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ホーム → IRなどについての文献メモ → Teeter, D. J. & Brinkman, P. T. (1992). Peer institions.

Teeter, D. J., & Brinkman, P. T. (1992). Peer institutions. In M. A. Whiteley, J. D. Porter, & R. H. Fenske(Eds.), The primer for institutional research. Tallahassee, Florida: Association for Institutional Research. pp.63-72.

公開日:2013年10月14日

概要

自大学と他大学を比較することで、自分たちの大学の方向性を計画・決定するためのデータが得られる。比較がうまくいくかは比較対象の選び方をどうするかにかかっている。比較するときのグループは、①競合グループ、②(自分たちの大学と比べて)上位のグループ、③調査とは関係なく既に決まっているグループ、④役割・目的が似ているグループの4つに分けられる。比較する大学を探すときは目的・状況によって、データ・統計・勘を組み合わせる。

読もうと思った理由

IRについて初歩的なことを丁寧に書いている文献を探していました。そんなとき、ちょうど学内の図書館にそれらしい文献が所蔵されていることがわかったので、読み始めることにしました。その中の第6章です。

また、「大学ポートレート(仮称)」が2014年度から本格実施される予定になっているので、自大学と他大学を比較するときの考え方や方法などを知りたいと思いました。

大学ポートレート(仮称)とは、各大学で共通の仕組みを使って情報を提供するシステムのことです。主に下記の①~③を実現するために整備が進められています。①と②は大学にとっての利点です。③は高校生や保護者の方々にとっての利点です。

①大学にとっては、自大学と他大学のデータを比較するなどして教育を改善するための情報を得ることができます。(今回、この文献を読もうと思った理由の1つは、上で書いている通り、この①についての考え方や方法などを知りたかったからです。)また、②現状ではマスコミなどからの様々な調査に対して類似した情報を繰り返し提供しているので、大学ポートレート(仮称)に情報を集約することを通して、情報提供の事務負担を軽減することができます。③高校生や保護者などの方々にとっては、情報を探すときに大学のサイトなどを個々に調べなくてもよくなります。

「大学ポートレート(仮称)」について、詳しくは以下の文献・サイトなど[1]~[10]に書かれています。

詳細

 ○扱う内容
   - 他大学との比較することの利点
     ・ 自分たちの大学の方向性を計画・決定するためのデータになる
     ・ 予算請求・昇給・授業担当時間数・授業料値上げを説明・正当化するためのデータになる
   - 比較がうまくいくかは比較対象の選び方をどうするかにかかっている

 ○先行研究
   - 他大学との比較についての先行研究は大きく2つに分けられる
     ・ 比較することについて広く考えているもの
       - New Directions for Institutional Researchに概観できる論文が収められている
         ・ Ewell(1987):情報の使い方、意思決定者との共有
         ・ Brinkman(1987):比較するときに役立つデータ、それらのデータの分析方法
         ・ Teeter(1983):データの交換・比較
     ・ 比較する対象の選び方について考えているもの
       - Teeter & Christall(1987)に様々な方法が紹介されている

【文献】

 ○グループでの比較
   - 比較データを見る人がどういう態度なのかをまず考える必要がある
     ・ 批判的な人が見ることになるのであれば、データを作る過程にその人を巻き込むとよい
   - その上で適切な方法を使って比較することになる
   - 比較グループをどうするかは意思決定に大きく影響を与える
   - 比較するときのグループは4つに分けられる
     ① 競合グループ
       - 学生の層、学部などが似ているグループ
       - 役割・目的が似ている必要はない
     ② (自分たちの大学と比べて)上位のグループ
       - 似ているところがなくても比べる価値のあるグループ
     ③ 調査とは関係なく既に決まっているグループ
       - 同じ地域にあるなど何らかの関係があるグループ
       - 以前から比べてきたグループ(比べることに異論が出にくい)
       - 政治的・法的な区分でのグループ(州など)
     ④ 役割・目的が似ているグループ
       - 役割・目的は全く同じである必要はなく、似ているだけでよい
   - 比較する大学の探し方
     ・ データ・統計を使って探す
     ・ データ・統計・勘を使って探す
     ・ データ・勘を使って探す
     ・ 勘だけを使って探す
   - 比較する大学の探し方の例(the National Center for Higher Education Management Systemが作成)
     ・ まず名義尺度を使って比較する対象を限定する
       - 例:国公立大学/私立、都市部/郊外など
     ・ そして順序尺度を使ってランク付けして比較対象を決める
       - 例:フルタイム換算の学生数、学部/修士/博士の割合、学部の割合(人文/経済/工/…)など
       - 各順序尺度についてのチェック表を使う
         ・ 数値を記入する欄
         ・ 3択(とても重要/重要/重要ではない)でチェックする欄
     ・ この方法はデータを使っているが、最終的には勘が重要になる
       - 対象を決める手続きは明確だが思い込みで決める可能性があるので注意
   - 公開されているデータを使うときの注意点
     ・ 各データはそれぞれ違う目的のために集められたものであることが多い

感想

自大学と他大学を比較するときの考え方と方法を知ることができました。具体的には、比較して得た情報を見る人がどのような態度なのかを分析する前に考えておくこと、比較するグループには種類があること(競合・上位・既定・類似)、比較する大学を決める方法があること(名義尺度・順序尺度のチェック表)の3つです。

大学ポートレート(仮称)が本格実施されると、今よりも簡単に様々なデータを比較できるようになります。そして、その結果、教育改善に役立つ情報を得ようとして分析を行う機会が増えてくるかと思います。そのようなときに、今回の文献で知った[比較することについての考え方・方法]が役に立ちそうです。

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