ホーム → 大学に関わる情報メモ → 教学マネジメント特別委員会(第5回)議事録
公開日:2019年9月9日
議事は,①成績評価に関する取り組み紹介(横浜国立大学),②授業科目・教育課程の編成についての議論(前回の続き),③成績評価についての議論,④学生調査についての説明(文部科学省)と意見交換。
①成績評価に関する取り組み紹介(横浜国立大学)。授業設計と成績評価のガイドラインについて説明。シラバスを作成するときに,履修目標(授業のねらい)と到達目標(最低限学生が身につける内容)設定し,それらを通して授業内容のレベルと成績評価の基準を設定する。ガイドラインは6項目から成る(序文,授業改善のPDCAサイクル,成績評価の基準の統一,授業別ルーブリック,教員間協議の励行,除外科目)。授業別ルーブリックのサンプルを作って教員の作成負担を軽減。ガイドライン導入後は授業別ルーブリック作成状況の把握や成績分布の変化の分析を行って効果検証をしている。ガイドラインの導入は2016年度からであり,授業別ルーブリックの厳格な調整はまだできていない。
②授業科目・教育課程の編成についての議論(前回の続き)。シラバス,CAP制は授業科目・教育課程編成という全体における部分にあたる。部分の改善には限界があるため,授業科目・教育課程編成の中で根本的な問題は何なのかを考えておくことが重要。1学期に履修する授業科目数が多過ぎる。一方,学びの深さと広さをどのように両立させるかも理念としては追求していくべき。分野別参照基準を参照して教育課程を編成し,学修成果の達成に向けて具体的に授業科目を展開していくことは,どの学問分野でも現状できていない。カリキュラム・マッピングの導入により,カリキュラムの順次性を確認できるようになるとともに,全体の科目数の話や,接続の問題に展望が開けるのではないか。
③成績評価についての議論。教学マネジメントを進めている現場とこの委員会での議論には距離がある大学もある。 GPAは授業科目の総体として出てくる評価点数であり,GPAの一つの得点に何かしら意義をつけていくのは難しいため,GPAで質保証を行うのは難しい。DPに基づく各授業の成績評価を学部や大学でどうのようにして組織的に行うかが重要。シラバスの到達目標に立派なものを書いているが,実際は一部の知識再現型の試験しかやっていないことがよくある。そのような成績評価の積み重ねで担保されたDPには何の意味もない。政策上の議論からは「履修主義」と「修得主義」という両方のメッセージが出ており,整理が必要。シラバス上での授業時間外学習はあくまで標準時間であり,優秀な学生が短時間で課題を達成することもある。いろいろな教育方法がミックスされて授業が展開されている時代でもあり,大学設置基準の規定を検討する必要があるのではないか。日本の参照基準は,イギリスを参考にして構築されてきた。イギリスでは[研究大学]にも[実践的な職業教育を目指してきた大学]にも適用される水準に関して合意がある。日本の高等教育コミュニティは参照基準の使い方についての知識を持ち合わせているとは言えない。シラバスは,少なくとも学問分野や学部学科のレベルで責任を持って書くべきだというところまで踏み込んで書いてもいい。同一名称の科目を複数開講している場合,成績評価基準を厳格化しようとすると授業の内容のみならず,課題,使用する教材なども統一していかないと,なかなか評価の基準がそろわない。全国51の高等専門学校では,それぞれが全国統一であるモデルコアカリキュラムに基づいたシラバスを作成している。
④学生調査についての説明(文部科学省)と意見交換。グランドデザイン答申に学生調査を進めていくことが書かれている。学生目線で大学教育や学びに関する調査を行う。学生の経験(プロセス)を確認する調査。学生が勉強していない,大学が学生を育てていないという社会の声に対して,実際の状況をきちんと説明していく。高校生や保護者はそれぞれの大学の教育がわかる。大学は教育改善に活用する。国は政策のエビデンスに活用。試行時の対象は3年次。検討事項…大学・学部ごとの集計結果の公表。認証評価におけるエビデンスデータとしての活用。各大学の既存の学生調査との棲み分け。調査結果を公表する場合の基準。通信教育や夜間部,短期大学を対象とするか。実施時期,サイクル。その他。説明に対する意見や質問等…高校生・保護者にとって一番身近な1年生のデータも必要ではないか。大学側から見ると1年と3年の変化が見えないため改善の成果を検証することができない。伸びを見るのであれば1年生と4年生をとる形もあり得る。設問は間接評価なので,身についた能力を知るのは困難。結果公表の際,設問の細かい文言は全部抜け落ちて数字が独り歩きする懸念があり,もう少し慎重に議論する必要がある。成長実感が問えるような質問が入ってくるとよいのではないか。
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 本日の議事
・ 成績評価に関する取り組み紹介(横浜国立大学)と,質疑応答
・ 授業科目・教育課程の編成について議論(前回十分に議論の時間を確保できなかった)
・ 成績評価について議論
・ 学生調査についての説明(文部科学省),意見交換
○ 安野氏(横浜国立大学高大接続・全学教育推進センター准教授)
- 授業設計と成績評価のガイドラインについて説明する
- 大学の紹介
・ 1キャンパスに5学部
・ 学部生が約7,500名,教員が600名
・ 2014年度に大学教育再生加速プログラム(テーマⅡ)に採択された
- 学生の主体的な学びのデザインをコンセプトに事業を展開している
- Phase1からPhase4で構成されている中のPhase1が授業設計方法と成績評価の改善
・ 今回話をするガイドラインを運用している
- Phase1で用いているガイドラインの説明
・ 授業改善のPDCAサイクルの実質化
・ 学生の主体的な学びの促進
・ 成績評価の基準を全学で統一し,各教員が授業ごとに授業別ルーブリックを作成する
- ガイドライン導入の背景と経緯
・ 導入前の成績評価の区分と基準
- 秀,優,良,可,不可
- それぞれに対して評価基準の文章を簡単に書いていた
