ホーム → 大学に関わる情報メモ → 教学マネジメント特別委員会(第6回)議事録
公開日:2019年9月13日
議題は「学修成果の把握・可視化」。大学内部における学修成果の把握と可視化,そしてその利活用にフォーカスする。
松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)が「学習成果とその可視化」について発表,その後に質疑応答。学習成果の評価方法を3つの分類軸で捉える。①直接評価と間接評価,②量的評価と質的評価,③科目レベル・プログラムレベル・機関レベルの評価。分類軸を組み合わせて評価方法の特徴を把握する。学習成果の評価のメインは直接評価。能力を見るには間接評価だけでは不十分。 ただし,間接評価にも意味がある(学生自身の認知など,学生の自己報告)。間接評価も併用して多元的に見ていくのがいい。卒業論文は学習成果の重要な評価方法。ただし,卒業直前になるまで把握できないのがネック。「重要科目での埋め込み型パフォーマンス評価」(PEPA)を提案。「重要科目」とは,その授業科目の目標がプログラム全体の目標に直結するような科目。教員チームによってしっかりした評価を行う。科目レベルの評価とプログラムレベルの評価をつなぐ。
学修成果の把握・可視化についての議論。大学側は,DPに定める能力を備えた学生を学位プログラムで育成できていることを,エビデンスとともに説明できるようにすることが必要。学生側は,「卒業認定・学位授与の方針」に定められた到達目標をどの程度達成しているかということをエビデンスと共に自らが説明できるようにすることが重要。各科目の評定が書かれた成績表だけで「卒業認定・学位授与の方針」の達成状況を明らかにすることは難しい。DPの各項目とエビデンスを関連付けながら,DPに定める能力をどのように身に付けているのかを示す。各科目の到達目標とDPのひも付けが明らかになることで,DPの達成状況を一定説明することが可能になる。DPを見直すために学修成果を把握するという視点も必要。質保証の質はステークホルダーによって考えることが違うため,学外のステークホルダーからの意見を踏まえて学内の改善をしていく視点も必要。
把握・可視化の義務付けが考えられる情報の例についての議論。グランドデザイン答申で示された。配布資料では把握・可視化の意義,内容,方法を表形式で整理している。ただし,意義,内容,方法まで義務付けるというよりは,運用方法についてガイドラインとして示すことを想定。また,どの分野,どの大学でもということでは必ずしもない。学外試験やアセスメントテストを使う場合には,内容が自大学のポリシーと合致しているかを十分検討することが必要。
[間接評価・直接評価の区別]と[教員による評価と学生自身による自己評価の区別]は,よく混同されるが別物。直接評価とは,評価課題を用いて知識や能力を表出し,それを基準によって評価することがたどれるもの。たどれるのであれば,評価者が教員・学生に関係なく直接評価。
教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項についての議論。必要最低限のことを書くだけにして,あれもこれもあると書きすぎないことも重要。測定を一生懸命することに労力を使いすぎて,肝心の教育の改善につながらない。評価が学生自身の学びの成長につながるような示唆が必要。
国レベル,分野別レベルで質の水準が示されないと,大学が自ら掲げる水準の質保証に限定される。個々の大学だけでできる質保証の取組は限られている。
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 本日の議題
・ 学修成果の把握・可視化
- 今回と次回の2回にわたって議論をする予定
- 大学内部における学修成果の把握と可視化,そしてその利活用にフォーカスする
○ 松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
- 学習成果の可視化の方法として,評価方法の多様性について話す
・ 事例として,新潟大学歯学部を紹介する
- 学習成果とは何か
・ 学士課程答申での定義
- 「プログラムやコースなど,一定の学習期間終了時に,学習者が知り,理解し,行い,実演できることを期待される内容を言明したもの」
・ OECDなどの定義ともほぼ同じであり,一定の一般性を有するものと考えられる
・ この定義から引き出される含意(2つ)
- 学習成果には目標と結果の両方の意味がある
・ 結果とは評価対象のこと
- 学習成果の評価は,第一義的には,学生の知識や能力の表出に基づく直接評価によって行われる
・ 先ほどの定義では,「実演できる」が該当(英語では“can demonstrate”)
- 学習成果の評価にはどのようなものがあるか
・ 学習成果の評価方法の分類(大きく3つの分類軸)
① 直接評価と間接評価
② 量的評価と質的評価
③ 科目レベル・プログラムレベル・機関レベルの評価
・ 分類軸を組み合わせることによって,様々な評価方法の特徴を把握することが容易になる
・ 3つの軸を同時に掛け合わせるのは大変なので,2つずつで考えていく
- [①直接・間接]×[②量的・質的]
・ この2つの軸を掛け合わせると,4つの象限ができる
- 間接×質的評価
・ 学習者自身が書いた学びについての記述
- 間接×量的評価
・ 質問紙調査
- 直接×質的評価
・ パフォーマンス評価,ポートフォリオ評価
- 直接×量的評価
・ 客観テスト
- 直接評価とは
・ 学習者の知識や能力の表出を通じて,「何を知り何ができるか」を実際に学習者自身にさせる
・ より広義には,学習成果の直接的なエビデンスに基づく評価方法と言える
- 間接評価とは
・ 学習者による学習成果についての自己報告
・ それを通じて,「何を知り何ができると思っているか」や「どのように学習を行っているか」を学習者自身に答えさせる
・ より広義には,学習成果の間接的なエビデンスに基づく評価方法と言える
