ホーム → 大学に関わる情報メモ → 教学マネジメント特別委員会(第9回)議事録
公開日:2019年11月3日
本特別委員会のロードマップを修正した。今後,文部科学省高等教育局に質保証システム部会(設置基準,設置認可審査,認証評価などの制度的見直しを検討)が立ち上がり,そこで国が行う制度改正を一体的に検討する
本日の議題は「情報公表」。小林浩委員より,情報公表の必要性や社会がどのような情報を求めているかについて発表。
小林委員による発表。ステークホルダーから見た大学の情報公開の課題は次の通り。情報公開が進まない,学修成果が見えづらい,学部名から中身が分からない。利用者目線で比較できるような形の情報公開に変えていく必要がある。大学の基盤的な情報(学生数,退学率,就職・資格取得等)は数字を羅列するのではなく,理由も公開することが重要。また,各大学の個性が分かる情報も必要。
事務局から資料の説明。資料4-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(⑥情報公表)」。情報公表の総論を事務局として整理したもの。特定の指標のみを用いて大学教育の質を測ったり,一面的な序列化につながるような利用を行ったりすることにならないようにすることが重要。情報公表の情報を収集するに当たって,適切な体制を整えることが必要(学長のリーダーシップ,責任を有する組織の特定,IR部門との連携の構築,あらかじめ必要な手順を定めるなど)。
事務局から資料の説明。資料4-2「情報公表について 」。グランドデザイン答申の項目を事務局として整理したもの。大きく分けて2種類の情報がある。①学修成果・教育成果の可視化に関する情報(個々の学生の情報ではなく,学位プログラムが全体的にどのような状況になっているのかを示す),②大学教育の質に関する情報(入学者選抜の状況,修業年限期間の卒業率,留年率,中途退学率,教員一人当たりの学生数,GPAの活用状況など)。公表にあたっては,大学ポートレートを重要なプラットフォームとして活用していく。
資料4-1,4-2を中心に議論。教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項は,大きく分けて,①[基礎的な情報]と②[大学が独自に集めて強みを主張する情報]の2つがある。大学ポートレートに学校基本調査を活用すべき(現状では指定統計で目的外利用に該当するため活用できないが見直しのフェーズに来ている)。挙げられている項目はあくまで例示だが,独り歩きしてしまい真面目な大学関係者がこのとおりの表を作って載せてしまう懸念がある。
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 事務局より本特別委員会のロードマップの修正について説明
○ 平野大学改革推進室長
- 審議ロードマップから省令改正という用語を落とした
・ 修正前に書かれていたこと
- 学修成果の把握・可視化と情報公表を念頭に置いて,省令改正に取り組む
- 今後,文部科学省高等教育局に質保証システム部会が立ち上がる
・ その部会では,設置基準,設置認可審査,認証評価などの制度的見直しを検討する
・ 国が行う制度改正としての,学修成果の把握・可視化と情報公表の義務付けも、その部会で一体的に検討する
- 本委員会では,学修成果の把握・可視化と情報公表に関して,必要な事項の意義や内容,方法について引き続き議論する
・ 今後作成される教学マネジメントに係る指針に盛り込む
・ 本委員会の成果を質保証システム部会に引き継ぎ,今後の制度改正,義務付けの議論などの前提情報とする
○ 小林(雅)副座長(東京大学大学総合教育研究センター教授)
- ロードマップの修正というのはかなり大きなこと
- 最初から省令にかかわることなどの審議は行わないと決めていたとはいえ,もう少し早く言ってほしかったなというのが正直なところ
・ 情報公表については,本委員会で議論がかなり進んでいる
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 本日の議題は「情報公表」
- 進行
・ 小林浩委員より発表
- 情報公表の必要性や社会がどのような情報を求めているか
・ 事務局から資料説明
・ 小林委員への質疑応答
○ 小林(浩)委員(リクルート進学総研所長・リクルート「カレッジマネジメント」編集長)
- 社会から見た大学の情報公開の在り方について話す
・ 進路選択をする高校生,保護者,高校の先生が,大学にどのような情報を求めているか
- 大学の役割が変わってきている
・ 産業社会に適応し得る全国民の育成に役割が変わってきている
