ホーム → 大学に関わる情報メモ → 教学マネジメント特別委員会(第8回)議事録
公開日:2019年10月30日
「教学マネジメントを支える基盤」について議論。発表内容はFD・SDについて(佐藤浩章委員)、教学IRについて(浅野委員)の2つ。
FD・SDについて(佐藤浩章委員)。FDやSDは教学マネジメントのサイクルを支える土台部分。教学マネジメントでは教員の教育力向上が重要となる。そこで5つの提言を行う。提言1:大学教員の教育能力資格の取得を必須化する。提言2:「大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力」を明確化する。提言3:教員の能力開発の機会を保証する。提言4:各大学にファカルティ・ディベロッパーを配置する。提言5:教学マネジメントに関わる職員の能力開発の機会を保証する。
教学IRについて(浅野委員)。FD・SD・教学IRは教学マネジメントを支える基盤。「IRはこういうことだ」と定義できる現状にないが,大学の意思決定を支援するための調査・研究ということが前面に押し出されてきている。IRの主要な担当業務はデータ収集だが,データの収集・管理に課題がある。IRを実質化していくためには,IR組織は学内で何をするところなのかを十分に議論し,組織の使命として定めることが重要。多くの大学では,執行部としてIR部署に何を求めているのかが担当者には伝わっておらず,担当者も何をすればよいのかが分からない。大学として,データをどのように集めて管理・運営していくのかルールが必要。教学マネジメントを進めていく上で,Assessment(学修成果の測定や満足度の調査等),Program Review(エビデンスに基づいて教育プログラムの教育効果を把握),IR(それを実施または補完するデータ分析等)が重要。IRを機能させるガバナンス体制として,アメリカの大学のProvostが参考になる。環境整備として,大学全体の統合的なデータ管理のインフラが必要。大学間の比較をする仕組みも必要。
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 本日の議題は「教学マネジメントを支える基盤」
- 進行
・ FD・SDについて(佐藤浩章委員)
・ 教学IRについて(浅野委員)
・ 事務局からの資料説明
・ 議論
○ 佐藤(浩)委員(大阪大学全学教育推進機構准教授)
- 発表タイトル
・ 「教学マネジメントを支える基盤――FD・SDの高度化に向けた提言――」
- 図(p.3)
・ 本委員会で既に提示している
・ 4層のPDCAを回すことが教学マネジメントであるということを示したもの
・ 今回のテーマであるFDやSDは,このサイクルを支える土台部分に当たる
・ 教学マネジメント一丁目の1番地は教員の教育力向上にある
- 学生が受ける様々なサービスや教育の質を問わずして教学マネジメントは語れない
- 法令上でのFDとSDの定義
・ FD
- 大学設置基準の第25条の3項
・ FDという用語自体は実はここには入っていない
・ 実施の主体は大学
・ 授業内容と方法の改善に焦点が当てられている
・ 組織的な活動である
・ 研修及び研究が入っている
- このような定義がある中で,今回,FDの高度化というものは何を意味するのかを考える必要がある
・ SD
- 大学設置基準の第42条の3項
・ ここにも実はSDという文字はない
・ 実施の主体は大学
・ 職員には,教員や学長等の執行部,技術職員等も含まれる
- このような文言を踏まえてSDの高度化を考える必要がある
- 日本のFDの歴史
・ 出発点としては,1972年の広島大学大学教育研究センターの誕生が一つのきっかけ
・ 様々な各大学での取組を受けて,1999年に設置基準上でFDの努力義務化がうたわれた
・ 2008年に大学設置基準上によるFDの義務化
・ 現在、本委員会でFDの高度化が議論されている
・ このように日本のFDは政府主導で進展してきた
- 高等教育の先進諸国(ヨーロッパあるいは北米諸国)での状況
・ 学生運動が一つのきっかけになっている
- 1960年代末,学生からの異議申立て
- それに対して,大学教員や大学からFDが誕生した
・ まずは自分たちの授業を見直そう
・ それからカリキュラムを見直そう
・ 1990年代に入って,ヨーロッパ諸国を中心にFDが一つの究極の形に結実する
- 大学教員の教育能力資格
・ 2010年代に入って,アジア・アフリカ・ラテンアメリカ諸国における進展が非常に目覚ましい
- その理由は高等教育の大衆化