- 直接評価・間接評価と学習成果の関係について
・ 先ほどの学習成果の定義に従えば,学習成果の評価のメインは直接評価になる
- アメリカの認証評価機関などで言われていること
・ 「学生の学習のエビデンスは,質問紙調査以上のものを含むべきである」
・ 「学生の学習のエビデンスを提供するには,学生の学習の成果物の直接評価の結果を含む,より多くの異なるタイプのエビデンスが求められる」
・ 直接評価を間接評価によって代替することは困難
- 例えば,ダニング=クルーガー効果
・ 能力が低い者は能力を過大評価し,能力が高い者は控えめに評価する傾向がある
- したがって,能力を見るには間接評価だけでは不十分であるということになる
- 直接評価と間接評価の相関を見た結果(例:ライティング能力とかプロブレム・ベースト・ラーニングの問題解決能力)
・ ほとんど相関がないというような結果が得られている
・ ただし,間接評価には意味がないかというと,そんなことは全くない
- 学生の自己報告に基づく間接評価が非常に重要であるもの
・ 学生自身の認知(価値観,興味・関心,成長実感など)
・ 学習成果に至る学習行動(学習時間,学習方略など)
- [①直接・間接]×[③科目レベル・プログラムレベル・機関レベル]
・ アメリカの認証評価機関の方で整理されている
- 本日は説明を省略(資料を参照)
・ 学位プログラムレベルの評価をどのように行うかという課題がある
- 文部科学省によりほぼ毎年行われている「課程を通じた学生の学修成果の把握方法(学部段階)」
・ 標準テストや質問紙調査は,かなり増えてきている
・ 一方,ルーブリックや学修ポートフォリオは伸び悩んでいる
- 質問紙調査や標準テストにはそれぞれ限界がある
・ 質問紙調査
- 直接評価の代替にはならない
・ 標準テスト
- ディプロマ・ポリシーや教育目標と合致しているとは限らない
- 卒業論文
・ 非常に重要な学習成果の評価方法
・ しかし,卒業直前になるまで把握できないのがネック
- プログラムレベルの直接評価に他にどのような試みがあるか
・ 修士論文用リサーチルーブリック
- 入学時から年に二度,学生が教員と一緒に評価することで作成プロセスにも関わって評価をする
- 佐藤(浩)委員が愛媛大学の頃に関わっていた取組
・ ポートフォリオやeポートフォリオ
- 関西国際大学の例
- 京都大学の例(教職科目で5つの目標を設定し,ルーブリックを用いながらポートフォリオを作成・評価する)
・ アセスメント科目
- 創価大学の例(各学部の1,2,3・4年次の専門科目3つをアセスメント科目として設定し,学生が全学共通ルーブリックで汎用的能力を自己評価する)
- 本日は「重要科目での埋め込み型パフォーマンス評価」(Pivotal Embedded Performance Assessment;PEPA)を提案する
・ カリキュラムの中で「重要科目」を選ぶ
- 「重要科目」とは,その授業科目の目標がプログラム全体の目標に直結するような科目
- 例えば,それまでに学んだ知識やスキルを統合して,高次の能力を育成・発揮することを求めるような科目
・ その重要科目で,教員チームによってしっかりした評価を行う
・ それによって科目レベルの評価とプログラムレベルの評価をつなぐ
- 「埋め込み型」とは,授業科目の評価の中に埋め込む形でプログラムレベルや機関レベルの評価を行うこと
- 「追加型」と対照的に使われる言葉
・ PEPAを新潟大学の歯学部の事例により説明する
- 新潟大学歯学部の先生方と8年ほど共同研究を行って作ってきたもの
- 新潟大学の歯学部には2つの学位プログラムがある
・ 1つは歯科医を育てる歯学教育プログラム
・ もう一つは歯科衛生士や社会福祉士などを育てる口腔保健福祉学教育プログラム
- 以下では歯学教育プログラムの方に絞って話す
- ディプロマ・ポリシーでは特に問題解決が重視されている
- そのディプロマ・ポリシーからプログラムの到達目標が設定されている
- カリキュラム・ポリシー
・ 「本プログラムでもっとも重視する学習成果である歯科臨床能力は,歯科医療という文脈における問題解決能力と定義できる。低学年から高学年に向けて,問題解決能力から歯科臨床能力へと専門性・総合性・真正性を高めて育成し,その学習成果をプログラムの教育目標に直結する重要科目で直接評価して卒業生の質を担保する」
・ プログラムの到達目標として知識・理解,専門的能力(分野固有の能力),汎用的能力,態度・姿勢の4つの柱がある
・ それぞれについて複数の目標が立てられている
- カリキュラムと評価の関係
・ 6年間のカリキュラムは,大きく4つの時期に分かれている
- 第1期:教養教育と大学の学習への転換の時期
- 第2期:基礎
- 第3期:ある程度の応用を学ぶ
- 第4期:臨床実習などで実践し,自己省察を行う
・ 4つの時期それぞれについて重要科目が選ばれている
・ そこでしっかりしたパフォーマンス評価を行うことで,プログラム全体の評価につなげる
・ パフォーマンス評価をどのように行っているか
- 第1期:科目「大学学習法」(1年前期と2年前期)でのレポート評価(歯学部に限らずいろいろな学部で使えるのではないか)
- 第2期:プロブレム・ベースト・ラーニングにおける問題解決能力の評価
- 第3期:模型・シミュレーション実習における歯科臨床能力の評価(この辺りから歯学部らしくなってくる)
- 第4期:診療参加型臨床実習におけるポートフォリオ評価と臨床パフォーマンス評価
- 本日はある程度汎用性があると思われる第1期の「大学学習法でのレポート評価」について話す
・ レポートを組み立てるという学習を,まず授業の中でかなり行う
- トゥールミン・モデルなどを参考にして「論証モデル」を作成した
- レポート・卒論では,問題を立て,それに対する結論を導くことが大きな柱
- その結論に至るプロセスでは,複数の主張が組み合わされ,構造化される
