ホーム → 大学に関わる情報メモ → 高大接続特別部会(第7回)議事録
公開日:2013年7月23日
マルバツ式の課題だけでは多様な能力・適正などを評価できないので、知識・スキルを使いこなすことを求める評価方法(「パフォーマンス評価」)を使う。パフォーマンス評価を活かした高大接続を行うためには高校の調査書をもっと信頼できるものにする必要がある。
パフォーマンス評価を取り入れているAO入試の例として九州大学が紹介されている。複数のテーマについての講義を受講+レポート作成 → グループ討論 → 討論を踏まえて小論文を作成 → 個人面接。
中央教育審議会の高大接続特別部会[1]で議論される情報を詳しく知ることで、光華女子大学の高大連携事業を幅広い視点から見られるのではないと考えたからです。
2013年度から学内で高大連携室という部署に所属(兼務)することになりました[2]。高大連携室では出張講義[3]、入学前教育などの取り組みをしています。最近では同じ光華女子学園内の京都光華女子大学と京都光華高等学校の高大連携プログラムで、大学教員が高校生にチームワークやPDCAの大切さを体験してもらう取り組みも行っています[4]。
文部科学省で議論をしている[高校と大学のつながり]という観点から、大学で行っている個別の高大連携の取り組みを考えてみようと思い、議事録を読みました。
本サイトでは以前、高大接続特別部会が設置される根拠になった諮問についての資料をまとめたことがあります(資料1 大学入学者選抜をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について(8・28諮問)(文部科学大臣))。本サイトで高大接続特別部会の資料・議事録についてまとめるのは、今回が2回目です。
先日行われた京都光華女子大学+京都光華高校の高大連携プログラム[4]では、[目標を決めて、そこに辿りつくまでの道筋を考える力]、[行ったことを振り返り、そこで得たことを次に活かす力]、[周りの人たちと一緒に目的を達成しようする力]の大切さに気づいてもらおうとして取り組みを行いました。今回読んだ高大接続特別部会の議事録を踏まえて、京都光華女子大学+京都光華高等学校で行っている高大連携の取り組みを考えてみると、選択式のテストでは評価できない力の大切さを伝えようとしていることがわかります。また、ルーブリックを使うことで、高校生に[自分のできたところ・できなかったところ]を見える形で提供できるのではないかなど、別の切り口から取り組みを考えるきっかけになりました。
これからも引き続き高大接続特別部会の議論に注目していこうと思います。
○西岡准教授(京都大学)
- パフォーマンス評価
・ 知識・スキルを使いこなすことを求める評価方法
・ 様々なものが含まれる
- 自由記述式の問題(選択式の問題は含まれない)
- 実技テスト(面接・実験器具の操作・運動技能など)
- パフォーマンス課題
・ マルバツで評価できないので評価基準(ルーブリック)を使う
・ ルーブリックの作り方
- 生徒の作品を数十個集める
- 複数の評価者でお互いの採点がわからないようにして採点する
- 点数を付箋に書き、作品の裏に貼りつける
- 全員の採点が終わったら付箋を表に貼りなおす
- 似た点数がついた作品を集める
- それらの作品の特徴について話し合いながら記述語を作っていく
- パフォーマンス評価を活かした高大接続案
・ 高校が教科ごとに10段階で学力評価を行い、大学に評価結果を提供する
・ 大学は入学基準を示す
- 5教科で10がそろっていれば自動的に合格、3教科で9以上なら二次選考の受験資格 など
・ 実現させるためには高校の調査書をもっと信頼できるものにする必要がある
- 信頼できるものにするためには統一的な学力評価計画を策定することが必要
- そうすることで序列化・選抜の入試を資格型入試に変えることができる
・ ただし問題もある
- 学校から創造的な文化が消える恐れがある
・ 日本の教育水準の高さは先生方が指導方法を様々に工夫することで保たれている
- 学力格差が今より見えるようになる
