ホーム → 大学に関わる情報メモ → 新大学評価システムガイドブック:平成23年度以降の大学評価システムの概要
公開日:2014年10月28日
平成23 年度から始まる[第二期の認証評価用の新評価基準・評価項目]について解説。これまでの認証評価と大きく異なり、PDCAサイクルが適切に機能しているかが問われる。質保証のためには外的質保証だけでなく内部質保証も必要。自己点検・評価はそれ自体が目的ではなく、結果を改革・改善へつなげることが重要。新評価基準・評価項目の改定にあたり、従来の評価項目の数を大幅に削減した。新たな評価システムは評価基準・評価項目・評価の視点の3つで構成される。「評価基準」は10の基準。「評価項目」は可能な限り方針・現状・検証・改善の流れが分かるようにする。「評価の視点」は点検・評価のための手掛かりや根拠となるもので、それ自体は評価の対象となるものではない。
業務で認証評価の報告書の作成に関わっているため、基礎的な知識を得ようと思い、資料を読むことにしました。
■ 認証評価の新展開
- 平成23 年度から第二期の認証評価が始まる
- 各大学は自己点検・評価を改革・改善に繋げる内部質保証システムの構築を強く求められるようになる
○内部質保証システム構築への期待
- 大学教育の国際化・流動化 → 質保証システムの整備が課題
・ 大学の国際的信頼性を維持
・ 認証評価制度は、そのための仕組みの一つ
- 全ての大学に認証評価機関の評価を義務づける制度
- 外的質保証システムによる質保証
・ 設置基準・設置認可審査・認証評価の厳格化
- 内部質保証システムの構築も必要
・ 自らの責任で大学の諸活動についての自己点検・評価を行う
・ その結果をもとに改革・改善に努める
・ そのことを通じて、大学の質を自ら保証する
○自己点検・評価と認証評価の関係
- 「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について(答申)」(平成14年8月、中央教育審議会)
- 認証評価制度は、この提言等を受けて平成16年度より導入された
・ 文部科学大臣が認証した評価団体(認証評価機関)が、各大学からの申請に基づき、認証評価機関が定める基準に照らして当該大学を評価する
- 準備する大学側にとっても、評価する機関側にとっても、多大な負担が課せられることに繋がっているのが現実
・ 評価基準及び評価項目の大綱化を図り、自己点検・評価に関わる作業の簡素化・効率化を進めることが喫緊の課題となっている
○内部質保証システムの輪郭
- 自己点検・評価はそれ自体が目的ではない
・ 結果を改革・改善へつなげることが重要
- 内部質保証システムを構築する際の重要な点
・ 目標・計画を明確にする
・ それを構成員が共有し、実現に向けて真摯な努力を重ねる
・ 適切な評価によるフィードバックをもとに、目標・計画に修正を加える
- 自己点検・評価とは、自らが定めた目標と実績との「差異分析」が基本
・ 目標が抽象的であったり、計画が曖昧であったりすれば、評価のための基準が不明確になる
- 各申請大学は、PDCAスパイラルが連綿と続いていることを可能な限り説得力のある根拠をもとに証明する必要がある
■ 大学基準協会の新たな評価システム
- 大学基準協会では、評価項目の大幅な削減を目指した新たな評価システムの構築を行っている
○改定に当たっての基本姿勢
- 第二期の認証評価用の新評価基準・評価項目を改訂する際の基本方針
・ 評価について「されるもの」ではなく、自らの意思で「行うもの」であるという意識の定着を図る
・ 自己点検・評価の質を向上させ、自らの判断と責任において評価結果を改革・改善に繋げる内部質保証システムの構築を支援する
・ 大学にとっても評価機関にとっても、評価に係わる負担を可能な限り軽減させる
- 多岐に渡って設定されてきた従来の評価項目の数を大幅に削減する
- 認証評価の目的
・ 本協会の大学評価の目的
- 本協会が定める大学基準等に適合していることをもって、社会に対しその質を保証すること
- 当該大学に設置される学部・研究科等を含む大学全体の改善を継続的に支援すること
