度化
・ アクティブ・ラーニングやICTを活用した教育の促進
・ 柔軟な学事暦の活用
・ 主専攻・副専攻の活用
・ 履修単位の上限設定の適切な運用
・ 履修指導体制の確立
・ シラバスにおいて標準的に期待される記載事項の提示
・ 成績評価基準の適切な運用
・ 学生個人の学修成果の把握
・ 学修時間の確保と把握
・ 学生による授業評価
・ FDの高度化
・ SDの高度化
・ 教学IR体制の確立
・ 情報公表の項目や内容等に係る解説
・ 指針の提示の仕方を考える必要がある
- 一律に取り組むことが望ましいもの
- いろいろな分野の問題などもあって,一律に取り組むことが難しいもの
・ 教学マネジメントは,大学が自らの責任の下で各大学の事情に合致した形で構築すべきもの
- 特定の取組というものを各大学に強制するものではない
- 各大学が創意工夫を行って,学士課程の質的転換に向けた取組を確立することが重要
・ 他の大学の取組を単に模倣する,咀嚼することなくそのまま学内で実施しようとするというのは大学としてふさわしい主体性を発揮したものとは言えない
・ 念頭に置くのは学士課程だが高等教育機関において幅広く応用可能な部分を見据えて議論をしていただきたい
② 学修成果の可視化と情報公表の促進
・ 課題
- カリキュラムや教育手法の見直し等の不断の改善につなげていくということが必要
- 現在公表が義務化されている事項では成果の確認が不十分
・ 学生がどのような能力を身に付けたか
・ 教育機関として大学がどのような成果を上げたのか
・ 制度改正の方向
- 教学マネジメントの確立
・ 情報によっては,指針ということとは別に,学校教育法施行規則などの改正など新たに義務付けを行っていくという部分がある
・ 取組の参考になるような把握や活用の在り方というものを示す
・ このようなものも織り交ぜて,情報公表を促進する
- 把握・公表の義務付けが考えられる情報の例
・ 分野・規模を問わず,ほぼ全ての大学で当然教育活動を行う上で把握されるべき情報
・ 各大学において義務的に把握していただき,全体的な状況というものを公表していただく
- 義務付けはしないが,一定の指針を示すことが考えられる情報の例
・ 分野,課程の性格というものに応じて,把握できたりできなかったりすることがあり得る
・ アセスメントテストの結果,TOEICやTOEFL等の学外試験のスコア,資格取得や受賞,表彰歴の状況,卒業論文や卒業研究の水準,留学率,卒業生に対する評価
- 資料5 改めてこの特別委員会における検討の目的というものの一つの視座を提示
- 参考資料7(過去の中教審の答申の抜粋表)過去の中教審において個々のトピックをどのように整理してきたか
・ 平成10年のいわゆる21世紀答申
・ 平成17年の前の将来像答申
・ 平成20年の学士課程の答申
・ 平成24年の質的転換答申
○ 清水委員
- 委員会の開催と内容についてのロードマップはどうなっているか
⇒ 来年の年末までに指針の案,制度改正の事項をまとめる,省令改正等必要なものについては,来年度の末,1月から3月の間で処理をして,それを施行していく(平野大学改革推進室長)
○ 大森委員(共愛学園前橋国際大学学長)
- 小規模大学の学長の立場から
- 学生自身が学修成果を自ら可視化していくという視点が非常に重要
・ 社会に対して,補助金があっての可視化になりがち(もちろん重要だという認識はあるが学んでいる学生に質を保証していくのが一番)
・ 学生たち自身が,自分が伸びているということを知らないというような成果の可視化の在り方というのは,本来的には違う
・ 学内では自分の学びをきちんと自分で言語化し,可視化をしていくという取組を進めている
- 就職活動の場面も当然ある
- 卒業後の学びを自らが可視化していってもらわないといけない
- そういう力を可視化プロセスの中で付けていける仕組みというものを各大学さんと一緒に考えていけるといいなと思っている
○ 川並委員(学校法人東京聖徳学園理事長・学園長,聖徳大学・聖徳大学短期大学部学長)
- 学生主体の改革を行っていくことは大切
- ただし可視化の足並みがそろわない
・ 過去の高等教育の改革について,いささか定義が曖昧なままいろいろと進んできている
・ それぞれの学校,大学,教育機関にその言葉の定義や成果について任せ切りにしている
・ そういったことについて,どのように具体的な案を示せるかが大切
・ 余り明確に示し過ぎると,今度はそれぞれの私学,教育機関の特徴を損なう可能性もある
