ホーム → 大学に関わる情報メモ → 私立大学等の振興に関する検討会議(第3回)議事録
公開日:2016年8月10日
私立大学等の振興に関する総合的な検討を行うための検討会議、第3回目。「学校法人の経営等に関する参考資料」(分量38ページ)の内容について事務局から解説。委員から2件のプレゼンテーション。その後、質疑応答。
竹石爾委員(学校法人青山学院顧問)のプレゼンテーション。監事制度について、企業と私学を比較。企業・私学ともマネジメントとそのチェック体制が一体となって機能することが大切。監査体制の充実として、監事の常勤化、監事の報酬、三様監査体制(監事監査・会計監査人による外部監査・内部監査)が考えられる。実態は教学への意識が低いことから、教学監査を検討してはどうか。実効性ある監査についての課題と対応策を提案。
水戸英則委員(学校法人二松学舎理事長)のプレゼンテーション。①日本の私立大学の役割(私立大学は少子高齢化が進む我が国の労働力を支える重要な柱)、②経営悪化の構造的な要因(公費負担の格差、地方所在私大中心に定員未充足が増加、経常費補助比率は年々低下)、③現行支援体制の課題(予防措置の早期対応ができずに経営改善への指導が遅延するおそれ)、④今後の支援体制整備に向けて考慮すべきポイント(私学事業団に「経営監督・改善チーム」を新設、各認証評価機関に「経営改善指導チーム」を新設、官民出資による「新機構」を設置、「経営サーベイランス」など)、⑤支援体制具体化案(文部科学省私学部及び学校法人運営調査等の体制充実、事業団の私学経営情報センター機能の強化、認証評価システムで「教育の質保証」に加えて「財務の健全性・経営改善」を評価)について説明。
■ 委員からの意見発表
○ 竹石爾委員(学校法人青山学院顧問)
- 民間企業と学校法人とで常勤で16年半ほど監査業務を担当
- 監査の経験を通した現場感覚から話をする
- 企業と私学との基本的な比較
・ 企業
- 一連の商法改正や会社法で監査の強化充実が図られてきた
- 上場企業の多くは監査役設置会社
・ 監査等委員会設置会社が増えている
- 3 人以上の取締役(過半数は社外取締役)が内側から経営をチェックする仕組み
- 取締役会の監督機能を強化
- 監査役を置くことはできない
- 会計監査人設置が義務付けられている
- 日本監査役協会は監査役の研修などに大きな力を発揮
・ 6,100社の企業と約7,900名の会員が登録されている
・ 私学
- 監事の監査対象範囲の明確化と独立性の確保が図られた
・ 平成17年の4月施行の私学法一部改正
- 特に監事の業務監査の対象が,理事の業務から学校法人の業務になった
・ 教学等も対象になった
・ そのことで多くの学校法人で監事への関心が高まり始めたと思われる
- 財務的な指標だけでは評価できない
- 株主のような所有者はいない
- 持ち分という概念もない
- 多様なステークホルダーが大変たくさんいるということが,企業と大きな違い
・ 企業・私学ともマネジメントとそのチェック体制が一体となって機能することが大切
- 企業以上に管理運営のチェック機能が求められている
- チェック機能をに強化して,経営の健全化と社会からの信頼を得るように努めなければならない
- 私学にチェック機能が強化を急がなければならない背景
・ 取り巻く厳しい環境変化
・ 業務執行のチェック・提言の機能が更に重要になってきている
- 学長のリーダーシップの下で戦略的に大学を運営できるようになった
・ 昨年4月施行の学校教育法の一部改正
・ 教学と経営の両面から質の向上が求められている
- 公的助成を受けているため、社会の要請に応える必要がある
・ 監事監査の役割が大きくなっている
- 一昨年に私学法の一部改正があり,ガバナンスの在り方が問われている
・ 一部の私学で管理運営上不適切な事例が発生している
- 管理運営上の監視・チェックの体制の現状
・ 監事
- 理事長や理事は本当に監事の役割を理解して必要な権限と監査環境を提供しているかどうか