・ 新たな評価システムで重視すること
- 自己点検・評価体制が整備され、確実に機能していること
- 自己点検・評価に基づく改革・改善が着実に実行されること
- 自己点検・評価における自己評価が、妥当なものであること
- 新たな評価システムの構造と意味
・ 評価基準
- 大学基準に基づく
- 評価するための基軸として10 の「評価基準」を設定
・ 評価項目
- 各評価基準ごとに設定される
- 「評価基準」に適合しているかどうかを判断するために設ける
- 包括的・基本的な内容のものとする
・ 従来のものと較べ、評価項目数の大幅な削減を図る
・ 評価の視点
- 評価項目を適切に評価するための事例を列記
・ 例示されているもの以外でも「評価項目」を評価するに際して客観的な論拠となるものであれば、各大学が独自に設定してもかまわない
- 「評価項目」は、評価の対象となる事項
- 大学は各事項に関し、現況のみならず、PDCAサイクルが円滑に機能しているかどうかを中心に自己点検・評価を行う
- 点検・評価のための手掛かりや根拠となるもので、それ自体は評価の対象となるものではない
- どのような視点から「評価項目」が評価されるかについて、関係者間の共通理解を図るためのもの
- 必須要件と思われるものに関しては、その根拠となる法令等を示す
・ 根拠となる法令
- 教育基本法
- 学校教育法
- 学校教育方法施行規則
- 学位規則
- 大学設置基準
- 大学院設置基準
- 専門職大学院
- 設置基準
- 告示
・ それ以外のものは、どの視点を点検・評価の手段として採用するかは各大学の裁量に委ねる
- 「評価基準」
・ これまでの15の基準を整理・統合し、以下の10の基準に改定した
- 理念・目的
- 教育研究組織
- 教員・教員組織
- 教育内容・方法・成果
- 学生の受け入れ
- 学生支援
- 教育研究等環境
- 社会連携・社会貢献
- 管理運営・財務
- 内部質保証
- 「評価項目」
・ 全体として50項目以下に集約した
・ この評価項目が認証評価の対象となる項目
・ 同時に、自己点検・評価の項目として求められているもの
・ これまでの評価項目数を大幅に削減するため、高等教育機関としての活動を適切に評価する上で基本となる重要事項に絞る
・ 包括的な内容表現となるため、「評価の視点」を例示する
- それによって「評価項目」の意味する具体的な内容が分かるようにする
・ 設定に当たっては、それぞれの「評価項目」について、可能な限り、「方針」「現状」「検証」「改善」の流れが分かるように設定する
- それによってPDCAサイクルが機能しているかどうかを評価できるよう配慮する
・ 「国際化」
- 意味する内容が多面的
- そのため、独自の「評価基準」は勿論、単独の「評価項目」としては設定しない
・ 関係する各評価項目の中で適宜評価できるようにする
- 「評価の視点」
・ それ自体が認証評価の対象となるものではない
・ 評価項目の意味や内容を理解し、評価する際の手掛かりや根拠となる事項を例示したもの
・ あらかじめ自己点検の対象として位置づけ、それを基に自己評価を行えば、認証評価の申請の際にも有用
・ 各大学が「評価項目」について自己点検・評価する際の視点
・ 適切な自己点検・評価を行う上での手段もしくは論拠
・ 例示された「評価の視点」は、全ての大学が一律に依拠すべきものではなく、取捨選択は基本的に大学の裁量に委ねられる
- ただし、法令等に規定されているものに関しては、自己点検・評価の対象としなければならない
○評価基準―意味と説明―
- 理念・目的
・ 「大学は、その理念に基づき、人材養成の目的、その他の教育研究上の目的を適切に設定し、公表しなければならない」
- 理念:大学はこうあるべきだという根本思想
- 目的:理念を踏まえて、大学が目指す基本的方向性を示すもの
- 理念・目的を定めるに当たっては、大学に期待されている使命を自覚し、その実現可能性に留意する必要がある
- 教育研究組織
・ 「大学は、その理念・目的を踏まえて、適切な教育研究組織を整備しなければならない」