○ 佐藤(浩)委員(大阪大学全学教育推進機構准教授)
- 16年間,一貫してFDの専任の担当教員,ファカルティ・ディベロッパー
- 日本高等教育開発協会(FDの専門家集団)の会長
・ 国内外の事例等についてよく知っている
- FDが義務化されて10年だが,なかなか浸透せず形式的なFDでとどまっている
- FD・SDで今ある人的資源をもっと最大限に活用して,この問題を解決していくという方向に持っていきたい
- 日々の授業を担っている大学の教員の資質に関しての保証が,しっかりできていないという現状がある(新任教員の研修)
・ 諸外国では250時間程度の研修を必須化する国も出ている
・ 国内でも,100時間あたりにつながるようにしていきたい
- 今の勤務校では30時間の研修の必須化を昨年の10月から始めた
- 現状では教学マネジメント関係が点取り合戦になっている(ポイントを取ることに必死)
・ 教学マネジメントに取り組むこと自体がFDやSDにつながるというような仕組みづくりにつながるような指針づくりに貢献したい
○ 伹野委員(独立行政法人国立高等専門学校機構理事,函館工業高等専門学校校長)
- 現在の高専の状況を,教育の質保証という点から説明する
・ 大学との差別化等を考えつつ教育体制の整備をしている
・ 現在,高専(工学系の専門教育機関)は全国に国公私立を含めて57校ある
- 国立高専における毎年の入学者数が約1万人,そのうち卒業後約3,000人が大学に編入
・ 大学における工学教育の質保証との連携が今後ますます重要になってくる
・ 高専の方もしっかりやるので,大学の方も教育の質保証を整備していただきたい
・ 専門教育の質保証をどう捉えるかも重要
- 社会や産業界が期待していることに応える教育
- 大学間をまたぐ専門教育の質保証が必要
・ 高専では,現在PDCAサイクルを各校の教育システムに導入している
- 各高専では,全国共通のモデルコアカリキュラムに準拠した教育を実践している
・ ウエブ上でシラバスを全部公開しそれに準じた授業を実施
・ それによって各高専が一定レベルの教育を保証する
・ このモデルコアカリキュラムは各校の60〜70%,残りの30〜40%は各高専の特色を生かしたカリキュラムを設定
・ モデルコアカリキュラムによる学習者の学習目標(到達目標)を明確に設定
・ それを確認するためコンピュータによる到達度試験CBT(Computer Based Testing)を準備している
・ その結果を教員のFDに反映させ,さらにモデルコアカリキュラムの改良にフィードバックするというPDCAサイクル化を図っている
○ 益戸委員(UiPath株式会社特別顧問,株式会社肥後銀行取締役)
- 自己紹介
・ 大学卒業後,メガバンクに10年,人事で昭和55年から60年に入行者の採用担当をした
・ その後,フランスの銀行,イギリスの銀行に通算31年
- 金利のトレーディング,資本調達,M&Aなどの投資銀行業務を担当
・ 中教審将来構想部会でグランドデザイン答申の議論に参加
- 所属はバークレイズ証券だったが,年末でバークレイズ顧問を退任して,現在は,NY本社のRPAソフトウェア会社 UiPath特別顧問(IT系に転身)
- 将来構想部会では,アカデミアの皆さまのお考え,各種団体の御意見,パブリックコメントもよく勉強させてもらった
・ まだまだ深堀する議論もあった
- 大学が,学修者や社会の期待に応えて,社会に支えられながら,目的である教育,研究,社会貢献の機能を最大化できるよう,その在り方を転換していくことは喫緊の課題
- 組織である以上は,必ず一定の目標を掲げて活動する
・ マネジメントの高度化なくして,組織の発展はありえない
- 具体的には,教員個人ではなくて,組織としての教育成果に対する明確な目標を設定する
・ 個々の情報を把握して,想定通りの教育成果が上がっているか,そうでなければ原因やどう解決するかなどの分析が大事
・ この委員会ではマネジメントサイクルについても議論したい
- 財政的な面
・ 国の税金を使っているので社会に支えられる大学を実現しないといけない
- ステークホルダーに対しては積極的に情報開示を進めていく必要がある
- 決して大企業だけではなく,中堅・中小企業も,きちっと自分たちがやっていることを説明をしないと社会から認められる企業にならない
・ 大学は,成果が短期的には完全に現れない
- だからこそ,プロセス情報も含め整理した形での公表していく事は,国民全体に丁寧な説明責任を果たす上で重要
