ホーム → 大学に関わる情報メモ → 質保証システム部会(第1回)議事録
公開日:2021年1月29日
部会設置までの流れ。グランドデザイン答申で、学修者本位の教育への転換,それを実現するための質保証システムの確立の必要性が指摘された。平成31年3月27日の大学分科会で本部会の設置が決定。
現行の質保証システム、検討の視点の例、想定される論点について事務局が説明。その後、各委員が問題意識や意見等について述べた。
事務局が整理した検討の視点の例は、1.将来を見据えた新しい大学像、2.社会の信頼を確保するための最低限の質保証の在り方、3.グローバルな社会の中での我が国の大学の国際通用性、4.実効的かつ効率的な質保証の仕組み。また、想定される論点は、1.現在の質保証の仕組みとそれぞれの役割(事前チェックである設置認可、大学自身の内部質保証、事後チェックである認証評価)、2.定員管理の在り方を設置基準上どのように位置付けるか、3.新しい授業の在り方を設置基準上どのように位置付けるか、4.情報公表の在り方。
○ 吉岡部会長(独立行政法人日本学生支援機構理事長)
- この部会は,質保証システム部会という名称
・ システムという名前が付いている
・ 基本的にシステム,制度を考える部会
・ ただし、制度を考えるときには,当然,理念や目的などを考えざるを得ない
・ その上で,制度に具体的に落とし込んでいくので、現実問題に対応しなければいけない
- 教育の現場の現在の問題
- 新型コロナウイルスの問題など
○ 伯井高等教育局長
- 平成30年に,2040年に向けた高等教育のグランドデザインについて答申
・ 高等教育の学修者本位の教育への転換,それを実現するための質保証システムの確立の必要性
・ 質保証システムを現在に即したものに見直す必要があるとの指摘
- 新たな大学の姿を作り上げていく、それに見合った質保証システムの在り方の検討
・ 遠隔授業,オンライン,リモートの授業と,対面の授業を上手に組み合わせた授業の在り方
- 国際通用性の観点も,ますます重要な課題
- withコロナ,postコロナ期における新たな学びの在り方
・ 初等中等教育,高等教育を通じて、教育再生実行会議において今後議論が行われる予定
- 先行して課題を抽出,論点整理をしていただければとも考えている
○ 吉岡部会長
- 審議体制と進め方について御確認いただく
○ 奥井高等教育企画課課長補佐
<資料3>
- 平成31年3月27日の大学分科会で部会の設置が決定
<資料4>
- 今後の質保証システム部会の進め方
・ 現行制度に関する共通理解と課題設定を中心に審議
・ 課題・見直し論点の中間的整理(案)のまとめ
・ 1回から3回は委員の皆様方との意見交換、大学団体等現場からのヒアリング
・ その後,論点を整理し、具体的な共通認識あるいは課題設定
○ 吉岡部会長
- 事務局より,現行の質保証システム等についての説明
○ 牛尾高等教育企画課長
<資料5-1>
- 検討の視点の例を事務局として整理
- 第1の視点
・ 将来を見据えた新しい大学像を考えていく必要がある
- Society5.0,それから,今般の感染症などを踏まえたニューノーマルなど
- 第2の視点
・ 社会の信頼を確保するための最低限の質保証の在り方をどうするのか
- 第3の視点
・ グローバルな社会の中での我が国の大学の国際通用性を確保する
- 第4の視点
・ 実効的かつ効率的な質保証の仕組みという観点も必要
- 特に事後的な評価について、負担感や重複があるのではないか
<資料5-2>
- 具体的に想定される論点(4つ)
・ 現在の質保証の仕組み,それぞれの役割等についてどう考えるか
- 事前チェックである設置認可
- 大学自身の内部質保証
- 事後チェックである認証評価
・ 定員管理の在り方をどのように考えるか
- 現在の設置基準等のベースは,収容定員に基づく様々な基準が設定されている
・ 情報技術の進展を踏まえた様々な新しい授業の在り方を基準上どのように位置付けるか
・ 情報公表の在り方を具体的に検討する必要がある
- 大学の活動を社会に説明するという観点
- 2ページ以降はグランドデザイン答申における質保証システムに関係ある記述を抜粋
<資料6>「中央教育審議会大学分科会質保証システム部会基礎資料」
- 我が国の質保証システムの沿革を整理