・ 政府や専門家団体が方針を出して,その上で各大学や大学間連合,中には学長たちの申合せ事項として取り組んでいるところが多い
- そのような自律的な取組によって教育能力資格を求めることが行われている
- フランスのように法令上規定している国もある
・ 諸外国のFDの紹介
- イギリス
・ 2000年代半ば以降に「高等教育の専門性基準枠組み」に基づいて各大学で資格認定のプログラムの受講を義務付けている
- スウェーデン
・ 2000年代に一度,研修の義務化を法令上で義務化した
・ その条文は一度廃止された
・ 現状はその条文よりも非常に厳しい条件で学長間の合意でそれが進んでいる
- フランス
・ 日本に似ていて,FDが遅れていると言われていた
・ 2018年からFDの義務化が始まった
・ 対象となる准教授は,試用期間が1年間あって,その間にFDを受講する
- 教育業務負担の6分の1は免除して,その部分を研修に充てるということが法令上うたわれている
- 2008年の中央教育審議会学士課程答申で指摘された「日本の大学におけるFDの現状」
・ そこに書かれている記述と2019年代の現状を照らし合わせてみてもほとんど変わりがない
・ つまり,FDに関して言うと,「失われた10年」あるいは「失われた20年」と言ってもいいのではないか
・ そういう状況下で、FDの高度化をどのように考えるかを議論する必要がある
- 日本高等教育開発協会「2030年に向けた大学教員の教育能力の開発と評価についての7つの提言」(通称「FD2030」)
・ これからのFDを見据えて作成した
・ それらの提言の幾つかを使いながら個人的に5つの提言をする
- 提言1:大学教員の教育能力資格の取得を必須化する
・ 幼児教育や初等中等教育段階の教員には教員免許が求められるが,大学教員にはない
- ユニバーサル段階で,大学教員に免許や資格が不要ということを根拠を持って言うことは可能なのか
・ 教員
- 体系的な研修を修了している証明や,各種の教育業績を示すエビデンスを提示して,教育能力を保有していることを証明すべき
・ 大学
- それに対して資格を付与すべき
- 資格を有している大学教員の人数や割合を社会に対して発信する必要もある
- 大学でなくても,国大協,私大協,私大連といった中間団体も,法令上の規定がなくても本来は義務化して社会に発信すべき
・ 実務家教員も同じ状況
- 「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」
・ 今年度,文科省の別部署で主管されている
・ 実務家教員養成プログラムの全国展開が想定されている
- 看護師等の養成所
・ 厚生労働省のガイドラインで既に研修が義務化されている
・ 「現場経験5年以上」に加えて,「専任教員教諭として必要な研修を修了」することが求められている
・ 37単位(1,080時間)程度,半年間にわたって研修を受けることが義務化されている
- 専門学校教員には研修が必要で,大学教員には研修が不要という矛盾が生じている
・ これは所管の省庁の方針の違いと思われる
・ プレFD
- 将来大学教員を目指す大学院生向けのプログラム
- 旧帝大クラスでは,全ての大学で本プログラムの運用が開始されている
・ 大阪大学でも2014年より実施している
- フルでとると8単位
- 360時間以上の履修を課して,修了した学生たちに対して修了証を出している
- 中教審大学分科会での議論を受け、「博士後期課程のプレFD実施又は情報提供の努力義務化」がまもなく法令上施行
- 提言2:「大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力」を明確化する
・ 大学教授の資格(大学設置基準の第14条)
- 研究能力に加えて,「大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者」という規定がある
- しかし,多くの大学でこの能力は厳密に規定されていない
- そのことが教育業績評価が進まない,あるいはFDが進まない原因のひとつになっている
- DPでうたわれた能力・資質を反転させる形で教員に求められる資質・能力を明文化すべき
・ DPは教員自身の能力の向上につながる
・ 専門団体が作成した基準なども参照してはどうか
- 「大学教員の基本的な教育職能の基準枠組」(日本高等教育開発協会,2019)
- 提言3:教員の能力開発の機会を保証する
・ 体系的で,かつ生涯にわたる段階的で統合的な能力開発の機会保障を義務化せよという提言
・ 義務化という言葉だけが飛び交っているが,労働者の立場で考えると権利