・ 生徒・教師のやる気を削ぐことになるかもしれない
- システム構築の方法
・ 案1:県単位でネットワークを作る
- [学力評価計画を策定する上での方針]を国が大枠として決める
- 各都道府県で学校間ネットワークを作って学力評価計画の詳細を決める
- [その詳細を活かして各高校で付けた成績]を大学が受け取って入試に取り入れる
・ 案2:複数大学と複数高校で学力評価計画を作る
- 徐々に加盟校を増やしていく
- ポートフォリオは収める作品・評価基準を誰が決めるかによって3つに分類できる
・ 基準準拠型ポートフォリオ
- 教育者側が決める
・ 基準創出型ポートフォリオ
- 教育者と学習者が相談して決める
・ 最良作品集ポートフォリオ
- 学習者が自由に決める
- ポートフォリオを指導する上でのポイント
・ 学習者と教師が見通しを共有する
- なぜ作る・残すのか
- 何を残すのか
- どう役に立つのか
・ たまった作品を整理・取捨選択して編集する
- 定期的にポートフォリオ検討会を行うことが必要
- ポートフォリオを作っていく中で自分に足りていないものがあることに気づく
○林教授(九州大学)
- パフォーマンス評価を取り入れているAO入試(21世紀プログラム)の紹介
・ 1日目
- 3つのテーマ(人文・社会・自然)で講義をする
- テーマごとに教員による講義(50分)+レポート(70分で解ける程度)を行う(つまり120分×3テーマ)
・ 2日目
- 午前:前日聞いた3つの講義のうち、2つを選んでグループ討論をする
・ 提案型のグループ討論をする(誰かを貶めるのではなく、エンカレッジするような討論)
- 午後:講義・グループ討論を踏まえて、3つのテーマから1つを選んで小論文を書く、その後、個人面接
・ A4×3面、270分
○質疑応答・意見
- 定性的な評価であるパフォーマンス評価を国のシステムに乗せるのは難しいのではないか
⇒ イギリスでできているので日本でもできるはず、ただし制度を作るのは時間がかかる
- 21世紀プログラムのような取り組みを拡大していくことは可能か
⇒ 難しい(1年生の定員2,555人のうち26名(7%)、そのために35名の教員が関わっている)
- ルーブリックを初等中等教育で行わずに、いきなり高大接続で行ってもうまくいかない
⇒ できるところから全て始めるべき(高校側は入試が変わらないとできないと言う)
- 初等中等教育でパフォーマンス評価を広げていくためにはイメージの共有が必要
・ 一気に地域ぐるみで行うのが難しいようならば、大学と実験校がまずネットワークを作り、徐々に拡大していく
- 教職過程ポートフォリオを作るときに教師が説明してもわかってもらえないが、先輩がモデルを見せるとすぐわかる
・ システムを作るときには良い先輩を育てることから始める
○高大接続特別部会でこれまで行われてきた議論のまとめ
- 大学入試の選抜機能が低下している
・ そのため入学での学力担保が難しくなっている
- とくにAO・推薦入試の学力把握措置が不十分
・ 難関大学ではペーパーテスト偏重の入試が主流
- そのため学生の多様性を確保するのが難しい
- 高校での教育の課題
・ 学習時間が減少している
・ 学習意欲が低下している
・ 入試のための学習に特化している
- 各学校段階での教育は相互の連携の下に行われることが必要
- 高校生の学習意欲の喚起・学力の把握などは高校教育においてしっかり担っていく
- 大学入試は多面的・総合的な評価(能力・意欲・適正など)に基づく入試に転換する必要がある
- センター入試の改善
・ 活用力を問うなど
- AO・推薦入試の学力把握の取り組みを充実させる
- 高校生の多様な資質・能力を判定する外部試験の活用
・ TOFLE、ジュニアマイスター顕彰制度など
○教育再生実行会議「教育委員会制度等の在り方について」(第二次提言)(平成25年4月15日)
- 大学入試の抜本改革
・ 高校在学中に複数回挑戦できる達成度テストを創設する
・ AO・推薦入試での学力保障措置の徹底する
- 達成度テストを活用する
・ 大学入試を多面的評価に転換する