・ 十分な監査環境を提供しているとは言えない
- 常勤監事が少なく、非常勤監事が圧倒的に多い
- 無報酬の監事が多い
- 重要な会議に監事が出席できない
- 理事長などが監事との意見交換をする機会がない
- 監事自身が責任と権限を認識して実効性のある監査をしているかどうか
・ 年間の出勤日数が5日から9日が37%で最も多い
・ 1年間に1日も出席しないが約3%
・ 理事会や評議員会だけ出席の監事が多い
・ 業務監査の中心的課題でもあるべき教学監査に対する意識が低い
・ 評議員
- 多様な意見を取り入れるという目的を果たすことになっているかどうか疑問
・ 理事定数の2倍をもって組織することになっている
・ しかし、理事や教職員の兼務が多い
- 監事監査等の強化に向けて一般的に共通するであろう主な課題
・ 理事長等や理事会が監事の役割について理解を深める(最大の課題)
- 監事は立場を異にして学校を支えるパートナー
・ 経営危機の芽を早めに発見して,危機を事前に回避させるように監査指摘や意見表明をする
- 私学法で決められているからやむを得ず監事を置くのではない
・ 誰をどういう方法で監事に選ぶか
- 私学法で外部性・独立性の確保が定められている
- より外部性を高めるために考えられること
・ 選考委員会を設ける
・ 今とは逆に評議員会が選任した監事を理事長が任命する
- 各私学の実情に応じてバランスよく選任する
・ 3つのジャンル
- 専門的知識を持つ者(公認会計士、弁護士、税理士等)
- 企業等の経営者(含む監査役)経験者
- 学内事情に詳しい者または学校行政経験者
・ 専門知識や経験も大切だが、問題点・対応方法を総合的に判断して提言できる者が望ましい
・ 現任の監事が後任監事・他の監事選任において発言権を持つ制度が考えられる
- 企業で既に行われている
・ 監事の人数を増員する
- 規模等を勘案する
・ 監査体制の充実を図る
- 監事の常勤化
・ 少なくとも1人は常勤監事を置く段階に来ているのではないか
・ 非常勤監事のみで運営している学校法人にアンケートを実施してはどうか
・ 常勤監事を置くことに係る検討を段階的に進めてはどうか
・ 私学助成の中に常勤監事の有無の項目を設定してはどうか
- 監事の報酬
・ 無報酬が3割程度と予想される
・ 権限と責任にふさわしい報酬が必要
- 三様監査体制
・ 監事監査
・ 会計監査人による外部監査
- 法的根拠は私学法ではなく私学振興助成法
- 私学法に移行して,同時に監査するということも検討してもよいのではないか
・ 内部監査
- 多くは理事長直結の組織で,理事長に代わって監査する
- 内部統制の運営状況を確認するという意味では,監事の役割とは異なる
- 連携を密にして効率的な監査をすべき
- 監事の職務内容、とくに教学監査
・ 業務監査の内容・範囲は各学校に任されている
・ 教育面の監査というのは本来,業務監査の中心的な課題
・ しかし実態は教学への意識が低い
・ 教育の質向上と学校の運営を念頭に置いて検討すべき課題を取り上げてはどうか
- 実効性ある監査についての課題
・ 学校法人内で「監事監査規則」や「監査基準」を定める
- この基本的なことができていない学校が余りにも多い
・ 重要な会議・委員会には出席し、必要がある場合は意見を述べる
- 特に重要事項の諮問機関である評議員会には出席する
・ 理事長や学長等から定期的に業務の状況等の報告を受け、意見交換をする
- 特に学校法人に著しい損害を及ぼす恐れのある事実が発生したときには、直ちに監事に報告することを理事長や学長等に義務付ける
・ 情報の収集・業務の実態を把握する
- 重要書類(決裁文書、議事録等)の閲覧
- ヒアリングの実施
- 各部署への往査
- 理事長や学長等だけでなく教職員等ともコミュニケーションを図る
- 監事会議の定例的な開催
・ 監査報告の際に、改善・留意すべき事項や評価すべき点などを「監事監査意見書」としてまとめる
- 理事会・評議員会で表明する
- 学内での理解を高め、またフォローアップ監査にも有効
