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公開日:2012年8月11日 最終更新日:2013年2月23日
大学サラリーマン日記(asitano1poさん)の記事:「大学データブック2012」から見えてくるもの(1)、(2)、(3)、(4)
Benesse教育研究開発センターが2011年度までに行った調査の報告書。大学教育について考えるためのデータとして提供されている。18の調査を5つの観点からまとめたもの。5つの観点とは、1.高校生の学習・進路選択の状況、2.大学生の学習・生活の状況、3.海外留学の課題、4.就職活動の現状、社会で求められている力、5.大学の内部質保証の課題。
大学をよくしていくためには数字を根拠にして考えていくことも大切です。そのためには大学の様々な側面についての数字を知っておく必要があります。その情報源として「大学データブック2012」の存在を知り、どんな数字が紹介されているのか興味を持って読み始めました。
報告書の目的は成功していると思います。大学教育を考え、自校をより良くしていく取り組みを作っていくときに、役立つ情報がたくさん含まれています。中でも、高校生・保護者が進路選択の際に学ぶことを最も重要と考えているというデータが印象的でした。根拠となる数字を探すときの情報源としても使えますし、ざっと眺めているだけでもいろいろ発見があります。
(大学サラリーマン日記(asitano1poさん)の記事では「大学データブック2012」の要点がわかりやすくまとめられています。以下はそれらを基にして橋本が興味を持った内容をさらにまとめたものです。孫引きです。asitano1poさんから掲載の許可をいただいています。)
○高校生の学習・進路選択の状況
- 親子とも、「専攻したい学問分野があること」をもっとも重視
- 高校生の進路意識がもっとも高まるのは、高校3年生の6月頃
・ 高校教員が期待しているタイミング(高校2年生の10月)よりも半年以上遅い
- 4割強の高校生が、「推薦・AO入試」の利用を決定または関心あり
・ 早く進学先を決めたいから
- 6割の保護者が「学校の情報を集める(資料の請求やインターネットによる情報収集)」
- 過半数の保護者、7割弱の高校教員が、「学費や納付方法」「毎年度の卒業後の就職先(率)、進学先(率)」に関する情報が「大いに必要」
- 約8割の高校教員が「十分な情報を開示していない大学への進学は勧められない」
・ 大学の教育内容も重視して高校生の指導にあたっていると考えられる
・ 「生徒には、教育内容よりも就職率のよい大学を勧めたい」と回答した比率は約2割
- 「生徒の基本的な学習習慣が確立していない」「進路を決めきれない生徒が多い」ことが高校での進路指導のネック
- 75%の高校教員が、「推薦やAO入試で早期に進路が決まった生徒に対し、卒業まで勉強させるような仕組みを大学と共同して検討する必要がある」
○大学生の学習・生活の状況
- 1・2年生では7~8割の学生が週5日以上通学。4年生になると文系・理系で大きな差
- 授業の9割以上に出席する大学生が全体の7割
・ 学年別には1年生から4年生にかけて出席割合は全体的に低くなっていく
・ 特に「社会科学」系統で、学年が進むほど、顕著に低くなっていく
- 大学生の約7割が「大学の授業で学んだことは将来役に立つ」と感じているが、学年があがるにつれ減少傾向
- 約6割の学生が、幅広い分野について学び、授業を通じて将来やりたいことをみつけたい
- プレゼンテーションの機会のある授業がためになったと感じている学生が多い
- 半数の大学生は、授業に関する学習が「週1時間未満」
- 3割の学生が「授業以外の自主的な勉強」をまったくしていない
- 定期試験やレポートの準備にかける日数は1週間以内が約半数
- 半数の学生がサークル・部活動に参加
・ 入学時の満足度が高いと参加率も高い
- アルバイトに力を入れる学生は約8割と多いが、ボランティアなど社会活動に力を入れる学生は2割台
○就職活動の現状、社会で求められている力
- 8割の学生が、「仕事を通じて社会に貢献することは、大切なことだ」
・ 競争が激しいと認識しながらも、他者への貢献や人とのつながりを重視している傾向
- 卒業後の進路を考え始めた時期は大学3年生以降が6割
- 進路に向けた準備・活動の開始時期は大学3年生の後期以降が6割
- 就職活動で重要なのは「自分の考えを口頭でわかりやすく伝えること」「自分なりの考えをまとめられること」が9割以上
・ 一方、「海外経験が豊富なこと」や「インターンシップの参加経験があること」を重要と感じている割合は2割程度
- キャリアセンターでは、内定の得られる学生は「自分なりの考えをまとめる力」「文章力や口頭での表現力など基礎的な力」が優れていると感じている
- 就職活動(民間企業)で活かされた経験は「アルバイト」「クラブやサークル活動」
・ 学生が勉学に力を入れていても企業はそれをあまりみることができていない
- 企業が新卒採用時に重視する要件として「社会人としての常識・マナー」「チームワーク力」が9割以上
- キャリアセンター側と教学側でキャリア教育の取り組みが併存している
- 9割の大学で「エントリーシート指導」「面接対策講座」「自己分析指導」を実施
- キャリアセンターは学生の課題は文章力や思考力・表現力の不足を感じている
・ 内定のとれる学生ととれない学生の二極化
- 今後の課題はキャリアセンターと学部教員の連携強化と汎用的能力の育成
- 高いレベルの必要性を感じているのは、社会人若年層で「傾聴力」、中堅層では「問題解決力」
- 若年層・中堅層とで能力・スキルの身につき度合いが大きく違うのは「問題解決力」「リーダーシップ力」(若年層<中堅層)
- 社会人が5年後に重要となると思う能力・スキルは「プレゼンテーションスキル」「問題解決力」「リーダーシップ力」がべスト3
- 社会人になる前に身につけたい能力・スキルは若年層では「継続的な学習力」、中堅層では「倫理観」が最も高く「英語」も上位に
- 大学生の「英語力」と「グローバルな視野」は、身につき度合いが低い
○大学の内部質保証の課題
- 大学の自己点検・評価の実施率は9割
- 半数以上が自己点検・評価の専任部門を設置
・ 「企画」「情報収集」「報告書とりまとめ」が基本的な役割
- 自己点検・評価において重視する情報は「学びの状況」「学習成果」「就職状況」
- 評価を活かした、教育・研究の改善が課題
- 克服すべきは「時間不足」「人・ノウハウの不足」「情報の散在」
- 学部長の8割が「IRは必要」
- IRを促進するためには「人材育成と意識改革」が「情報基盤」と同等に重要
- 私立大で先行して進む「教職協働」