・ 事例
- 愛媛大学
・ 2013年から始めたテニュア教員育成プログラム
・ 100時間の研修の義務化
- 追手門学院大学
・ 同様に100時間
- 大阪大学
・ 30時間の研修
- 金沢工業大学
・ 早くから5日間の研修を義務化している
・ 研修会をする場合でも様々な内容がある(資料では具体的な活動内容を例示)
- 授業・教授法(ミクロレベル)
- カリキュラム(ミドルレベル)
- 制度・規則・組織(マクロレベル)
- 提言4:各大学にファカルティ・ディベロッパーを配置する
・ FD活動を担う4つのアクター(柳澤,2009)
- 一般教員
- 学部教育責任者
- 全学教育担当管理職
- FD担当者(専門家)
・ 専門家が入ることによって活動はより豊かなものになる
・ 教員の能力開発は教員の個人努力に任せるべきものではない
- 企業で言うと,[社員の能力開発は社員が勝手にすることで,そこにお金を出すべきではない]という言説は多分主流派ではない
- 賢明な企業は能力開発に人もモノも投資している
・ FDの責任部署を整備して,担当者を配置することの後押しが必要
- 提言5:教学マネジメントに関わる職員の能力開発の機会を保証する
・ SDに関する内容
・ 教学マネジメントに関わる専門職の養成も進めていくべき
- ミドルレベル(カリキュラムレベル,プログラムに関してのFD)
・ 教員のみならず,学部長・学科長・教務部長・教学系職員が非常に重要になる
- マクロレベル(組織,制度,規則に関わるFD)
・ 教学担当の理事・副学長・教学系の幹部職員の能力開発も非常に重要になる
・ 履修証明制度などを活用して,全国的に普及させる必要がある
- FD担当の職員
- SD担当職員
- IRer
- カリキュラムコーディネーター など
○ 浅野委員(山形大学学術研究院教授、名古屋大学IR本部特任教授)
- 本日の報告の構成
① 論点の位置付け(本委員会第3回資料「教学マネジメントについて(案)」)
② IRとは何か
③ 日本における大学のIRの現状
④ 短期,中長期の対応策
⑤ まとめ
① 論点の位置付け(本委員会第3回資料「教学マネジメントについて(案)」)
・ FD・SD・教学IR
- 教学マネジメントを支える基盤
② IRとは何か
・ 「IRはこれだ」「IRはこういうことだ」と定義できる現状にない(小林・山田(編),2016)
- アメリカを含めて,同様の状況
・ 研究あるいは実態レベルで受け入れられている定義
- Institutional Research as “decision support”(意思決定を支援する上で必要な情報を提供するために行う調査・研究)
・ 中教審の答申等の流れ
- 2008年の「学士課程教育の構築に向けて」の審議まとめ
・ 初めてIR(当時はインスティテューショナル・リサーチャーという言葉)に言及
・ 大学の諸活動に関する調査データを収集・分析し,経営を支援する職員という位置づけ
- 2012年の質的転換答申,2014年のガバナンス改革の推進についての審議まとめ
・ 大学の意思決定を支援するための調査・研究ということが前面に押し出されている
③ 日本における大学のIRの現状
・ 大学における教育内容等の改革状況について(平成28年度)
- 多くの大学の現場ではIRの部署又は担当する委員会を置く現状にある
・ 全体的なIRの部署の設置状況
- 平成24年には約10%
- 平成28年には三十数%,4割弱に上がってきている
・ 委員会方式等の組織も同じように10%から3割弱に上がってきている
- 設置された組織又は委員会等が担当していること
・ 平成28年のトップ3は基本的にはデータを集めること
- 学生の学修成果の評価のためのデータ収集
- 自己点検評価に必要なデータの収集
- 学生の学修時間の把握のためのデータ収集等
・ 小林・山田(編)(2016)
- IRの主要な担当業務がデータ収集となっているにもかかわらず,学内のデータにアクセスできる権限を有しているIR担当者は非常に少ない
・ 財務から教員,授業評価,学務データ等の基幹システムへのアクセス率は15%を切っている
- IRにはデータを集める機能が期待されているにもかかわらず,担当者はデータにアクセスできないという,構造的な問題に直面している
・ 他の調査においても,ほぼ似たような形で,多くのIR担当者はデータの収集・管理に課題を抱えていることが示されている
- 橋本智也・白石哲也(2019)「大学におけるIRの実態に関するアンケートの調査報告-自由記述に見られた困難・活動内容-」,『大学評価とIR』,10,16-28.