・ 例:秀「履修目標を十分達成しており,さらに履修目標を上回る成績をおさめていること(成績上位10%程度が秀になるように履修目標の水準を設定することが望ましい)」
・ 2012年度にガイドラインの議論が始まった
- 教務厚生部会で秀率や不可率の高い科目が散見されるという問題点が指摘された
・ 教員の間で成績評価の統一した認識が必要であるという認識に立った
- 成績評価のガイドラインを検討するワーキングが発足
・ 2013年度にガイドラインのたたき台を策定した
- たたき台では2つの提案を行った
・ 全学で統一の成績評価基準表を作成する
- 秀から不可の位置づけを明示する
- それにより,教員間の成績評価に対する統一した認識を得る
・ 各教員が科目ごとに授業別ルーブリックを作成する
- 授業の評価項目とその評価基準を明示する
- それにより,担当教員と学生の間で授業内容と成績評価に対する認識を共通化する
- 授業設計の重要性を示すためにガイドラインの名称にあえて「授業設計」という言葉を入れた
・ シラバスを作成するときに,履修目標と到達目標を設定し,それらを通して授業内容のレベルと成績評価の基準を設定する
・ 授業設計時に定めた目標や基準に従って成績評価を行った結果,成績の分布に偏りが出た場合
- そのときに分布を調整するのではなく,次の授業で改善する
- 例えば,秀が多かった場合は履修目標を上げ,不可が多かった場合は到達目標は変えずに学生の理解が深まるような授業内容を検討する
- 各部局にたたき台を提示して意見を収集した
・ 2014年度にルーブリックの説明会を行った
- センターの教員が各部局を回って説明を行い,理解してもらった
・ 2015年度に授業設計と成績評価のガイドラインの導入が決定した
- ガイドラインの具体的な内容
・ ガイドラインは6項目から成り立っている
1.序文
・ 「優秀な学生が成長する」が重要
・ ガイドライン導入の背景に秀率や不可率が多いということがあった
・ 本当は秀を与えるべきではない学生も秀をもらっていた
・ 秀をもらうべき学生の学習意欲を削ぐ可能性があった
2.授業改善のPDCAサイクル
・ 授業設計のときに授業の目標等々を設定する
・ 授業を実施する
・ 成績評価を行う
・ 成績評価の段階で成績分布に偏りが出れば,次年度の授業に向けて改善する
3.成績評価の基準の統一
・ 授業で扱う内容(授業のねらい)を示す内容を「履修目標」とする
- 達成していれば成績評価は「優」以上とする
・ 授業において最低限学生が身につける内容を示す目標を「到達目標」とする
- 達成していれば成績評価は「可」以上とする
4.授業別ルーブリック
・ 評価項目(評価項目の観点)×評価項目に対する到達度
- 評価項目に書く内容は履修目標に書いている内容とするようお願いしている
- 到達度「十分に満足できる」が履修目標で記述している内容に相当
- 到達度「努力を要する」が到達目標で記述している内容に相当
・ 授業の学期前,もしくは授業の第1回目の時にルーブリックを学生に示すようにお願いしている
- 教員,学生がルーブリックの内容をお互いに分かっていることが重要
- ルーブリックに基づいて学生が自発的に学修してもらえることを期待
5.教員間協議の励行
・ 同一科目を複数教員で担当する場合や,オムニバス形式科目の場合は,担当教員間で協議をして設定をする
6.除外科目
・ 能力別編成クラスでや,少人数科目は,ガイドラインを柔軟に適用する
- 成績評価基準表と授業別ルーブリックのねらい
・ 成績評価基準表
- GPAの質保証につながる
・ 学生が秀の水準を認識し,自発的な学修を促す効果がある
・ 授業別ルーブリック
- 学生が授業で履修する項目と水準を認識することができる
- 授業に適した自発的な学修を促す効果がある
- ガイドラインの運用状況
・ 2015年度
- ガイドラインの導入を決めた
- 翌年度用の履修案内に成績評価の基準表とその説明文を記載した
- 翌年度の開講科目のシラバス入力のときにガイドラインに基づいてシラバスを作成するよう依頼した
- ルーブリック作成マニュアルを作り,提示した
- コモンルーブリックを作り,提示した
・ 科目の形態を踏まえたルーブリックのサンプル
・ 講義用,演習用,実験用,調査研究用,レポート採点用,コメントシート/振り返りシート/大福帳用
・ シラバス作成画面からコピー&ペーストで利用できるようにして,教員の作成負担を軽減した
・ 2016年度
- ガイドラインを導入した
- 教員はガイドラインに従い,シラバスをもとに成績評価を行った
- センター教員は教授会の前にFDセミナーを行った
・ 各部局の教員にガイドラインや授業別ルーブリックの説明や活用方法を説明した
・ 2017年度以降
- 授業別ルーブリック作成状況の把握や成績分布の変化の分析を行っている
・ 経年変化のグラフ紹介
- 学内のGPA利活用の例
・ 卒業要件として全学共通で2.0以上
・ CAP緩和の基準に一部の学部が使っている
・ 成績不振学生基準
・ 早期卒業要件
・ 学生に対しては学生ポートフォリオでGPAを公開している
- 本人が所属している学部および学年のGPAの分布のグラフも表示
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- ここからは質疑応答
○ 沖委員(立命館大学教育開発推進機構教授)
- コモンルーブリックは授業別ルーブリックのひな形と考えていいか,採点用ルーブリックはどのようにしているか
⇒ 資料p.24①~④がいわゆる授業別ルーブリック。⑤が採点用ルーブリック。
- 本当に先生たちは授業別ルーブリックを使って評価項目別にきちんと成績評価をつけているのか,点検はどうなっているか
⇒ 教員アンケートを実施した結果,回答した3割のうちの6割が授業別ルーブリックを作成していると回答,それ以外の教員は採点用のルーブリックを作成
・ つまり,全員が授業別ルーブリックを使っているわけではなく,授業別ルーブリックをもとに採点をしているというわけでもない
・ 授業別ルーブリックはあくまでも目安
・ 重要なのは学生の主体的な学びを促すこと