・ 大学設置基準とそれに基づく設置認可審査による事前規制を中心に質保証を進めてきた
・ 平成3年:大学設置基準の大綱化で基準を一定緩めた際に、事後的なチェックの仕組み(大学の自己点検・評価)の努力義務を導入
・ 平成15年:事前と事後のチェックが本格的に制度化された
- 規制改革会議での提言を受けた中央教育審議会の答申
- 国の事前規制である設置認可については弾力化
・ 一定の場合については認可ではなくて届出でよいという制度を導入
・ それ以前は大学の新設は基本的に抑制しておりましたけれども,その方針を撤廃する等の変化
- 一方で,大学設置後の状況について,第三者が客観的な立場から継続的に評価を行う体制を整備
- さらに,第三者評価制度の導入
- 併せて,国の措置として,法令違反状態にある大学に対する是正措置を導入
- 大学設置基準の概要
・ 昭和31年に文部省令という形で制定された
・ 教員の組織や資格,収容定員,教育課程,卒業要件,校地・校舎等の面積等についての基準が定められている
・ 定量的な基準
- 基本的には学部ごとの収容定員をベースにする
- 必要な教員の数や校地・校舎等の面積を定める
・ 教育の関係
- 1単位当たり45時間の学修とする
- 卒業に必要な単位数を定めている
- 設置認可制度の概要
・ 大学あるいは大学の学部等を設置する場合には文部科学大臣の認可が必要
・ その際には大学設置・学校法人審議会への諮問が必要
・ 大学設置審査
- 審査の基準として認可の基準が定められている
・ 学校教育法,大学設置基準等の法令に適合すること
・ 学生確保の見通し,定員管理の状況などが定められている
- 実際の審査
・ 設置の趣旨を確認した上で,それに沿った教育課程になっているかどうか
・ 十分な教育組織,ふさわしい教員がきちんと手当てされているかどうか等
- 大学の設置の認可あるいは届出後は、原則として完成年度まで、大学設置分科会に設けられ調査委員会において専門的な見地からのチェック
・ 必要に応じ指摘事項を大学に対して伝達し,改善を促している
・ この5年間で見ますと,400件ぐらいの対象校
・ 指摘が付されている大学の数は,この5年間では徐々に減っている
- 認証評価制度
・ 大きく二つに大別
- 機関別評価
・ 大学等の組織全体を丸ごと評価
・ 7年に1回の評価受審が義務付けられている
- 分野別評価
・ 専門職大学院等は,教育課程,教員組織等について分野ごとの評価を5年ごとに受けることが加えて義務付けられている
・ 大学の教育研究水準の維持向上を図ることを目的としている
- 評価結果に基づいて国による直接的な行政上の措置が行われるというものではない
- ただし、認証評価の結果を踏まえて,例えば,不適合の場合は,国においても法令違反等がないかのチェックをする
・ これまでで2,466の大学の評価が行われていて,その中で,延べ29大学に不適合が出されている
- 大学の情報公表
・ 平成11年に大学設置基準に義務付けられた
・ 平成23年には,具体的に公表すべき情報の項目が省令上明確にされた
- それ以外の項目は大学間でばらつきがある
・ 平成27年から大学ポートレートを運用している
- 大学改革の取組状況
・ ICTを活用した教育の実施状況
- 取組は進んでおりますけれども,多い項目でも半分程度というのがこれまでの現状
- 今回のコロナウイルス感染拡大への対応ということでは,多くの大学が遠隔教育に取り組んでいる
・ 6月1日現在では90%以上の大学が遠隔授業を実施している
- 社会人入学の動向
・ 近年では,ほぼ横ばい
・ 諸外国に比べますと,25歳以上の大学等への入学者の割合が日本は低い
- 外国人留学生の状況
・ 近年,着実に留学生が伸びている
・ ただし、諸外国に比べますと,留学生の割合は必ずしも多くない
<参考資料>
- 令和元年度「全国学生調査(試行実施)」の結果
・ 昨年末に全国515大学の学部3年生を対象に試行調査
- 全国の4年制大学の約3分の2
- 学生数でいうと約41万人
・ 将来的には全ての大学で実施
- 学生の目から見た大学教育あるいは学びの実態を把握して公表したい
○ 吉岡部会長
- 各委員からお一人ずつ,問題意識等,御意見を伺いたい
○ 永田委員(筑波大学長)
- 問題の背景と具体例
・ 設置基準
- 時代に合わない部分が出てきているので、一体どこが現状に合わないのかを議論をしないといけない
