ホーム → 大学に関わる情報メモ → 教学マネジメント特別委員会(第7回)議事録
公開日:2019年9月24日 最終更新日:2020年3月19日
前回に引き続き、学修成果の把握と可視化、その利活用について議論する。
議論のテーマに関連して、事務局から「大学における学修成果の分析・活用等に関する調査研究」について説明。学修成果の可視化をどのように収集・分析・公表・活用しているか。国内外の大学、企業にアンケートやヒアリングを実施。
事務局から「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(④学修成果の把握・可視化)」について説明。「学修成果」は学生個人の自らの学びの成果、「教育成果」は学生を育成できているということ。文末表現について、「必要」は各大学で最低限取り組むことが必要なもの、「考えられる」は例示(グランドデザイン答申では[義務化]と[一定の指針を示すというもの]の2つに分けている)。単独の情報で全ての能力等を代表させるのではなく、様々な情報を組み合わせる。
事務局からの説明を踏まえて議論。 可視化の限界を最初に明確に書くべき、全ての学修成果を把握することはできない。[非常に大まかな比較しかできない]ということを前提にして議論しないと,細かいところに陥ってしまうことを確認する必要がある。正課外学修を含む/含まないが分かるように書いた方がよい。指標を公表することで,モニターしようとする社会的プロセスが歪曲,堕落しがち。この場の議論で指針に過ぎないと強調したところで,指針が認証評価や補助金配分の評価手段などで使われ,過度な測定へ走っていくことを危惧。PDCAのCである[学修成果の可視化,測定]に重きが置かれがちだが,本来はPである[学修成果の測定のデザイン]をしっかり行う必要がある。学修成果のアセスメントシステムを構成する3つの要素は情報・消化・意思決定、各大学では消化の場が不足している。単なる説明責任という以上に,社会との関係再構築のツールとして考えるべき。
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 前回に引き続き,学修成果の把握と可視化,その利活用について議論する
・ 「情報公表」については,第9回,第10回において扱う予定
- 本日のテーマに関する調査研究
・ 「大学における学修成果の分析・活用等に関する調査研究」について事務局から説明する
○ 髙橋大学改革推進室室長補佐
- 資料2「大学における学修成果の分析・活用等に関する調査研究」(概要)
・ グランドデザイン答申の議論と並行して実施した調査研究
・ 委員会の第4回に簡単に説明しているが,改めて説明する
・ 調査内容
- 各大学が学修成果を可視化する際に,どのような形で収集,分析,公表を行っているか
- その結果についてどのように活用しているか
・ 調査の事項(4つの柱)
① 国内の大学・短大に対するアンケート(730校程度)
② 国内の大学・短期大学へのヒアリング調査(6校)
③ 海外機関へのヒアリング調査(AAC&U,NSSE,インディアナ州立大学インディアナ校)
④ 企業の採用担当者へのアンケート(1,091名)
① 国内大学・短大に対するアンケート結果
- 教職員で使ってはいるが,学外への公表には踏み込んでいないもの
・ 単位の取得状況
・ 学修時間
・ 学生の成長実感・満足度 など
- 教員だけが知っていて学生・保護者は余り知らないもの
- どのレイヤーからも利用度が低いもの
・ アセスメントテストの結果
・ TOEICやTOEFL等の外部試験のスコア
・ 留学率,卒業生に対する評価
・ 卒論・卒研の水準
- 9割以上の大学が,社会への説明責任が果たせるという観点から学修成果の公表というものを活用している
・ 本委員会での審議で重視している項目
- 学内の教学マネジメントへの気運の醸成
- 学生の学修意欲の向上 など
・ それらの項目につながると考えている大学は半分ほど
- 学修成果を外部に公表する上での課題
・ 公表するプラットフォームが整備されていない
・ 大学の実態が伝わらず,誤解を生む可能性がある
・ 首都圏では,学内で理解が得られていないということがほかと比べて高い
- 教職員への影響
・ 外部に公表する過程で現状を認識することで,学内での教育改善の動機付けにつながった
・ 教育の質向上に向けたPDCAサイクルの起点となった など
- 在学生への影響
・ 授賞等の実績を公表することにより,学生の意欲向上につながった
・ 英語力の高い学生が入学してきている
・ 数値で状況を見ることにより,学生の意欲が向上した など
② 国内大学や短期大学のヒアリング調査
- DPに設定される到達目標に関連させた学修成果の設定に取り組んでいる大学を調査
- 評価の手法
・ 直接評価
- 外部の共通試験
- ルーブリック
- eポートフォリオ など
・ 間接評価
- 学生評価
- 卒業生調査