- それぞれの主張に対して,どのような事実・データを用い,それをどのように解釈し,主張の根拠とするかが必要になる
- 設定した問題への対立意見についての論駁
・ 論証モデルに沿った形で,ライティング・ルーブリックを作成した
- 6観点と4つのレベルで構成されている
- そのルーブリックを使って,学生自身の自己評価と教員による評価を行う
- 教員評価:1年<2年と上昇
- 教員評価と学生の自己評価の間のずれ:1年生では大きいが,2年生ではほとんどない
- 学生自身も1年生と2年生のレポートの比較を通じて,伸びを実感
・ このように,重要科目で2回にわたって評価を行うことにより,形成的評価としての機能を持つようになっている
- 他の重要科目でも「大学学習法」のように1と2になっていて,形成的評価の機能は持たせている
・ 重要科目の運営で特定の教員に負担が偏らないようにする工夫
- 学部長,副学部長の下で,各重要科目についてコアメンバーを選定する
- コアメンバー(1人ではなくて複数)がチューターを組織するという形で運営
- ガイドブックを作成してリソース面でも負担を減らす努力をしている
・ まとめ
- 学習成果の可視化(評価)には多様な方法がある
・ 方法の特徴を把握して使い分ける
・ 評価疲れにならないようにする
- 学習成果の定義を踏まえれば,評価のメインは直接評価間接評価による代替は困難
・ 一方で間接評価には独自の意義と使用法がある
- 学位プログラムレベルの評価は,大学教育や質保証における大きな課題
・ 質問紙調査や標準テストは意義があるが,それだけでは不十分
- 科目レベルの評価をもっと活用すべきではないか
・ 学位プログラムレベルの評価とつなぐ(重要科目での埋め込み型パフォーマンス評価)
・ 教員と学生は科目レベルで日常的に関わっている
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 事務局より本日の資料の説明
○ 平野大学改革推進室長
- 資料2「教学マネジメント特別委員会(第5回)における主な御意見」
・ 前回の主な意見
- 資料3「「学修成果の把握・可視化」に関する議論の範囲について」
・ 「学修成果の把握・可視化」に関する議論の範囲
・ 今回の議論は学修成果の「把握・測定」
・ それをどのような形で公表していくのかは別の回で議論を行う
- 参考資料1「教学マネジメント特別委員会における議論の進め方について【第3回資料2】」
・ 学修成果の把握・可視化は,これまでの答申でそれほど多く触れられているわけではない
・ 指針は,大学を一定の型にはめるということを意図するものではない
・ 確実な実施が必要とされる水準を示す方向
- 資料4-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(④学修成果の把握・可視化)」
・ 学修成果の把握・可視化
- 大学側では,DPに定める能力を備えた学生を学位プログラムで育成できていることを,エビデンスとともに説明できるようにすることが必要
- 学生側では,「卒業認定・学位授与の方針」に定められた到達目標をどの程度達成しているかということをエビデンスと共に自らが説明できるようにすることが重要
・ 大学全体レベル
- 各大学が自主的に策定・開発を進めていくことが強く期待される
・ 世界的にも標準化されたものが存在しているわけではない
- 学位プログラム共通の考え方,尺度を踏まえて点検・評価に適切に活用する
・ 従来はアセスメント・ポリシーと称していたもの
・ あらかじめ定められた目標の達成状況と照らし合わせて,既存のカリキュラムや教育手法の見直し等の改善につなげていく
・ 体制を整えて行う必要がある
・ 学位プログラムレベル
- 学修成果の把握と可視化を考える上で重要なこと
・ ディプロマ・ポリシーに定める能力を学生が実際に身に付けているかを明らかにする
・ 個々の授業科目の成果や大学内外の学生の活動の成果が,DPに掲げられた能力を身に付けることにどのように寄与しているのかを明らかにする
- 各科目の評定が書かれた成績表だけで「卒業認定・学位授与の方針」の達成状況を明らかにすることは直ちには難しい
・ ディプロマ・ポリシーの各項目とエビデンスを関連付けながら,DPに定める能力をどのように身に付けているのかを示す
- 各科目の到達目標を達成することで,DPに定められたどの能力を伸長させるのかがあらかじめ明らかになっていることが重要
・ 各科目の評価とDPのひも付けが明らかになることで,DPの達成状況を一定説明することが可能になる
- [DPに定められた能力]と[アセスメントテスト,学外試験,学生の成長実感,満足度等]の結び付きをあらかじめ明らかにする
・ その上で,学生の持つ能力をより包括的に様々な形で説明する
- 直接的な手法でDPに掲げられた能力の獲得状況を評価する
・ 例えばルーブリックを作成した上で,DPに掲げられた能力と関連性が深い特定の授業科目や,卒業論文,学修ポートフォリオに蓄積された学修履歴を総体的に評価する
・ 一人一人の学生が自らの学修成果をポリシーに照らしてより具体的に説明可能にしていくということも考えられる
- 負担軽減の観点からは,特定の重要な授業科目,卒業論文,ポートフォリオ等に限定して実施をすることが重要
・ 全ての授業科目で行うのは現実的ではない
- アセスメントテスト等の目的や測定方法がDPの能力測定に本当にフィットしているかを慎重に検討していく必要がある
・ テストをすればそれでよしということではない
- 学生の学修時間・学修に対する意欲の情報を活用する
・ 期待される水準の能力を身に付けるための前提条件を満たしているかを明らかにするための情報
・ ここの記載は学生調査とは別の話であり,各大学の活動について触れている
- 学修ポートフォリオは,様々な情報を体系的に蓄積・収集するという観点から非常に効果的