・ 例えば,ICTが進展した中で,校地・校舎の面積の考え方は昔のままでいいのか
・ 大学の役割は教育、研究,社会貢献となっているが、設置認可の際に研究については、個人レベル以外では議論されていない
・ 認証評価
- 認証評価システム自体の国際通用性を含めた有り様も議論する必要がある
・ もともとは大学が自ら作った団体から始まり、それが法律で定められた認証評価というシステムで運用されている
・ 単位についての認識
- 国際標準の考え方のもとで単位をどう定義し認識するのか
- 今後どのように改善したら良いのか
- 国大協でフランスの大学協会と協定を結ぶ際に大きな障壁となったのは,両国の間の単位に関する考え方の違いだった
・ 入学定員
- 学問の大きな流れあるいは社会のニーズなどに即応できる形の学生定員の在り方を考えるべき
- 学部や学科単位で見るのではなく,例えば大学全体で見るなど
・ 内部質保証
- 法律的な観点とシステムの観点,さらには大学の現場の観点それぞれを認識しながら議論する必要がある
○ 日比谷委員(学校法人聖心女子学院常務理事、前 国際基督教大学長)
- 教学マネジメント特別委員会の座長を務めた立場から,この部会に期待していること
・ これからの時代の大学というものをよく考えた上で,新しい設置基準を作っていく必要がある
・ 教学マネジメント指針に挙げたようなことが一つ一つきちんとクリアされているような教育体制が作れるような設置基準,あるいは認証評価の基準を求めたい
・ 学位名称の在り方についても考えた方がよい
- 余り好きな学位名称をどんどん付けられるようになってしまうと,何かよく分からないということになってしまう
○ 浅田委員(奈良県立大学長)
- 大学設置認可の審査,設置計画履行状況調査の委員,認証評価の評価、質保証にここしばらく関わってきた経験から感じている問題意識
・ 緩和と強化という両方が並行して進んだ大きな流れの中で起きたバランスシフトには,功罪があった
- 功
・ 社会変化に柔軟に対応して大学の多様化を促進した
- 罪
・ 少子化が進む中で,大学がどんどん増加し,歯止めが利かなくなった
・ 悪質な大学は自然淘汰されるという市場原理が言われたが,機能しなかったという現実がある
・ 基本的に大学は性善説
- 多くの大学が社会責任を自覚し自己改革を続けていく
- 一方で,非常に悪質な大学が社会問題化して大きく取り上げられ,質保証をどんどん強化しなくちゃいけない方向ができた
・ 理想を追いかけたが,どんどん後付けの規制強化が入って,一貫性がなくなってきて,制度疲労が生じているのが現状
・ 自己改革を行っている多くの大学を全部含めて規制強化をして,角を矯めて牛を殺すようなことはしてはいけない
・ 設置認可というのは計画審査なので、形式的に整えば認可せざるを得ない
- 認可するときに,審査の委員皆さんはじくじたる思いを持ちながら,ACで見てもらおうと先送りする
- ACでも懸念が残る大学はあるが,これは認証評価に任せようと先送りする
- 認証評価は,残念ながら強制力も罰則もない
・ 3段階いずれにも限界があるので,基本的には大学の自己責任で公表する内容をもっときちんと義務化して,国公私で共通化した方がいい
- 大学ポートレートは,現状では不完全
・ 認証評価でいわゆる適格グレーゾーンの大学は文部科学省が引き取って,きちんと指導,警告,あるいは最終的には廃止も含めた厳しい措置が必要
・ 認証評価のACのようなものがないと,認証評価を幾ら触っても,恐らく現状の大きな変化はない
・ 設置認可で国立大学と公私立大学は扱いが違う
- 制度上は未整備のところだと思いますので,これもそろそろ整備された方がいい
・ 大学が撤退するプロセスが必要
- 今の設置基準には入っていない
○ 飯吉委員(京都大学高等教育研究開発推進センター長・教授)
- テクノロジーやオンラインを高等教育や大学のシステムのレベルで活用していくかが重要
・ 日本は欧米に比べると10年は遅れてきた
・ その10年という差が縮まらないまま,このコロナ状況に突入した
・ 教職員も学生も,今無理やり ITのリテラシーを強制的に身に付けさせられているという感じ
・ これで日本の大学がテクノロジーの導入,オンライン化を果したというのはまだ尚早