- インタビュー調査 など
- 学修成果を達成するための取組
・ 成績上のシステムやeポートフォリオを活用して,学生に自己の学びを振り返る機会を提供している
- 測定や分析
・ 外部の共通試験とGPAの関連を分析
・ 学生調査等の結果を経年比較して,特定の取組に意味があったかを測る
・ 同じ枠組みの学生調査を学校間で比較
- 学修成果を設定するに当たり,学内でどのような検討プロセスを経たか
・ 少数の委員会で案を作って全学に提示
・ 最初から50人規模ほどの大きな委員会で全学的に学修成果へのコンセンサスを作る
③ 学外機関のヒアリング調査
- AAC&U
・ VALUEルーブリックの活用
- 学んだ知識が定着しているかを測定するだけではない
- 応用力(他の状況で使えるか)を図ろうとしている
- 各大学でのカリキュラムへの適用など,コンサルティングをしている
- NSSE
・ 学生調査は継続して実施することで安定した結果が得られるようになる
・ 当初は批判的な教員も受け入れてくれるようになる
・ 収集した学修成果を解釈して実践の場で使っていくのは難しい
・ 学生調査を通じた改善の取組に多くの人が関与していく意識が高まることの方が重要
・ 大学間の差よりも,学生間の差がなぜ生じるのか,どれくらいの差が出るのかといった学内の差に注目する方が重要
・ 成果よりもプロセスの方で何が起こっているのかを把握することが大事
- インディアナ大学
・ 大学としての学修成果の活用等についてインタビュー結果
・ 卒業時に到達していてほしい能力を大学として設定している
・ それを直接評価,間接評価によって把握する
・ 正規授業の成績以外について,大学の発行する正式な書類として学修記録を出している
- コミュニティー活動の経験等
- 手段としては,eポートフォリオを活用している
・ 直接評価と間接評価の組み合わせについて
- 学修成果がきちんと設定された上で直接評価がある
- なぜ学ぼうとしているのか/なぜ学んでくれないのか,どのように学んでいるのかを知るために間接評価を組み合わせる
④ 採用担当者に対する学修成果等に関する意識調査
- どのような能力を重視するか
・ 「コミュニケーション能力や倫理観」を重視している
・ 「チームワーク・リーダーシップ」等を重視している
- ほかの調査と同様の結果
- eポートフォリオを知っているか
・ 「知っていて,実際に使ったことがある」と「知っているが,まだ使っていない」の合計が35%強
・ 実際に使っている場合は,役に立つと考えている方が8割を超える
・ 知っていて実際に採用に使ったことがある方は学生が何をしていたかを非常によく見ている
- 学修時間,授業や課題の自己評価,インターンシップ,サークル活動など
- 公表することが望ましい情報
・ 学部・学科で学んでいることが分かるような情報
・ 大学の個性や特色が分かる情報
○ 平野大学改革推進室長
- 資料3-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(④学修成果の把握・可視化)」
<全学レベル>
・ 教育の評価は大学による教育の改善を目標にして行われるものであるという意見を踏まえて修正
・ 大学の教育成果の把握と学生の学修成果の順にしていた
- 身に付けた能力を学生のうちから把握できるようにすべきという意見を踏まえて順序を逆にした
・ 「学修成果」と「教育成果」
- 学修成果は学生個人の自らの学びの成果
- 教育成果は学生を育成できているということ
・ 「卒業認定・学位授与の方針」の見直しそのものにつなげていくことを記載
- 完全なDPができていることが前提になっているのがおかしいとの意見を踏まえて修正
・ スタッフ,リソース配分等の体制をどのように整えるべきかについて追記
- 学内で責任者をまず明確化する
・ 理事・副学長等の所掌の整理など
- 各組織の代表者から成る委員会を構成するなど
・ 学位プログラムレベルとの連携を前提とする
- その上で,学長のリーダーシップの下で改善を進めることができる全学的な組織を整備する
- その上で,専門スタッフを活用して作業分担を適正化する
- 今後,指針の総論として位置付けることも検討する
<学位プログラムレベル>
・ DPが成果の把握・可視化の出発点であることを強調
・ 文末を「考えられる」から「必要」に書き換えた箇所がある
- 段階的,具体的に記述することが望ましいという意見を踏まえた修正
- 各大学で最低限取り組むことが必要なものは,文末を「必要」とした
- 「考えられる」は例示として段階分けした
- グランドデザイン答申では[義務化]と[一定の指針を示すというもの]の2つに分けている
・ 「学修に対する意欲」
- 注意喚起の観点から斜体にしている
- 本日も議論をしてほしい
・ [義務付けが考えられる情報の例]と[指針を示すことが考えられる情報の例]の境(中教審大学分科会将来構想部会での整理)
- 義務付けが考えられる情報