- エリート型からユニバーサル・アクセス型
・ 本年度,4月の学校基本調査
- 大学だけの進学率で53.7%,短大を含むと58%
・ 日本は,ここがほぼ18歳のみで構成されている
- 1990年頃と比べて,18歳人口は201万人から118万人に4割減っている
・ 一方,大学の進学率は2倍以上になっている
・ そのため,大学の数は507校から786校と1.5倍になっている
- 私立大学は定員割れで経営基盤が課題
・ 3校に1校,短大では4校に3校
・ 偏差値が信頼できない(偏差値が操作できる)
・ 半数以上がAO,推薦で入学
・ 高等教育が量的に拡大してきた中で,大学教育・研究の質は担保,保証されているのかと声が聞かれる
- 大綱化の結果,現在では700以上の学部名称がある
・ 学部名を見ただけでは学ぶ内容が分かず,学修成果が見えづらい
- ステークホルダー(高校生,保護者,高校の先生方)の知りたいことは何かについて,リクルートの調査結果
・ 高校生
- 進学のときに知りたかったこと
・ トップは「学校で勉強できる内容」
・ 続いて「入試方法や難易度」「キャンパスの雰囲気」「就職状況」「取れる資格の内容や合格率」
- その学校種(大学,短大,専門学校)に行くメリットは何か
・ 大学,短大は偏差値等で選んでいる
- 大学:将来の選択肢,就職,学生生活,幅広い教養
- 短大:早く社会に出られる,自分の目指す仕事・職種
- 専門学校:専門分野や目指す仕事,職業,特定の業種・業界,そこでしか学べない内容
・ 学ぶ内容,教育の個性や特徴が意外と伝わっていない
・ 保護者
- 短大に進路選択する保護者は,大学,専門学校と短大がどう違うのかにも悩みながら情報を収集している
・ 高校の先生
- 大学,短大,文部科学省に期待すること
・ 情報公開に絞って見ると,送り出した生徒,学生がどうなっているかに興味・関心が高い
- トップは「わかりやすい入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)」
・ 進路指導で使われることによって,とくにAO・推薦の高校生はAPを調べている
- 寮や奨学金,授業料減免,お金の問題
- 就職実績,卒業時に身に付く能力の明確化等(送り出した生徒が何を身に付けているか)
- 主体性の評価,主体性をどのように評価するか
- 分かりやすい学部・学科名称
- 中退者,中退率の情報
- ステークホルダーから見た大学の情報公開の課題
・ 情報公開が進まない
・ 偏差値が信頼できない
・ 学修成果が見えづらい
・ 学部名から中身が分からない
- 大学目線ではなくて利用者目線で情報を整理し理解できるような指標・名称を使用することが重要
- 各大学の個性や教育・学びの特徴,学修成果が分かるような工夫
・ 高校ではアドミッション・ポリシーを活用した進路指導が既に始まっている
- 他の大学との比較を可能にするような情報提供
- 「伝える」と「伝わる」は違う
・ 大学側は伝えているとは思っているが,なかなかステークホルダーに伝わっていない
- 利用者目線で比較できるような形の情報公開に変えていく必要がある
・ 大学の基盤的な情報(学生数,退学率,就職・資格取得等)
- 数字を羅列するのではなく,理由も公開することが重要
・ 各大学の個性が分かる情報
- 建学の精神や,教育や学びの特徴,分かりやすい三つのポリシー等
・ グローバルな視点での情報提供が必要
- 国際的な共通指標,質保証に関する情報,学修成果,国際認証等
- 大学は学修成果を間に置いて高校・社会とのギャップを埋めていくことが重要
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 事務局から資料の説明
○ 平野大学改革推進室長
- 資料3「教学マネジメント特別委員会(第8回)における主な御意見」(説明省略)
- 資料4-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(⑥情報公表)」
・ 情報公表の総論を事務局として整理したもの
・ 情報公表の意義
- 現在又は将来の学生や学費負担者などの直接の関係者に対して
・ どのような学位プログラムおいて,どのような能力を身に付けることができるのか,適切な教育環境は整備されているのか等を具体的に提示する
- 社会に対して
・ 広く有形無形の支援を得ている
・ 教育という公共的使命を担う社会的存在として,大学教育に関する情報を積極的に公表する説明責任
- 情報公表は単に説明責任のみならず,大学教育の質の向上の観点からも意義が位置付けられてきている