・ 利益を出す方法
- 収益を上げる。収益が上がらなくても,コストを下げる
- 退学率とか留年率が出ると心配な学校もあるかもしれないが,そんなことはないと思う
・ いろいろな勉強の目的がある(授業について行くのが厳しい/易しい,大学卒業という資格を取りたい,将来を考えて厳しいところで勉強したい)
・ そのためにもいろいろな数字を発表していかないと,ステークホルダーの為にならない
・ 大学においても,ある数字についてその原因と的確な対策を示す事が出来る限り,数字のみで判断する事はない
○ 溝上委員(学校法人桐蔭学園理事長代理,桐蔭学園トランジションセンター所長・教授)
- 9月から桐蔭学園に異動して,幼稚園から大学まで見る立場になっている
- 教学マネジメントの確立というのは前のワーキンググループで何度も何度も発言している
- 教学マネジメントは新しいことが特にそんなにあるわけではな
・ 学士課程答申から見て10年,将来像から見て15年,グランドデザインの答申の中でもいろいろな改善点が書かれている
・ 学生が変わるレベルで育てられてきた,そういう大学に変わってきているという感じがしない
・ データでもそういうものが表れている
- 2040年に向けて大学がどんどん縮小していくときに,現在の体制で,この感じで行ってしまうんじゃないかという危機感も強く持っている
- 国としてあるいは全国的に共通の指標で,大学の学生の状況が見えるところに進まないといけないんじゃないか
・ 共通の指標というのは,考え方,進め方によってはとても乱暴なものになるが,それに近いところ
- 特に高校から見たときに,やっぱりまだまだ偏差値に対しての一般的な理解が根深くある
・ 本当に学生を育てるいい大学って,私たちは個別に結構知っているわけですけれども,見えない
・ そういうものがもっともっと一般的に見えるような国の取組につながっていけばいいなと思う
○ 両角委員(東京大学大学院教育学研究科准教授)
- 2008年の学士力答申以降,大学の意識や教職員の意識はかなり変わってきたんじゃないかという実感がある
- 一方で,調査をしても学生の学修行動自体はほとんど変わっていない
・ 例えば,同じ偏差値ランクのところであっても,かなりそこで学べる内容は違う
- 国公立だから,偏差値が高いから,立地がいいからって,そういうことで学生が大学の進学先を選ぶという行動も全く変わっていない
- この委員会で目指していくべき方向性にはとても大賛成だが,気を付けて進めていく必要もある
・ 教学マネジメントのいろいろなパーツのようなものを,やれば補助金の金額が増えるようなやり方で今まで進んできたところがある
・ 結局,そちらの方に大学の目と努力が向かっている印象がある
・ 補助金は大事で欲しいが,国の方を向くのではなく,大学の努力を学生自身の成長とか社会の方に向けていく仕組みをどう作っていくかが大事
・ そのためには,情報公開をどう進めていくかというところが,かなり重要になる
- 義務付けが考えられる情報の例
・ それぞれの大学さん,かなり出している
・ しかし,大学を選ぶ学生さんにとって比較して見やすくなっていなければ,その情報があっても活用されない
○ 吉見委員(東京大学大学院情報学環教授)
- 日本は授業以外の学修時間が非常に短い,しかも全然改善されていない
- これを改善していく道筋で最も重要なポイントは1人の学生が1学期間に取る科目の数の問題
・ 日本の大学の大学生は,1学期に大体普通10から12の科目を取る(4年間で日本の学生は60から70の科目)
- アメリカの大学は4から5(4年間で30程度)
・ そうすると,一つ一つの科目で,リーディングアサインメントとか,いろいろな予習復習を課すと,学生は授業に出るのが精一杯
・ アメリカ,欧米とはカリキュラムの組み立ての考え方が全く違う
・ 楽単科目を取って,先生が厳しいことを言う科目は捨てるという履修行動が取れる
・ こういう構造が残る限り学修時間は増えない
- 例えば,シラバス,予習復習,アクティブ・ラーニングをちゃんとしようとしても根本ができていない(それぞれは正しい)
- 東大とハーバードの学生のクオリティーは同じという実感
・ しかし教育の仕組みがまるで違う(根本は履修科目数)
- この根本を変えることができるかどうかということが,日本の大学における学修者主体の教育に転換できるかどうかの非常に大きな試金石
○ 森委員(関西大学教育推進部教授)