・ 現行の法令に基づいて把握すること
・ 分野を問わずに全ての大学において十分把握が可能であり,DPの達成状況を把握するために必要なもの
- 指針を示すことが考えられる情報
・ 分野によっては可視化が行われないことも想定され得るもの
・ 大学側が学生に学修成果に関する情報をフィードバックしていくことを記載
・ ディプロマ・サプリメント
- 私どもとしては,卒業時に成績表を超えて学生の能力を示す一つの営み,試みと承知している
- 学生がどのような能力を身に付けたかを卒業時にまとめて返していく
・ 単独の情報で全ての能力等を代表させるのではない
- 様々な情報,手法,直接的なもの,間接的なものを組み合わせることを意図している
・ 「関連付けて」という表現
- DPの各項目にどの情報が紐付いているかを表す
・ 「包括的に」という表現
- 学生の成長,学修上の能力の伸長を一面的ではなく,多面的な角度から描き出すことができるということを表す
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 資料の説明は以上
- ここからは議論を行う
○ 沖委員(立命館大学教育開発推進機構教授)
- 大学全体レベル
・ 正課外学修を含む/含まないが分かるように書いた方がよい
- 私は含むべきだと思っている
- 「ルーブリック」に注釈が必要
・ カリキュラム・ルーブリック,長期的ルーブリック,コース・ルーブリック,採点用ルーブリック等について書かれている
○ 深堀委員(九州大学教育改革推進本部教授)
- ディプロマ・サプリメント
・ ディプロマ・サプリメントが生まれてきたヨーロッパの文脈
・ 個々の学生の能力に焦点化するものではない
・ 次のことを客観的に説明するのが目的
- 「学位」が制度全体の中にどのように位置付けられるか
- 「学位プログラム」がどのような知識や能力を育成しようとしているのか
・ その一つの項目として,成績評価の情報を加え,学生が学位を取得するに値する成績を修めたのかを説明している
・ このヨーロッパの質保証の枠組みは,アメリカも追随する形で制度が整えられてきている
・ 大学の自律性や多様性を保ちながら質を保証する方法として,学ぶべき点が多い
- 大学教育の大きな枠組みを共有することが必要
・ その共有をせずに,各大学が思い思いの方法でDPを策定し,それに基づいて非常に精緻な仕組みで学修成果を可視化しようとしている
- それで,一体,何を説明しようとしているのか
- 多様な大学で育成された学生の能力を,何らかの一般化された指標で直接可視化することにどれだけの意味があるのか
・ 大学教育とは何か,その中で学位は何を保証するものなのかという大きな枠組みの議論が必要
- これまでに「学士力」や「分野別参照基準」の策定など,様々な努力がなされてきた
- その成果はこの議論の中で一体どのように位置付くのか
- これまでの成果を無視して議論をすすめてはならない
- 国立教育政策研究所で,この10年余りエキスパート・ジャッジメントの涵養に取り組んできた
・ 「参照基準に基づいた抽象的な学修成果」
- 各大学の学位プログラムと授業科目の中で具体化するには,非常に高度な専門的な判断力(エキスパート・ジャッジメント)が求められる
・ 2008年から2012年にかけて実施されたOECD-AHELOの後継事業
- OECD-AHELO
・ 国や大学の違いを超えて,大学が学生に身に付けさせる知識や能力について合意を形成
・ テスト問題に具体化できるかを検証する取組
・ 日本は工学分野の取組に参加した
- その取組を通してエキスパート・ジャッジメントが著しく涵養される効果に着目した
・ その後も継続的に取り組んできた
・ 延べ25機関65人の専門家に参加してもらい,参照基準に基づく抽象的な学修成果をテスト問題に具体化する取組を継続している
・ それを各大学で実施し,ベンチマーク情報を含めてフィードバックをすることで教育改善に活かしていくスキームを現在開発している
・ 取組で採用している参照基準
- ヨーロッパ,アングロサクソン国,東アジアの国々の技術者教育の中で合意されている基準
- それに基づいて,OECD-AHELOのなかで作成した枠組み
- 多肢選択式問題と記述式問題の両方を作成している
・ 資料に記載の例:「技術者のように考える力」を測定することを目指す記述式問題
・ 大学教員には,抽象性のレベルの異なる学修成果を行き来しながら,学修成果の評価を行うことが求められている
- 「授業科目レベルの具体的な学修成果」(青字)
- 「参照基準に基づく抽象的な学修成果」(赤字)
- 学士力等で言われている「汎用的能力」
- それらの対応関係,それぞれがどのように紐づいているかを整理(資料4「委員御提出資料」26ページの表)
・ 大学教員は,授業科目レベルの学修成果の評価(青字)においては,長年の経験を蓄積してきた
