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私立大学等の振興に関する検討会議(第1回)議事録

公開日:2016年6月8日 

奥付

概要

私立大学等の振興に関する総合的な検討を行うための検討会議。検討事項は私立大学等の果たすべき役割・ガバナンスの在り方・財政基盤の在り方、私立大学等への経営支援、経営困難な状況への対応など。文部科学大臣の記者発表の通り、会議ではゼロベースの検討を行う。私立大学の振興に関する検討会は四十数年ぶり。私立大学の振興というのは国家戦略の一つになる。検討会議は一年間で十数回程度開催し、夏をめどに主な課題、論点を整理する。年度末までに最終的な取りまとめを行う。会義だけで難しい場合は作業グループで議論する。委員から2件のプレゼンテーション。その後、質疑応答と自由討論。

小林委員(東京大学 大学総合教育研究センター)のプレゼンテーション。2つの課題を提供。①「高等教育の均等化政策(社会・経済的な格差を是正)と市場化政策(競争的資金による誘導政策)」、②「財務基盤の強化」。両者は相互に関連している。①では特に地域配置の問題について紹介(日本の大学は大都市圏に集中している)。②では機関補助と個人補助、授業料と奨学金を議論。

濱中委員(国立教育政策研究所 高等教育研究部)のプレゼンテーション。どのような学生が大学に入学してきて、いかなる学習経験を得ているかということを把握する必要がある。制度や政策を検討するという観点からは、個別大学の状況というよりも俯瞰的に把握することが必要。そのため、今回は大規模学生調査の報告を行う。大学教育の機会均等への寄与を考えると、機関数や学生数の増加だけから大学過剰とみなすのは短絡的。第三世代、第四世代の大学(1975年以降設置の大学)は大学進学において相対的に不利と見なされていた層に対して進学機会を提供してきた。第一世代(~1959年設置)・第二世代(1960~74年設置)と比べて教育面ではやや充実している。ただし数が多いので、教育条件等のモニタリングと、そのための体制作りが必要。大学類型によって家計収入が異なっている(第一世代の学生の方が家計年収が高く、三世代・第四世代の学生は低所得層からの進学者が多い)。個人補助(バウチャーなど)を経由した競争的環境は公平な競争にならず、高所得層が多い大都市圏にある大学が非常に有利になる。私立大学だけを考えても駄目で、国立大学、公立大学との役割分担をどうするかということを視野に入れなければならない。

詳細

■ 黒田座長挨拶及び事務局からの説明
 ○ 黒田座長
   - 私立大学の今の状況は非常に厳しい
     ・ それぞれの地域と連携しながら健全に発展するということが今後非常に重要
     ・ 今までの国の一本の政策では私立大学を健全に発展させることが非常に難しくなってきている
   - 文部科学大臣の記者発表
     ・ この会議はゼロベースで検討してほしいという発言
   - 私立大学の振興に関する検討会は四十数年ぶり
     ・ 私学振興助成法ができるときに大々的に対応された
   - 私立大学の振興というのは国家戦略の一つになる
 ○ 杉野私学部長
   - 馳大臣の記者会見の発言のポイント
     ・私立大学を取り巻く環境が厳しさを増している
       - 少子化の進展など
     ・ 私立大学は危機意識を持ちながら、世界から信頼され健全な発展を遂げていく必要がある
     ・ ゼロベースで検討してほしい
       - ガバナンスの強化
       - 戦略的財政支援
       - 大学あるいは法人の統合・融合を含めた経営基盤の強化
       - 地方創生の観点も踏まえた地方大学の在り方 など
   - 会議の進め方について説明
     ・ ゼロベースなので忌たんのない御意見、御発言をお願いしたい
     ・ 私立大学に係る論点は多岐にわたる
     ・ 開催期間、頻度
       - 一年間で十数回程度の開催
         ・ 一年間、大体毎月一回程度、多くても二回ぐらい
     ・ 今回は委員の先生方からのプレゼンとし、事務局の説明はできるだけ省略する
       - プレゼンを踏まえた意見、議論とする
       - 小林先生、濱中先生のご発表
     ・ スケジュール
       - 今年の夏をめど
         ・ 主な課題、論点を一度整理する
       - 秋以降
         ・ 整理した課題、論点それぞれについて、どういう方向で今後臨むべきか、具体的な対応策として何が考えられるかを検討
         ・ 会義だけで難しい場合は作業グループで議論することも考えている
       - 年度末までに
         ・ 最終的な取りまとめ

■ 委員からの意見発表
 ○ 小林委員(東京大学 大学総合教育研究センター)
   - 2つの課題を提供