※ 橋本注:議事録では「大学評価コンソーシアムの会員を対象に実施」とあるが,対象は全国の大学
・ 該当の文献へのリンク
④ 短期,中長期の対応策
・ IRを実質化していく,あるいは縁の下の力持ちとして機能させるには何が必要となるか
・ 短期的な対応策
- IR担当部署又は委員会等は学内で何をするところなのかを十分に議論し,それをその組織の使命として定めることが重要
・ 山形大学では関連規定を度々改正している
- 情報保護管理規程:H18.4月制定、H29.3月までに計12回改正
- 大学IRシステムマネジメント規程:H26.9月制定、H29.11月までに計4回改正
- 使命を定めることによって,IR担当部署の活動のよりどころができ,役割等も明確になっていく
・ 山形大学ではIRとIEがある
- IEは本日の議論に関わる教学マネジメントとほぼ同義
- いわゆるPDCAサイクルのようなもの
・ 使命があって,その使命にのっとって策定された目標/成果というものがあり,それらの達成度を評価し,その結果に基づいて改善をしていく
- 多くの大学では,執行部として何をIR部署に求めているのかというのも担当者には伝わっておらず,担当者も何をすればよいのかが分からない
- 大学として,データをどのように集めて管理・運営していくのかルールが必要
・ 規則あるいはガイドライン・指針などとして置いている大学は,現状,それほど多くない
・ 個人間のつながりで集められていたデータが,人事異動等によって担当者が替わり入手できなくなり,IR業務が停滞する
・ 中期的な対応策
- IR先進国と言われているアメリカでも,結果を活用して改善をするというところはそれほど進んでいない
- アメリカのIR担当者は“Closing the Loop”に苦心している(改善のループを完結させるには何が必要か,何が出来るか)
- 日本の大学の中で教学マネジメントを進めていく上で重要なポイントが3つある
・ Assessment:学生を対象とした学修成果の測定や満足度の調査等
・ Program Review:学部・学科で提供する教育プログラムが対象,教育効果を把握する,エビデンスに基づく
・ IR:それを実施または補完するデータ分析等を行う
- 山形大学の実践事例
・ 基盤力テスト(Assessment)
- 学生を対象にテストを行う
- その結果をポートフォリオ化して学生個人にフィードバックしていく
- 個々の学生のデータをプログラム単位に整理・分析し活用する
- 学士課程のプログラムごとの学生の伸びを確認する(1年生と2年生の結果を比較し、統計的に検定する)
- 結果をカリキュラム改善に生かす
・ カリキュラムマッピング、CP・DPとの対応、Assessmentの結果など総合的にカリキュラムの現状を理解(Program Review)
- IRを機能させるガバナンスの模索
・ 日本の大学
- 総長/学長の下にIR担当部署が置かれているケースが多い
- 理事の役割が,教育,入試,研究,財務,総務といったような形で,かなり役割分担が進んでいる
・ アメリカの大学
- 学長・総長に当たるPresidentの下にProvostという役職を置くことが多い
- 実質的な大学の経営はProvostが担い,人事と財務の権限を一部持っている
・ 学長は外の顔と言われ,州議会との折衝,寄附金やファンドの獲得において重要な役割を果たす
- IRはProvostの下に位置付いている
- IRを支える情報環境の整備
・ 機関レベル
- アメリカでは大学全体で統合的にデータを管理するインフラがあるが、日本にはない(人事,財務,教務など役割に応じたDBはある)
- アメリカでは大学間でデータを交換する任意の仕組みが整備されているが、日本はIRコンソーシアム等の取組を除けば,余り進んでいない
・ 国レベル
- アメリカではIPEDSのように大学間を比較する仕組みがあるが、日本では大学ポートレートなどは進んでいるが比較する仕組みはない
⑤ まとめ
・ まずはIR部署(組織)がどのような使命や目的を持って何を果たすのかをしっかり文書化あるいは明確にしていく必要がある
・ 様々な業務に必要な情報を大学として活用していくルールを規定することも重要
・ 教学マネジメントの各種業務を推進できる大学のガバナンスの在り方も見ていく必要がある
- IRを定着させる上で重要な役職者は学長をはじめとする執行部
- IRを使う覚悟がなければ,机上の空論に終わってしまう可能性
- 覚悟に加えて構造的な部分への理解も必要
- 現状では,学長と理事の役割が必ずしもIRを定着させやすい状況にない
・ 大学、コンソーシアム等の任意団体、国レベルの各階層における情報環境の整備を検討していくことも重要
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 事務局から資料説明
○ 平野大学改革推進室長
- 資料3
・ 前回の主な意見
- 資料4「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(⑤教学マネジメントを支える基盤)」