・ 理事長等の違法行為または著しく不当な決議がなされることを防止するように実行する
- 理事会や評議員会に報告しても適切に対応されない場合は、所轄庁に報告(私学法37③4)
- 監事の意識向上と知識の修得
・ 監事も勉強してレベルアップしないといけない
・ 研修の在り方等を検討する必要がある
- 評議員会の改善
・ 外部性を高めることについて検討してもよいのではないか
- おわりにあたって
・ 学校法人の監事監査を中心とするチェック機能は企業から学ぶ点もある
・ 文部科学省は折に触れて監事の生の声を聞くようにしてはどうか
○ 水戸英則委員(学校法人二松学舎理事長)
- 説明すること
① 日本の私立大学の役割
② 経営悪化の構造的な要因
③ 現行支援体制の課題
④ 今後の支援体制整備に向けて考慮すべきポイント
⑤ 支援体制具体化案
① 日本の私立大学の役割
・ 人材力は国力の源泉
・ 人材力を量・質ともに引き上げることは教育の最終段階を担う高等教育機関の責任
・ 私立大学は少子高齢化が進む我が国の労働力を支える重要な柱
- 人材の7割強を毎年輩出
・ 私立大学におけるグローバル教育の推進
- 日本人留学生数の7割は私大生
- 私大は海外留学生の8割を受入れている
② 経営悪化の構造的要因
・ 公費負担の格差から授業料格差,施設設備の設置者負担原則等大きな財務面での遜色がある
・ 地方所在私大中心に定員未充足が増加
- 過去5年平均43%の私学が定員未充足
・ 教育装備関連コスト増から私大経常費が年々増加している
- アクティブ・ラーニング,語学教育,ICT教育の導入など
・ 一方で経常費補助比率は10.8,10.7,10.6と年々低下して,昨年度は10.1%
・ 学校法人事業活動収支差額比率推移
- 事業活動収支差額比率
・ 大学が教育研究を行うに当たっての収支
・ プラスでないと教育環境設備の更新や償却,新規投資ができない
・ できればプラス5から10%以上を確保すべき指数
- 平成26年度の数字
・ マイナスが544法人中178(全体の33%)
・ 平成15年度から財務悪化が進捗している
- 今後,過去11年間と同様の傾向が続くと仮定した場合
・ 平成37年度は全体の4割を超す私学が差額比率マイナスに陥る
・ 同10%以下が全体の2割を超える
・ リーマンショック並みの景気悪化に襲われた場合は全法人の5割以上がマイナス圏内に陥る
・ 学校法人支援方策図
- 私学事業団の学校法人活性化委員会が平成19年に作成した
- 経営状態区分ごとに文部科学省,事業団,関連団体の支援対応を図解している
- 各段階(グリーン・イエロー・レッド)で有効な経営改善策の実施と資金支援を長い目で図っていく必要がある
③ 現行支援体制の課題
・ 予防措置の早期対応ができずに経営改善への指導が遅延するおそれがないか
- 私学事業団の経営相談機能は,学校法人からのアプローチがあって初めて機能する
- アプローチがあっても,踏み込んだ経営状況は現行制度では把握不可
- 文部科学省私学部は,悪化先はかなり踏み込んで指導をしているが、イエローゾーンの悪化先指導までは手が回らない
・ 虚偽申告は把握不能
・ 経営状況の最悪期まで状況の把握が困難
・ 危機的状況の救済策について選択肢が限定されてはいないか
- 平成26年4月の私学法改正によって自主的な改善が見込めない先への立入検査権は認められた
- しかし、それに至るまでの自主的な再建のための経営指導に限界
- 現実的に解散・破綻直前にしか立ち入ることが難しい
・ 現在の認証評価制度は教育・研究の質保証が第一義であり,財務的基盤に係る検証は弱い
・ 対応組織別(いわゆる縦串)
<私学部>
・ 経営状況が悪化傾向にある法人については事業団との連携により踏み込んで指導・助言をしている
- 学校法人運営調査結果や私学事業団の経営分析結果等
- 単発の事案については対応可能
- 今後複数事案が同時期に多数発生するような局面を迎えた場合に,支援事業の全体管理と指導に限界がないか