     ① 高等教育の均等化政策と市場化政策をどういうふうに考えていくか
       - 特に地域配置の問題について紹介
       - 大学の機能別分化、私学助成の問題が関連する
     ② 財務基盤の強化を検討、議論したい
       - 中教審の4年前の質的転換答申のときに積み残しの課題として取り上げられている
       - 機関補助と個人補助をどうするかが問題になる
       - 授業料あるいは奨学金をどのように考えるか
         ・ 文部科学省の別の会議で、所得連動型の奨学金の返還について議論している
         ・ 授業料減免という制度
           - 日本では給付型の奨学金は余り知られていない
       - 寄附の問題
     ・ 両者は相互に関連している
   - 議論を進める場合、エビデンスを出していくことが重要
     ・ エビデンスというのは数字だけではない
     ・ 例えば諸外国の事情、状況と比較して、我が国を見るということが非常に重要
   ① 高等教育機会の均等化政策と格差の問題
     ・ 教育機会の均等は憲法26条あるいは教育基本法第4条に規定されている
       - 社会・経済的な格差を是正するために教育の機会均等というのは重要
       - 個人のためだけではなくて社会全体のため
       - そういう意味で、高等教育政策の中で一番最重要の理念
     ・ 現実の高等教育政策では十分な政策が行われたと言いにくい
       - ほとんどの高等教育政策は地域間格差の是正という問題に収れん
         ・ 一番問題になるのは地方の中低所得層の機会
       - 育英、奨学施策も大きな問題
     ・ 大学の地域配置政策
       - 戦前からの大きな課題
       - 日本の大学というのは大都市圏に非常に集中している
         ・ 進学率も地域間格差が生まれている
       - 1975年に高等教育の地方分散化政策と大都市圏の大学の抑制政策が行われた
         ・ 第1次から第5次の高等教育計画という形で行われた
         ・ 2002年に終了した
           - 根拠になっていた工場等規制法が廃止
           - それ以後いわゆる市場化政策(競争的資金による誘導政策)に移行
           - 地域配分について系統立てた政策がない
     ・ 都道府県別大学進学率の推移
       - 経年変化
         ・ 1975年から1990年代(第1次から第3次の高等教育計画期)に地域間の格差は縮小
         ・ それ以後は再び拡大
           - 現在では大学進学率は都道府県間で30%程度の大きな地域差がある
       - 学生の移動の観点で3つに分けられる
         ・ その都道府県に残留する学生
         ・ 流出していく学生
         ・ その都道府県に他から入ってくる学生
     ・ 国公私立大学の学生の地域移動
       - 南関東への大学進学者が非常に大きな比率を占めている(大都市に集中している)
         ・ 南関東の高校生はほとんど外に出ていかないというのが特徴
       - 九州、北海道は非常に閉鎖的な構造を持っている
       - それ以外の地方は外に出ていかざるを得ない
     ・ ブロック別私立大学地方残留率の推移
       - 南関東はほとんど動かない
         ・ 95%が南関東ブロックの中にとどまっている
       - 全体としては残留率はだんだんあがっている
         ・ ブロック別の閉鎖性が高まっている
     ・ ブロック別私立大学地元出身者率の推移
       - 大学側から見て地元の学生がどのぐらい入っているかという比率
       - 地元の学生が入ってきている
     ・ 地域ごとに大きく異なる残留率(流出率)
       - 例えば島根、鳥取、高知
         ・ 大学の数が非常に少なく、県外に流出せざるを得ない
     ・ 大学は地域の高等教育機会を提供
       - その役割は設置者と専門分野と地域によって大きく異なる
     ・ 私立大学の振興策
       - 現在は大都市の私学が非常に拡大
         ・ 地方からの学生は流出せざるを得ない
       - ところが、もう片方では地方から学生が流入しなくなっている
       - 大都市圏というのは非常に規模が大きくて、地方の方は大きくないのが原因
         ・ 大都市圏の私学が拡大している反面、地方の中小私学が定員割れしている状況
       - これに対してどのように考えていくか
         ・ もはや計画的な配置は非常に難しい状況