- 学習者の学びのプロセスや構造を研究している
・ いかにして質的,量的なデータで明らかにしていくかといったような研究に関わっている
- 人が学ぶ理論に,教育がついていっていない
・ こんなに多い単位数をどうやって学んでいくのかというと,どうしてもみんな浅い学びになってしまう
- 学生の履修行動を分析すると,必修授業を中心に,時間割的に上下にある科目しか履修しないカリキュラムが出来上がっている
- それを嘆くのではなく,それらを前提にした教育的なデザインがそろそろ必要なのではないか
- 実務的には,これまで地方国立大学と大手私立大学と2つの教育改革に関わっている
・ 大学教職員は,施策が下りてきたから,それをしなくてはならないという,どうしても後追いの改革になり,疲弊する傾向にある
・ その意味では,グランドデザイン,2040年,そこから逆算をする,まさに逆向き設計で現場が改革を考えていく
- 学生自身も「今,ここ」しか分からない状態
・ 学生たちの学びをどうデザインしていくかといったようなことは非常に大きな私どもの仕事
・ 私個人は学生の個別性に非常に興味がある
- 一斉授業,一斉カリキュラムというのは,限界ではないか
- カリキュラムの多様性や学生の多様性といったようなものを議論していく必要がある
・ 個人個人のニーズや現状にマッチした教育において,その学生たちをどれだけ伸ばしていくかという観点
- 関西大学で教学IRも担当
・ 教育の証拠づくりではなく,学生の学びの質を向上させるためのデータ収集,改革に向けたデータ分析の在り方についても,是非ここでは議論したい
○ 松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
- 学修時間というのが本当にこの20年間変わっていない
- これについてはさまざまな政策が行われきた
・ キャップ制,ナンバリングなど
- 授業には出ないけれども外で学ぶという学生は少ない(京大のある学部で調べた)
・ 授業にたくさん出て,かつ授業外学修も結構やっている学生は結構いる
- これまでやってきたことをそのまま繰り返すだけでは,そこは打開できない
- アメリカの教育のやり方
・ 1つの科目について,週複数回授業がある
・ しかもそれが講義とかレシテーションとかラボとか,複数のいろいろな学修形態によって学ばれている
・ それによって,単に知識を習得するだけじゃなくて,それが使いこなせるようになるまで持っていくと
- 学修成果の捉え方
・ 医療系の場合,全くの素人から,卒業するまでに一応の仕事はできるようになる
・ それと比べたときに,人文社会科学系の学生の成長というのが,すごく見えにくい
・ 人文社会科学系の学修成果の捉え方というのを改めてちゃんと考えなきゃいけない
- 学修成果の評価
・ 教員の評価と学生の自己評価って結構相関が低い
- 必ずしもちゃんと学生が自分の学びを評価できるわけではない
- 自己評価の力というのも併せて付けていかないと学びをきちんと捉えられないのではないか
- それを基に教育の質を変えていくということも難しいのではないか
・ そういうことからすると,様々な評価方法を組み合わせて使う必要がある
- そうすると,教員の負担がまた増えるということもある
- 第3の職種と言われるような専門家,スペシャリストや,TA,そういったことも併せて考えていかないと,教員の負担が大きくなるばかりではないか
○ 深堀委員(九州大学教育改革推進本部教授)
- 10年間,国立教育政策研究所でOECD-AHELOをはじめとする事業に関わりながら,大学教育の国際的な通用性を中心テーマとして研究してきた
- そうした経験を踏まえて3点話す
- 非常に限界のある指標に基づいて,我々は高等教育の質を語ろうとしている
・ そもそも,これは世界共通の課題で,我々は高等教育の質を客観的に捉える指標を持ち合わせていない
・ その中で,アメリカやヨーロッパ,特にイギリスでは,大学生の卒業後の所得で大学教育の効果を見ようとしている
・ 日本の高等教育の質がそれほど低いのかというと,海外の方々からは,必ずしもそうは見られていない
- 日本は15歳のPISA調査を見ても,15歳から64歳の国際成人力調査PIAACを見ても,世界トップレベル
- Times Higher Educationの大学ランキング(研究を重視)にランクインしている大学全体の約10%が日本の大学
・ 日本の大学は決して悲観する状況にはないということを踏まえながら議論を進めていく必要がある