- 学修成果を確認することができていないという指摘がある(グランドデザイン答申の問題意識)
・ 大学が学修成果,教育成果を内部で共有することのみならず,社会に対して自発的・積極的に公表していくことが必要
- より具体的に情報を発信して,社会(地域社会や産業界など)と大学の連携を深めていく
・ 個人の人脈を手掛かりにした産学連携や地域との連携を超えて,組織と組織の連携を深め,協力を継続的に得ていく
・ 社会から見えづらいとされている大学内部の取組を理解してもらい,適切なパートナーとして認知してもらう
・ 大学が根拠を持って分析,解説を公表することで,大学教育の質を判断する情報の一つとして活用が可能
・ 特定の指標のみを用いて大学教育の質を測ったり,一面的な序列化につながるような利用を行ったりすることにならないようにすることが重要
- 大学の数だけ個性がある
・ 規模は言うに及ばず,教育の理念・目的,沿革,地理的条件,学生の姿,公的支援や民間からの寄附の水準など
- 情報に附帯する大学の分析や解説を考慮する
・ 大学全体レベルで情報公表を整理
- 現在においても学教法において,教育研究活動の状況や,自己点検評価の結果を公表することが決まっている
- 学教法施行規則(省令)上で既に義務付けられていること
・ 三つの方針に関すること
・ 学生の修学,進路選択,心身の健康等に係る支援に関すること
・ 学生が修得すべき知識,能力に関する情報を積極的に公表するように努める(努力義務)
- グランドデザイン答申で既に整理されているもの
・ 学生
- 自ら何を学んだのかということを把握し,エビデンスをもって他者に説明できるようにする
・ 大学
- 学生がどのような能力を身に付けたかをエビデンスで説明できるようにする
・ 学内で情報を流通させればいいということではなく,外部のステークホルダーが理解できるような内容・表現とする
- 情報公表の情報を収集するに当たって必要なこと
・ 適切な体制を整える
- 学長がリーダーシップをとる
- 責任を有する組織の特定,IR部門との連携の構築,あらかじめ必要な手順を定める など
・ 公表する情報は,大学全体として各情報間で整合性があるように取り扱う
- 各学位プログラムで時点,内容,単位系がばらばらにならないようにする
・ 公表方法
- インターネットの利用なども含めて,幅広く周知ができる方法によって行うことが必要
- 大学として,その情報に対する理解を促進するための適切な分析,解説を,その根拠と併せて付することが望ましい
・ 利用者が適切に情報を取り扱うことができるようにする
- 大学として統一的な表示方法で一元的に閲覧できるようにする(どこを見れば情報公表が載っているのか分からないという指摘がある)
- 利用者の属性と関心に応じた情報の分類を行う(学生や学費負担者,入学志願者,地域社会,産業界など,関心がある情報は違う)
- HPリニューアルなどの際には,情報公表の部分も利用者の意見を踏まえて定期的な見直しを行う
- 外部から問合せに応答する必要な職員の配置を行うことが望ましい
- 大学ポートレートを重要なプラットフォームとして活用していく
- 国際的なところに特徴を有する大学については,積極的に情報を発信していくことが求められる(複数大学で連携,ターゲットとなる国の言語を使用)
- 資料5「学修成果の把握・可視化について」
・ ロードマップの修正
- [学内で共有しておくべき必須の情報]と[学内で共有することが想定される情報]の段階分け
・ 修業年限内に卒業する学生の割合は学修成果の観点から極めて重要なテーマ
- 資料4-2「情報公表について 」
・ グランドデザイン答申の項目を事務局として整理したもの
・ 2種類の情報
- 学修成果・教育成果の可視化に関する情報
・ 資料5の学修成果の把握・可視化の項目に対応した形でまとめている
・ 学位プログラム(所属している学生)が全体的にどのような状況になっているのかを示す
- 主語は学生(学生が○○○○であることを明らかにする)
- 個々の学生の個々の情報を示すのではない
- 平均,分布,全体的な傾向を表す情報
- 大学教育の質に関する情報(重要な部分について説明)
・ 入学者選抜の状況
- 入試が適切に機能しているか
- 多面的かつ総合的な評価・判定に基づき入試が行われているか
- 大学入学者選抜実施要項に基づく公表をする
・ 修業年限期間内に卒業する学生の割合
- 厳格な成績評価が行われていることを前提とする
- 標準修業年限内に学生の能力を伸ばして学位の取得まで到達させることができているか
- そのまま公表するのではなく,カリキュラム,履修単位,登録上限,CAP制,GPA活用状況,留学などを併せて示すことで数値の意味を正確に伝える