・ 本委員会のミッションに従い,現行の制度を前提にして,大学としてどのようなことに取り組んでいくべきかを整理した資料
◇ FD・SDの高度化(15行目以降)
- 学修者本位の教育という観点から,必要な資質・能力を備えた教職員の存在は不可欠
- 個人の研さんや努力のみに期待するのではなく,組織的かつ体系的なFD・SDを実施すべき
- 自学が目指す教育を提供するために教職員に必要な能力や資質を特定して望ましい教職員像を定義する
- 教職員を育成するためのFD・SDを実施する
- 望ましい教員像について,関係者間で共通理解を構築することが必要
- 学内組織のマネジメント層(学長,副学長,学部長など)も対象とすることが必要
- 授業科目レベル,学位プログラムレベル,大学全体レベルの中から最適な内容・手法を組み合わせて提供する必要がある
・ 講演会やワークショップ,他大学の視察など
- 教学マネジメントの推進という観点からは,教務事務担当部署の職員のSDが必要
・ 大学全体の理念やディプロマ・ポリシー等の共有,学位プログラムの運用方法,法令等の制度の理解,その運用など
- FD・SDは毎年同じものを繰り返すのではなく,不断の改善が求められる
・ 効果測定が必要
- 実施後のアンケート,一定期間たった後に修得度合いの確認や追跡の調査を行うなど
- プレFDを行っていくことが望まれる
・ 大学院設置基準の改正に伴い,博士後期課程学生へのプレFDの実施,情報提供の努力義務が既に方向として出ている
・ 自大学のFDのノウハウを生かす
<大学全体レベル>
・ 大学の執行部として必要な資質・能力を培う上で必要な内容を定期的に行っていく必要がある
- 大学全体としての理念や三つの方針,これを適切に設定したり,見直しをするための研修会
- 他大学のマネジメント層との情報交換会
- 外部の専門家,企業経営者等を講師とした組織マネジメントに関する講演会
- 高等教育政策に関する講演会 など
・ 望ましい教職員像を明らかにする
- 「卒業認定・学位授与の方針」の反転
- FD担当者の特定,責任分担の明確化に留意してFD担当組織の構築・運用を行っていく必要がある
- 専門人材を確保できない場合でも,可能な限り自大学においても環境づくりに努めていく必要がある
・ 先進的な大学,FD・SDに関して国が認定をしている教育関係共同利用拠点と連携を図る
・ 大学コンソーシアムの参加 など
・ 参加したくなるような環境を醸成していくことが期待される
- FDの参加状況が十分とは言えないケースもある
- 教職員へのアンケートなどを通じたニーズの把握
- 対象者に到達しやすいような手法や場所を選択する工夫
・ オンライン学習や個別コンサルティングなど
- 参加者にインセンティブを与える工夫
・ 場合によっては,FDとSDを一体的に行うということも考えられる
<学位プログラムレベル>
・ 学位プログラムレベルのマネジメントなどを対象とする学部長などに対してFD・SDを定期的に実施する必要がある
- 効果的な教育課程の編成方法や実施・評価方法
- 学位プログラムレベルで求められるマネジメントに必要なノウハウ
・ 学位プログラムが目指す教育を提供するために求められる教職員の資質・能力を明らかにした上で,体系的にFD・SDを行う必要がある
- FDが確実に実施されることが必要な対象
・ 教員の経験が少ない新任の教員や実務経験者など
- 想定される内容の例
・ 自学の歴史や建学理念を含む大学コミュニティに関する基礎情報
・ 授業科目・教育課程編成に関する内容(シラバスにおいて標準的に期待される記載事項の書き方、履修指導方法等)
・ 成績評価基準の適切な運用(ルーブリックの活用方法、GPAの算出と活用等)
・ 学修成果の可視化(学生個人の学修成果の把握方法等)
- 他大学からの経験を有する教員であっても,着任や組織内の役割変化のタイミングで適切なFDが必要
- FDの位置づけを認識した上で,体系的に実施することが必要
・ PDCAのA
<授業科目レベル>
・ 「卒業認定・学位授与の方針」に即した最適な教育を提供するためのFDを実施することが必要
- ディプロマ・ポリシーを理解した上で,個々の科目との関係を認識する
- 教員として望ましい資質・能力を身につける
・ 教員それぞれのニーズ,大学のニーズに沿ったものを選択することが必要
・ 授業アンケートの実施で考慮すべきこと
- 漫然と感想を求めるのではなく,自らの学修を振り返るために有益な情報
- DPに示された資質・能力,授業科目として設定された到達目標を把握するための質問
- 実質的に回答が得られるような調査時期や頻度
◇ 教学IR体制の確立
- 大学の規模や設置形態に応じて求められる機能が違う
- ともすれば万能薬とみなされたり,IR実施することが改革ということになりがち
- そうではなく,教学IRの主たる役割をしっかり認識する必要がある
・ 大学のマネジメント層が教学の改革について正しい判断を行うために必要なデータを収集・分析