・ 大学全体としての社会に対する説明責任を語るのであれば,客観的に話を進めていく必要がある
- おしなべて大学教育の質が低いという語り方をしない
- どういう大学にどういう課題があり,それをどのように乗り越えていけばよいのかといった,より丁寧な議論を進めていく必要がある
- これまでの大学教育の成果をどう評価するか
・ 平成10年以降の教育教育には目覚ましい進展があった
- 先日,2006年に日本を訪問してOECDカントリー・レポートを執筆した担当者に会う機会があった
- 日本の12年間の取組を伝えると大変な驚きを持って受け止められた
- その一方で,KPIなど非常に限られた指標で大学の成果を捉えようとしている今日の日本の状況は世界も同じ問題を抱えているとのことだった
・ 大学の法人としての自律性を育てていく上で,こうした管理運営の在り方でいいのか,世界的に再検討の時期に来ているといえる
- 学修成果アセスメントは非常に高度なエキスパートジャッジメントが求められる取組
・ 個々の大学教員や,個々の大学で進められるものではない
・ 大学共同体としての取組が必要
・ それゆえ,アメリカの大学カレッジ協会やルミナ財団,ヨーロッパのチューニング・アカデミー等の取組に,日本を含む各国の大学が注目している
・ 日本の研究機関も学修成果アセスメントの研究に率先して取り組むことで,大学による教育改善の取組を支援していくことが重要
○ 清水委員(山梨県立大学理事長・学長,筑波大学名誉教授)
- 教育制度を専門にしている
- 今回のグランドデザインについて,私は一定の評価をしている
・ 70年間の我が国の高等教育の改革はどちらかというと,量的平等性に重きを置いた改革が続けられてきた
・ しかし,今回のグランドデザインは質的多様性の方にかじを切ってきた
・ 我が国の組織中心の改革からプログラム中心の改革へという移行が示されている点を高く評価したい
・ アメリカ型のシステムを参考にしながら我が国独自のシステムをこれから考えていくという方向性をしっかりと示した
- 1単位の定義
・ アメリカでは学修成果という文言が入っている
- 各学期週1回の授業プラス学修成果
- これがGPAの開発・実践につながっている
- 単位制度はFDの開発も伴っていたので,単位制度導入イコールFDイコールGPA
・ 我が国では,45時間の学修という数量的な基準しかなく,学修成果というのは入っていない
- だから学修成果はなくて当たり前だという解釈も成り立つ
- GPAは各大学の自由度に任せた方がいい
- 教育成果については一定のKPIというか評価指標があるわけではない(これが教育成果であるとは誰も言えない)
・ それは各大学の自由に任せた方がよく,しかしそのための指針は必要であるということで,この委員会の意味がある
○ 佐藤(東)委員(学校法人桜美林学園理事長・桜美林大学総長)
- 教学マネジメントについて,省からこういうメモが来ていて,話せということだったが,ちょっと難しいなとは思った
- 共通のボキャブラリーというか,同じことについて話していくことが大切
・ 教学マネジメントは,英語で言ったら何であろうか
- 大学改革支援・学位授与機構の書き方
・ 「教学マネジメント」はManagement of Teaching and Learning
・ 「教育を組織的かつ体系的に提供するためには,役割と責任が明確化されたガバナンス体制の下で,教育・学習の状況を管理することが必要」としている
- Education and learning must be managed under a governance structure with clearly defined roles and responsibilities
- 自主的に取り組むように促す仕組みを作る
- できるだけ大学の認証評価という制度をきちんと生きるような形にすることを踏まえての,いわゆる教学マネジメントを考えるのがいいのではないか
○ 小林(浩)委員(リクルート進学総研所長・リクルート「カレッジマネジメント」編集長)
- 社会から見た大学の位置付けについて
・ 1990年の大学に行っていた世代は高校生や大学生の保護者の世代,大学の数は約500
・ 現在の大学の数は800近く,大学進学率は25%から53%で非常に多様な学生を輩出する機関になっている
・ 大学の役割が大きく変わってきた
・ 学部の名称
- 1991年の大綱化前は29しかなかった
- 今,700以上ある