         ・ 大学・学部を新増設するということが、こういったものに対して一番重要な政策
           - しかし国立はほとんど現在そういう状況にない
           - 私立大学が公立大学に転換するということが起きている
              ・ ますます私立大学がなくなってくるという状況
         ・ 機関補助を拡充するということが当然考えられるが難しい
           - そういう中で、地方創生という観点から最近地方を大きく発展するために様々な方策がとられている
              ・ 大都市圏の大学等の入学定員を適正化する、バランスを適正化する(=私学助成を厳しくする、抑制政策)
              ・ 地方創生のため、「奨学金」を活用した大学生等の定着促進政策が行われるようになってきている
     ・ 大学の機能分化政策、競争的資金による政策誘導
       - 昨年、国立についても私立についても競争的な資金によって誘導するという政策が行われるようになっている
         ・ その中に地域貢献あるいは地域発展ということが含まれている
           - 学部の単位ではなくて大学の単位で行われているので、かなり無理がある
     ・ 地域の配置問題
       - 現在明確な政策がない
         ・ 様々な種類の高等教育機関ができて、更に新しい高等教育機関をつくるということになっている
           - 中教審の別の部会で議論されている
       - 地域配置とならんで高等教育システム全体の整合性を検討する必要がある
   ② 財政基盤の強化政策
     ・ 現在の公財政を考えると、機関補助の拡充というのは非常に難しい
       - 外部資金、寄附の獲得という形で今動いている
     ・ 個人補助(奨学金)の拡充
       - 学生を集められる大学が有利
         ・ 学生が選択することによって、学生個人が奨学金を持って大学に入ってくるため
       - そのため、大学間に競争を促すことによる市場化政策の一つというように考えられる
         ・ 典型がイギリスやアメリカで行われている高授業料・高奨学金政策
       - 大学間、学部間の格差を拡大するという問題が生じる
     ・ 現在行われている高授業料・高奨学金の政策
       - 定価授業料を高額に設定して、大学独自の奨学金でディスカウントする
       - 授業料自体は高いので収入を増加できる
       - アメリカで始まり、現在イギリスの大学も採用している
       - こういうことが日本で可能かという問題がある
         ・ 一昨年、財務省の財政制度等審議会が高授業料・高奨学金制度を日本でも採用するべきではないかという問題提起を行った
         ・ 昨年、国立大学の自主財源を1.6%年確保するべきだという提案があったが、文部科学省、国立大学等から反対があって撤回された
         ・ 自主財源としての授業料を上げるということがどういうことを意味するか、私立大学の場合には考えてみる必要がある
           - 私立大学では大学独自の奨学金というものが非常に拡大している
           - 学生のためには非常にいいことだが、授業料の値上げなどの問題がないわけではない
     ・ 所得連動型ローン
       - ローンの負担を軽減させ、結果的に回収率を上げることが目的
       - 低所得ほど負担が少ない
       - 新しいやり方を議論する上で重要なこと
         ・ ローンの負担の問題をできるだけ緩和
           - ローンの負担が高いということで奨学金返済に苦しむということが社会的に言われるようになっている
           - それに対して、所得連動型というのはある程度有効な政策
       - 情報のギャップが最近問題になっている
         ・ 制度があまり知られていない
         ・ 今後相当周知していかないと混乱が生じる
     ・ 奨学金を申請しなかった理由
       - 低所得層ほど奨学金の返済が将来負担になると回答
       - 緩和策は連動型ローン
       - 根本的な解決策として給付型奨学金が必要という議論が最近行われている
         ・ 日本にも給付型奨学金は授業料減免制度という形であると考えて
     ・ 授業両免除制度は設置者別に大きく異なる
       - 国立と公立と私立で全く授業料減免制度が違っている
         ・ 国立
           - 今年度予算で320億ほどついていて非常に拡大している(授業料総額と比べて15%まで伸ばす)
         ・ 私立
           - 国立に比べてかなり小さく、しかも2分の1補助(大学が2分の1を補助しなければいけない)