- 進路の決定状況,卒業後の状況,卒業生に対する評価は,大学全体の教育成果に対する評価を示す情報として重要
・ DPに定める能力を身に付けているかや,大学が自ら評価している成果と照らし合わせて,自らの教育活動を顧みる情報として活用する
- 学修ポートフォリオに蓄積された情報を一定社会に開示して学修成果を見せる
・ 授業科目レベル
- DPを踏まえて設定された個々の授業科目の到達目標を,どの程度達成できているかを明らかにすることが大前提
・ そのためには,到達目標に応じた適切な成績評価手法が選択されるということが大事
- 個々の授業科目において厳格かつ客観的な成績評価を実施することが大事
- 個々の授業科目の評価を,「学位授与の方針」の能力を身に付けていることにひも付ける
・ そのことにより,学生が自らその能力を満たしているということを一定説明できるようになる
- 各授業科目の成績評価を含む「単位の取得状況」は,最も基礎的な情報
・ 学修成果の把握・可視化の「出発点」に位置付けられる
- 学位プログラムが中心に見えるが,科目が出発点であり中心
- DPルーブリックを作成した上で,学位プログラム全体の到達目標と関連性が深い科目や,卒業論文を評価する場合,慎重な設計が必要
・ 個々の教員ではなく,教育課程を担当する教員が集団で体制を組んで作り上げていくことが重要
- 資料4-2「学修成果の把握・可視化について」
・ 冒頭に前提が書かれている
- 各会議の資料で位置付けられてきたもの
- 前提が満たされて初めて,把握・可視化の意義が利いてくる
・ 1.把握・可視化の義務付けが考えられる情報の例
- グランドデザイン答申において大学に義務付けることが考えられるとされた情報
・ どの分野,どの大学でもということでは必ずしもない
・ 把握・可視化の在り方について義務付けるのではなく,一定の指針を示すことが考えられる情報
・ 義務付けということになると,もちろん法令上,省令上という形になる
・ 表に書いてある意義,内容,方法まで義務付けるというよりは,この事項を位置付けた上で,その運用方法について教学マネジメント指針を一定のガイドラインとして示すことを想定
・ 義務付けという意味においては,太字の項目が法令上位置付けられていくことが想定される
- 各項目について,把握・可視化の意義,内容,方法を書いている
- 学修時間
・ 国で今後施行する学生調査とは全く別の文脈
・ 単に実際何時間したかではなく,履修単位数に応じて時間は変わる
・ 一般的に期待される学修時間と対照することが必要
・ 集計期間(平均的な1週間か試験前の1週間か等)を指針として示すかについて意見をいただきたい
・ 2.把握・可視化の在り方について一定の指針を示すことが考えられる情報
- 学外試験やアセスメントテストを使う場合には,内容が自大学のポリシーと合致しているかを十分検討することが必要
- 卒業論文・卒業研究の水準
・ 能力を包括的に測定する手法
・ 一般的には専門教育に係る能力がどの程度身に付いているかが総合的に分かる
・ 卒業論文・卒業研究にまつわるプロセスを通じていろいろなものを測定することができる
- 卒業生に対する評価(卒業後の状況)
・ 数字での把握を超えて,就職先企業や進学した大学院にヒアリングなどで詳細に評価してもらう
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- ここからは先ほどの松下委員の発表に関する質疑,コメント
○ 大森委員(共愛学園前橋国際大学学長)
- 量・質×直接・間接
・ 評価者とは誰なのか
- 私としては,学生自身ということを主張し続けたい
- 例えば,関西国際大学では学生自身による評価を直接評価として挙げている
- 学修者によるポートフォリオ評価は直接という理解でよいか
⇒ [間接評価・直接評価の区別]と[教員による評価と学生自身による自己評価の区別]は,よく混同されるが別物
- 直接評価
・ 評価課題を用いて知識や能力を表出し,それを基準によって評価することがたどれるもの
・ たどれるのであれば,評価者が教員・学生に関係なく直接評価
- 学生は最初から自己評価能力があるわけではない
・ 学生の自己評価能力を育てることと併せてしないと,学生が適切に自己評価できないことが結構ある
・ 自己評価がきちんとできない段階であれば,そのままエビデンスとして使うことは難しい
○ 浅野委員(山形大学学術研究院教授,名古屋大学IR本部特任教授)
- 重要科目
・ 「授業科目の目標がプログラム全体の目標に直結する科目」と定義されている
・ DPごとに到達目標があり,個々の授業が到達目標の達成に寄与するという従来の考え方で対応関係を示すのが難しいように見える
- 単一の重要科目が全てのDPの到達目標に貢献するというような状況は基本的に想定できないのではないか
・ 重要科目でプログラム全体の達成度を評価するとしても,個々のDPの達成度が分からないと,それぞれのDPの達成状況がわからないのではないか
⇒ 重要科目とDPの各到達目標が1対1に対応しているわけでない(スライド16)
- 重要科目は,DPあるいは到達目標に対応する複数の目標がその1つの科目の中で目指されているような科目
・ 単位の集積だけではDPの到達状況がわかりにくい
・ 複数の授業で学んだことを統合して発揮する機会を与えるという考えで重要科目を設定している
・ 教員集団で評価する
○ 佐藤(浩)委員(大阪大学全学教育推進機構准教授)
- 6年間にわたって同じルーブリックを使えばDPが測定できそうだが現実的か
⇒ 同じルーブリックではないが根底に流れているものは共通
- 評価課題と対応してルーブリックがある
- 課題に合わせて表現を変えている
- 全ての科目をカバーできるルーブリックは考えていない
- 評価課題によって少しだけ中身が異なるルーブリックを使う
- 若干形を変えながらであれば, 4年や6年を通して使えるようなルーブリックもあり得るか
⇒ あり得る