・ 一定の目標達成に資する情報として提供する
- 現状の改善・向上に資することを目標とする
・ 瞬間の成果を単に把握するというだけではない
・ 過程で明らかになる課題なども踏まえる
- 目的を明確に設定することが出発点
・ 学長,副学長,学部長が大学全体の理念やDPに基づいて,教学IRに何を求めるのか,教学IRで何を行うのか
・ 設定した目的を達成するために必要な体制,環境整備等を行う
- ベンチマーキングを積極的に取り入れていくことも期待される
<大学全体レベル>
・ 環境整備が行われているかを確認することが必要
- 学長のリーダーシップの下で教学IR部門に必要な権限を付与する
・ 学内の様々な学部・部署から円滑にデータを収集し,適確な分析が行うことが可能になる
・ 教学IRに関わる専門スタッフの不足に対して展開が期待されること
- 大学として,外部の機関の活用や大学間連携を通じて,専門スタッフの育成を活性化する
- 教学IRに関する業務を共同処理する
・ 教学IRに必要になるような学内の各種データに適切に規定を設ける必要がある
<学位プログラムレベル>
・ 全学的に必要となる情報とともに、学位プログラム単位で必要な情報を整理する必要がある
- データの収集等にあたっては重複等がないようにする
- 学位プログラム全体を改善する契機として教学IRを不断に実施する必要がある
・ DPに即した学修者本位の教育が提供されているか
・ そのために改善すべき点は何か
・ DPそのものを改善すべき点はないか
・ 全学レベルと同様に,学部長等がIR部門に期待するのかを積極的に定義していく必要がある
<授業科目レベル>
・ データを集めることによって射程に入れることが可能なこと
- DPとの関係で,当該科目が必要な役割を果たしているか
- 科目単体として,学生の興味・関心を高めるため,参加意欲を高めるためにどのようにすればいいか
・ 多くの大学で従来より実施している授業評価アンケート等を活用して,教学IRの必要性に対する認識の醸成につなげる
- 授業満足度や学生の学びの状況を明らかにし、教育改善等の基礎資料として定着させる
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 佐藤委員,浅野委員の発表への質問
○ 松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
- 佐藤委員への質問
・ FDの時間と効果について(教員へのタスクを増やしたら,その分,何か減らさないと教員はもうとてもやっていられない)
⇒ 法令上で後押しすることを考えなければいけない(佐藤委員)
・ 大学や個々の教員の自主努力ではどうにもならない状況
・ 一定期間中は担当授業科目数を減らすなどを考えなければ研修が入り込む余地はない
⇒ 一方で,教員がしていることを職員の方たちが担うことによって解消される部分もあるかもしれない(佐藤委員)
・ いわゆる研修(オフ)とOJT(オン)の関係をどのように考えるか
⇒ 2時間程度の研修では全く効果がなく呼び水、ティーチング・ポートフォリオの活用(断片的に学んだものを統合)
○ 森委員(関西大学教育推進部教授)
- 浅野委員への質問
・ アメリカではIRと,ティーチング&ラーニングセンターの関係はどのようになっているのか
⇒ おそらく州立と私立では随分違う(浅野委員)
・ 私立
- ラーニングセンターなどに置かれているケースが多い
・ 州立
- InstitutionalレベルのIRとして置かれているケースが多い(アカウンタビリティーの側面が大きいため)
- フラッグシップ型の大学では学修成果の測定より教員のパフォーマンス管理の関心が高い
- 佐藤委員・浅野委員への質問
・ 個別にFD・SD・IRと切ってしまうと,教学マネジメントという観点が弱くなってしまうのではないか
- 現場ではFDやIRの連動が現場ではつかめておらず,また疲弊するものが増えたととられかねない
⇒ FD・IRの両部門が連動して動くことは重要,アメリカではIRとFDが一体で動いていると認識している,山形大学でもIRとFDが同じ機構の中にある(浅野委員)
⇒ アイデア①:PDCAの図で,サイクルの中に入るFD・SD・IRと,土台の部分に入るFD・SD・IRに分ける,アイデア②:指針の中に事例を盛り込み様々な要素を読み解けるようにする(佐藤委員)
○ 吉見委員(東京大学大学院情報学環教授)
- 佐藤委員への質問
・ 日本では,研究中心の大学だと,研究をすることがFDをしない言い訳になっている印象がある
⇒ おそらく日本だけでなく世界でも同様,だからこそヨーロッパ諸国では最もコントロールが利きやすい初年度の仮採用期間中にFDを課す(佐藤委員)
・ 普通の授業をしていれば昇進できることが問題,そこで教育職能の基準となるものを作るべきだという提案をしている
・ 大阪大学では,研究能力向上のためのプログラムであると打ち出しながら,実は中身は教育にも活用できる形で進めている