・ 正直なところがっちり成績をつけるというものではない
○ 浅野委員(山形大学学術研究院教授,名古屋大学IR本部特任教授)
- 学位授与方針と到達目標とをどのように整合させているのか
⇒ 学部ごとにカリキュラム・マップ,カリキュラムツリーを作り,教務委員長等が点検する
- ルーブリックを導入前に実施するノーミングをどのように行っているのか
・ ルーブリックもGPA同様,段階判定になるところがある
・ アメリカの事例では必ずノーミング・セッションをしている
・ 全学的に導入するにあたって,この段階は大体これぐらいの範囲だという合意を得ない限りは,運用時に振れ幅が出ることが懸念される
⇒ ルーブリックを作るようになったのは2016年度から。厳格な調整はまだできていないのが正直なところ。
○ 大森委員(共愛学園前橋国際大学学長)
- 授業別ルーブリック
・ ルーブリックだけで評価して素点を出すという理解でよいか
⇒ 基本的には,まずテストやレポートで点数で出し(100点満点),レンジに則って成績評価(秀や優など)をつけるのが基本
・ 非常勤の先生方とはどのように協議をしているのか
⇒ 非常勤の先生は部局ごとに所属されている。センターが各部局に対して説明文など文書を作成して配付。常勤も非常勤も必ず徹底して理解してもらうようにしている。
- 成績評価の分布
・ 絶対評価か相対評価か(全員が秀をよしとするか)
⇒ ガイドラインやルーブリック導入の際に議論があった。本学の場合は,履修目標を超えて主体的に学んでいる学生に秀をつけよう,そのような学生の育成を目指して授業をやっていこうという考え方。絶対評価・相対評価に関することは,個人的にははっきりと回答できない。
○ 森委員(関西大学教育推進部教授)
- 絶対評価と相対評価
・ 教員間の成績評価のばらつきは修正していかなくてはならない
・ しかし,学生の成績のばらつきは問題ないだろうと思っている
・ 基準をしっかり決めた上で,成績に偏りがあるのは当然のこと
・ 操作をするほうが,学生の学びにとって有益ではないと思っている
-横浜国立大学の取り組みの効果をどのように測るか
・ システム導入の目的が学生の主体性を促進することが目的であれば,学生が主体的であったのかについてのデータがあればよかった
- GPAが下がってきたからオーケーということではないだろうと思う
- 多分授業評価アンケート等で学生からの評価が得られているはず
○ 松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
- 成績評価分布の経年変化
・ 平均を使ってあまり変化がないということだったが,各科目間のばらつきも変化がないのか
⇒ 教員ごと,クラス規模ごとでばらつきの状況は異なる
- ルーブリック
・ 評価課題についてはどうなっているか
- 評価ではルーブリックとあわせてアサインメント,評価課題としてどういうものを使うかということがとても重要
- ルーブリックの妥当性は評価課題との関係でしか語れない
⇒ 評価課題とルーブリックを非常に意識して紐付けているという先生はいる
・ 評価観点,項目をどのように設定するかを全学的に,あるいは,部局の教員で議論したりするといったことはあったか
- ルーブリックの評価項目をどのように立てるかというところで議論があったか
- ルーブリックの研究だとそこが一番議論になる
- 今日はレベルをそろえるというお話が主だった
⇒ 科目特性に応じて先生の方で優のレベルになるように作ってくださいとお願いしているだけ
○ 深堀委員(九州大学教育改革推進本部教授)
- 安野先生の御提案を受けて,国のレベルでどのような議論ができるのか,考えを整理してみたい
- ノーミング・セッションがなければ何をもって成績評価で「履修目標を達成している」と見なすのか共通理解をもつことができない
・ 授業科目を超えて,先生方が具体的な課題と採点基準を持ち寄って共同で検討し見てみなければ,客観性を確保することは,結局は不可能
- 質保証の観点からは,個別の大学のレベルを超えて国のレベルで各学位段階の水準をどう考えていくのか,大学を超えたノーミング・セッションで考えていく必要がある
・ その議論を抜きにして,各大学が成績評価をどうするべきだというような議論を行うことは,差し控えるべきではないか
・ それぞれの大学で,すべての学生が「優」や「秀」を達成できるように目指すことは,教育の当然の目標ではある
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 安野先生の御発表と質疑応答はここで終わり
- ここからは授業科目・教育課程の編成について議論。まずは事務局から資料を説明する。
○ 平野大学改革推進室長
- 資料1
・ 前回の資料と同じ
- 資料2
・ 前回に出された主な意見
- 指針全体に関する意見
- 授業科目・教育課程の編成に関する意見
- 資料3
・ 成績評価に関する議論のたたき台
・ 過去の答申の内容を再整理する観点で作成している
- 前回からの変更点:前回はレベル別という概念がなかったが,今回配布分では修正を加えている
・ 成績評価(大学全体レベル)
- 大学全体で厳格な成績評価を行うとともに,大学全体でどのような考え方に基づき成績評価を行っているか示す
- そのために必要になると思われる取り組み
・ 成績評価に関する全学的な統一基準を策定・公表する
・ 当該基準に基づく評語と授業科目ごとに定められている到達目標の達成水準との関係を公表したり,成績表に記載したりする
・ GPA(大学全体レベル)
- 算定方法には各大学の自由度が認められる
- その一方で,信頼性を確保するためには,算定方法や分布というものを開示することが必要なのではないか
・ 進学や就職に当たってGPAが学外で活用されるということも想定される
- 不可になった科目も平均点に算入すること等に留意をした上で運用の改善を進めていくことが必要ではないか
・ 学士課程答申において,GPAを導入する場合の留意点として挙げられている
・ 各授業科目の達成水準(学位プログラムレベル)