- PBLでは3年くらいにわたり使っている
- 診療参加型臨床実習では在学中に「できた」のレベルに達するのは難しい
・ そのため,研修医でも使える長期的な仕様で作っている
○ 溝上委員(学校法人桐蔭学園理事長代理,桐蔭学園トランジションセンター所長・教授)
- 教育成果の可視化の議論では,測定論的な議論(直接評価と間接評価など)を踏まえた主張は,しないほうがいい
・ 教育の中でデータをとるのは労が多い割には有益でないことが多い
・ DPを基にした学修成果につながるとも限らない,つなげることが実践的にできるのかという問題がある
- 学修成果の評価のメインが直接評価というのは教育実践的に私も全く異論はない
・ そこで止めておけばいいのに,間接評価に対する批判に対していろいろ言いたくなる
- 自己評定に認知的なゆがみや社会的な望ましさが影響することについて
・ それに対しては,サンプルの数やゆがみを受ける項目を除外するという方法がある
・ 直接評価と間接評価に相関がないと簡単に言ってもらっては困る
- 資料で示された間接評価の尺度や測定はどのくらいの精度なのか
- 直接評価と間接評価をつなげていく作業をしようと思えばできる
- DPにつなげていくために重要科目の埋め込み型をして(ここは100%賛成),パーソン・パフォーマンス評価などを通していろいろ見ていくのはとてもいい
・ その上で,DPに基づく学修成果をどのように測定していくかは非常に難しい
- 歯学部のように非常に専門性の高い領域と,課題の多様性をカバーしていくような学位プログラムでは大分性格が違う
・ 最後の到達的なところと関連を持たないところは,心理測定的に余り言い過ぎない方がいい
- 直接評価はベースとしてとても大事で,間接評価も併せて多元的に見ていくのがいい
○ 松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
- 直接評価を間接評価で代替可能であれば,もう間接評価ですればいいという話になる
○ 溝上委員(学校法人桐蔭学園理事長代理,桐蔭学園トランジションセンター所長・教授)
- 代替ではなくて,併用すればいい
・ 直接評価がメインであることには私も賛成している
○ 松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
- 測定論的にならないように,本日の資料にデータは余り出さないようにしている
- 本日言いたかったこと
・ 単に学習成果を測定するということよりは,評価を通じて学ぶことができる評価課題をカリキュラムの中の何か所かに埋め込んでいくことが重要
- 評価課題は,DPに沿って立てられた目標に合わせて作っているため,DPからそれることは考えにくい
○ 溝上委員(学校法人桐蔭学園理事長代理,桐蔭学園トランジションセンター所長・教授)
- 大事だとおっしゃっているところは私も大事だと理解している
○ 松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
- 指摘の通り,間接評価でも細かく評価項目を具体的に書いていくと,直接評価とのずれは小さくなると思う
- 医療系で非常に限定されているという指摘
・ 医療系に限らず,本日提案した発想で評価を組むことはできるのではないか
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 資料4-1,4-2に基づいて可視化についての議論に移る
○ 益戸委員(UiPath株式会社特別顧問,株式会社肥後銀行取締役)
- 松下委員の「評価を通して学ぶ」はすごく大切なキーワード
・ 時代の進歩の中で,機械に代替されることが何かを常に問われながら我々は生きていかないといけない時代が来る
・ 能力のポートフォリオを自分で分かっていることは非常に重要
・ 学生のうちから,きちんとした評価をされることに慣れるのは大切
・ 大学1年生,2年生が自己評価がうまくできなくて,3年,4年になるとできるとは思わない
- 社会人1年生も駄目で,自分の仕事ができているのか,できていないのかすら分からないのが現実
・ 今,自分がやるべきこと,目的,目標は何かということを明確にして,それに向かってきちっとした評価なり客観的なことを伝えていかないといけない
- 手法も大切だが,それをどのように実行していくのかも重要
・ 「教員間の協働」は本当にそれでいいのだろうかと思う
- 教員は教員としてもっとプロフェッショナルになってもらう
- それを支えるスタッフをきっちり充実する
- さらにスタッフと教員の間を取り持つような仕事ももっと出てくるのではないか
・ うちの大学ではそんなゆとりがないという話になるので,グランドデザイン答申が出されたのではないか
- 学生が卒業後どのようになったのかも重要な情報
・ 企業間で「どんな業績ですか」などについて聞かれるのは当たり前
・ 大学でも「あなたの大学はどんなところで,どんな人がどんなふうに働いているんですか。どんなことができるようになるんですか」ということが説明できないといけない
- きちんとしたエビデンスに基づいて自信を持って説明ができないといけない
- できるか,できないか,やりたいか,やりたくないかは,各大学の判断だとは思う
・ そのような教育機関が増えていくことがグランドデザイン答申を作ったときの一つの考え方ではないか
○ 両角委員(東京大学大学院教育学研究科准教授)
- 資料4-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(④学修成果の把握・可視化)」
・ 「学生の同意のもとで学修ポートフォリオに蓄積された情報を,就職先等の社会に向けて提供していく」というのは,具体的に何なのか
- 学修ポートフォリオは大学によって全然違って,中にはかなり細かいものがすべて詰め込まれているが,それを全部出すということなのか
・ 何のために,誰が何を見るのかがよく分からなかったので,教えていただきたい