・ 教員評価と授業評価の結び付けについて
⇒ 大阪大学ではそれらを結び付けることはしてはいない,している大学はあるが非常に少ない(佐藤委員)
- 浅野委員への質問
・ とくに大規模な総合大学では部局からデータが外に出ていかない構造になっている印象がある
⇒ 2つの問題があり,規則化を提案した(浅野委員)
・ 個人情報保護法(学生の同意を得ていないものは使えないという担当者の認識)
・ 教員の任期・職員の人事異動(築いた信頼関係が続く保証がない)
・ 日本で,いきなりProvostというのは難しいのではないか,そうであるとすれば部局の壁を取るにはどうすればよいか
⇒ 学長がProvostの役割を担っている大学はよいが,理事間で業務の所掌が違っている大学は米国のProvost制度を念頭にしていかないといけない
・ 政策レベルでも重要視されていて,国立大学は法人法の中に総括理事を置ける形で改正されていく(来年度施行)
・ そうなるとProvostに対する認識が変わるのではないか
○ 林委員(政策研究大学院大学教授)
- 佐藤委員への質問
・ 小規模大学では提案のようなFDをするのは難しいのではないか,ネットワーク的に講習をするような形は行われているのか
⇒ 愛媛大学でファカルティ・ディベロッパー養成講座を開催している(佐藤委員)
・ 現状,FDといったときに,広義のFD(プログラムレベル)の議論はどのくらい行われているのか
⇒ 教学マネジメントのFDでは,例えば日本高等教育開発協会がカリキュラムコーディネーター養成研修を行っている(佐藤委員)
⇒ 教育だけではなく研究能力の開発や社会貢献などを含めてFDと考えると,様々な能力開発と連携しながら行う時代に入っている(佐藤委員)
- 浅野委員への質問
・ 山形大学では,IRの取組とプログラム単位の質保証の取組(プログラムレビューなど)がどのように結び付いているのか
- 3つある認証評価機関はプログラムレベルの質保証が必要としている
- そのような質保証は実態ではまだ動いていないと理解している
- そこで,IRという形でAssessmentやアンケートの結果を示す
- そのことにより,プログラム担当者がプログラムレビューしないといけないことを理解するのではないか
- 逆にそれがなければ,なぜ今していることをレビューしないといけないのか認識が得られないのではないか
⇒ スライド11が肝で,そこをスタート地点にしないと厳しい(浅野委員)
・ 少なくともDPとCPはプログラム単位になっていないと話が始まらない
- 学位プログラムが学科の場合に,学部単位でデータを出してもアウトカムと明確に結びつかない
・ アメリカでは設計が確立しているので,IRはデータを収集して分析すればよい
・ しかし,日本では確立していない
- Assessmentの担当者がいない大学では,IRが設計に関わってデータを収集・分析していかないと厳しい
・ プログラムレビューについてはマネジメント側の視点も重要(教員の最適な配置など)
- そのような全体像を描く過程においてもIRが関わって取り組んでいかないといけないと考えている
○ 深堀委員(九州大学教育改革推進本部教授)
- 佐藤委員への質問
・ ファカルティ・ディベロッパーにどのような能力が必要か
⇒ 学問的な知見(教育学,心理学,経営学など),高度なコミュニケーション能力,ストレス耐性(佐藤委員)
・ ファカルティ・ディベロッパー制度を振興していく上で,国としてどういう制度設計が望ましいか
- 本委員会のテーマである教学マネジメントを推進していく上で,プログラムレベルのFD・SDは特に重要な意味を持つ
- そこではプログラムを支える学問分野の知識が非常に深く問われる
- そのとき,ファカルティ・ディベロッパーの俯瞰的な専門性に基づいて貢献できる部分は非常に大きい
・ 俯瞰的な専門性は分野横断的に様々な部局と連携することを通して培われる
- 一方で,その分野を学んだ者でないと意見しにくい側面もある
・ ファカルティ・ディベロッパーは,学問分野の専門家とどのように連携することが考えられるのか
- 医学分野
・ 教育専門家の利用についての方針を策定し,履行しなければならないことが規定されている(日本医学教育評価機構の医学教育分野別評価基準「教育専門家」)
・ 医学教育の専門家を養成する取組も制度的に展開されている(日本医学教育学会の認定医学教育専門家資格制度)
⇒ 仲間が集まってネットワークを作っていくことが重要(佐藤委員)
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 主に資料の4に基づいて本日のテーマについて議論
○ 益戸委員(UiPath株式会社特別顧問、株式会社肥後銀行取締役)
- 企業では,プロフィットセンターとコストセンター,管理部門と営業部門,本部と支店などがあり,それぞれ役割・責任がある
・ どちらが重要ということではなく,両方がうまく支え合っていないと企業としては回っていかない
・ FDとSDも同じ