- ルーブリック等を用いて事前に明らかにしていくことは,厳格な成績評価や学生の学習意欲を高める観点から有効と考えられる
- 特に同一名称の科目を複数開講している場合には平準化を図る観点から重要ではないか
- 各授業科目においてあらかじめ定められた成績評価基準を踏まえて,意図されたとおりの成績評価が行われているかどうかを検証する仕組みが必要ではないか
・ きめ細やかな履修指導,学習指導(学位プログラムレベル)
- GPAを留年,退学の勧告の基準とすることや,それに伴うアドバイザー制度を導入することなど
- 教員間で分布に関する情報を共有して,FDを実施することに留意する必要があるのではないか
・ 厳正な成績評価(個々の授業科目レベル)
- できるだけ客観的に達成水準を明らかにして,厳格に反映していくことが必要ではないか
- 公正で透明な成績評価という観点から,達成水準を測定する手法やそのウエートがあらかじめ明確になっていることが必要
- 成績評価結果等の分布を踏まえたFDなどを通じて,個々の授業の改善というものを行っていくことが必要
- 資料4
・ 委員提出資料
- 参考資料3
・ グランドデザイン答申をまとめる際の制度・教育改革ワーキングで配られた資料
・ GPA
- かなり多様な運用がされている
- 算出方法は相当様々
- 活用状況
- 『国内大学のGPAの算定及び活用に係る実態の把握に関する調査研究』の報告書を配布
・ GPA制度の導入状況
・ GPA制度に伴う算定方法
・ どのような科目を除外しているか,履修中止の制度をどのように運用しているか 等
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 前回取り上げた授業科目・教育課程の編成について議論する
○ 吉見委員(東京大学大学院情報学環教授)
- 全体と部分
・ シラバス,CAP制は授業科目・教育課程編成という全体における部分にあたる
・ 部分だけ議論をしていては解決策が見つからないため,部分から全体へ広げた議論が必要
・ 個々の部分の改善というのは,やはり限界があって,授業科目・教育課程編成の中で根本的な問題は何なのかを考えておくことがとても重要
- 例えばCAP制は中規模の単科大学ならば比較的うまくいくだろうが,大規模の総合大学の場合はまとまらず,あまり実効性のない結果になる
- 一番大きな問題は,深く学ぶという形の仕組みができていないこと
・ 深く学べていないのは,1学期に履修する授業科目数が多過ぎるから
- 広く浅く,たくさんの課目をとって,いろいろな知識を詰め込むが深く学べていない
・ その体制を変えていくということが,絶対に教育改革の一丁目一番地
・ シラバス,CAP制,成績評価もそれぞれ大切だが,もっと大切なことの根本ができなくて,学生も教員も疲弊する
・ この部会では授業科目・教育課程編成の問題を扱うので,その根本,つまり学生の平均履修科目数の問題から考えることを避けて通れないはず
・ 日本の大学教育をスーパーマーケット型からコーチング型(少ない科目数を深く学んでいく教育)に変えていく必要がある
・ ぜひこの学生の平均履修科目数についての議論をしていただきたいと思う
○ 深堀委員(九州大学教育改革推進本部教授)
- 卒業論文にかける授業外学習時間も含めて,学修時間の実質化の議論を深めながら,授業科目数について検討していく必要がある
・ 世界的に見ても,インテグレティブ・ラーニングが非常に重視されてきている(卒業論文に相当する授業科目の重要性)
・ 日本は卒業論文を多くの大学で実施していて,そこで深い学びを保証してきた
・ しかし,卒業論文に配当される単位数が実質的ではないという課題がある
- 分野別参照基準
・ 分野別参照基準を参照して教育課程を編成し,学修成果の達成に向けた授業科目を展開していくことにはかなりの距離がある
- 具体的にどのような授業科目の中でどのような知識・能力を身に付けさせるのかというレベルの議論に持っていく必要がある
- そうした議論は残念ながらどの学問分野でも未だ行われていないのが現状
・ 日本学術会議の中でも,現行の参照基準で示している水準が学士課程に適した水準といえるのか,修士,博士の水準と照らして議論を深めていく必要がある
○ 浅野委員(山形大学学術研究院教授,名古屋大学IR本部特任教授)
- カリキュラム・マッピング
・ 学内でカリキュラムをどのように組んでいくかを議論するときに,たたき台になるものがなく,前例踏襲をベースに組んでいるという現状がある
・ アメリカでは適格認定(日本で言う認証評価)を受けるには,カリキュラム・マッピングの提出を必須とされる動きがある
- その背後には,教員が担当授業と大学全体の目標・水準との関係を説明することが求められ,そのためのツールと捉えられていることがある
・ 山形大学ではカリキュラム・マッピングの導入から3年を経て,ある程度,意義が認められるようになってきている
- 最も意義があるのは,カリキュラムの順次性を確認できるようになること
- 全体の科目数の話や,接続の問題に少しずつ話が進んでいく
- 作成は大変で,すぐにできるものではないが,このようなツールを導入して,日本の大学で議論されているカリキュラムの問題について少し展望が開けると感じている
- ルーブリック
・ 国としての水準(拠り所となる水準)がない
・ そのため,大学の目標,これを踏まえたカリキュラムの編成という一連の流れに落とし込めないという問題がある
・ 質保証の根幹に関わるため,拠り所となる国としての水準がないという現状については,今後の検討課題
○ 吉見委員(東京大学大学院情報学環教授)
- コーチング型に変えていくことに関して,日比谷座長のいるICUがひとつのモデルになる
・ 3学期制を導入されている
・ 基本は1科目3単位
- 3単位というのはセメスターで1科目4単位と同じ話
- つまり,必ず1週間に2回か3回授業がある(1週間に2回か3回必ず先生と学生が会う)
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 同時並行でどのくらい学生が科目を履修しているかについて
・ 個別の学期ごとに標準の履修単位はここまでというのがある