           - 大学の財力によって差が生じてしまうという大きな問題がある
         ・ 公立
           - 地方交付税交付金になっているので、どのように使われているかということは各地方公共団体が見る
         ・ 専門学校
           - 都道府県所管
           - 現在実施しているのは3道府県
       - 私立大学の授業料の問題
         ・ 大学・学部によって授業料が違う
         ・ 例えば高額な医学部で授業料減免を多額にするか、逆に公財政で負担する部分が大きくなるので大学や学部間で同額にするか
     ・ 高等教育政策の課題 私学政策を中心に(まとめ)
       - 均等化政策、財務基盤の強化の2つについて話した
       - 特にこれまでの十数年の市場化政策の是非と高等教育システム全体を包括的に検討するということが必要
       - 具体的なエビデンスに基づいて検証することが重要
         ・ 「学校基本調査」(文部科学省)、「基礎調査」(私学振興・共済事業団)、「学生生活調査」(日本学生支援機構・国立教育政策研究所)
         ・ 長期にわたって精密なデータがとられている
         ・ 優れた調査だが現状では余り分析されていないということが問題
         ・ アメリカの場合は正のループができている
           - データは全て公開されている
           - 研究あるいは政策に非常に有効に役に立つ
           - 調査自身もそれによってまた進化している
         ・ 日本はそういったものができていないが、エビデンスに基づく政策を担っていく上では不可欠
 ○ 濱中委員(国立教育政策研究所 高等教育研究部)
   - 立場の説明
     ・ 「私立大学の果たすべき役割」(本会議の検討事項の1番)を検討するときは学生への着目が不可欠
       - まずはどのような学生が大学に入学してきて、いかなる学習経験を得ているかということを把握する必要がある
       - 制度や政策を検討するという観点からは、個別大学の状況というよりも俯瞰的に把握することが必要
       - そのため、今回は大規模学生調査の報告を行う
   - 大学過剰論を検証
     ・ 社会的に注目されていることの一つ
       - 大学をつくりすぎ、大学生が多すぎる、こういう世論が非常に強い
     ・ データの概要
       - 日本学生支援機構の「学生生活調査」と、国研の「大学生の学習状況に関する調査」を使っている(平成26年の調査)
     ・ 私立大学は多様なので幾つかに類型化
       - 大学の歴史と学校の規模(金子,1996)による類型(高等教育研究で広く使われている)
         ・ ~1959年設置:第1世代大学
           - 中核大学(明治・慶応・早稲田・立教・法政・中央・関西学院・関西・同志社・立命館)
           - 周辺大学(1992年時点の在籍者が4,000人以上)
           - ニッチ大学(特定の需要に対応しながら発展してきた小規模大学;女子大学・医歯薬系・宗教系・芸術系の単科大学)
         ・ 1960~74年設置:第2世代大学(高等教育大拡張期に設立)
         ・ 1975年以降設置:第3世代大学(大拡張期以降に設立)
           - 1975~92年と1993~97年※1975年から40年経っているので今回さらに再分類
         ・ 1998年以降設置:金子(1996)は1992年時点の学生数を扱っているので、今回さらに分類を追加
     ・ 第三世代以降(1975年以降)設置の大学は当然のことながら地方に立地している大学の学生が多い
       - 第三世代、第四世代の新しい大学では地方の大学が約半数を占めている
     ・ 学生の家計年収を大学類型別に集計
       - 第一世代(大都市圏に集中)の学生の方が明らかに家計年収が高い
       - 第三世代、第四世代は、比較すると明らかに低所得層からの進学者が多い
       - 特に第四世代は第一世代の学生よりもかなり低い
     ・ 学生の家計年収が低いとどうなるか(資料は投影のみ)
       - 奨学金の需給状況
         ・ 所得に対応して第三世代、第四世代での奨学金受給率がかなり高い
         ・ 特に第四世代では明らかに日本学生支援機構の受給率がかなり高くなっている
     ・ 専攻分野の構成
       - 新しくできた大学と従来の大学では専攻分野の構成もかなり違う
         ・ 第四世代の大学
           - 一番多いのが教育・家政・福祉、次いで看護・保健
             ・ そのため女子学生の率が高くなる