・ 社会から見たときに,どの学部で何を学んでいるかというのが分かりづらい,学修成果が見えづらい
・ 成績の信頼性がまだ企業側にない
・ 入り口のところでは偏差値が信頼できない
- 入試が多様化しているので,高校生は,偏差値とは操作できるものと見ている
・ 情報公開が進まない
- 情報公開をしてはいるものの,比較できない,ダウンロードできない
・ そうするとどうなるかというと,卒業時ではなく,いまだに入学時のスクリーニングで見てしまう状況になっている
・ 18歳の入学時がゴールではなくて,卒業時に何ができるようになったのかというのをちゃんと社会に見せていく必要がある
・ 正課だけじゃなくて,正課外も含めて,どんな人材を育成していくのかということを,大学がきちんと社会に発信していく必要がある
- 高大接続改革
・ 新しい学習指導要領で育った子たちが2025年には大学に入ってくる
・ その子たちを受け入れる側としての大学についてどのような人を育てていくかというのも,一つの観点
○ 沖委員(立命館大学教育開発推進機構教授)
- グランドデザインから考えると,高大接続も重要視する必要がある
・ 我々は大学の成績を企業側にきちんと認めてほしい,これだけやったということを認めてほしいと言っておきながら,実は高等学校の調査書をほとんど尊重していない
・ 高等学校の調査書と連携しながら,大学の人材養成像,学修成果というものを企業に示していくというのが,重要になってくる
- グランドデザインにも書いてある
- この改革をしていくにはどうしても専門職が必要
・ 各大学として整備していくのかということはどうしても盛り込まないと,絵に描いた餅になる
- IR,カリキュラムのコーディネーター,ファカルティ・ディベロッパーといったもの
- 大学教員のアカデミックプラクティス(教育,研究,社会貢献,学内業務)が物すごくいい加減に運用されている
・ 教育は大事だと言われながら,採用の際には模擬授業も全くなかったとかいうのが今でも多数ある
・ 採用と昇進の際もそう
・ 例えば,40%は教育というならば,40%分,きちんと評価をしないといけない
・ 例えば,うちの大学は9割分のエフォートを教育の貢献で求めているという大学では,90%の教育をきちんとやっていただくような支援と評価が必要
- しかし,90%の教育と言っておきながら,昇進人事では研究論文を何本書いたかということが求められるという,矛盾した状況にある
○ 浅野委員(山形大学学術研究院教授,名古屋大学IR本部特任教授)
- 現在,2大学のIRについていろいろと関わっている
・ 名古屋大学でもクロスアポイント制度でIR本部の特任教授
- グランドデザインに出ているように,やり方というのは,大学によって随分変わってくる
- 大学がやっていないのではなくて,やろうとしているんだけれども,どうしていいかが分からないという側面も結構ある
・ 現状,多くの日本の大学では,担当理事の先生方は,いざ教学マネジメントという全学をハンドリングする立場に立たれたときに何をしていいのかが分からない
・ 同じように,IRの業務の担当となる教員,あるいは職員の方々も,どうすれば良いのか,どのような業務を展開すれば良いのかが分からないという状況
- IR先進国と言われるアメリカ
・ 基本的にはプロボストという役職者が教学マネジメントの主たる責任者を担っている
- 通常,教員から昇格する場合が多い
- 企業になぞらえて言うと,チーフアカデミックオフィサー(CAO)という用語で語られる役職
- 基本的には教学全体の責任者であり,なおかつ人事権,それから,教学に関する予算の権限も持っている場合がほとんど
- カリキュラムを体系化する,あるいは教員を配置するといったときに,いろいろな意味で日本の大学とは違った運用が可能になる
・ 日本の大学に教学マネジメントの強化を求めるとするならば,この構造的な問題を背後に置きながら議論する必要がある
- 学修成果の可視化
・ 大学単体の取組だけではなかなか社会からの理解が得られない
- 個別の大学で学生の能力がこれだけ伸びたといっても,ほかの大学に比べてどれぐらい伸びたのかが分からない
- 社会からすると,この数字が何を現しているのか,信用できる情報なのかというところの疑念にもつながる
- 情報公開
・ 大学ポートレートをどう活用するのかということも考える必要がある
・ 答申のこれまでの審議の経緯では,情報公表に関して大学ポートレートに言及されることが多かった