・ 各学部や大学院のプログラムレベル,大学の執行部が,これらをどのように活用、応用していくのかという意識が非常に未熟であり,ここが本丸
・ オンライン教育を取り入れることによって,大学教育,高等教育システム全体の質を上げていき保証することが非常に大事になってくる
・ MOOC
- 数,利用者
・ 世界ではこの2年間で既に二,三割増
・ 日本はその辺が非常に冷え切ったまま
- 学位プログラム
・ 世界では50ほどある
- マイクロクレデンシャル
・ トラディショナルな学生に加えて、社会人,大学に進学する前の皆さんが使えるようになっている
・ 質保証され,大学の単位や単位群に置き換えられて学位の取得に繋がっていくことで,多様で柔軟な高等教育システムが作られつつある
○ 杉谷委員(青山学院大学教育人間科学部教授)
- 2つの立場で関わってきた
・ 設置認可審査、設置計画履行状況調査,認証評価や法人評価で主に評価者の側の立場でやってきた
・ 大学の方では学部学科に所属しているので,現場感覚をもった評価を受ける側の立場でもある
- 評価と,特に情報公表
・ 事前チェックや事後チェックの目的を改めてよく確認した上で,それに合わせたシステム,方法を検討すべき
- 情報を公表して社会に提供することはとても重要
- 一方で,例えばグランドデザイン答申などでは,その情報を比較できるように一覧化するという内容も提案されている
・ 制度として機能させていくことが,本当に現場にとってもよい影響があるのかを改めて考えている
- 事後評価
・ 評価の内容や方法を現場がいかにやりやすく簡素化,あるいは重点化していくか
・ 制度化は想定以上に大きな影響を与えて,標準化というのを招きかねない
・ 厳密に守り過ぎて,形式的に守ることに腐心しがちで、現場の疲弊感・徒労感も並々ならぬものがある
- 学修成果
・ 2つの意味が混同されがち
- 達成されるべき目標,期待される成果
- 実際に達成された結果
・ 特に最近は達成された結果の方の測定に力点が置かれがち
・ 測定・評価方法についてはまだ研究途上な面が否めない
・ 過度に学修成果の結果だけ重視されるような形にならないよう検討できればと思っている
○ 瀧澤委員(科学ジャーナリスト)
- 主に科学の分野の研究者にお会いして取材をしたりして,その結果,本や記事に情報発信をしている
- ふだん私が見聞きしている中で,これからの大学に求められる,大学を卒業した人たちに求められる像
・ 特に上位大学の大学を卒業した,社会を担うエリートのところに焦点を絞る
・ 大学では国際化を是非重視していただいて,国際標準の教育というものをしっかりとやっていただきたい
・ リーダーシップの教育と国際化ということが鍵になってくる
○ 谷本委員(関西外国語大学短期大学部副学長)
- 短期大学の教育に携わる立場から話す(3点)
・ 大学設置基準
- 一般的な大学・短期大学で必要とされる施設や設備,教育もしっかり議論の俎上(そじょう)に載せて,進めていただきたい
・ 短期大学
- 地域社会と大学という観点にも配慮して議論を進めていただきたい
・ 短期大学は地方に多く存在していて,コミュニティ・カレッジとして地域の文化,教育を担っている
- 都会の大規模な大学と同じ基準、設備,教育コンテンツを揃えていくことには,なかなか難しい
・ 外国人留学生
- 外国人留学生の数の推移(26枚目のスライド)に学生ビザを使わない短期の留学生は含まれていない
・ 8万人から9万人の留学生が日本語教育機関にいる
・ 次のステップとして大学に進学する,資格を取るといったところをしっかりケアをしていく必要がある
・ そうでなければ,日本の教育の国際的な通用性等も難しくなってくる
○ 土屋委員(元明治大学学長、千葉工業大学特任教授)
- オンライン授業が大学の質保証の中心的な役割を果たす
・ 12年ほど前にMITの宮川繁教授に明治大学に来ていただいて,MITが展開しているオープンコースウエアについてお話を伺った
- 大学のメッセージを社会的に発信することができる
- 受験生や父母に対して大学で今何をやっているかを発信することができる
- 教員相互がそれぞれの授業を見ることができる
・ コロナによってやらざるを得ない状況になって、大学の質保証の最も中核的な部分が,今やっと始まった
- コロナ禍の下で特例的な措置として弾力的な運用を行うことも認められた