- 1人の学生が同一学期に並行履修するのは5科目が標準
・ 3単位科目,2単位科目がある
・ 各種調査で,全国平均値は12科目とあるが,その半分以下
○ 森委員(関西大学教育推進部教授)
- 大学全体の目標,教育目標で主体性や資質・能力が出されているにもかかわらず,カリキュラムはそのような形になっていない
・ カリキュラム・マップやツリー,ルーブリックは手段なので,現状をチェックするというロジックから脱却できない
○ 松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
- 学びの深さと広さをどのように両立させるかも理念としては追求していくべき
・ 深く学ぶことが,同時に広く学ぶことにつながっていく仕組みを考えないといけない
・ 国際的には,そのようなカリキュラムが議論されている
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 前回の議論の続きは,ここまでとする
- ここからは本日のテーマである成績評価を議論する
○ 溝上委員(学校法人桐蔭学園理事長代理,桐蔭学園トランジションセンター所長・教授)
- 桐蔭横浜大学で教学マネジメントを進めている状況と,この委員会での議論には距離がある
・ 現場で伝えていくのは本当に難しくて,非常に多くの時間を費やして過ごしている
- GPAで質保証を行うのは難しい
・ GPAは授業科目の総体として出てくる評価点数
・ 学習目標は様々な次元に分かれて設定されるのが一般的
・ そのようなものを授業に落として成績がつけられて,それを平均化して総体としてGPAが出てくる
・ そのGPAの一つの得点に何かしら意義をつけていくのは難しい
- 教学マネジメントや,質保証の根本は,非常に端的にまとめると,DPに基づく各授業の成績評価ということに話は落ちていく
・ DPがしっかり立てられていることが前提
① シラバス等々でしっかりDPが各授業科目に落とされていることが必要
② 各授業に紐付けられたDPに基づく評価というものが複数次元あって,それらの規準がきちんと設定されて評価が付けられていることが必要
③ 各課題や出席などについてどのような点数をつけて最後コース評価がなされたかを見る必要がある
- コース評価だけを見ていてもだめ
・ ①~③が学部や大学でどのように組織的に提出させていくか,可視化させていくかが重要
○ 沖委員(立命館大学教育開発推進機構教授)
- 個別の授業の成績評価というのはあくまでも到達目標の達成度を測ることだということを明示する必要がある
・ 個別の授業には評価項目が複数ある
・ その評価項目をきちんと測らなければ,全く意味がない
・ そこの点検が必要
- 例えば,シラバスの中に評価項目は何をもって評価して,全体の何%になるのか,評価課題はどのようなものかを明示しなければならない
・ 到達目標は非常に立派なものを書いているが,実際は一部の知識再現型の試験しかやっていないということが本当にたくさんある
・ そのような成績評価の積み重ねで担保されたDPには何の意味もない
- 研究大学で通用する話と,そうでないところの話がある
・ 例えば,分野別の参照基準は一番重要だと思うが,個々の大学においてはDPでの達成度ができうる上限である大学もあり得る
・ 我が国では基本的にツートラックでいっているかなと思う
- 参照基準で統一すべきだというと,かなりしんどいというのが正直なところ
○ 佐藤(浩)委員(大阪大学全学教育推進機構准教授)
- 政策上の議論からは矛盾する2つのメッセージが届いている
・ 一つは,教育の質と言いながら量的な保証をせよというメッセージ
- 「履修主義」と「修得主義」の関係で言うと「履修主義」
- 企業で言うと何時間働いたか
・ もう一つは,質的な保証をせよというメッセージ
- 「修得主義」の考え方
- 何を学んだのかという質的な指標が重視される
- ルーブリックを使って学習成果を評価するという話がこれにあたる(パフォーマンスの評価)
- 企業で言えば,何時間働いたかよりもどれだけの成果を出したか
・ どちらも達成条件として挙げられているという矛盾をどう考えるのか
・ 相反するものと考えるよりは,使い分けをしながら,各大学で量的な評価/質的な評価をするものを議論しなければいけないのだろうと思う
・ 非常に今この辺りが混乱している状況と思うので,整理が必要
- 量的な保証
・ シラバス上での授業時間外学習の明示
- それ自体は悪くはないが,あくまで標準時間
- それだけの時間をかけたからよいというものではない
- 優秀な学生が短時間で課題を達成することもある
・ 量的な保証というものが限界を迎えているということは言われているが,先生方の中に量的な指標を重視する傾向がある
- 例:出席のカウント,研究室に朝から晩までいないといけない
・ 各大学で改めて単位数,単位の問題を考える必要がある
- アメリカでは脱カーネギーユニットという動きがある
・ 本当にカーネギー単位制度を前提にして学習を考えていいのだろうかという問い直し
・ カナダも含めて州によってはそこから外れる取組をしているということもある
- 一概にカーネギーユニットが悪いというわけではないが,根本の見直しも含めて議論する必要がある
・ 関連する大学設置基準で言うと,第21条に単位数は各大学において定めるものとするとある
- 長らく講義演習は15時間から30時間,実験実習は30時間から45時間という規定がある
- いろいろな教育方法がミックスされて授業が展開されている時代にあって,この差にあまり意味がなくなってきているのではないか
- 「前項規定にかかわらず」という柔軟性がある条件は付いているが,よりわかりやすくするために,この辺りの項目に関しても検討する必要があるのではないか
○ 深堀委員(九州大学教育改革推進本部教授)
- 参照基準について補足
・ 日本の参照基準は,イギリスのサブジェクト・ベンチマーク・ステートメントを参照しながら構築されてきた
・ イギリスで学問分野別質保証が目指されるようになった背景には,ポリテクニックが大学に昇格した高等教育改革がある