- 学修成果を把握するときに,より正確にできる限り測ろうなど,やりすぎる傾向がある
・ 測定を一生懸命することに労力を使いすぎて,肝心の教育の改善にほとんどつながらず,皆がつかれている
・ これもあれもしないといけないんだというメッセージとして伝わってしまう恐ろしさを感じている
- 必要最低限のことを書くだけで,これもある,あれもあると書きすぎないことも重要ではないか
・ 詳細はそれぞれの大学の中で考えて議論することも本質的に教育をよくしていく上で大事
○ 平野大学改革推進室長
- ポートフォリオ
・ 全てを公開するか,公開しないかということを意図している記述ではない
・ 大学ごとの特性に応じて判断していただいて公開することも考えられる
- 大学としてこの部分は学生が自分の能力を社会にアピールする上で有用であろうという判断ができるもの
- 手法の記載
・ 「考えられる」としているのは,候補の一つとして提示するということ
- 大学の自主性というものを踏まえた上で選択肢を提示している
- どのように組み合わせるかは,各大学の特性が反映される部分
○ 浅野委員(山形大学学術研究院教授,名古屋大学IR本部特任教授)
- 学修成果の測定は,短期にできるものではなく,かなりの時間が掛かる
・ 苦労して測定した結果について,学内で理解を得ることは容易ではない
・ 学外や産業界から理解を得ることは,更に難しいということを前提に置く必要がある
- ガイドラインが出ると,大学では早急に行わないといけないという認識で動き始めて,短期的に走ってしまう傾向がある
- 山形大学の実践事例「基盤力テスト」について情報提供
・ 学生の能力値と達成度の測定を試みている
- 松下委員の資料で言うと,客観テストの分類3
・ 平成28年度採択のAPの補助により実施
・ 3つの分野で構成している
① 学問基盤力テスト
・ 本日はこれを紹介する
② 実践地域基盤力テスト
③ 国際基盤力テスト
・ ①学問基盤力テスト
- 3つの時点を通じて教育効果を測定する
・ 入学時
・ 学生が1年間の教育を経た2年次進級時
・ 3年間の教育を経た後
- スマートフォンのアプリを独自に開発して実施している
・ 入学時や学期初めのガイダンスで全員の学生が一堂に会するタイミングで実施し,回答率は約9割
・ 学内で審議したところ30分程度で完了できるものであれば合意できるということになった
- コンピューター適応型テストでIRT(項目反応理論)を導入している
・ 現在,1領域5問ずつ出しているので,理論的にはペーパーテストで約70問の問題に相当する形で測定できる
・ 学生によって答える質問が違うので,学生の上限または下限を知ることができるという利点もある
- 結果の例
・ 数学を専門としないカリキュラムでは,1年間を通じてほぼ数学の教育を受けていないため,一気に能力が落ちていく
・ ここまで落ちるはずがないというのが該当する学部の先生方の率直な印象だった
・ 現在,履修履歴などを見ながら今後の対策を検討している
- 大学が一生懸命努力して測定した結果について,すぐに社会から理解してもらえるフェーズには至っておらず,引き続き工夫が必要
・ 基盤力テストの結果を公表しているが記者の方々には取り上げていただけない状況
- 海外のように国レベル,分野別レベルが示されていないと,なかなか次の展開が見出せない
・ 測定した結果がどの辺りに位置付けられるのかを示すことができない
・ 質保証に対応する上で,ガイドラインの検討において看過できない
・ 大学が自ら掲げる水準の質保証に限定されている
- それを超えて,分野や国,あるいはもう少し大きなクオリフィケーション・フレームワークも併せて考えないと,この話は進まない
- 資料4-2「学修成果の把握・可視化について」
・ 卒業率が含まれていない
- 学修成果の一つの重要な指標として,海外では標準修業年限内や1.5倍の卒業または修了率がある
⇒ グランドデザイン答申で卒業率は情報公表の項目に分類されている。情報公表の議論をする際には,どのような情報を公表するのか議論する。(平野大学改革推進室長)
○ 大森委員(共愛学園前橋国際大学学長)
- 学修成果の可視化の主体はやはり学生
・ 学生が学修成果を可視化できるようになる,あるいはその支援をするのが大学の責務という位置付けをきちんとすべき
・ 資料の中では学修成果と教育成果が混同して使われているため,整理が必要
- 資料4-2「学修成果の把握・可視化について」
・ ほぼ間接評価に部類されるもののように感じるが,直接評価は含まれているのか
- 指針での方法論の提示
・ やり方や目標というのは大学によるというのは当然のことなので,画一的なものは無理
・ ただし,どのような教育環境を提供しているかを説明するためには,共通の項目は十分にあり得る
- 現在準備が進められている学生調査等
- 「考えられる」という表記
・ 各大学で考えてくださいということだが,各部署も頑張ってしまうところがある
・ 各大学に任せるということを強く記述する必要がある
- 「組み合わせて」,「関連付けて」,「総合的に」といった表記
・ 何をどうするのか分からない
・ 実施できている大学はよいが,できていない大学は読んだ時点で挫折する
・ 理想までの段階を示す(これならできるかなというところから示していく)
- 学生が学修成果を把握するためには,最低限こういうことができるんじゃないですか
- それができたら次はこういうこともいいですよね
- 理想的にはこうなんですけど
・ 専門家がいない大学が山のようにある中では,指針が実効性を持てるかどうか
- 本学の直接評価の学修成果可視化プロセス
・ ポートフォリオにショーケースを実装している
- 学生が自らの学びを公表,アピールできる
・ 学生がポートフォリオにためていった様々な学修の振り返りや活動の振り返りの中から選ぶ
- URLが生成され,エントリーシート等に記載をして企業に見ていただく