・ そうした制限が,限定が,設置基準上,遠隔授業の定義を含めて,どのようにしてやっていくのかはかなりきちっと考えていく必要がある
・ そもそも限定が必要なのかということも含めて考えていく必要がある
- 学部を越えた学位認定
・ 学位名称,あるいはそれぞれの3ポリシーは一体どうなっていくんだろうか
・ 設置基準上もそれについての様々な配慮が必要
- 横につながるように大学が変化しているときに,現在の学部中心的な入学定員の管理方法でいいのか
・ 大学全体を対象とした定員管理へ移っていく必要があるのではないか
・ 日本私立大学連盟も,大学全体を対象にした入学定員の管理に変えるべきであるとしている
- 男女教員比
・ 設置基準に書かれていない
- LGBTを対象にする施設や宗教を問題とするような施設
・ 設置基準上どうしていくのか
○ 長谷川委員(一般社団法人日本経済団体連合会常務理事・SDGs本部長)
- 「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」(産学協議会)の事務局をしている
・ 経団連のトップと国公私立大学のトップで構成される
- Society5.0のニューノーマルを見据えた新しい大学像,大学教育の在り方という視点は非常に重要
・ 現在、多くの企業がニューノーマルの時代の新しい働き方を追求している
・ 今後は,時間やプロセスではなく,成果やアウトプットによる人事評価の方向に変えていこうということが、企業では喫緊の課題
・ そうした流れは,大学教育の質保証の議論とも関係するのではないか
・ グランドデザイン答申で示されたとおり,学生が何を身に付けたか,何ができるようになったかという学修の成果による評価という方向へ変わっていくべき
- 産学協議会が今年3月31日に公表した報告書
・ その中に大学の設置基準に関わる要望が幾つかある
- 大学の定員管理は,学部単位ではなく大学単位で行うべき
・ 定員管理は重要な経営戦略の一部
・ 学部を越えたいろいろな教育プログラムが増えていく
- 特に社会人を対象としたリカレント教育プログラムに関しては企業と大学の柔軟な発想で,いろいろな場所で実施できるようにする方が良い
○ 濱中委員(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)
- 質保証システムを機能させるためには,まず大学人で目的を共有する必要がある
・ 質保証に対する意見というのは,見えている景色によって大きく異なる
・ 余計なことをやっているとか,無駄な仕事を増やしているとか,そのように感じている教員も多い
- 評価のことを分かっている人材を育てることも大事
・ キーパーソンが各大学にいるだけで,状況は全く違ってくる
- 大学教員の生活時間調査もやった方がいい
・ 質保証の基盤に教員の協力,関わりが必要
・ 幾ら制度を整えても,教員が時間的に厳しい,きちんと対応できないほど忙しいということになれば,評価は機能しない
○ 古沢委員(読売新聞東京本社編集委員)
- 事前の規制をある程度重点的に見ていく必要性
・ 18歳人口の減少が見込まれて,企業と異なり新陳代謝が起きにくい
・ 学生のためにも安定的な運営が求められる
- 認証評価の効率化,重点化が必要
- 一定の定員管理とか,ST比の維持向上というのは,是非考えていただきたい
・ 一方で,他大学とか学部との流動性や厳格な成績管理を進める上で,定員がハードルになるという課題を改善する方向でも定員を考えたい
・ 入学定員の超過の運用を見直す必要がある
- 余りに細かく見て大学入試で混乱が生じている
- 情報公表をもっと充実させていく余地というか,可能性がある
・ 大学としての対応にはかなりばらつきがある
○ 宮内委員(神田外語大学長)
- 三菱商事副社長を4年前に退任し,教育界に入った
・ 日本の地位を取り戻すには,リティカルシンキング教育が不可欠
・ 主体的に物事を考えるという人材の育成が,産業界のイノベーションや成長に貢献する
○ 大森委員(共愛学園前橋国際大学長)
- 共愛学園前橋国際大学は収容定員1,000人という非常に小規模な大学
- 自分の役割
・ 大学の現場の声を反映させる
・ 地方小規模大学の立場からの発信
・ 教学マネジメント特別委員会に参加した立場
- 大きいことで悩んでいること(2つ)