・ 留年率,中途退学率
- 低いから良いというのは一面的な見方
- 履修単位の登録上限の設定,CAP制やGPAの活用状況などと組み合わせて多面的に分析する
・ 教員一人当たりの学生数
- 学位プログラムごとの専任教員と在籍する学生の人数比
- 現状でも,大学全体としては公表することになっている
- 単に人数比を公表するだけでなく,クラスサイズの設定,専任教員以外の教員・TA・RAなどを併せて分析をすることが望ましい
・ GPAの活用状況
- GPAのルールのみならず,学位プログラムごとの平均値や分布の公表が考えられる
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 小林委員の発表に対する質疑応答
○ 浅野委員(山形大学学術研究院教授、名古屋大学IR本部特任教授)
- どのような形で情報公表を行えば社会に対して分かりやすい学修成果となるのか
⇒ 全ての人にわかりやすくというのは難しい(小林委員)
- 保護者,高校の先生
・ 幾ら掛かって,何を学んで,どうなれるか(将来の姿を描けるか)
・ そのために,どのような準備をしたらいいか
- 企業
・ 大学を見ているわけではなくて,個々の学生を見ている
・ 個々の学生がどうなったかについて,大学が勝手に示すというよりは,企業や産業界と連携しながら項目を整理していくようなことが必要
○ 佐藤(浩)委員(大阪大学全学教育推進機構准教授)
- 5ページの高校生向けの調査
・ ここで書かれている選択肢が全てか,ほかにあった上でのこれだけか
⇒ ここで書かれている選択肢が全て(小林委員)
・ だとすると,例えば「卒業時に身に付く能力」という項目がない,ラーニング・アウトカムを重視した項目があるとよいのではないか
- 選択肢にはティーチングにフォーカスした項目が多い
・ 教育学では「ティーチングからラーニング」へというパラダイムシフトが1995年くらいに言われている
⇒ 進路選択時の情報について2つの質問をしている
・ 一つが,「知りたかったこと」
・ もう一つが「重視する項目」で、そちらにはそうした項目が入っている
○ 吉見委員(東京大学大学院情報学環教授)
- ステークホルダーとは誰なのか
・ 説明では高校生,保護者,高校の先生
・ これからの大学の行く末を考えると,リカレント教育等のことも考える必要がある
・ そうすると,社会人で大学に入ろうとする人たちや社会人学生,これもステークホルダーになる
・ 留学生もステークホルダー
・ きょうの話の中で,どのように位置づけられるか
⇒ 時間の関係で高校生,保護者,高校の先生について紹介した(小林委員)
- 社会人について検討が必要なこと
・ 学位が必要な人とそうでない人
・ 大学だけではなく,専門学校,大学院,民間スクールを含めてデータを見る必要がある
- 留学生について検討が必要なこと
・ 大学だけではなくて専門学校等もかなり増えてきている
・ 国ごとの違いや,留学と就学
・ 他国との労働条件の違い
○ 大森委員(共愛学園前橋国際大学学長)
- アドミッション・ポリシー
・ 質問項目に「分かりやすい」をつけた意図は何か
- 高校の先生や高校生が,入試制度と勘違いをしていないか
⇒ アドミッション・ポリシーと入試制度を混同している先生はいる(小林委員)
- 先ほど事務局から説明があった情報を,高校生,高校の先生,保護者が全て読み込んでいけるのか
⇒ 量が多いため,優先順位を付けて情報公開の仕方を検討していく方がいい(小林委員)
- 一般の方が見てもわかるような基礎的,基盤的な情報をまず押さえていくべき
- それ以外の大学の方が使うようなベンチマーク的な情報等
○ 松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
- 2つの情報の折り合いをどのように考えるか
・ [他の大学との比較を可能にする情報](レーダーチャートなど)
・ [特定の指標のみを用いて質を測らない,大学の序列化につながるような利用をしない]
⇒ 一つの情報・ランキングになるとゆがんだ情報になる,大学それぞれの個性,特徴,強みや提供価値が見える化されていく必要がある(小林委員)
- 大学自身が他の大学との比較を可能にするような形で情報公開をするとなると情報を揃える必要がある、そのことを考えているか
・ 複数の指標をそろえたり,エビデンスの出し方をそろえたりする必要がある
⇒ 必要,情報の根拠を明確にして指標をそろえた上で数字を出していく必要がある(例:資格取得率の分母など),外から見て分かりやすい情報提供が必要(小林委員)
○ 伹野委員(独立行政法人国立高等専門学校機構理事、函館工業高等専門学校校長)