           - 職業資格関連の学科の学生が大半を占め、人文系、社会系の学生はかなり少ない
     ・ ここまでのまとめ
       - 第三世代、第四世代の大学(90年代以降の学生数の増加を担ってきた)
         ・ これまで大学進学において相対的に不利と見なされていた層に対して進学機会を提供してきたと言える
           - 地方の進学者が多い
           - 低所得層出身の学生が多い
           - 女子学生が多い
         ・ ただし家計への負担からすると大学進学者が増えたと手放しで喜んでいいのかということはちょっと留意しなくてはいけない
           - 従来、短大や専門学校が担ってきた分野で大学への進学が増えている
     ・ 第三世代、第四世代の教育・学習経験の質を分析した
       - アクティブラーニング(「グループワークなど学生が参加する機会がある」)
         ・ 第四世代では「よくあった」、「ある程度あった」という者がほとんど
         ・ 第三世代でも多い
         ・ 第一世代は一番少ない
           - 周辺大学、中核大学は相対的にかなり低い
       - 教員とのかかわり
         ・ 新しい大学の方が「適切なコメントを付された課題などが返却される」と回答した割合は多い
         ・ 大学の歴史が古くなるにつれだんだんと減っていく
       - 「先生に質問したり、勉強の仕方を相談している」
         ・ 同様の傾向
         ・ 指導の仕方が違うのではないかと解釈すべき
           - 見方によっては、第一世代の学生は先生に頼らず自主的に学習していると言うこともできないわけではない
       - 授業方法の工夫(「理解がしやすいように教え方が工夫されている」)
         ・ 新しい大学の方がやや肯定的な回答が多い
       - 要因
         ・ 類型間で学生数の規模が違うので、指導体制も違う
           - 平均学生数
             ・ 第一世代:28,000人
             ・ 第四世代:900人
           - 新設大学の方が教育面ではやや充実していると言って構わないのではないか
       - 日本の高等教育全体のことを考えたときに、日本の大学生の学習経験の質を高めるためには、大規模大学、特に社会科学系の教育改革が重要な鍵を握っているはず
         ・ 新しい大学は確かに数は多いが、学生数はそんなに多くない
         ・ 第一世代中核・周辺、それから第二世代の方が学生数ははるかに多い
         ・ 大規模大学のとりわけ社会科学系のてこ入れが重要(今日の報告の内容と直接のかかわりはない)
     ・ まとめ
       - 大学教育の機会均等への寄与を考えると、機関数や学生数の増加だけから大学過剰とみなすのは短絡的
         ・ この20年間で増えた大学数、学生数は地方、女子学生
         ・ 少なくとも教育条件、学習経験の質の面で劣っているわけではないと考えると、単に数が増えているから新増設を抑制すべきとはならない
         ・ ただし、200校増加しているので、中にはいろいろな意味で質の面で問題のある機関がそこに紛れていることは避けられない
         ・ そういった観点からいくと、教育条件等のモニタリングを随時行っていくということは非常に重要
         ・ そうした体制作りがこの検討会議の課題の一つ
       - 大学類型によって家計収入が異なることの意味はかなり大きい
         ・ 一律にバウチャーのような形で個人補助を与えて、これで大学を選択しなさいといっても、公平な競争にはならない
         ・ そういう形で競争すると、高所得層が多い大都市圏にある大学が非常に有利になる
         ・ 小規模であるけれども、地方における高等教育機関として新しい大学が果たしている役割が大きいということは明らか
         ・ 「個人補助を経由したような競争的環境の中で支えていくことが本当に適切なのか」が一つの検討課題になる
         ・ ただし、その場合に、私立大学だけを考えても駄目
         ・ 当然、地域の国立大学、公立大学との役割分担をどうするかということを視野に入れなければならない
         ・ 今回は短期大学の資料を出していないが、家計収入等々を見ればもっと低所得層に偏っていることは明らか
         ・ 短期大学、専門学校を含めて、地域の教育機会をどうするかという観点からの議論が必要
       - エビデンスベースで議論するということは非常に大事