- 中期的な経営改善方向への誘導には相応の体制・対応が必要
・ 早期撤退のインセンティブ付与は現状不可
・ 経営撤退の客観的な指標を作成し,撤退を慫慂する(誘って勧める)ことも検討しておく必要がある
- 経営撤退の客観的な指標
・ 経営再生のボーダーラインの裏返し、経営不能のボーダーライン
・ 量(ストック面とキャッシュフロー面)・質(点数化した経営チェックリス)の両面の基準を設定する
・ 撤退とは経営陣の撤退を意味する、教職員を含め学部,学科は最大限,他大学への融合等を企図して残す
- 学校法人の財務状況は一手に把握している
・ ただし、申告ベースの把握で,虚偽申告は把握困難
・ 経営撤退基準の試案
- 量的基準
・ ストック,フローの2基準を基本とする
- 時価ベースの資産・負債比率
- 教育活動資金収支差額が2年連続で赤字
・ 収容定員別に資産負債比率等を基準に決めて,是正措置を勧告していく
- 質的基準
・ 大学経営全般に関する「点数化したチェックリスト」
- 量的基準と質的基準の組み合わせ
・ チェックリストの点数が一定以上,一定未満であるというところで介入しない,するを決めていくマトリックス
<日本私立学校振興・共済事業団>
・ 私学経営情報センター経営支援室の業務として経営相談を実施している
- 事業団法第1条に設立趣旨が「私学の教育の充実と経営の安定を図るため,私学教育の援助に必要な業務を総合的に行うこと」とある
・ 現在は「経営を監督する」立場ではない
・ 学校法人側からの「自主的な相談」がなければ助言等を行うことができない
<各認証評価機関>
・ 主に教育・研究の質担保の評価が中心で,正確な財務状況把握は困難
- 日本高等教育評価機構
・ 恒常的に定員充足率の低い先については財務に詳しい評価員を充てるにとどまっている
・ 長期間定員充足率が低く,財務状況の悪化が進んでいる先は保留扱いで3年後に再評価する扱い
- モニタリングする期間が長すぎないか
- 大学基準協会
・ 大学財務評価分科会で評価指針を定め,資産・負債超過比率等,五~六年の経年変化をウォッチしている
・ しかし、財務悪化に関する評価は,これが教育の質の悪化につながる場合にのみ言及
・ 経営改善への助言等はしていない
<私立大学協会>
・ 加盟校の自主性を重視する政策
・ 客観的財務状況の自主的判断指標「財務状況分析表」の公開に加えて経営相談室を設置
・ 経営相談案件は私学事業団の経営情報センターに取り次ぐケースが多い
④ 今後の支援体制整備に向けて考慮すべきポイント
・ 現行体制の強化等
- 私学部及び学校法人運営調査制度の体制を充実・強化
- 私学事業団の財政基盤の充実と「経営監督・改善チーム」を新設
- 各認証評価機関の体制に現状の教育研究の質評価に加えて「経営改善指導チーム」を新設
- 私学団体の自主性に訴えた体制整備と経営支援活動を充実・強化
- 上記4つを連携できるところから各々充実・強化していく
・ 新体制の構築
- 官民出資による「新機構」を設置
・ 金融システム混乱期の「金融庁」の創設・「預金保険機構」の拡充を想定
・ 大掛かりな仕事になる
・ 体制整備のため官・協会等が横断的に考慮すべきポイント(横串)
- 「経営サーベイランス」(詳細は後述)各体制の強化
・ 現状の関連部署の体制の充実・強化、一部法改正等
- 学校法人会計基準の一部変更
・ 経営不安定先への時価会計の適用
・ 経営不安定先への決算承認制度の導入
- 救済資金手当ての方法
・ 公的資金の増額
・ 基盤的経費への助成の充実
・ オール私学による拠出
- 私的法的整理等対処方法の検証,合併等仲介業務の多様化
・ 私学活性化委員会作成の処理方法の検証
・ 学校法人版再生法の検討
- 学籍管理制度の構築
- 関連法改正等
・ 「経営サーベイランス」体制の強化
- 制度の目的
・ まず、自主性を喚起する
・ 次に、実態把握
・ そして、是正
- 制度の充実
・ 体制
- 経営内容を評価する組織・チームが必要
・ 要員