・ 今求められているのは,学位プログラムレベルの学修成果,参照基準に基づく抽象的な学修成果の評価(赤字)
・ このアセスメント・ツールを教学マネジメントにどのように活用していくのか
- 九州大学で検討を進めている具体例
・ 左の欄の学修成果
- DPを参照基準枠組みに基づいて整理したもの
・ 1年生から4年生,修士,博士課程の授業科目がどのように紐づいているのかを整理
・ このカリキュラム・マップ(コースツリー)を整理するうえで重要になること
- 授業科目レベルの学修成果と参照基準に基づく抽象的な学修成果との紐付けの理解
・ このように整理したうえで,学修成果の達成度の評価を複数の段階で導入している
- 2年生で8大学連合会の達成度調査(専門力)などで知識の習得度を確認
- 4年生で国立教育政策研究所のテスト問題バンクで考える力を測定
- プログラム修了段階でルーブリック等を用いたパフォーマンス評価を導入 など
・ ルーブリックに基づくパフォーマンス評価の客観性を確保するうえで,エキスパート・ジャッジメントが重要になる
・ 達成度調査やテスト問題バンクなどの経験を通して教員が抽象性のレベルの異なる学修成果について議論し,理解を深めることができる点も重要
・ 教学マネジメントのPDCAサイクル
- 学位プログラムレベルのPDCAと授業科目レベルのPDCAを明確に分ける
- そのうえで,それらをリンクさせていく仕組みを具体的に考える必要がある
- 「学位プログラムの学修成果と授業科目の学修成果を紐付ける取組」と「学修成果を把握・可視化していく取組」が2つのレベルのPDCAをつなげる
○ 平野大学改革推進室長
- ディプロマ・サプリメント
・ 深堀委員の指摘は承知している
・ 一方で,いわゆる日本版ディプロマ・サプリメントと言われるようなものも出てきている
- 今,定義が定まらず,本来のディプロマ・サプリメントとは違った言葉も流通している
・ 資料上あえて「ディプロマ・サプリメント」という言葉を使っていない
- 前回,大学が作る学位プログラムの学修成果を客観的に位置付ける枠組みなどが必要ではないのかという議論があった
・ 学位プログラムを作る上で,何を参照して,どのような形で客観的に説明できるのかを追求すべきとのメッセージは盛り込む
・ しかし,その枠組みを超えて,実際にどのように運用を進めていくのかというところはなかなかこの場では扱いにくい
・ ただし,例えば設置基準や認証評価等,大学を超えた国レベルの質保証については,部会を設定して議論をしていく
・ この会議での意見は関係するものが多いため,しかるべき場所に引き継ぐ
○ 佐藤(浩)委員(大阪大学全学教育推進機構准教授)
- 「可視化の議論に関わるミッシング・ポイント」
・ これまで議論されなかったり,本文の中にまだ取り入れられてないであろうと思われる点
・ アセスメントの前提
- 「かんじんなことは、目には見えないんだよ」 (『星の王子さま』)
- 意欲のようなものを評価することによって,それが破壊するような結果を及ぼす危険さえある(板倉,2003)
- 測定基準に対する執着の問題(ミュラー,2019)
・ 学修成果のアセスメントは適切に行われれば有益だが,全ての学修成果を把握することはできないし,してはいけないものもある
- 把握した成果の全てが可視化できるわけではなく,それが改善されるわけでもない
- 意図せざる負の結果を生み出すこともある
・ アセスメントの目的
- 熟議の上で出発点を作る必要がある
- 外から言われたからではなく,大学自身と学生のために行うべきものという大前提の確認を学内で行う必要がある
- 学修成果のアセスメントは,全学を挙げての共同研究
・ よい研究にはよいリサーチクエスチョンが必要(鳥居,2015)
・ 組織学習としての学修成果のアセスメント
- 組織論の知識創造の営みそのもの
・ 学修成果のアセスメントの担い手
- 1層の学習レベル:学生や教員
- 2層のミクロレベル:教員
- 3層のミドル教育レベル:学部・学科長や教務系職員
- 4層 のマクロ教育レベル:教学担当理事・副学長
・ それらに対するFD・SDあるいはIRerの配置・養成等も必要
・ 担い手と同時に,どのようなシステムや組織でアセスメントを進めていくのか
- システムを構成する3つの要素
・ 情報と消化と意思決定
- 各大学では,消化の場がない,あるいは不足していることが問題になっている
- CからAに移る,あるいはAからまた再度のPに移る辺りのプロセスについて,もう少し書き込んでもいいのではないか
・ 「把握・可視化」
- 厳密に言うと「把握」と「可視化」は違う
・ 把握は,成果のアセスメント(測定)
・ 可視化は,その測定された学修成果を量的・質的に表現すること
- 用語集での定義が必要
・ 把握・可視化の義務付けと,一定の指針
- しっかりとした定義を基に仕分けした方がいい
- 義務付けするのは、教学マネジメントを行う上で全ての大学において学内で共有しておく必須の事項