- 地元の企業へのヒアリングを踏まえて作っている
- ショーケースづくりのプロセス自体も,学生が自らの学びを言語化していく過程につながっている
○ 森委員(関西大学教育推進部教授)
- 教育改善と学修評価は,循環関係にある
・ したがって,「教える」を改善するためには,「学び」の評価をメタ的に活用することが必要
・ 学生がどのように学んでいるかをしっかり見取って教育を変えていくことが前提
・ そのためには適切に学習や学びの現状を評価をしていかなければいけない
・ 資料4-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(④学修成果の把握・可視化)」
- 改善のために学修成果の可視化をしましょうというよりも,教育の評価を一生懸命しましょうと書かれているように見えてしまう
- PDCAのA(改革)をするためにC(学びのアセスメント)をしっかりするという部分を強調しなければいけない
・ 評価のための評価になってしまう
- 評価が学生自身の学びの成長につながるような示唆が必要
・ 学生が自分のデータを使ってさらに高みに向かうような手だてを教育環境で育てる
・ 専門用語では自己調整学習
- ショーケース
・ 私が一番最初に見たのはソルトレイクシティーか何かの大学のもの
・ 直接評価・間接評価を合わせて,学生がそれらのデータを使って自分の学びを自分ごととして捉え,外に説明していくことが重要
・ ショーケースはエビデンスが付いているので直接評価としてもいけるか
⇒ はい(松下委員)
・ 学修成果は直接評価メインということにも一致する
・ このような見通しをもっと強調してよい
○ 川並委員(学校法人東京聖徳学園理事長・学園長,聖徳大学・聖徳大学短期大学部学長)
- 可視化といっても,大学単位でまとめてよいというわけではない
・ 例えば,本学には次の学科がある
- 国家試験がある学科
- 指定科目を単位取得すると免許・資格が取れる学科
- 全くそういうものに関連ない学科
○ 清水委員(山梨県立大学理事長・学長,筑波大学名誉教授)
- 我々はディプロマ・ポリシー(DP)に基づいて学修成果の把握・可視化を検討していることを忘れてはいけない
・ ユニバーサル化の時代だからこのようなことを議論しなければならない
・ 46答申のときにはこのような議論はなかった
- むしろ46答申のときには標準年限内に単位を取ったら早く卒業させようという弾力化措置の提言も出た
・ そのような背景を我々は共通認識するということが大事
- 資料4-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(④学修成果の把握・可視化)」
・ 授業科目レベルで「個々の教員ではなく教育課程を担当する教員が集団でしっかりとした体制を組み」ができていない
・ 大学は,わがままな教員集団であり,こういう体制ができないため,教学マネジメントが必要になってくる
・ そのため,教学マネジメントについて同様の文章を学位プログラムレベルと大学レベルにも入れてほしい
・ 学長,学部長といったリーダーシップやマネジメント,体制づくりがないと教学マネジメントの趣旨は生きてこない
- 本学の事例
・ 各学期ごとに大学レベルのDPを4段階で点数化したもの
・ 本学の目的とか使命に関係したものが上に来れば来るほど,本学は目的を達成しているということになる
・ 教員のGPAや大学のGPAも出てくる
- 学生にGPAを課していて,何で先生にはGPAないのか。大学にもGPAあってもいいのではないか
- すべての教員が担当している科目で全部4段階で出てくる
- 先生のGPAも大学のGPAも学修成果の可視化のプロセスで可能になっている
- 学生にやらせるのなら教員や組織も同じことをすべき
○ 吉見委員(東京大学大学院情報学環教授)
- 手段と手法を両方考える必要がある
・ 評価が問題になっているが,個々の教員の労度を増すと決して実現しない
・ 手段も同時に議論していくことが必要
- 分業化,スタッフ,リソースの配分をどうするか
・ 個々の教員が評価に労力を割かなくてもいいように,組織体制が整備されていなければならない
- 中規模大学で実現できても,大きな総合大学では実現が難しい
・ 各学部の力が強い大規模総合大学の問題を議論する必要がある
- そこが最終的に変わらないと,グランドデザインの答申を実現していく最終段階まで行かない
・ これまでの先端的な例は中規模大学や,かなり専門化した単科大学
- 金沢工業大学
- 新潟大学歯学部
- 山形大学
○ 深堀委員(九州大学教育改革推進本部教授)
- グランドデザイン答申は,大学と社会をつなぐ大きなスキーム
・ そうした取組は既にヨーロッパがボローニャ・プロセスを通してやってきたこと
・ ボローニャ・プロセスのチューニングの取組の中でモットーととして掲げられてきたこと
- 「教員である私自身の授業科目から我々教員団のプログラムへ」という発想転換をはかること
- 大学と社会とのコンサルテーション(協議)が非常に重要だと考えられてきた
・ 大学がどのような質を保証すれば社会は納得し,大学を信頼してくれるのかという視点
- さまざまな小道具を精緻化していくことも大事だが,社会の中での大学の在り方に関するより本質的な議論を進めていくことこそが,国の役割ではないか
- 「授業科目の学習成果の習得度(成績評価)」と「学位プログラムの学修成果の達成度」を測定すること
・ 両者は質的に,種類として異なる取組であることは,これまでの議論の中で基本的に合意されてきた
- 松下委員の「重要科目」の位置づけとそれが有効性をもつ背景
・ 「重要科目に埋め込まれた統合的な学習成果」
- 特別な授業科目の学習成果を測定し,そこからプログラムレベルの学修成果の達成度を類推する取組
- 「授業科目レベルの評価」と「学位プログラムの評価」をつなぐ一つの有望な試み
- ただし,これが説得力をもつのは,医療系の大学だから
