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堀川の奇跡:荒瀬克己先生にお会いして堀川高校のお話を伺ったときの事前資料

公開日:2013年9月22日 

荒瀬先生に堀川高校のお話を伺うことになった経緯

京都光華女子大学の中に新しい学びの場を作ろうと教職員がチームになってあれこれ考えていました。そのようなとき、京都光華女子大学のある先生から荒瀬克己先生を紹介してもらい、チームのメンバーに[堀川高校の学びを新しく作り上げていったときのお話]をしていただけることになりました。

荒瀬先生は京都市立堀川高等学校で教頭先生・校長先生をされているときに、国公立大学の合格者数を大きく増やしたという経験をお持ちです。また、合格者数だけではなく、自ら学ぶ姿勢・学ぶためのスキルを身につける仕組みを整えられました。そのときの高校の変化は「堀川の奇跡」と呼ばれ、成功例として広く知られています。

ただ、お話を伺うにあたっては、成功した結果よりも、成功に行きつくまでの苦労・工夫の方に焦点を当てて教えていただこうということになりました。これから自分たちも新しい学びの場を作っていこうとしているので、当時経験をされた苦労・工夫からも得られることがたくさんあるのではないかと考えたからです。

事前に用意した資料

以下は、お話を伺うにあたって用意しておいた事前資料です。

   - 「京都市立堀川高校」基礎データ
     ・ 学科
       - 普通科第Ⅰ類・第Ⅱ類
       - 人間探求科・自然探求科(1999年度開設)
     ・ 創立
       - 1908年
     ・ 生徒数(2009年)
       - 744人(男子410人・女子334人)
     ・ 進路状況(2009年)
       - 大学:162人、短大:5人
       - 専門学校:4人
       - 就職:3人
       - その他:73人
   - 京都の全日制普通科高校の入試制度(2007年時点)
     ・ 1つの学校内にⅠ類(標準コース)・とⅡ類(学力伸長コース)がある
       - Ⅰ・Ⅱ類ごとに、府内を8つのエリアに分けて総合選抜を行う
        (学校ごとの単独選抜ではない)
       - 合格者を通学圏内の高校に割り振ることで、学校ごとの学力格差をなくす
       - 学力格差をなくせる一方で、「優秀な」生徒は私立に行ってしまうという状況
     ・ Ⅰ・Ⅱ類とは別に、Ⅲ類(個性伸長コース;体育・芸術など)と専門学科がある
       - これらは通学圏に関係なく生徒募集ができる(=府内全域から募集ができる)
   -人間探求科・自然探求科は専門学科として開設したので、府内全域から生徒を募集できた
     ・ 旧校舎の全面改築を完了させたのと同じタイミング
   - 「堀川の奇跡」
     ・国公立合格者数が大きく増加した
       - 6人 → 106人
   - 大学合格だけを目指しているわけではない
     ・ スローガン:「自立する18歳を育む」
     ・ 自ら学ぶ姿勢を養う
     ・ 大学、さらにその後の人生を生き抜く力を育てる
     ・ いい生徒を集めてスパルタ教育をすれば進学率があがるということではない
     ・ 数字だけに目を奪われると堀川高校の学校改革の本質を見失う
       - 「教師が教え育てる」から「生徒が教わり育つ」へ
   - あらゆる面で「二兎を追う」
     ・ 2つの力
       - 見えない学力(数値化できない力;学問探求のための基本的な能力・姿勢)
       - 見える学力(数値化できる力;志望大学に合格する学力)
     ・ 段取り力を身につける必要がある
   - 教員の間でなぜ教育改革をするのか議論を重ねた
     ・ [公立高校の教師が自分の子どもを私立に行かせている]に違和感
     ・ 若者が成長する過程で学ぶべきことはたくさんある
     ・ それを学んでいない不幸な場に立ち会っていることを自覚する
   - 学びの型を身につけることが大切
     ・ 型にはめるのは良くないと言われる
     ・ しかし、若いうちは基本的な学びの型をしっかり身につける必要がある
   - 「探求基礎」の3段階
     ・ HOP(1年前期)
       - 「知る」ための基礎的なスキルを身につける
         ・ PCの使い方
         ・ 論理構築
         ・ 論文の書き方
         ・ グループのディベートで論理的に話す訓練をする
          (40人のクラスを8グループに分ける)
         ・ 英語でプレゼンする(質疑応答も英語)
     ・ STEP(1年後期)
       - 「もっと知る」ための能力を磨く
         ・ 文系と理数系のゼミに分かれる(文理合せて10のゼミ)
           - 文系:社会調査法、少人数グループでの論文作成
           - 理数系:データ分析、実験・シミュレーションの技能
         ・ 個人研究のテーマを設定する
           - ゼミの仲間、教師、院生TAに徹底して「たたかれる」
           - 調査・実験方法を練り、時間軸に落とし込んで研究計画書を作る
           - ここで段取り力が鍛えられる
     ・ JUMP(2年前期)
       - 人間探求科(文系)と自然探求科(理数系)に分かれる
       - 個人研究を進める
       - 半年かけてポスター発表で研究成果を報告し、最終的に論文を作成する
       - つまり、「知りたい」から始まり論文の形で終わる
   - あえて背伸びをさせて力を引き出す
   - 2002年にスーパーサイエンスハイスクールの第1期指定校に選ばれた
     ・ そのおかげで高度な研究・実験ができるようになった
     ・ 1,500万円/年が5年間
   - 方向性をしっかり持って、常に点検しながら進めてきた
     ・ ゴールに行く道は無数にあるのに、この道でないとダメと思い始める
     ・ そうなるとゴールを見失ってしまう(方法ばかりに意識が集中する)
   - 「シミュレーションは臆病に、アクションは大胆に」
   - 舞台裏を経験する機会が多い
     ・ 学校説明会・海外研修などの多くの部分を生徒に任せる
   - 勉強についていけない生徒、休みがちになる生徒もいる
   - 教育は「てま・ひま・かね」
   - 生徒の要望に応える一方で、生徒が求めていないものも提供しないといけない
     ・ 生徒のあらゆる可能性を考える
     ・ 高い目標を設定してカリキュラムを用意する
     ・ 至れり尽くせりの授業は一見正しい
     ・ しかし、教育は自分のしたいことに気づく機会を提供することが大切
   - 教員間の温度差
     ・ 価値観の違いを無理に埋めようとはしない
     ・ 議論するための共通の土俵を作るべき
     ・ 価値観は違っていてもよいが、行先は1つだと認識する必要がある
       - 「より良い教育活動をやろう」と提案した
   - 教育計画を進めるときに大事にしたこと
     ・ 「当たり前か、当たり前でないか」という指標
       - 生徒が勉強したくないと思うのは当たり前
       - そうであれば、苦しい中にも楽しくなるような仕掛けを考える
   - 組織を動かすコアメンバーの育成に力を入れている
   - リーダーは「ぼんやり見る」ことが大切
     ・ 全体の状況や動きを感じることができる
     ・ リーダーは渦中に入ってはダメ
     ・ 「手は離してもいいけど、目は離すな」

【参考文献】

感想

成功に行きつくまでの苦労・工夫に焦点を当てて、いろいろなお話をざっくばらんにご紹介いただきました。「堀川の奇跡」を起こすためには何が大切だったのか、どういうところで壁に当たったのか、それをどのように乗り越えたのか、京都光華女子大学で新しい学びの場を作っていこうとするときに、役に立つお話ばかりでした。

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