- 教育研究体制とは、学部・研究科といった伝統的な組織形態のみならず、各大学の自主的な判断で採用している多様な教育研究推進の仕組みも包摂した概念
- 教員・教員組織
・ 「大学は、その理念・目的を実現するために、求める教員像や教員組織の編制方針を明確にし、適切な教員組織を整備しなければならない」
- 大学教育の成否は、教育組織の適切さと同様、組織を構成する教員個人の資質・能力・態度といった個人的要因によって左右される面が少なくない
- 今回の改定では、その点を強調した
- 教育内容・方法・成果
・ 「大学は、その理念・目的を実現するために、教育目標を定め、それに基づき学位授与方針および教育課程の編成・実施方針を明示しなければならない。また、こうした方針に則して、十分な教育上の成果を上げるための教育内容と方法を整備・充実させ、学位授与を適切に行わなければならない」
- 教育内容・方法に加え、教育目標・学位授与方針および教育成果を掲げた
- 教育課程の修了が、十分に質を保証した学位の授与と繋がるためには、教育内容・方法の工夫と改善に加え、確かな教育成果と結びつくことが重要
- 学生の受け入れ
・ 「大学は、その理念・目的を実現するために、学生の受け入れ方針を明示し、その方針に沿って公正な受け入れを行わなければならない」
- 方針を定めるに当たって必要なこと
・ 学生に学習の機会を提供する
・ 大学が求める学生像を明確にする
・ それらによって、教育課程の履修が十分可能であることを確かめる
- 学生支援
・ 「大学は、学生が学修に専念できるよう、修学支援、生活支援および進路支援を適切に行わなければならない」
- 大学は、学生の修学の場であると同時に、生活の場でもある
- これまでの基準では、学生生活となっていた
- 学生が円滑な学生生活を営むための支援の内容を具体的に示した
- 教育研究等環境
・ 「大学は、学生の学修ならびに教員による教育研究活動を必要かつ十分に行えるよう、学習環境や教育研究環境を整備し、これを適切に管理運営しなければならない」
- 教育研究等環境に含まれるものは多岐にわたる
・ キャンパス・校舎
・ 施設・設備
・ 図書館の充実や学術情報等の電子化とネットワークの整備
・ 教員が研究活動を行う場と時間の確保
・ 教育研究を推進するための人的・物的・資金的サポート体制 など
- 社会連携・社会貢献
・ 「大学は、社会との連携と協力に配慮し、教育研究の成果を広く社会に還元しなければならない」
- グローバル化が進んでいる今日、地球規模での社会連携・社会貢献が求められている
- 知的資源を通して企業・団体、地域等との連携・協力を進め、社会的存在感を高める必要がある
- 自らが創出した知識や技術を社会に積極的に還元する必要がある
- 管理運営・財務
・ 「大学は、その機能を円滑かつ十分に発揮するために、明文化された規定に基づき適切な管理運営を行わなければならない。また、教育研究を支援し、それを維持・向上させるために、適切な事務組織を設置するとともに、必要かつ十分な財政的基盤を確立し、財務を適切に行なわなければならない」
- 管理運営に求められること
・ 組織としての意思決定システムの整備、人的・物的・資金的な管理と適切な運用
・ 経営戦略の策定に向けた調査・分析・企画立案といった機能
- 内部質保証
・ 「大学は、その理念・目的を実現するために、教育の質を保証する制度を整備し、定期的に点検・評価を行い、大学の現況を公表しなければならない」
- 大学が自律的な存在として機能するために必要なこと
・ 自らの活動を点検・評価し、その結果を公開する
・ 改革・改善を行うことのできる組織となる
○評価項目と評価の視点―内容と補足―
※ 評価の視点について補足説明を記載(本ページでは「内部質保証」の箇所のみ転載)
- 内部質保証
[評価基準]大学の諸活動について点検・評価を行い、その結果を公表することで社会に対する説明責任を果たしているか
[評価項目]自己点検・評価の実施と結果の公表
[評価項目]情報公開の内容・方法の適切性、情報公開請求への対応
[評価基準]内部質保証に関するシステムを整備しているか