- 大学ポートレートが使われていない現状と,課題について教えてほしい
⇒ 広報不足,大学間の比較ができない(小林委員)
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- 資料4-1,4-2を中心に議論
・ 資料4-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(⑥情報公表)」
・ 資料4-2「情報公表について」
○ 林委員(政策研究大学院大学教授)
- 大学ポートレートでは二つの面を意識して議論すべき
① 標準化されて比較可能なもの
② そこからは見えないような,もっと豊潤な内容の情報
① 標準化
・ 資料4-2にいろいろ指標が出ている
・ 例えば学生数,卒業者数などのデータはあるが,教員,学生比率や,標準修業年限率になっていない
・ 過去の大学ポートレートの議論で,率は出さない,退学率も余り出したくないから出さないという議論だった
- その結果,先ほどの小林委員の話の通り,使われていないという状況になっている
・ 資料4-2で挙がっているものをこのまま出しても,また同じような話になってしまう
・ 学修成果のところがかなり欠けている
- 枠としては,どういう取組をやっていて,それがどういう結果であるのかは書けるようにしておいた方がいい
・ 枠の例:共通テスト,標準化されたテスト,共通化されたアンケート
② 豊潤な内容の情報
・ 別で議論しておいた方が良い
・ 例
- 雇用者側は個別の学生を見る
・ サプリメントやポートフォリオのような情報を,どういう形で公表するのかということは検討した方がいい
- 分野によっては質的な情報の方が,よほど教育効果が分かりやすいということが,認証評価の評価者から出てくる
・ 卒業生がどういう場で,どういう活躍をしているか
○ 溝上委員(学校法人桐蔭学園理事長代理、桐蔭学園トランジションセンター所長・教授)
- [教育の質を維持・向上させるための質保証,あるいは学修成果の可視化]と[ステークホルダーに向けて,質保証を関連付けていくこと]はかなり違う
・ ステークホルダーに向けた学修成果の可視化,質保証にしていかないといけない
・ そういう意味では,きょうの情報公開は非常にクリティカルな回になる
- 教育産業の方や塾の方が,学校に入って説明会をしている
・ 高校の先生や高校生が大学の様々な情報を一からいろいろ調べて選び取って判断しているなんてことは起こっていない
- それらの人たちのフィルターが掛かる
・ ネガティブに言っているのではなく,しっかり理解して伝えてほしいと思っている
・ 大学ポートレートが大学と高校の真ん中に入っている人たち(教育産業の方々など)に響いていない
- そう考えると,高校の先生や高校生に直に情報が公開されて届くとは思わない方がよい
- 教育産業の方々などが大学ポートレートで偏差値以外にどうポイントを見ていくか
・ 大学の比較というのがどこかにないと,やっぱりまとまらない
- 800もあるような大学をフィルターなしに考えることは難しい
・ できるだけ序列化にならない,だけれども,ある程度,大学のいろんな状況が判断してもらえるような,偏差値以外の,そういう情報公開していかないといけない
○ 佐藤(浩)委員(大阪大学全学教育推進機構准教授)
- この委員会での議論自体が一元的な序列化を促しているのではないかと考えている関係者の方もいる
- 指針の中に,大学は既に一元化なされているという事実を入れておいた方がよい
・ 偏差値という尺度の中で一元化されている
・ それをどうするかをもう少しきちんと認識してもらうように書いた方がよい
- 指針について3つの提言
・ 意味のある情報を,本委員会でしっかりと絞らないといけない
- 林委員の話にあった,比較できない情報についてもしっかりと載せるということに大賛成
・ AP事業等で議論されてきたポートフォリオやディプロマ・サプリメントは企業からすると非常に重要な質的なデータであり,項目として入れる必要がある
・ 教員の業績評価や,FD・SDの状況を入れる
・ 多元的な指標をできるだけ多く紹介する
- 分野別評価に関する言及が余り見られない
- 日本学術会議等で今進んでいる分野別の質保証の取組を進めるということも言及すべき
・ 公表後のフィードバックについて,もう少し踏み込んだ方がよい
- 情報収集をして,情報をきちんと学内で消化をして,それに基づいて意思決定をする
- その上で,その情報の一部を公表するという流れがある
- その後にフィードバックがある
・ 学外やステークホルダーから様々なフィードバックを得て,それを踏まえてポリシーの見直しを行う