・ その意味で,サブジェクト・ベンチマーク・ステートメントは,全ての大学にとって活用可能なものとして作成されている
・ [研究大学]にも[実践的な職業教育を目指してきた大学]にも適用される大学の水準に関する緩やかな合意が,イギリスやヨーロッパの大学では共有されている
- 研究大学は研究の箇所をより分厚く書く
- 旧ポリテクニックは,例えば,リテラシーの観点から書き直す等,様々な使い方の工夫をする
- そのようにして学問分野としての水準を満たしながら,それぞれの大学の目指す人材像を表現している
- 日本の高等教育コミュニティは参照基準の使い方についての知識を持ち合わせているかというと,不勉強な部分があるのではないか
- 何をもって高等教育として国が保証していくのか,そのために参照基準をどのように活用しうるのかという議論を重ねていく
・ そのことによって,「ツートラック」というような議論ではなく,共通の参照基準の下で,それぞれの大学の固有性,多様性,自律性を表現できるのではないか
○ 益戸委員(UiPath株式会社特別顧問,株式会社肥後銀行取締役)
- 企業側においては人事評価がある
・ 評価のために,あなたは何をしなければなりません,という基準がある
・ 大学においても,同じような評価基準が整っていることは重要
・ 社内的にも評価される個人にとっても,しっかりした評価基準を定め,それをすべての関係者が共有していることが重要
・ 公表よって,公平性が保たれる
- 最近の企業経営において重要なことは,深い学びとそれを横に繋げていくということ
・ 深い学びの専門性を横に繋げられるキャラクターと経験があることが非常に重要
・ 残念ながら,日本の大学の学部生からは,専門分野に強い方を採用することが難しいのが現状
・ 大学院生になると,勉強マニアでなければ企業にフィットする人はいるので,アカデミアの皆さんには,その辺りのバランスをよく考えていただきたい
○ 川並委員(学校法人東京聖徳学園理事長・学園長,聖徳大学・聖徳大学短期大学部学長)
- 成績評価について現場からの意見
・ 免許資格を与える場合には,40人1クラスなど,それぞれの省庁のレギュレーションもある
・ 学生数を多く抱えていると,同じ授業を何回も行うことになるという場合に,その成績評価をどうそろえていくのか
・ 例えば,幼稚園教員,小学校教員,保育士にピアノが必須で専任の教員が8名,兼任が48名という形で一斉授業を行う
- 水準をそろえるのに大変な苦労をする
○ 伹野委員(独立行政法人国立高等専門学校機構理事,函館工業高等専門学校校長)
- 高専の成績評価の検討状況を紹介する
- 教育の質保証に対して学生の成績評価をどのように反映させるか
・ 全国51の高専それぞれが全国統一であるモデルコアカリキュラムに基づいたシラバスを作成している
- モデルコアカリキュラムとはそれぞれの教科の達成目標を一覧表にしたもの
- 3つのカテゴリーにそれぞれの科目を分類し,到達目標がどのレベルかを整理
・ 技術者が分野共通で備えるべき基礎的能力
・ 技術者が備えるべき分野別専門的能力
・ 技術者が備えるべき分野横断的能力
- 高専の本科は5年間で大学2年生のレベル,その後の専攻科を修了すると学士の学位を授与される
・ 現在40%程の本科卒業生が大学に編入するか専攻科に進学している
- 高専本科および専攻科,それ以降の大学院等の到達レベルをそれぞれK/A/Sで示している
・ 高専本科卒業の到達レベルKをCBT(Computer Based Testing)で評価している
- CBTは教師による成績評価とは基本的には別
- 設定レベルと問題の関係の妥当性が確認されるようなアンカー問題をCBTの中から選ぶことを考えている(全体のシステムとして構築しているところ)
- 実験実習能力のルーブリック評価水準の考え方
・ 座学以外の実験等の科目についても同様な評価システムに組み込むことを試行しているところ
・ まだ試行の段階だが,学生の評価と教員の評価の一致率は全分野で平均90%
○ 佐藤(浩)委員(大阪大学全学教育推進機構准教授)
- シラバスは,少なくとも学問分野や学部学科のレベルで責任を持って書くべきだというところまで踏み込んで書いてもいい
・ 長らくシラバス,成績評価,授業全般は,個々の教員の聖域だったが発想の転換が必要
- 例えば,少なくとも同僚のレベルでシラバスの内容を一緒に設定する,成績評価を同僚の人と一緒に行う
- 審議ロードマップのシラバスに関する記載
・ 「シラバスにおいて標準的に期待される記載事項の提示」というタイトルがついている
・ 今回の指針の中で全国標準のようなものを出すという方針で書かれているという解釈でよいか
- 参考資料の1の5ページ27行目に書かれている項目は全国標準として提示をするということか
⇒ 基本的にはそう。今後詰めていく項目ではある。(日比谷座長)
- もしそれであれば,各大学に影響を与えるため,もう少し議論した方がいい(フォーマットを作り替えないといけない大学もある)
⇒ 分かりました(日比谷座長)
○ 浅野委員(山形大学学術研究院教授,名古屋大学IR本部特任教授)
- 同一名称の科目を複数開講している場合について話題提供
・ 山形大学において平成28年度から導入した「スタートアップセミナー」
- 全学で1年次約1,800人の必修科目
- 4つの技術を身につける
・ 文献・資料を検索する
・ 課題発見・探求
・ 論述できるようになる
・ プレゼンテーションできる
- 早い段階から他学部の学生とのグループワーク等に取組んでもらうことを狙っているのがポイント
・ 1,800人を25人編成の64から70クラスに,6学部の男女をバランス良く振り分けている
- 前期のワンサイクルを終えた後,後期の2サイクル目で同じことを焼き直しする
- 授業で使うスライド,教材に加え,評価基準も全て平準化して,統一のものを作っている
- 3年目の運用で,担当教員の理解の下,ある程度軌道に乗り始めたという状況
- 基本的なことができていたら80点はとれる設計にしている
・ GPAについては,成績の評価基準がある程度統一化されてきた
- ここ数年かけて3.6から3.7あたりに収まるようになってきた