         ・ エビデンスを構成するデータの信頼性・妥当性についてはもっと検討しなければいけない
         ・ 議論を進めていく上で、信頼性の高いデータを使っていくということが重要
         ・ 利用可能なデータをどんどん提供していただくことは非常に大切

■ 質疑応答、自由討議
<質疑応答>
 ○ 小出委員
   - 言葉の定義
     ・ 例えば「授業料」
       - 私立大学では人件費から光熱水費まであらゆるものが含まれて計算されて、積み上げ経費の中でつくられている
     ⇒ 小林委員:正確には学生納付金
   - データに基づき、地方立地の中小規模の私立大学がフェイストゥフェイスの私学教育をしっかりと展開しているのではないかと指摘されたことは心強い
 ○ 浦野委員
   - 600以上の私立大学を一律に論じることは相当な無理がある
     ・ 今後の検討として「この問題についてはこういう分類で分けて考えてみよう」などの視点が必要
   - 産業界の目から不安に思っていること
     ・ 学力が不十分なまま社会に出ざるを得ない学生がかなりいる
       - 社会に対するメリットというのはほとんどない
       - 大学の中で社会に円滑に接続していくために、よき職業人あるいはよき市民としてどこまで教育するか
       - 今の日本にとってマージナル大学の人たちもよき職業人として社会に出ていただくために、どういう支援が要るのかといった視点がものすごく大事
       - 奨学金以外の施策も含めて是非この部分の問題は論じていただきたい
       - 日本のかつて分厚い中間層と言われた部分をしっかり支える意味でも、私立大学の役割というのは非常に大きい
 ○ 坂東委員
   - エビデンスとは何なのかを是非議題として挙げていただきたい
     ・ 私立大学はいろいろなタイプはあるにしろ、それぞれこうした付加価値をつけているんだということを明確にした上で、それをどう支援していくのかというのが大事
 ○ 河田委員
   - 国公私立大学の役割についてのグランドデザインの中で私学の問題点に絞って今後のこの検討会を進めていただければ、私学の持つ問題点もより明快になるのではないか
<自由討議>
 ○ 佐野委員
   - プレゼンテーションのデータ(地域間格差など)に加えて、教員・研究者・学校・学校法人の方の生の声の集計値があると更にいいのではないか
 ○ 丸山委員
   - 小林委員のプレゼンテーションについて質問
     ・ 高授業料・高奨学金政策
       - 労働市場で学歴を得たあとの収入の額、所得の扱いが日米で違う
       - 職場とか給料に反映されないと、なかなか高授業料政策というのはうまく行かないのではないか
   ⇒ 小林委員
     ・ おっしゃるように、日本とアメリカはかなり状況が違いますので、一概にこの政策を導入すればいいという問題ではない
     ・ ただ、政策がもう既に提案されている以上、こういったことをきちんと、望ましい、望ましくないを含めて議論すべき
     ・ 今回、両委員のプレゼンで労働市場の問題は取り上げていないので、今後取り上げていただきたい
 ○ 水戸委員
   - 労働市場と我が国の高等教育の役割についても、議論していく必要がある
     ・ 私立大学の学生数が大学在籍の全体の74%ぐらいを占めている
     ・ この私大の卒業生が、卒業して、日本の労働力の中間層を構成している
     ・ 例えば15年後以降の我が国の労働市場
       - 労働力総数に占める大卒層は7割で、その7割が私大卒
       - 結果的に総労働力の5割を占めることになる
       - 従って、この層をしっかりと教育していくことが、我が国の国力を支えて行くことに繋がる
   - 私立大学の役割と重要性を認識した上で、国公私の格差の問題は是正すべきものは是正していくなど、そういった形で是非議論していただきたい
     ・ 例えば財政的な格差、授業料減免格差
 ○ 小出委員
   - 「私立学校とは何か」という問題
     ・ 私立学校は自主性が命、同時にまた公共性が担保されていなくてはいけない
     ・ 国の政策としての私学政策は、国立大学、公立大学、私立大学という三つの設置形態、受益者負担の問題を根源から考えていただくような会にしないといけない
       - 国立、公立、私立の日本の高等教育の全体像の中での私立大学の位置・役割というものを是非ここで深めて、次の時代へ渡していけるものにしていただきたい
 ○ 麻生委員
   - 私立短期大学
     ・ 小規模校が多く、地方に存在している
     ・ 女子教育を担ってきた
     ・ 現在言われている地方創生や女性活躍というような概念から、ほぼ私学が担っている小さな、二年制若しくは三年制の私立短期大学の振興の議論をしていただきたい
 ○ 清水委員