・ 先ほどの事務局の口頭説明をしっかり書いた方がよい
・ アドミッションに関わる情報については委員会の領域があるため,ここでは列挙しなくてもいいのではないか
- 義務付けから外すべき情報
・ 学修時間
- 政策文書で「可視化」というとすぐに学修時間が出てくる
- しかし,高等教育レベルで学修時間を前面に出して議論している国というのはあまりないのではないか
- 初等中等で個別最適化学習が進んでいるため,ここで出すのはやや時代遅れな感がある
- 測定の難しさの問題もある
・ 成長実感・満足度,意欲
- まだ不確定・不安定なため,これを全国レベルで義務付けるには慎重であるべき
- 各大学がするのは自由
- 成績の分布状況やリテンション率を入れてはどうか
・ 本文中では触れられているが,指針が出ても,資料3-2の表が出回ることになる
・ この表で各大学が動くことを考えて,ここの情報を精査することが大事
・ 「指針を出す事項」
- 学内で共有することが想定されたり望ましい情報とされている
- 一部の評価指標だけが出ることを,どのように考えるか
・ 考えていくと,実はいろいろある
・ 「重要科目」の学修成果,国家試験の合格率,臨床実習,統合実習,卒業制作等
- 一定の指針というよりは,学修成果として扱われる情報例として列挙するくらいにとどめた方がよいのではないか
○ 松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
- 非常に効力を持つのは資料3-2「学修成果の把握・可視化について」
・ 資料3-1で直された定義を資料3-2に反映することが必要
- 本日説明があった調査報告書と,全国学生調査について
・ 英国のNational Student Surveyと,NSSEが参考として挙げられている
・ [全国学生調査]と[National Student Survey,NSSE]で異なるところがある
・ 全く同じものにする必要はないが,異なる理由が不明
- [全国学生調査]と[National Student Survey]の相違
・ 対象学年
- National Student Surveyでは最終学年が対象
- 全国学生調査では3年生の秋を対象にするということになっている
・ [大学教育はどのくらい役に立っていると思うか]の設問で尋ねている力
- 「文献・資料・データを収集・分析する力」,「論理的に文章を書く力」,「問題を見つけ,解決方法を考える力」,「多様な人々と協働する力」など
- 3年まではゆるやかな伸びだが,4年生の経験を通して伸びると感じる教員は多い
・ 卒業論文・卒業研究,臨床実習・教育実習等
- 3年生を対象とした場合,その辺りが十分把握できないのではないか
・ 4年生は回収率が低くなることや,生活時間が他の学年と違うことを考慮したと思う
・ 回収率は工夫次第で一定水準を確保できるし,生活時間は卒業時調査を行っている大学の方法が参考になる
・ 全国学生調査で3年生の秋を対象にした場合,残りの1年余りの成果はこの調査で把握しなくていいということになりかねない
- 教学マネジメントでは,学士課程4年間のカリキュラムの体系化ということを非常に重視している
- [全国学生調査]と[NSSE]の相違
・ 調査結果の取扱い
- NSSEでのヒアリングの結果について報告書で書いていること
・ 「私たちの方で結果を集めた後は,組織の方に結果を送り,私たちの方では公表していない」
- この点について先ほど紹介がなかったので,注意を促したい
・ 公表していない理由
- 指標を公表することで,モニターしようとする社会的プロセスが歪曲,堕落しがち(キャンベルの法則)
・ イギリスでは,NSSという学生の満足度の調査が行われている
・ その調査に対して,自分の組織がよりよく見えるように学生を動機付けして,良い答えを出すようにキャンペーンを行っている大学がある
・ NSSに対するNSSEの批判が書かれている
⇒ 頂いた意見を担当課につなぐ(平野大学改革推進室長)
○ 両角委員(東京大学大学院教育学研究科准教授)
- この場の議論で指針に過ぎないと強調したところで,指針が認証評価や補助金配分の評価手段などで使われ,過度な測定へ走っていくことを危惧
・ 『測りすぎ』(ジェリー・ミュラー)で指摘される「測定執着」
- 本の中で高等教育も一つの事例として出てくる
- 企業の場合は,測り過ぎて利益がなくなるところまでは測定しない
- 大学には利益の概念がないため,大学,認証評価機関,政府などがデータの測定に夢中になる
・ 測りすぎてもいいことをもたらさないと言われていることは心に強く留めてもいい
- もう少し直感的なものを大事にした方がよいのではないか
・ 日本企業が欧米の管理手法をまねし過ぎて,競争力を失っている(野中郁次郎先生の研究)
- オーバーアナリシス,オーバープランニング,オーバーコンプライアンス
・ 日本の大学でも同様のこと起きているのではないかと感じている