- 成績評価基準を厳格化しようとすると授業の内容のみならず,課題,使用する教材なども統一していかないと,なかなか評価の基準がそろわない
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 本日のテーマである成績評価の議論はここまで
- ここからは今年度実施する学生調査の試行について委員の意見を聴取する
・ まず文部科学省からの説明
○ 石橋高等教育政策室長
- グランドデザイン答申の中で進めていくことが書かれ,文部科学省に宿題で降りてきている
- 本委員会の小林委員,深堀委員,両角委員,沖委員,森委員や,学生調査に詳しい先生方に意見を伺いながら進めてきた
- 設計
・ 学生が,どのようなことを経験しているのか(プロセス)を確認していくような調査
・ 学生目線で大学教育や学びに関する調査を実施したい
・ 在学中の学びの実態,学習経験などの状況を把握したい
・ 社会が理解しやすいような形で公表する
・ まずは学部生を対象とする
- 背景
・ 日本の学生は勉強していないのではないか,大学は学生を育てていないのではないかという社会の声がある
- それらの声は自分の経験に基づいてのみ言っている場合もある
・ 実際の状況をきちんと説明していくということが必要
- 目的
・ 学生の目線から大学の教育力の発揮の実態を把握する
- 調査結果は,原則大学・学部ごとに公表する
・ 調査結果を踏まえて,各大学自らが教育改善を行う
・ 国においてもエビデンスを政策立案に活用したい
- 実施イメージ
・ 学部3年生,6年課程は4年生が対象
- 大学においての学習についても馴れ,ある程度の経験値がたまってきた段階
- 調査方法
・ スマホ等による,Webによるアンケート調査
- 大学の負担をできるだけ減すことを考えている
- 調査項目
・ 10分程度で回答できるような,大きな問いで5問程度
- 学生の負担をできるだけ軽くしたい
- 調査結果
・ 大学・学部ごとの集計結果を公表
・ 学生には大学を通じて調査結果をフィードバックしていただく
- どのように教育改善につながったかをきちんとフィードバックしていただく
- 学生に対して,参画する意味を示してほしい
・ 将来的には大学ポートレートの中での活用も検討する
・ エビデンスデータとして認証評価において活用を検討する
- 回答数
・ どのくらいの回答数があれば実態を反映しているのかは検討課題
- 先行して実施している大学の学生調査との棲み分け
・ このようなシンプルなものというよりは,もっと教育改善につながるような,非常にきめ細かいものが多いと認識をしている
・ 既存の学生調査の中で行っているのであれば,そのデータを提供してもらうようなやり方もあるし,併用してもらうやり方もある
・ ただし,全国的に同じ項目でとるという意味が大きいため,そのような大学とは調整をさせていただきたい
- 調査結果を公表する場合の基準
・ 回答数の必要最低規模を整理をしていく必要がある
・ 試行調査での取扱い
- 回答数が30以上かつ回答率が10%以上というような形で整理をしてはどうかと現在提案をしている
- 対象
・ 通信教育や夜間部,短期大学をどうするかは今後議論をしていく必要がある
- 実施時期
・ いろいろな学生調査が秋ごろに行われていることは我々としても把握をしている
・ 本調査をいつするかは整理が必要
- 実施サイクル
・ ある一定程度落ち着いてきたら,3年に1回というようなペースでもいいのではないか
- 期待される成果等
・ 高校生や保護者
- 学生目線の情報を踏まえて,この大学・学部ではこういうことが丁寧にされているんだなということを確認
・ 社会
- 誤解なく学生の状況を把握
・ 学生
- 大学教育改善への参画につながる
・ 国
- 一つのエビデンスとして活用
・ 大学
- 教育改善に使う
- 具体的な調査項目
・ 大学名は表示されていて,学部名をプルダウンで選んでもらう
- 各大学にQRコードを付与する形にしたい
・ 授業について
- 8項目(順番は整理する)
- 選択肢:ほとんどなかった,あまりなかった,ある程度あった,よくあった
・ 大学に入ってからの経験
- 勉強の方法を学ぶ科目があったか
- 少人数教育の経験があったか 等
・ 1週間の生活時間
・ 授業の形態
- どのような人数や形式が学生にとってより役に立っていると考えられているのか
・ 能力を身につけるため,大学教育は役に立っているか
- 一般的に大学教育でこういうことが身につけられていれば望ましいという主要な11項目
・ 回答にどのくらい時間がかかったか(試行時のみ)
・ 大学の学びについての意見(試行時のみ,自由記述で100字以内)
- 公表イメージ
・ 参加大学をクリックするとそれぞれの大学の学部ごとに回答数,回答率,それぞれの項目についての回答が得られる
- チラシイメージ
・ 裏面に設問を掲載
- 1枚に収まる分量なので,それを見ながらスマートフォンで回答してもらうことを想定
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- ここからは学生調査の説明に関する意見や質問等
○ 益戸委員(UiPath株式会社特別顧問,株式会社肥後銀行取締役)
- この学生調査は,ぜひやっていただきたい
- 調査の結果が独り歩きをしてはいけないが,今後私たちが議論をしていく大学側からの公表データの一つであるという理解をしている
・ 学習者目線で改革をしていくということでスタートしているので非常に有効なデータとなる
- 企業では人事評価の際に360度評価がかなり一般的になってきている
・ 導入当時は抵抗もあったが,今や当たり前
・ 自分のパフォーマンスが上からだけでなく,下からや横から見るとどうだ,ということがよく分かるようになった
- 自分たちの学校では,学生に対して相当な努力をしているんだ,と全ての教育関係者の方は考えていると思う
・ しかし,その熱意やその方法がきちんと学生に伝わっているかを検証する必要があり,この学生調査はとても重要