   - 私立大学の果たしている役割、果たすべき役割というものを考えた場合に、それぞれの政策の担い手の視点も必要
     ・ 分野規模なり、地方の政府の様々な形での期待、政策変化を捉えていかなければならない
       - 私学の公立化
 ○ 安部委員
   - 短期大学生の地元残留率・地元進学率並びに就職率は、四年制大学より2割程度高い
   - 短大は従来なら高等教育に経済的に行けなかった層に対しての教育を提供し、地域の人材養成に貢献している
   - 特に女子の場合は、高卒よりも、短期大学や専門学校及び四年制大学卒の女性の就職状況、あるいは、職業を継続するための雇用環境というのは非常にいい
     ・ 四年制よりも短期大学の補助、特に奨学金を増やしていただけないか
   - 進学を希望するすべての人が大学に行くための補てんを何らかの形でやっていく政策を是非お願いしたい
   - 学生の家計状況に応じた奨学金としての、個人補助の配分に対する指摘をしていく必要がある
     ・ 平等にやると逆に大手の大学の進学率を高めてしまう
 ○ 西井委員
   - 大学の在り方を議論する際に、家計所得の現状は重要な課題を提起している
     ・ 親の支援が十分でない学生はアルバイトで工面せざるを得ない
     ・ 学生の親の所得が伸び悩んでおり、アルバイトへの依存度が高まっているとともに、就職に結びつく大学や学部学科の人気が高まっている
       - これらのニーズに対応することが、立地条件を含めて大学の課題となってくる
 ○ 坂東委員
   - デファレンスを解消するものとして、国立大学においてはどういう施策が行われているのかということを横に置いておかなければならない
     ・ 私立だと新しい小さな建物一つつくるにしてもコスト・学生数への結びつき・利子などを考える
   - 高授業料・高奨学金というのはむしろ国立大学の方により重要なのではないか
   - 大学基盤の強化という点で寄附制度の改革が求められることになる
     ・ 自助努力、市場型化を構築することについて、今後どうすればいいかということも考えなければならない
       - 産業界のニーズの多い分野の学科を持っている大学には寄附金は集まりやすい
       - 大規模な社会科学系の学科には余り寄附金も集まらないのではないか
   ⇒ 小林委員
     ・ 配付資料中にデータはあるが、この資料だけで即断するのは少々危険なので、設置者と所得階層の関係は引き続き検証していく必要がある
 ○ 佐野委員
   - 教員若しくは研究者の定着の問題
     ・ 私学は人件費が固定費として圧迫しているから抑えなさいというプレッシャーがある
     ・ 地域、地方の中でいい教員、いい教育、若しくは研究者を確保できているのか
 ○ 大村委員
   - 法科大学院の教育にかかわっているという立場から
   - 高授業料・高奨学金という問題は10年余り前に法科大学院の制度が創設されたときにも経験した論点
   - 法科大学院というのは、最近の一つの実験的な先行プロジェクト的な側面がある
     ・ 現在のところ必ずしも理想的な状況で推移はしていない
   - 出口のところで、法曹という非常に強固な資格を持った職業人という分野があっても、社会での受入れの予測を十分にやっておかないと、出口のところで厳しい状況に陥ってしまうという一つの例
 ○ 奥野委員
   - 私学のことを話し合いましょうということだが、高等教育政策を全部考えないといけない
   - 文科省はその覚悟のほどをもう一遍言うべきではないか
 ○ 日髙委員
   - 国立との対比だけではどうしようもない
     ・ まず私学の関係者として考えなければならないこと
       - 私学は高等教育においてどういう役割を果たすべきなのか自ら考える
       - そこから今後の私学教育の在り方というのを打ち出した上で国立との対比、役割分担を議論する
 ○ 濵口委員
   - 議論の大前提として、いろいろディテールに入っていくときりがない
   - 特に地方創生をどうしていくのかというところで、国公私立大学はどう連携して力をつけていくかということを考えないといけない
   - その点で考えると、いかにして地方に仕事をつくるのか、そこに若者をうまく送り出していくということをもう少し議論しないと先が見えてこない
     ・ 授業料が高いとか低いとか、奨学金をもっと出すべきだとか議論していても、これは全然先が見えない議論になる
   - かなり大きな時代の転換点が来ている
     ・ 学生が減っている
     ・ 職業が大きく変わってくるリスクが非常に高くなっている

■ 今後の予定
   - 第二回検討会議は5月24日
   - 第三回検討会議は6月14日
   - 第四回検討会議は6月28日

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