・ 研究者が専門用語を使うのは分かるが,大学の教職員も専門用語を使って話している状況は,思考を狭めているのではないか
・ 全部厳密にしていくことがこの指針として本当にいいのか
- この会議で議論すべき一番大事なところ
・ 個々の学生の学修力をどのように上げてあげるのか
- 学内で皆がきちんと理解できる言葉で建設的な議論を行い,一定の合意形成,協力の中で教育が行われることが大事
・ 難しい言葉を使い過ぎず,平たい言葉を使う
- 学生たちは本当に成長しているのか
- 満足しているのか
- この学校に入ってよかったのか
- どういう能力が伸びているのか
- どこが弱そうなのか
- 大学が公表することが望ましい情報(図表4-5)
・ 大学側は大事だと思って必死に対応しているが,社会はたいして重視していないと答えている
・ コンプライアンス的な発想(教育力を示すために公表しておこう)よりも,社会からの批判に主眼を置く議論が必要ではないか
- 大学全体レベルについて,大学の組織・体制に関する事項は指針の総論として位置付けることを検討とある(資料3-1)
・ 学長のリーダーシップは進んできてはいるが,本当に教育改革を進める体制は,まだ多くの大学で十分に整っていない
- 特に大きい大学で,全学の教育の責任者は学内の調整ばかりしている
・ 教学マネジメント体制に対する指針,もしくは幾つかのいい例が出せるとよいのではないか
- 書き過ぎないようにする
・ いろいろなキーワードが改革の小道具のようにあちこちでささやかれて,それを基に学内で無理やり議論することに使われる
○ 益戸委員(UiPath株式会社特別顧問、株式会社肥後銀行取締役)
- 第2回委員会の日比谷メモに戻る必要がある
・ 教学マネジメントがしっかり出来ていない大学に対して幾つかのことを提案するようにしなければいけない
・ 書き過ぎもいけないが、書き過ぎないのもいけない
- 測り方のルールを作れば良いのではないか
・ [従業員が組織に属して自分の人生の目標を達成しているのか],[その達成に至る満足度はどうなのか]を組織が理解しておくことは重要
- それなくして組織運営はあり得ない
- 成長実感,満足度,意欲
・ 今まで学修者側に立った目標設定がなかった
・ あなたの状況はこのくらいと評価をすることで,より成長意欲が高まっていく
・ 測定が難しいとのことだが検討してほしい
- 大学側ができる,できない,学長が困る,困らないということを考慮して教学マネジメントを考える必要は全くないのではないか
○ 浅野委員(山形大学学術研究院教授、名古屋大学IR本部特任教授)
- 資料3-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(④学修成果の把握・可視化)」
・ 学修成果はどうしても測定論の話になってしまうため,少しでもマイルドにすることを検討する必要がある
・ 実践している中で直面してきたことを踏まえてコメントする
・ PDCAのCである[学修成果の可視化,測定]に重きが置かれがち
・ しかし,本来はPである[学修成果の測定のデザイン]をしっかり行う必要がある
- ポリシーを設定する
- そのポリシーに基づく学修成果の測定をデザインする
- それらを行うには多くの時間と学内関係者との調整等が必要
- 時間もかかる
・ Pがしっかりなされない限り,測定した結果を有効に活用することができない
- 優れた測定方法を実践しても,ポリシーやカリキュラムとの紐づけができない
○ 溝上委員(学校法人桐蔭学園理事長代理、桐蔭学園トランジションセンター所長・教授)
- 資料3-2が中心に見られることになるので,この委員会としてはできるだけ適切・正確に定義,関連付け,説明をしていく必要がある
- 教学マネジメント,学修成果の可視化ができていない大学がたくさんある
・ そのような大学が資料3-2を見た場合,例が多過ぎると思うのではないか
- 半分くらいがよい
・ とくにできていない大学は書かれていると,全部しようとする
- 正課外
・ ディプロマにつながる正課に焦点が当たるが,学生は正課だけで学んでいるわけではない
・ 教学マネジメントや学修成果で正課外をどのように位置付けるか難しい
- メインに持っていき過ぎるのは駄目だが,うまく位置付けられないか
- 学修時間
・ 佐藤(浩)委員は前面に出しすぎと指摘していたが,学修時間はとても大事だと思う
・ 特に授業外の学修時間はあまりに短過ぎる
- 初等中等教育では家庭学習の時間が学力格差につながっている
・ 海外と比較して短いという議論や,単位制度の観点ではなく,そもそも短過ぎる
・ 測定は難しいが,大事な観点
○ 伹野委員(独立行政法人国立高等専門学校機構理事、函館工業高等専門学校校長)
- 学修成果の可視化に関する国立高専の取組事例を紹介する
- 国立高専の教育の構成
・ [全高専共通のモデルコアカリキュラム(MCC)を基盤とした教育]と[各高専独自の特色のある教育]