- ノウハウ・人員不足なら外部人材,公認会計士,金融庁・日銀の検査経験者等の投入
・ 手法
- 調査結果は横串を通して正確に把握
- チェックリストの作成が必要
- 学校法人に自己チェックさせて,再度調査チームがチェックする
・ 調査忌避、調査資料改竄への対応
- サーベイランスの主体
・ 経営不安定先は大部分が中小規模の私立大学
・ 悪化先の改善指導を中・長期的に継続的に実施できる体制の構築が必要
・ イエローゾーン先が,赤に近いイエローゾーン先C1,C2,C3に落ちないようにする必要がある
- モニタリング制度の充実
・ 1~2年ごとに問題大学の経営状況をモニタリングする制度・体制の構築が必要ではないか
- 現行の認証評価制度は7年という長いインターバル
・ 米国認定基準協会の加盟支部の一部は加盟大学校閉校の場合の学生保護のためのガイドラインを設定している事例がある
- 資料に詳細の説明あり
- 是正措置
・ 経営撤退のための量・質面の公式な指標を作成し,行使する
・ メニューを多様化し,行政訴訟にも対応する
・ イエローゾーン先がCゾーン先に落ちないようにするための対応策の例
- イエローゾーン先に絞った対応
・ 先進的な革新事例の紹介
・ 事業団,協会連合経営相談チームの定期的な巡回
・ 経営費補助金の給付条件中質問事項に経営改善事項を挿入する
・ 経営改善達成先への補助金増額等の措置
・ 一部時価会計の実施
- 私学事業団経営判断指標のレッドゾーン,イエローゾーンの一部先(経営不安定先)には時価会計による実態把握を同時にしておいてはどうか
・ 解散時には簿価ではなく全て時価
・ 時価により,実態を把握する必要がある
- 1980年~93年(バブル崩壊10年前)に設立した法人で経営悪化先は簿価が非常に上がって,その後は大きく下落している
- 新たに導入する「学校法人に対する決算承認制度」(仮称)と組み合わせる
・ 学校法人自身に含み損を算定した時価ベースでの報告提出を義務付ける
・ 提出前に公認会計士によるチェックを義務付けることも一案
・ 提出された決算書を中央でチェックし承認する
・ 承認されない場合は再作成・再提出を義務付ける
- 財務面でのグリップ強化をしていくということが可能
・ 救済資金手当
- 合併にしろ,事業譲渡にしろ,資金が必要
- 現在27年度開始の文部科学省私立大学経営強化集中支援事業の補助金を増額して対応する
- 経営不安定先大学法人に対する新たな資金供給制度を検討してはどうか
・ 学校法人が独自に援助先を探す場合に,外資や闇金融も含めてコントロールが利かないおそれがある
・ 事業団や運営調査結果把握の経営不安定先情報との連携で実施する
- 私学事業団の財政基盤を強化し融資制度に不安定先に対する貸出制度を創ってはどうか
- 新しい機関を創る場合は公的機関からの直接資金供給制度を新設、経営権を掌握(理事等の派遣)
- 基金等の創設
・ 各大学法人からの徴収金,例えば4号基本金の一定割合を基金化する
- 大学経理基準の一部変更が必要
- 公的資金の利用について金融危機時には世論が相当反発
- 旧経営陣の責任論に波及する
- 「オール私学」による支援制度を新設し資金手当を行う
・ 私大協会,私大連盟の加盟校が自主的に資金拠出をして新たな支援体制の構築をする
- 規模の利益を小規模私立大学の救済に均てんすると云う考え方
- 私立大学全体の数字(26年度私学事業団資料)
・ 自己資金が21兆5,000億円
・ うち現金可能資金が9兆4,000億円
・ 退職手当等法定の引当金等を差し引き,ひも付きでないフリーの金融資産は6兆円
・ その1%でも600億
・ 当然,優良私立大学から反対の声が上がる可能性が大
・ 私立大学協会・連盟ベースで協会を保証機関とする学生就学皆保険制度(仮称)を創設
- 剰余金を資金手当てとして活用
- 債務者は私立大学,債権者は学生
- 私立大学の倒産等により主契約における私立大学の債務を履行できない事態が発生した場合
・ 私立大学が学生に対して授業料等を払い戻す