・ 一律の質保証システム(設置基準)が,それぞれの大学が目指す役割の質を保証できるのか
- 各大学自らの役割を認識して,結構主体的に機能分化を進めてきている
- 超高度な研究を推進する大学もあれば,地域の未来を創っていく人材を育成している大学もある
・ [大学が社会に臨機に対応していくことができる環境を整えること]と[学生たちを守るために最低限の質を保証すること]のバランス
- 社会の変化と大学の変化のスピード感の齟齬
- その背景に,設置基準を柱とする質保証システムがある
- アフターチェックも含めると,計画から6年とか7年とか掛かって完成をしていく
○ 小林委員(リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長)
- 大学の外から見た視点で話す
・ 情報公表の工夫が必要
- 情報は公開しているんだけれども,非常に分かりづらいとか,比較検討ができないとか,そういったことが言われている
- 入学時の価値が多様化し、偏差値による単独の軸から,卒業段階の多面的な成果が求められてくる
・ 大学ポートレート
- まだまだ浸透していない
- 国が保証しているシステムだと思うが,中身は大学が独自に入れているので,本当かうそか分からない情報がたくさん載っている
・ 認証評価についても,不適合になった大学の何校かは,その情報は載せていない
・ 不適合になる前の自己点検・評価書だけのリンクを載せているというような大学がある
・ 認証評価
- 非常に多大なパワーを掛けて,自己点検・評価,認証評価を受けている
- しかし、社会から見ると,この認証評価って一体何なのかというところが全く分からない
- 認証評価は何を保証しているのか、外から見たときに分かりやすくしていかないといけない
・ 中長期の視点に立った議論が進めていければというふうに思っている
- 2040年に88万人まで人口が減っていったときに,大学の質がこれまでどおり担保,保証されていくのだろうかということがより課題になっていく
○ 林委員(政策研究大学院大学教授)
- 今の大学に来る前は認証評価機関で働いていたので,質保証、認証評価について意見を述べる
- 認証評価
・ 第3サイクルから内部質保証重視という形で大きくかじを切った
・ 今恐らくやるべきは,それをモニタリングすること
- 昔は大学単位のFDをやっているかとかを見ていた
- プログラムと学部あるいは大学という,階層構造の下での質保証が重要だという話に変わってきている
・ 基本的にプログラムごとに3ポリシーを作る
- 教学マネジメント指針も基本的には同じ方向を向いている
・ しかし、ほとんどの大学がそこで考えられているような内部質保証のシステムを作れていない状況
- 認証評価を受ける直前や、訪問調査が来て評価委員と話をすることによって,やっと内部質保証が何かを理解して,内部質保証の体制や手続を何とか決める
・ そのため、質保証や認証評価をどう変えるかという話よりは,認証評価の効果をモニタリングしていくことをすべき
・ 将来的にはリスクベースアプローチに変えていく、メリハリをつける形に変えていく発想
- できているところにはビューロクラティックな負担は避ける
- 今後,そういう仕組みに移行できるかを見るために,今モニタリングをしっかりしていくべき
- 学修成果の質保証のところで,何とかもう少し外部の視点を入れられないか
・ 質保証のところでは,質と水準という二つの言葉を分けて使う
- 質
・ 教育のマネジメントがうまくできているか
- 水準
・ 学修成果のレベルが,例えば学位に適切なレベルになっているか
・ 各大学プログラムが設定している水準レベルになっているか
・ 日本はどちらかというと,マネジメントは見てきたが,学修成果のレベルは見てこなかったという傾向がある
・ オーストラリアの例
- オーストラリアのトップ8の研究大学(グループオブエイト)
・ 大学間で分野ごとに4年目の,日本でいえば卒業論文相当のレポート、審査基準を大学間でチェックし合う
・ 学術的な視点,社会とか専門職団体の視点,学生の視点,それら様々な視点の下で評価がなされていて、内部質保証はその準備としてしっかりとやっている
・ 日本でも、大学の間,社会との間でそのような学修成果を確認する構造ができないか