- 教育内容
・ ウエブシラバスで公開されている
・ それに従って教育実践が行われる
- 学修成果
・ 各高専で成績やアンケート結果などを様々な形で可視化
・ 高専機構全体としては3つの仕組みを現在用意しているところ
- CBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)を利用したMCC到達状況の可視化
・ MCC:国立高専,全高専が学修すべき内容と到達目標をまとめたもの
・ その到達状況を可視化するためにCBTを活用する
・ 成績や分析結果が教員に配付される
・ 現状では,学生が自らMCCに対する到達状況を確認できるシステムはできていない
・ 現在検討中の高専ポートフォリオでの実現を近々に立ち上げるということ目指している
- 実験スキルの可視化
・ 実験・実習というのは高専教育の中心
・ 社会実装教育,実践教育を重視しているため,高専教育として重要な位置付けをしている
・ 高専全体で実験をある程度統一した基準で実施し,身に付けた実験スキルを明確にして測定する
・ 標準的な実験書を作成し,それに合わせたスキル評価シートに基づいて可視化の活用を開始した
・ 評価に専用のシステムを活用すれば,教員評価と学生評価の結果がいつでも確認可能になる
- 分野横断的能力の可視化
・ 野横断的能力とは,コミュニケーションスキル,論理的思考力,主体性,チームワーク力など高専教育の横串となる力
・ 可視化が難しい
- そのため,アセスメント指標,標準ルーブリック,育成モデルをまとめて,全高専で活用可能なものとして現在提示している
・ 専用のシステムによって,教育評価,自己評価,学生相互評価などの測定結果と履歴が閲覧可能
○ 吉見委員(東京大学大学院情報学環教授)
- 資料3-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(④学修成果の把握・可視化)」
・ 委員からの個々の指摘を事務局が一生懸命取り入れて資料が作られていく
・ それにより部分最適化が積み重なって,全体像が分からなくなってくる
・ 整合的であるかのようで結局は玉虫色になる
・ 公表されたときに大学の側はつまみ食いをする
- 自大学に都合がいいように部分部分の文章を引っ張り出し,辻褄を合わせて自己主張をする
・ 何のために答申を出したか分からなくなる事態が起こる
・ 多くが「べき」論
- 何のためのアセスメントか,何のための教学マネジメントかという主軸の議論を前面に出す必要がある
・ これだけは全大学が聞いてくれということを言わないとだめ
・ そうではない要素は濃淡、メリハリをしっかりつけていく
・ そのために喧々諤々の議論をここでやっていく必要がある
・ 事務局に求めること
- 意見の何々を入れましたということを説明するのではない
- 軸はこうです,この論点とこの論点が対立して両立はしません,どちらを優先しますか,それはなぜですか,何が未来の日本にとって最重要ですかということを説明する勇気を持つ
- 単なる説明責任という以上に,社会との関係再構築のツールとして考えるべき
- 可視化を通じてこの社会を変えていく
・ 社会の側がどう見るのか,大学側が何を目指すのか,この接点をきちんと詰める必要がある
- 学修時間
・ 測定は難しいが外すべきではない
・ 教学マネジメントの相当部分が学生たちの時間構造のマネジメントの問題
- 学生たちの時間は有限
- 自分の有限な時間を,これはバイト,これは授業と割り振っている
・ 学生たちに,その時間の分節化を有効にさせてあげるにはどのような教学マネジメントが適しているのかを考える必要がある
・ そのため,1週間当たりに履修する科目数を半減させないと,学修成果は絶対上がらないと言い続けている
・ 学生の有限な時間のマネジメントのためのステップとして実質的な学修時間という指標は重要
○ 川並委員(学校法人東京聖徳学園理事長・学園長、聖徳大学・聖徳大学短期大学部学長)
- 学生は学修時間を[机にかじり付いて調べ物をしている時間]と捉えている
・ 例えば,本学の学生たちは自宅で折り紙やピアノの練習をしているが,それらは学修時間に入っていない
- 学修の捉え方の定義も少し広く捉えるように工夫をしていただけたら有り難い
○ 小林(雅)副座長
- 非常にまとまってきたところと,まとまってこない部分と,両方に分かれてきている
- 事務局が一生懸命していただいているのは分かるが,書かれていないことがかなりある
・ 口頭で説明された部分はかなり多いが書かれてない
・ そのため,委員が分からなくなってきてしまっている
- 評価できないことは,やはり評価できない
・ 可視化の限界が非常にはっきり分かった
・ その辺りのことを最初に明確に書くべき
・ ただし,評価できないものを評価するにはどうすればよいのか,次の議論をしないといけない
・ 評価の問題というのは何十年も同じような議論をして,その中で少しずついろいろなものができて進んできた