・ 外部からの問合せに対応というレベルではない
○ 浅野委員(山形大学学術研究院教授、名古屋大学IR本部特任教授)
- 実際に大学のデータを集める立場から資料4-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(⑥情報公表)」についてコメントする
- 大きく分けて,①[基礎的な情報]と②[大学が独自に集めて強みを主張する情報]の2つがある
①[基礎的な情報]
- 大学ポートレートになぜ学校基本調査を活用しないのかが立ち上げ当時から議論になっている
・ 学校基本調査によって,何十年にもわたり,各大学の情報が国公私立全て,ほぼ同じ定義で集まっている
・ 活用の余地は大きく,かつ大学に全く負担を掛けるものではない
・ ただ,制度上の問題があって,指定統計に当たることから目的外利用に該当するという理由から活用できない状況にある
・ 見直しのフェーズに来ている
・ 国公立については,一部先行する形で,大学改革支援・学位授与機構が大学基本情報という形で,大学の了承を得た上で公表している
・ そのデータを使うと,国公立の比較というのは,かなりのレベルでできるようになっている
- 必ずしも,ここに書いてあるように,学長がリーダーシップを振るって云々かんぬんという話とは直結しない
・ そこを切り分けておく必要がある
②[大学が独自に集めて強みを主張する情報]
- 各大学の個性や特色,学びの特徴については必ずしも十分でない
- アメリカを含め先進諸国ではCIPがプログラムごとに割り振られている
・ The Classification of Instructional Programs
・ 例えば数学を教えているプログラムはどれぐらいあるのかがわかる
・ 標準化などを念頭に置くと,進めないといけないことの一つ(要は学位プログラムに,どういう識別子を与えるのか)
- 社会にまず最初に公表すべき情報と,当面は大学関係者にとどめておくべき情報がある
・ 一切合切データを集めて,いきなり指標化してしまうと,誤った解釈を生むようなものもある
・ しばらくは大学関係者の中だけで,しっかり確認し,それぞれの指標がどういうインパクトをもたらすのかをアセスメントした上で公表していくことが肝要
・ 少し時間はかかるが公表までの段階を分けないと,大学にとってもかなりの心理的ハードルになることが懸念されるので,慎重にやった方がよい
○ 森委員(関西大学教育推進部教授)
- これらの情報が一気に出たときに,どのようなミスリードが起きるのかを非常に恐れている
・ 高校は読み切れない
・ 中間の分析者が,いろいろな指標を作ることを助長してしまう
- 標準化と多様化の組み合わせ
・ 標準化
- 大学基本調査の活用によって大学の負担は減らせる
・ 多様化
- DPを基盤としたPDCAがどのようにに回っているのか
- そこの中に学修成果もFDも入ってくるような形で,大学の責任で特徴を出しながらも公表していく
- ステップ・バイ・ステップが必要
・ 大学人が消化した上で次の段階に進む
○ 佐藤(東)委員(学校法人桜美林学園理事長・桜美林大学総長)
- 情報公開が進んでいないから何とかしたいのは,そのとおりだと思う
- ただ,その前に,大学は何かという設置基準をきちんと整理しないと,それから先,きちんと前に進んでいかない
・ 大学数が増えたというが,大半が,2年制の短期大学から4年制になり,専門学校から4年制になったところもあり,多様化している
○ 小林(雅)副座長(東京大学大学総合教育研究センター教授)
- テーマとして取り上げられている情報公表について,少し大きなことと,もう一つは具体的な提案をする
- 正の効果と負の効果
・ 負の効果が特に一番大きいのは,数字が独り歩きすること
- しかし,ランキングのような情報が出ることは避けられない
- むしろ,大学が情報を出さないことによって問題が起きているという側面もある
- 定義を明らかにした上で,自分の大学の強みを公表することは,これから是非やっていく方向で考えたい
・ ランキングとベンチマーキングは違うもの
・ ベンチマーキングの考え方は指針案に入っているが,言葉は入っていない
・ ベンチマーキングは,個々の大学が自分の大学の強みと弱みを他の大学と比べることであり,ランキングとはかなり性格が違う
- あえて,こちらで定義して何かをするのではなく,各大学をサポートしていけばいいのではないか
・ 各大学の出してくる指標の中で,いいものが残っていく,あるいは整理されていく
- 学位付記名の多さは大学に任せていると解決しない
・ 英語名称の方は統一するということで話が進んだ