- どこの学校を選び,どのように学ぶか,ということは場合によってはその方の人生を左右することになる
- 自分の学校の良い点ばかりを言って学生を呼び込む経営ではなくて,学生一人一人がどのような目標を持てるか,という観点はとても大切
- 偏差値が独り歩きしている状況に歯止めをかける意味でも非常に大切
○ 林委員(政策研究大学院大学教授)
- こういう共通的な調査というのは今までなかった
- 例えば,認証評価の自己評価書のアンケートでは項目や段階設定が大学によって違い,解釈できなかったのでぜひ進めてもらいたい
- 目的と対象者について質問
・ 対象はなぜ3年生なのか
- 学生自身が自分の学びを振り返ってほかの学生と比べて自分はどうかと考えるのであれば,4年間の途中という方法もある
- 多くの大学は卒業時点で調査を行っている
・ この大学に入って期待されたものが学べたかや,進路に対してどのような学びができたかなどを聞く
・ 質問項目を見ると,学生自身がどのように学んだかではなくて,大学からどういうものを受けたかになっている
○ 石橋高等教育政策室長
- どのタイミングでとるかというのは我々も非常に悩んだ
- 大学における自分の学びを自分事にしてきちんと答えられる時,経験がフレッシュな時は,現在進行形の間の3年生ではないかという提案
- ただし,本格実施に向けて,一番よいタイミングをこれから決めていく
- 伸びを見るのであれば1年生と4年生をとる形もあり得る
○ 松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
- 背景に「学生がどのような能力を身に付けているかについて,社会に対する説明や情報公表が不十分」とある
・ しかし,設問は間接評価なので,身についた能力を知るのは困難
- 設問「次の知識や能力を身に付けるために大学教育は役に立っていると思いますか」は公表されたときに,質問の細かい文言は全部抜け落ちる
・ 知識や能力がどの程度その大学で身についているかというふうに解釈されるおそれが非常に高い
- 文科省のこれまでの調査では必ず,学力を問う問題と質問紙調査がセットになって,学習状況や学力を見てきている
・ 全国の学校を対象にした学力調査や,あるいは,PISA調査のような国際調査
・ 今回はその一方の学生調査だけ,質問紙調査だけということなので,相当慎重にやらなければいけない
- NSSEの例が挙がっていたが,NSSEは一律に全国の大学の調査結果を公表するということしていない
・ 大学の種別などでグルーピングして,その中で比較やベンチマーキングができるようにはなっている
・ 全国学力テストなどでは非常に大きな議論があったが,今回さらっと出ているので,もう少し慎重に議論する必要がある
○ 浅野委員(山形大学学術研究院教授,名古屋大学IR本部特任教授)
- 実施するタイミング
・ 期待される成果の中に,高校生・保護者とある
・ 高校生・保護者にとって一番身近なのは1年生なので,1年生のデータがないと,情報としては弱いように思える
・ 3年生だけの情報では少し遠い目標になるのと,大学側から見ると1年と3年の変化が見えないため改善の成果を検証することができない
- 実施方法
・ スマートフォンで回答するには設問が長過ぎる(設問だけで画面が全部埋まってしまう)
・ 山形大学で実施している基盤力テストの事例
- 1行に収まる5つぐらいの選択肢にしないと,回答する学生はスクロールする手間から,上の方の選択肢を選ぶ傾向が見られる
・ 今後,本格調査を実施する際,同時アクセスへの対応を考えておく必要がある
・ 同時アクセスへの対応よりは,実施時期を大学の設置形態ごとに分ける,所在エリアごとに分ける,といった対応が現実的だと考える
- そうでなければ,インフラ(運用サーバー等のハード)として,膨大なものを準備することになる
○ 小林(浩)委員(リクルート進学総研所長・リクルート「カレッジマネジメント」編集長)
- 今いろいろ民間でも調査があって発表されているが,学部別や学問分野別に見られるというのはほとんどないような状況
・ いわゆる大学ベースの満足度とか,あるいは,入口の偏差値による序列化,あるいは,グルーピングというのがメイン
- 予備校やメディアは,私立大学が600以上ある中で,それをどうにかグルーピングしようと思い,序列化していくということがある
- 同じ大学でも資格系の学部と,いわゆる人文社会系では大分傾向が違うと思うので,その辺りが見えるようになるのは非常に重要
- 学生主体であれば,成長実感が問えるような質問が入ってくるといいと思う
- 特に高大接続の方で,高校ではもうeポートフォリオが始まっていて,自分で振り返りをしながら成長実感を確認していくというのがツールとして入ってきている
・ 大学でもeポートフォリオを入れているが,ほとんど活用されていないという実態がある
・ 振り返りの機会があり,きちんとフィードバックされているか,成長実感の機会があるかを,可能性があれば入れていただきたい
- 入口の偏差値が違っても,入ってからこのように成長できるんだというように,それぞれの自分の学びたいことや,中身で選べるようになるとすごくよいと思う
- ネットは非常に離脱率が高いので,そこをどのように担保していくかは,これからの大きな課題
○ 溝上委員(学校法人桐蔭学園理事長代理,桐蔭学園トランジションセンター所長・教授)
- このような学生調査を政府で進めることを私も提案してきたので,本当に期待している
- 項目などについて,いろいろ思うところがあるが,時間がないので2点述べる
- フィードバック
・ 学生へのフィードバックについては書かれている
・ 大学・学部に個票としてフィードバックされるのか
- 集計結果の公表
・ 大学名が出るのか
- 大学によっては死活問題
- 学生の不正な回答の問題もある(「いいようにつけとけよ」など)
○ 益戸委員(UiPath株式会社特別顧問,株式会社肥後銀行取締役)
- 試行では大学限定だが,学習者側が高専,短大,専門学校での教育意義を再評価することにも繋がると思うので,先行きはぜひ検討してもらいたい
・ 高等教育という観点からすると,高専や短大,専門学校の存在意義はとても重要