- 日本はそのような環境がないので,内部質保証をやれと言われても「何のために」というのが出てきてしまう
- コロナの話
・ 教育の革新が進むだろうという面もある
・ 一方で、質保証の観点から検討が必要
- ブレンド教育にすることによって,学修成果の水準が低下していないか
- 学生の満足度が低下していないか
- 実技を含むような教育
- 課程外教育もちゃんと効果が得られるようになっているのか
- 入学前に学生に対面とオンラインでどのくらいの学修,教育をするのかを伝えておく(消費者保護の観点)
○ 前田委員(千葉大学国際教養学部教授)
- 大学設置基準の定員
・ 大学全体の定員とするときには,基準になくても大学自身が一定の水準にあるということを証明できることが前提となる
・ おそらく認証評価ではプログラム単位で細かく見ていけない
- 大学の改善・向上に資する認証評価という視点が必要
・ 認証評価機関は大学の改善・向上に資する視点から認証評価基準を設定している
・ しかし、実際に改善・向上に資する観点から認証評価が行われているかというと、少し弱い
- 何ができていれば内部質保証ができているとするのかということに関して,認証評価機関(5機関)で少し差があるのではないかと危惧
・ 認証評価機関が,どのあたりまで足並みをそろえるのか
- 学修成果重視というが質保証ができているという形を整えるだけになってしまっているのではないか
・ 大学のトップの人たちは理解しているかもしれませんが,教員レベルになると作業だけが伝えられるという状況
・ 大学の中で質を保証するシステムを十分に育てること,大学のためになるのだという理解を浸透させることも,非常に重要
- 大学の中で内部質保証がきちんと育てば,そういうところはかなり楽な認証評価にしてもよいのではないか
○ 吉見委員(東京大学大学院情報学環教授)
- グランドデザイン答申、教学マネジメントに関わった
・ 一連の作業は一貫性があり、一連の改革が向かう先は学修者からの視点に尽きる
- これまでの大学で学修者からの視点を妨げてきた最大の問題は時間の劣化
・ 先生方はいい授業を用意しようにも,忙しくて十分準備ができず、研究も忙しくて集中できない
・ 学生も,10から12の多くのコマに出ていますから,忙しくて出席するのが精いっぱい
- 時間の劣化を何とかしない限り,大学の質保証システムが自主的に機能することはあり得ない
・ 時間の劣化を防止し改善する最大する最重要の出発点
- 一学期に学生が履修する科目数を半分に減らすこと
・ 1科目当たりの単位数は倍にする
・ 週に2回3回,同じ科目に学生が出ていって,同じ先生やTAと議論をする
- 細切れの科目を多く薄く学ぶ体制ではなくて,少なく深く学ぶ科目の形に日本の大学のカリキュラムの基本形を変えていかなければならない
・ 大学教育の中で複線的な学びの仕組みを可能にする
- 知識の在り方が,この21世紀に大きく変わっている
・ 21世紀の大学が目指すべきなのは,19世紀的な国民国家型の大学ではなくて,地球社会型
- 文理を超えて哲学的深みで考えるという,そういう大学を目指すべき
- アメリカのカレッジだったら,メジャー,マイナーとか,ダブルメジャー
・ コロナの話
- 大学が学部や学科で閉じてサイロ化することがよくない
- 風通しをよくするためにはオンラインが有効に機能し得る
- そこで大きな壁として出てくるのは,時間の壁
・ 大学間で地域や国を越えて授業を共通化しようとしても難しい
- 時間割や学事暦がばらばらだったりすると,根本的に時間が合わない
・ 時間のフレイムが違うと,双方向型のオンラインの共同化はできない
・ 国内、国際の標準化が必要
○ 吉岡部会長
- 大学の中あるいは教員たちの中で質保証の目的について意識の共有が必要
- この部会で最終的な報告を作っていくときに必要になる視点
・ 質保証をシステム(認証評価,設置審査)の問題として考えると、行政行為になる
・ 法的な客観性というものが必要になってくる
- 行政行為としての客観性(ある種の外部からの評価)というところがどうしても出てくる
・ それを組み立てながら,大学あるいは教員レベルまでの質保証の考え方を刺激していく
- 学生という存在を大学の構成員としてどう捉えて,それが質保証あるいは自己点検ということの中に組み込めるかというのは重要
・ 学修者の視点ないしは立場を評価の指標にどのように入れるか