○ 小林(浩)委員(リクルート進学総研所長・リクルート「カレッジマネジメント」編集長)
- 教学マネジメントを支えるスタッフの存在が非常に大きい
・ 私立大学を中心に職員力がある大学ほど改革が進んでいて,教学マネジメント面でも進んでいるという印象がある
- SDの議論の際は[教員に対する職員スタッフのSD]と[大学を支えるスタッフ全体としてのSD]のどちらの意味か明確にする必要がある
- 大学ポートレートは比較可能なものにすることが必要
・ IRの担当者の負担を減らすことにもなる
・ 今どのような議論になっているのか
⇒ 今回の議論は現行制度を前提とするが今後しかるべき部会等で議論が必要(平野大学改革推進室長)
・ データ公表の基盤などはグランドデザイン答申に盛り込まれている
○ 小林(雅)副座長(東京大学大学総合教育研究センター教授)
- ここは政策を考える場であり,その観点から意見を述べる
- 教学IRについて(資料4「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(⑤教学マネジメントを支える基盤)」)
・ 学内規定の整備は詳しく書かれている
・ 一方,専門スタッフの不足と,外部機関の活用や大学間連携は記述がすくない,具体的に書かないと政策としては足りない
- IR・FDの専門スタッフと組織の重要性で参考になるのは認証評価
・ 認証評価も最初は専門スタッフがおらずゼロからスタートした
・ 認証評価機関ができたことで研修ができ,活動ができるようになった
・ 具体的には,政策としてどのような支援ができるかを考える必要がある
- 資料には大学にしてほしいことが書かれているが,文科省が行う支援についても考えられる
・ 支援には2つある
- 中間組織への支援
・ 私学は私学助成のポイント加算のために箱だけ作った例が多く,政策誘導としては非常にまずいやり方
- 大学が活用できるデータをどのように作っていくかを文科省として考えてほしい
・ アメリカのIPEDSも最初からいいデータシステムを持っていたわけではない
- 個別高等教育機関のデータを公表し,研究者が活用し,あるいは大学がそれに応じて改革をして整備していった(Closing the Loop)
- 日本では、それができていない
・ 日本では学校基本調査がいいデータだが,個票として使える形になっていない
○ 佐藤(東)委員(学校法人桜美林学園理事長・桜美林大学総長)
- FDは昔から議論があるが進展しない
- FDをしっかり行う大学にはインセンティブがあっていいのではないか
・ 自大学にふさわしいFDをきちんと構築すれば,それを評価する
○ 沖委員(立命館大学教育開発推進機構教授)
- 新任の教員,実務経験のある教員の採用のタイミングでFDを確実に実施するというのは重要視したい
- ただし,基準枠組みがないと何をどの程度すればいいかが不明確になる
- FDerにも何らかの能力証明が必要
- 文科省ではなく,学協会が認証することをまず考える必要がある
- 文科省の学生調査と学内的なIR体制の整備が両方とも必要となる
○ 大森委員(共愛学園前橋国際大学学長)
- 現場として資料4「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(⑤教学マネジメントを支える基盤)」はわかりやすい
・ 段階的に示されている
- 教学マネジメントとしてDPに基づいてどのような人材が必要なのか
ー そのためにどのような育成プログラムが必要なのか
- インセンティブはありがたいが,小規模大学などはIR・カリキュラム・FDなど複数の専門員を雇用するのは無理
・ 実質的に機能しているかが見られる仕組みがよい,専門員を置かないと「やっていない」と判断されるのは厳しい
・ 本学では私がFDを主導していて実質的にFDを行っているが,FDerを置いているわけではない
○ 川並委員(学校法人東京聖徳学園理事長・学園長、聖徳大学・聖徳大学短期大学部学長)
- 学校の規模によっては,専門家を置きなさいという話が出てくると非常に苦しい
・ 設置基準ぎりぎりで教育を回している学校が非常に多くある
- FDとSDを切り分けて行う必要があるのか
・ 教育と職員が互いに補完し合って教育が成り立っている
○ 溝上委員(学校法人桐蔭学園理事長代理、桐蔭学園トランジションセンター所長・教授)
- この委員会では,データやエビデンスを収集してマネジメントに反映させていくというのは基本だが,それがイコールIRなのか
・ 経営などに関する人員や財務のデータなど,データやエビデンスはIRの部署からではなく,毎日どこかしらの部署から集めている
- 教学マネジメントに関するデータ・エビデンスがIRとどのように関係するのかを整理した方がよい
○ 清水委員(山梨県立大学理事長・学長、筑波大学名誉教授)
- FDの究極の狙いは,教育共同体や教育コミュニティーを作ること
- 単位制度ではあらゆる科目は等価値
・ 教え方を同じにしないと学生が不利益を被るということで,FDが開発・実践された