・ 医療系の大学は質に関する共通の枠組みを持っていることが大きな前提になっている
- モデルコアカリキュラム,医療系大学間共用試験,国家試験等
・ 共通の枠組みを持たない,例えば人文系の大学の中で重要科目の評価をしたところで,社会に対してどれだけの説明力を持つのかは,慎重に考えなければならない
・ 個々の大学だけでできる質保証の取組は限られている
・ 大学と社会をつなぐ枠組みをどのように構築していくのかについて考えることが重要
- 大学の中での教員間の連携だけでなく,大学を超えた教員間の連携の仕組み
- 学問分野と社会との対話の仕組み
- 構築が求められている仕組み
・ 学位プログラムの学修成果の達成度をどの時点でどのような方法で把握し,プログラムの改善に活かすか
- 学外の学協会の活動に参画して開発したアセスメント・ツールを活用
・ 九州大学工学部機械航空工学科機械工学コースをモデルに作成したカリキュラムマップ
- 「達成度調査(専門力)」
・ 工学系連合会として合意しているターミノロジーについて学生がどれほど理解しているかを問う
- 「テスト問題バンク」
・ 国立教育政策研究所
・ 九州大学の教員が,学内の閉ざされた環境で汗水流してアセスメント・ツールを独自に開発するのではない
- 大学教育の質を保証するということは,教員間の連携,大学と社会とをつなぐ取組が重要な意味をもつ
・ 授業科目レベルの工夫,個別大学による学位プログラムレベルの工夫だけでは対応できない
- 連携の仕組みをどう構築していくのかという組織的な議論を深めていくことが,非常に重要
○ 林委員(政策研究大学院大学教授)
- 資料4-2「学修成果の把握・可視化について」
・ DPが完璧にできているという前提がおかしい
・ DPを見直すために学修成果を把握するという視点を入れておいた方がいい
- DPがうまくできているかが見れるような学修成果の把握のアプローチが必要
・ DPが完璧にできている場合
- DPに基づいてカリキュラムマップができて,各授業科目の成績が出て,それを重み付け合計して,それでもういいことになる
- せいぜい卒業研究で総合的な能力を見ればいいという話になるが,そうではない
・ DPがもし適切にできていなければ,駄目な構造のままで学修が進んで,それで終わってしまうことになる
・ 様々な情報を踏まえてDPを見直す
- 汎用的能力がどのくらい身に付いているのか
・ ほかの大学等とも比べる
- 社会に出た後に,社会で必要となっている能力に対して大学で学んだことがどうであったのか など
- 本日の議論では,学ぶ主体者としての学生の方が主体であったが,カスタマーとしての学生という視点がある
・ 学生がそのサービスを享受して,きちんと成長実感が得られているかという視点も必要
- 質保証の質はステークホルダーによって考えることが違う
・ 様々なステークホルダーの質という概念を踏まえてプログラムを見直すべき
・ 外のステークホルダーからの意見を踏まえて学内の改善をしていく視点を入れておいた方がいい
- 本日の議論で内部の話をして,今度は,外に向けての発信の話をする
- 学内以外のステークホルダーが何か情報発信を受ける相手のような話に切り分けられる危険性がある
○ 佐藤(浩)委員(大阪大学全学教育推進機構准教授)
- 資料4-2「学修成果の把握・可視化について」
・ 「把握・可視化の義務付け」と「指針の提示」と「公表」を切り分けるのはおかしい
・ 今回は可視化を義務づけるもの,指針付けの情報の例を提示して,そのうちの幾つかは公表するという関係になるのではないか
・ 「公表すべき項目」だけに出てくるものもここに入れておいた方がいい
・ 卒業率,中退率といった情報を入れるべき
・ DPの達成状況を入れた方がいい
- 最も重要なのは恐らくDPの達成状況
- 単位の取得状況の中の細かなところに少し表現が出てくる
・ GPAを含め,成績の分布状況は学内で把握すべき情報ではないか
・ 「意欲」を義務付けることに疑問がある
- 天気が悪いから意欲が下がったり,何か嫌なことがあって下がったりすることもある
○ 小林(浩)委員(リクルート進学総研所長・リクルート「カレッジマネジメント」編集長)
- この場では専門的な議論が進められているので,外から見たコメントをする
- 学修成果可視化
・ 教授中心の教育から,学修者主体の教育に変えていくという大きなパラダイム転換
- 何を教えたかだけではなくて,何が身に付いたかが重要になってくる
- 高校までは学習指導要領があり,海外ではNQFなどの資格枠組みがあるが,日本の大学・高等教育にはない
- そこで各大学が自ら定めたディプロマ・ポリシーが重要になってくる
- その各大学が自ら定めたディプロマ・ポリシーに対して,学生がどの程度到達したかを可視化することが必要になってくる
- その上で,学生の成長支援,教育改善に資するものとする
・ その前提での質問(資料4-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(④学修成果の把握・可視化)」)
- 正課だけではなく正課外についてはどのように見ていくのか
・ [個々の授業科目の成果や大学内外における様々な学生としての活動の成果]が能力を身に付けることにどのように寄与しているのか
- ディプロマ・サプリメントが可視化において,どのように位置付けられているのか
・ AP事業のテーマ5「卒業時における質保証の取組の強化」で作られている
・ 可視化をすることが目的ではなくて,学生の成長,評価を通じて学生を成長させていくことがポイント
- 振り返りやフィードバックが余り可視化の中に入っていないのは問題
- 企業でも評価後にフィードバックをして,一人ひとりが納得して成長実感を得るようにしないと人が成長していかない
- 評価をした後の活用方法についてもガイドラインの中に入れた方がいい
・ フィードバック,活用,そして教育改善にどのように資するのか