・ 理論的には可視化や評価は完全にはできない,しかし,その中でどのような努力をしてきたかが一番重要
- 評価できないものは中教審としては使えない
・ 各大学がしたければしてもよいというのが,まだ完全に明確になってない
・ 事例を集約するのは不可能
・ 事例を紹介するので,したい大学ではしてくださいということになるしかない
- 同じ定義を用いない限りベンチマーキングはできない
・ しかし,いろいろな考え方があるため,同じ定義は多分できない
・ 対象学年(3年生か4年生か)の議論もあった
- 学修時間を入れるか,入れないかはもう少し議論しなければいけない
- 意欲は難しいが,達成度を測るという意味ではできるのではないかという議論もあったので,詰めていく必要がある
- [非常に大まかな比較しかできない]ということを前提にして議論しないと,細かいところに陥ってしまうことを確認する必要がある
・ 例えば学修時間は,1時間から5時間といった単位で測定している
○ 清水委員(山梨県立大学理事長・学長、筑波大学名誉教授)
- 内部質保証という言葉が全然入っていない
・ 内部質保証システムの構築が今回の議論の行き先にあるというのを入れておいた方がいい
- 日本の高等教育の特徴となるものを世界に訴える絶好の機会
・ 高専,卒業論文,ゼミ,就職率,大学体育など
・ 日本の学生は授業で勉強していることを堂々と発信した方がいい
○ 大森委員(共愛学園前橋国際大学学長)
- 社会の期待値と実際のずれを埋めるためのカリキュラム改革が必要
- 学生たちが力が付いていれば,まずそれでいい
・ 力を付ける機会というのは学位プログラムの外にある可能性も当然ある
・ 結果としてディプロマにつながるような力が付くこともある
- 今回の議論によって,正課と正課外を比べることで,学位プログラムに足りないところが明確にできるようになったのでありがたい
- 高校までの学びがかなり固定化されているので,学生の学修観を変えてあげないといけない
- 取り組みをしていない大学でも調査はできるが消化できない
・ 統合して消化する仕方をどのように見せられるかが勝負
・ 消化の事例をたくさん入れ込んで示す必要がある
○ 小林(浩)委員(リクルート進学総研所長・リクルート「カレッジマネジメント」編集長)
- 大学における学修成果の分析・活用等に関する調査研究
・ 企業の採用担当者のところで本音だなと思ったのは,公表する方が望ましい情報としては大きく2つですというところ
・ どのような個性・特色のある大学で,何を学んできたかさえ分かればいいというのが,企業側の考え方
・ そのほかのところは,学生が自らの経験を基に自分で語っていくという形になる
・ 大学側が明確にすべきこと
- 個性,特色
- どの学部,どの学科で何を学んだのか,何が身に付くのか
- 大学は,学生が経験価値を振り返って内在化して,それを成長につなげていくサポートをすることが必要になる
・ 新しい学習指導要領では、探究型学習になる
- 生徒自らが問いを作れるようになる
・ 大学は,そのような高校生を受け入れることになる
- 自己肯定感を醸成するとともに,未来のキャリアを自分で考えるためのフィードバックが必要
- 学修成果に正課外を入れていただきたい
・ 学生が就活のときにアルバイトやクラブ・サークルの話をする理由
- 経験価値として内在化できているから
- 大学の授業の話をしないのは,内在化できていないから
・ 振り返りの時間を設けて,自分の言葉で語れるような仕組みにしていくことが、学修者本位の教育という点で重要
○ 林委員(政策研究大学院大学教授)
- 委員会の議論で学修成果の把握の構造が分かりにくくなっている
・ 資料3-1と資料3-2の違い
- 資料3-1ではルーブリック,eポートフォリオ,DPからのカリキュラムマップができた上での授業の評価の話をしている
- ところが,資料3-2では一気に測定論の話になる
・ 数字で測定できるようなものだけが挙がっている
・ 単位の取得状況,学位取得状況などの必然的に出てくるアウトプットと,何を学んだのかといったアウトカムが混在している
・ 分野による違い
- 専門職を育成するので指標で大体見ることができる分野
- 長期に学修成果が得られるということを言っている分野(例えば人文学)
- この表で全ての分野に対応できるという表現にしない方がよい
・ 分野による違いがあることを説明した方がよい
- 学修成果がしっかりと出てくる分野
- 学修成果の把握の取り組みで,幾つかの定性的な情報が出てくればいいという分野
・ 資金配分との連動などで,学修成果を指標で示せという話になる
- 指標では出せない分野があることを示す
- そのような分野では,学修成果の把握を努力している取組などがある種の代替になるというメッセージが出せればいい
○ 平野大学改革推進室長
- 枝葉で幹が見えなくなるようなことがないように,事務局として考え方を整理していく