- 大学や学部名称,学位付記名称は設置審のときに議論はするが,大学の自由であり強制はできない
- 国際通用性ということが非常に最近言われだして,英語の名称がおかしいのではないかというところから,まず話が来ている
- バチェラー・オブ・アーツ・インのように,インのところで統一しようということになってきている
- それを日本語でもやったらいいのではないか(前にも提案している)
- 今どういう状況になっているのか,英語の方はある程度統一ができているのか
⇒ きょうはデータを持ってきていないため,別途回答する(平野大学改革推進室長)
○ 大森委員(共愛学園前橋国際大学学長)
- 細かなところを2点,理念的なところを1点
- 資料4-2「情報公表について」の項目
・ 進路の決定状況
- 就職希望者を分母にするに賛同している
・ リカレントや国際性を言ったときに社会人・留学生を受け入れるほど就職率は低くなっていく
・ 学修成果のところのアセスメントテストの結果という表記の仕方
- アセスメントテストは直接評価だけとは限らない
- DPに対してのアセスメントの在り方というのは各大学によっていろいろ出てくる
- 学生調査との項目が重複するところをどうするか
・ すぐに公表ではなく,浅野委員の話のように,学内や何かの機会で検討してもよいのではないか
○ 川並委員(学校法人東京聖徳学園理事長・学園長、聖徳大学・聖徳大学短期大学部学長)
- 情報が独り歩きをしないような形での情報公開の本学の事例
・ 卒業率
- 現在は載せていない
- 以前は卒業率に加えて,なぜ卒業率が低いのかについての説明を載せていた
- 短期大学の保育科では,卒業率は約9割(10人に1人は落ちる)
- 本学では,ピアノのスタンダードを決めているために9割になる
- どんなに説明をしても負の情報公開につながってしまう
○ 深堀委員(九州大学教育改革推進本部教授)
- 情報公開は非常に重要であって進めるべき
- ベンチマーキングすべき共通の指標と,そうではない指標と切り分けて行っていくことについても大変賛成
・ ベンチマーキングすべき指標
- 本来業務の教育と研究に時間と資源を使えるように,集めている情報は活用する
・ アメリカでも,ヨーロッパでも行っている
・ そうではない指標
- 標準化できない,大学が社会に対して伝えたい情報とは何か
・ ステークホルダーが何が知りたいかと同時に,大学が何を社会に対して説明したいかという観点から情報公開を考える必要があるのではないか
- 様々な情報公開を学位プログラムの単位で行うことは大前提であり,非常に重要
- 学問分野を中核に据えて,我々が大学として何を社会に対して貢献しているのかを説明していくところに情報公開のエネルギーを注いでいく
・ それ以外の部分は,1回出した情報を適切に使っていくというような切り分けが必要
○ 清水委員(山梨県立大学理事長・学長、筑波大学名誉教授)
- 情報公表あるいは学修成果の可視化は大学の自主的な取組
・ 一生懸命やる大学と,独自の路線を進む大学と,ますます二極化していくのではないか
・ それを避けるためには,ガバナンス・コードの中に教学マネジメントという言葉が求められる
- 国大協にも私立大学にも項目にない
- 公大協では教学マネジメントという柱項目を今入れて議論しているが,教育の質や学修成果の可視化については,教授会レベル,学部・学科レベルでの話になる
・ 社会への情報公表ということになれば,大学の執行部,経営サイドが理解してやらないと普及しない
- 教学マネジメントをガバナンス・コードにどのように位置付けていくのか
・ その辺りは文科省や,今後設置される予定の新しい部会の中で議論していってほしい
○ 吉見委員(東京大学大学院情報学環教授)
- コメント
・ 情報公開の問いは,既に一元的に序列化されている尺度に対して,それをどう多元化するか,もっと違う視点を入れていくかという問い
- 大学は既に偏差値によって明確に一元的に序列化させられている
・ 偏差値による一元的な尺度化は,入学時点の学力による一元化であり,学修成果とは関係ない話
- 質問
・ 学修時間の調査の方法
- それぞれの学位プログラムについて学生の学修時間を,どのように調べるのか
⇒ 各大学の学修行動状況調査を念頭に置いている(平野大学改革推進室長)
・ 大規模総合大学の場合,学部と大学の間にある断層をどのように超えるかという課題を,書き込んでおく必要があるのではないか
⇒ 学部の側に,断層を超えて全学的にどうこうしようというインセンティブは一般的にはなかなか湧きにくい(平野大学改革推進室長)
・ 学長ないしアドミニストレーション部門が意欲を持って,リーダーシップを発揮していけるのかが鍵になってくる