[評価項目]内部質保証の方針と手続きの明確化
※補足説明:PDCAサイクルの学内整備状況
[評価項目]内部質保証を掌る組織の整備
※補足説明:評価・企画室等の設置
[評価項目]自己点検・評価を改革・改善に繋げるシステムの確立
※補足説明:評価機能と計画機能の有機的連携
[評価項目]構成員のコンプライアンス(法令・モラルの遵守)意識の徹底
※補足説明:行動規範パンフレット作成・配布
[評価基準]内部質保証システムを適切に機能させているか
[評価項目]組織レベル・個人レベルでの自己点検・評価活動の充実
※補足説明:定期的点検・評価と日常的点検・評価
※補足説明:自己・点検マニュアルの作成・配布
※補足説明:アカデミック・ポートフォリオの活用
[評価項目]教育研究活動のデータ・ベース化の推進
※補足説明:基礎データの組織的・継続的収集と管理
※補足説明:大学沿革史の編纂
※補足説明:大学文書の保存と活用
[評価項目]学外者の意見の反映
※補足説明:第三者評価・外部評価の導入
※補足説明:意見を反映させる仕組みの整備
[評価項目]文部科学省および認証評価機関等からの指摘事項への対応
○新大学評価システムについての「Q&A」
- これまでの認証評価と大きく違う点
⇒ PDCAサイクルが適切に機能しているかに焦点を当てている
- 従来の認証評価と比べて厳しくなるのか
⇒ 受審するだけでよかった認証評価から確実な質保証が求められる認証評価へ変わっていけば、認証評価は厳しいと感じる大学が増えるかもしれない
- 内部質保証システムの構築=自己点検・評価体制の充実か
⇒ 点検・評価の結果を改革・改善に確実に繋げることが大切
- 評価の具体的な視点を教えてほしい
⇒ 客観的な事実に基づき、自らが設定した「目標との照合」を行いながら点検することが重要
- 保証すべき大学の質とは何か
⇒ 社会が一般的に期待している学習成果を基礎要件とし、国際的に通用性のある教育研究が行われていることを目ざしながら、大学が掲げる理念・目的が達成されていること
- 評価システム全体における評価の視点の位置づけを教えてほしい
⇒ 大学が評価項目について適切に自己評価を行うための重要な視点・観点を示したもの(抽象的でわかりにくい場合は本資料の補足説明事項を参照)
- 例示された全ての評価の視点を組み込んで評価しないといけないのか
⇒ 評価の視点は、評価の際の手掛かりとなるものであり、あくまでも例示(ただし、法令等で履行が求められている事項に関しては、必ず自己点検の対象とし、自己評価に反映させなければならない)
- 各評価基準ごとに自己評価の結果を評定値で示す際、何を基準に評定すればよいのか
⇒ 各評価基準に含まれる評価項目に示されている内容が、適切に実行されているかを各評価基準ごとにABCDの4段階で評定する
- A:適切であることの判断根拠が明確で、確実に実行できていることが証明できる場合に限られる
- B:概ね適切であると判断できる場合
- C:必ずしも十分とは言えない場合
- D:評価項目の内容と関連する法令等の遵守事項が守られていない場合
※ 「2014(平成26)年度大学評価実務説明会配布資料」ではSABCの4段階となっています(橋本の注)
- シラバスの重要性は教員・学問分野によって受け止め方に温度差があることをどう考えればよいか
⇒ 予習ができるシラバスの記載がされているかどうかが大切(各回の授業内容の記載という形式のみが必要以上に強調されているきらいがある)
- 教育目標と学位授与方針はどのように区別すればよいか
⇒ 教育目標は、各課程の最終的な教育目標の達成を求める学位授与方針より、一般的で汎用性の高い概念として位置づけられている
- 学部・研究科等を対象とした専門分野別評価が認証評価の対象となる可能性はあるか(専門職大学院については専門分野別評価が認証評価になっている)
⇒ 今後、分野別評価が全ての学部や研究科に義務づけられるかどうかは、今のところは全く不明
■ 参考資料
- 「大学基準」およびその解説
- 「大学基準」およびその解説 新旧対照表
- 点検・評価項目
- 点検・評価項目 新旧対照表