ホーム → 大学に関わる情報メモ → 平成25年度第2回FD研究会(公開)「大学生の学ぶ意欲を引き出すジェネリックスキルの育成と評価」
公開日:2013年11月12日
ジェネリックスキルを育成する取り組みの紹介。九州国際大学法学部の事例。[情報収集力 → 情報分析力 → 課題発見力 → 構想力 → 表現力 → 実行力]を入学時から複数回サイクルさせる。ルーブリックで評価する。研修だけで終わらせずに授業と連動させる。客観的な評価で効果を検証する。
ジェネリックスキルの育成について、他大学の事例を知り、学内の取り組みに活かそうと思ったからです。
以前、中央教育審議会の検討会の配布資料を見て、諸外国がどのように教育課程を設計しているかについて知る機会がありました。また、その資料の内容と、これまでに読んだ文献を参考にしながら、ラーニングコモンズで提供する学びをどのように設計すればよいかということをあれこれ考えてみたことがあります[1]。
[1]では「ラーニングコモンズで生じてほしい学びを設計していくときの過程」について
① どのような力を身につけてもらいたいか
② その力を身につけるためにはどのような取り組みが効果的か
③ 力が身についたかをどのように評価するか
④ 具体的に運用していくためにはどうすればよいか
がよいのではないかと考えました。
今回の研究会で紹介されていた内容はラーニングコモンズでの事例ではありませんが、ラーニングコモンズでジェネリックスキルを育成・評価しようとしている状況であれば、上記①~④をどのように進めていくだろうかと想定しながら、お話を伺いました。
※ 以下の内容は当日の配布資料のうち、橋本がとくに関心を持ったところをまとめています
- グローバル化が進むことで大学の役割が変わった
・ 高卒職が海外に移転し、国内の求人数が減った
・ その層が大学に進学している
- 現在の学生の特徴
・ モチベーションが低い学生が増えている
- 自由履修制度は自律性が高い学生を想定している
- しかし自律性が高くないので、楽な授業に集まる
・ 入試という競争の経験を持たずに大学に入ってきている学生がいる
- そのため従来の知識量を前提とした教育をしてもうまくいかない
・ 就職できない学生よりも、就職しない学生が多い
- 社会で必要な力
・ 日本ではジェネリックスキル・社会人基礎力・学士力など様々な力が必要と言われている
・ その力は日本だけが言っているのではなく、世界でも言われている
- OECDのキーコンピテンシーなど
・ 従来は大学の教育の中で副産物として身についていたが、現在は意識的に教育する必要がある
・ その力は大学の間だけではなく、生涯を通して必要になる
- リテラシーのプロセス
・ リテラシー=問題を解決するために知識を使いこなせる力
・ ジェネリックスキルでもあり、アカデミックスキルの要素でもある
- よって大学でリテラシーを学ぶと卒論などが書けるだけではなく、社会でも役に立つ
・ 情報収集力 → 情報分析力 → 課題発見力 → 構想力 → 表現力 → 実行力 → …(サイクル)…
- 河合塾「リテラシーマップ」を参考にしている
・ 九州国際大学法学部では入学時から複数回サイクルさせている
- 一般的な大学の教育では4年間で1サイクル
- ジェネリックスキルを育成する取り組みの紹介
・ 体験型の教育プログラム(チーム作り研修;Project Adventure)
- その後の授業と連動していないと効果は出ない
- 研修のときだけ盛り上がって終わり、ではいけない
・ オフキャンパス研修
- ある課題に対してリテラシーのサイクルを行った上で、最終的にプレゼンテーションを行う
- 全てグループワークで行う
・ 教員チームも作る
- 1チームに評価者を1人つける
・ 評価者は担当するチームのグループワークを全て観察する
- ルーブリックで評価する(チェックリストでも代用できる)
・ 学生はルーブリック通りにしっかり作り込んでくる
・ 型通りになるという面があるが、何をすべきかという目標を理解できていることがわかる
・ 研修だけで終わらせず、授業と連動させる
※ ひつじ書房から出版予定の『大学生のための日本語リテラシー』(仮題)で事例を紹介
- 3コマを1ユニットとして行う
・ ライティングを情報分析 → 課題発見 → 構想 → 表現のプロセスで段階的に習得
・ 句読点がきちんと書けない学生でも段階を追っていけば、しっかり書けるようになる
・ 大学生の成長の可能性はすごい
- 4名の教員で担当する
- グループワークで行う
- ルーブリックで評価する
- ジェネリックスキルの客観的な評価
・ PROGテストを使っている
- テストにはコンピテンシーとリテラシーの2種類がある
- 学校法人河合塾と株式会社リアセックが開発したもの
・ 九州国際大学法学部では学年が上るごとにPROGテストの点数が高くなっている
- そのため、法学部での取り組みの成果が出ていると考えている
学内の取り組みに活かせそうな情報をたくさん得ることができました。とくに、上記①~④に関連して思ったことは以下の通りです。
[1]では上記①「どのような力を身につけてもらいたいか」について、学びを設計していくときに学びを支援するスタッフ・教員がAP・CP・DPを共有していることが重要になりそうと考えました。山本先生のお話でも、ジェネリックスキルの育成は少数の教員だけでできるものではなく、全ての授業が同じ方向を目指していることが大切だと説明されていました。
[1]では上記②「その力を身につけるためにはどのような取り組みが効果的か」について、1つの方法としてジグソー法が使えるのではと考えました。山本先生が紹介されていた事例でも、研修のプログラムにジグソー法が取り入れられていました。実際に山本先生がジグソー法の部分を担当されているということでしたので、研究会終了後にいろいろと教えていただきました。[学生のチームだけではなく教員のチームも作って教員にリテラシー育成のサイクルを経験してもらう]、[個人の資料読解と専門家会議(同じ資料を担当する者が集まって行う)に時間を多めに設定する]という工夫をされているとのことでした。
[1]では上記③「力が身についたかをどのように評価するか」について、ルーブリックが役に立ちそうと考えました。山本先生のお話でも、ルーブリックを使うことで[取り組みで目指している力を理解してもらえる]、[評価のばらつきをなくす効果がある]と説明されていました。
[1]では上記④「具体的に運用していくためにはどうすればよいか」について、試行的な実践を行い、結果を考察して改善していくことが重要と考えました。山本先生のお話でも、取り組みは最初からうまくいったわけではなく、段々とよいものになってきたと仰っていました。
[1]で考えたようなことが具体的な形で取り組まれていたので、学内の取り組みを考えて行く上でとても参考になりました。