- 今回のグランドデザイン答申では1か所のみ
・ 各大学はホームページを通じて,教育情報の公表というセクションを設けて,結構な情報を公表している
- 公表していないのではなくて,公表しているものの,社会が必ずしもそれを理解できない,あるいは社会が求めているものになっていない
- 社会が納得する数値
・ 国としての基準(ベースライン)
- 例えば,中退率は日本の大学の平均ではどれぐらいで,個別大学はどれぐらいなのかということが見えるようにならない限り,その数値の意味するところが読み取れない
- 個別の大学でもなかなか改善に活かしていくこともできない
○ 小林(雅)副座長(東京大学大学総合教育研究センター教授)
- 前回のワーキンググループに引き続いて,主査代理,座長代理
- この教学マネジメントについての委員会で重要な点
・ 大きな高等教育の改革の流れということをしっかり押さえていくこと
- 参考資料7が該当
- それ以外に補論というのが答申に付いている
・ これまでの高等教育政策を振り返って,どういうことが問題になってきたかということをまとめたもの
- 高等教育政策は,政策として計画的にやっていくということと,市場に任せるということの交代でやってきた
- 2005年以降は誘導政策で,高等教育を改革していくという形に変わってきた
- 答申ではそれを続けるということが明示されている(基本的には誘導政策によって,大学を改革していこうということ)
・ 私学助成のような形というのは問題もある
- 設置基準に関しては,大幅に見直すということも答申には書かれている
・ 高等教育の質保証は入り口のコントロール(大学設置基準によるコントロール)から認証評価による質の保証という形に転換しようとしている
・ 過渡期で,うまくいっていないという面もある
・ なぜかというと予測困難な将来のために高等教育が多様性と柔軟性を持っていかなくてはいけないが今までの在り方というのは,どちらかというと,それを阻害してきた
・ 自主性が強調されているが,同時に大学外では,大学に対する非常に厳しい批判もある
- 大学に対する社会の信頼は低下しているということも認めなければいけない
- そのために何ができるかということで,教学マネジメント,大学情報の公表が求められている
・ 具体的な例として中途退学率
- 大学ポートレートのときにも非常に激しい長い議論があり,最終的にはポートレートには盛り込まれなかった
- 数字が独り歩きするというようなことが一番大きい理由だった
- 中途退学率といっても,ネガティブなものだけではなくて,ポジティブなものもある
- そういうものをどういうふうに取り扱うかということについて,委員の間でそうとう議論をしたが,まとまらなかった
- こういった1つのことだけとっても非常に難しい
・ 外形的,KPIのようなものというのは分かりやすいが,実際は,非常に難しい
- しかし,それを作らなければいけない状況になっている
- この委員会は非常に難しいタスクを背負っている
- あくまで大学がやること
- 委員会,文部科学省は外から支えていく,あるいはガイドラインを作って,それを分かりやすい形で支援していくということが求められている
○ 日比谷座長
- 本来改革は疲れるためにあるわけではなくて,明るい未来を描くためにある
- 次回は,これからの1年間で何をどのような順番で議論していくかを示す
・ 授業で言うと,シラバスなようなもの
・ きちんとしたロードマップを示す
・ それぞれの回ごとにできるだけ早く資料等をアップして,十分な準備をしていただく
・ 専門の方が多いので,事務局からの説明にはそれほど時間を掛けず,積極的な意見交換のために委員会の席を使いたい
○ 平野大学改革推進室長
- 次回の委員会
・ 今後どのようなことを議論するのか,もう一回全体像がどういう形でそれぞれつながってくるのかという見取り図的な議論をさせていただきたい
・ 日程は1月16日を予定
- グランドデザイン答申の参考資料4について補足(答申の51ページ)
・ 今後の検討課題
- 中央教育審議会においては,引き続き以下の検討を行う
・ 「3.教育の質保証と情報公表」で述べた設置基準等の質保証システムについて見直しを行う
- こちらは中央教育審議会で検討を行う
・ 教学マネジメントに係る指針の策定,学修成果の可視化と情報公表の在り方に関する検討を行う
- こちらが,この特別委員会のミッションとして位置付けられている
- 小林副座長が説明した中央教育審議会の補論を配布