○ 小林(浩)委員(リクルート進学総研所長・リクルート「カレッジマネジメント」編集長)
- ここで出てきていない消費者保護という観点が非常に重要
・ 大体人生において1回ぐらいしか行けなくて,そのために何百万も家計としては負担する
・ そのときに,大学間移動が楽にできればよいが,そういう状況ではない
・ そのため,日常消費財とは違う選択の仕方になる
・ 年間8万人が中退している状況で,ミスマッチも起こっている
・ 一人一人が豊かな人生を送るために大学に行って未来のための学びをする
- それができるような情報提供が一番重要
○ 両角委員(東京大学大学院教育学研究科准教授)
- 法令改正がなくなり,義務化と推奨という段階を分けた示し方をやめたこともあり,かえって羅列感が増した
・ 情報の重要性が全く違うものが全部同じように並列に並んでしまっている
- 自己点検・評価報告書などでたくさんの情報を出しているが,見ている人は,あまりいない
- 項目として書かれたものをすべて,個々の大学で同じように出していくのは少し違うような気がする
・ 個々の大学ではなく全体として,文科省の改革状況調査や,教学マネジメントの指針で大学が変わっていくことを示す
- 企業の人が見たいのは,個々の学生が優秀かどうか
・ 個別の大学の学修成果にそれほど関心はないのではないか
- 高校生や保護者で約800大学を全部見る人は誰もいない
・ 世の中全員の高校生に向けて発信する必要があるわけではなく,自分の大学に来てほしい,来る可能性のある高校生に向けて何を出すか
・ 全大学で共通のルールを作れるか,というと難しいのではないか
- アメリカなどでの情報公開では,出す情報が厳選されている
・ 情報の例
- 修業年限にどれくらい卒業できるか
- 授業料はどれくらいか
- どういう分野が学べるのか
- 勉強時間どうか
- どのようなアセスメントテストを選択できるのか
・ 今回の資料にあるような項目は他大学と比較する必要があるものなのか
- めり張りが付かなくなる
- 真面目な大学関係者がこのとおりの表を作って載せるのではないか
○ 松下委員(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
- 両角委員の意見と全く同じ
- 資料の一覧は基本的にはグランドデザイン答申の項目が全部網羅されている
・ 一部,FD・SDが加わった程度
- 資料4-1「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(⑥情報公表)」の分類方法と,資料4-2「情報公表について」の分類方法が違うのはなぜか
・ 資料4-1
- [義務付けが考えられる情報]と[一定の方針を示すことが考えられる情報]の大きく2つ
・ その中で,[学修成果・教育成果の可視化]と[大学教育の質に関する情報]と分かれている
・ 資料4-2
- [学修成果・教育成果の可視化に関する情報]と[大学教育の質に関する情報]の大きく2つ
- 本委員会では[指標化できる情報]だけでなく,[その大学の教育成果・学修成果を語るのに重要と思われるようなもの]の区別がなされるべきという議論をしてきた
・ しかし,後者の項目は資料に出てこない,結局グランドデザイン答申の項目に挙がっていたものをずっと踏襲している
・ 議論して出てきたものを,資料4-2のような形で生かす余地はあるのか
○ 小林(雅)副座長(東京大学大学総合教育研究センター教授)
- 大学分科会でも同じような議論があった
・ プラットフォームで非常に細かいものが羅列されていて,こんなことはできないという意見が出てきた
- グランドデザイン答申の抜粋は例示だが,まさしく独り歩きしている
○ 日比谷座長(国際基督教大学学長)
- めり張りについては,今,小林委員から説明があったとおり
- 特にきょうは非常に網羅的な表を準備してもらっている
- 真面目な学校が一生懸命やるというのは容易に想像できるが,それを意図しているわけではない
○ 平野大学改革推進室長
- 松下委員の指摘(4象限だったものが2象限になっている)
・ これまでの議論を整理したもの
・ グランドデザイン答申を踏まえて整理することをミッションとしているため,こういう形で整理をしている
・ しかし,項目の数修正という部分も当然あり得べしものだと思っている
- グランドデザインの義務付けの部分を離れて,どのような観点で,どのような段階分けをすればいいのかについて,事務局に意見をほしい
- 本委員会を超える部分についても非常に重要な意見があった
・ しっかりと分かる形でまとめて,引継ぎをしっかり行う