・ 就学機会のロスについての慰謝料を払い戻す
・ 対処方法の多様化
- 学校法人の私的,法的整理による実効性の検証の必要性
- 合併に加え当局等による事業譲渡的な継承方法の検討
・ 破産型よりも事業譲渡的な継承方法の方が社会的なインパクトが小さい
・ 地域的に分割して事業譲渡できるなどのメリットがある
・ 専門の仲介業者があるが,監督官庁のガイドラインなしの状況で行われており,業法も含め何らかの当局の指針作りが必要ではないか
・ 学校法人の特殊性に配慮した対処方法を新たに検討する必要
- 学校法人内の個々の学校だけを譲渡するなど
- 破綻・事業継承・清算処理における学校法人,金融機関,米国私立大学の比較(表掲載)
- 学籍管理のための公的機関の設置の必要性
・ 学校法人が破綻した場合に,在学生の学籍に関しては支援先の学校法人が承継
・ しかし、過去の卒業生に係る学籍管理が承継されるとは限らない
・ 国公私を通じて体制の整備が必要ではないか
- 認証評価機関や私立大学協会が大学破綻時の学生保護のためのガイドラインを設け対応することも一考
⑤ 支援体制具体化案
・ 文部科学省私学部及び学校法人運営調査等の体制充実
・ 日本私立学校振興・共済事業団の私学経営情報センター機能の強化
- 私学事業団の中に今の「経営支援室」(コンサルティング部隊)とは別に立入検査権限を持つ「経営監視・監督室」(査察部隊)を設置する
- 経営安定化資金の貸出制度も併設させる
- 一部法改正を行い強化する
・ 認証評価システムの見直し
- 現行の認証評価システムを見直す
・ 「教育の質保証」に加えて「財務の健全性・経営改善」に対する評価を専門に実施可能の形で改編
・ 認証評価基準についても財務面での評価基準を更に厳格化する形での評価基準に改正させ,経営改善等確実に実施可能の体制整備を求める
・ 私学団体の体制の充実・強化
- 官民出資による「新機構」の設置
・ 各大学法人からの出資金、及び予算を投入して、強力な権限を持つ「新機構」を設置する
- ゼロからの構築であり必要な機能を全部盛り込めますが,設置までの合意形成,それから法整備に時間が掛かる
- そこで、私学事業団に設置することも一案
・ 他大学法人との合併や自力再生等のソフトランディングに導く
- 経営不安定先への直接資金供給(寄附)と理事長等役員の派遣
・ 国公私立大学の学籍管理機能を持たせる
・ 今後の支援体制具体化案メリット&デメリット比較(表)
■ 質疑応答、自由討議
○ 浦野委員
- 私学全体としてトップラインをどう伸ばしていくか
・ 大学進学率を100%近くにすることができれば,今の100万の18歳同学年の人口でも何とかいけるかもしれない
・ 社会人の学び直しを大学で行う
- ホールディング形式(事務局資料p. 35)による合併というものは考える必要がある
・ 現状健全なうちに規模のメリットが出ていない大学が規模のメリットを活かせる
・ 各大学の建学の精神を生かしながら独立してやっていく
・ 経済規模に達していない大学法人にとって、単独では監事の常勤化、監事報酬,三様監査は人的にも,あるいは資金的にも難しい
- モニタリングを通じたエバリュエーションで事が起きないようにするかということが大事
・ サーベイランスに入っでからでは遅い
○ 大村委員
- 理事会の中でいろいろ問題が出てきたときに,理事会という土俵の中では監事が最後のとりで
・ 監事が一方の立場に入ってしまって,当事者と一緒に相撲をとってしまうと,収拾がつかなくなる
・ 監事の在り方、選び方、研修など全国的なレベルアップを図っていくことが重要
○ 佐野委員
- 監事の選任
・ 評議員会で選任するのであれば、評議員会の在り方をまず検討すべき
- 現行の振興助成法を基にした会計基準に,時価会計を導入することについて
・ 補助金の公平配分についての,特に貸借対照表の持っている意義が変わってきてしまうのではないか
・ 私学法の問題と併せて考えるべきではないか
- 私立学校振興・共済事業団
・ 私学に貸し付けて,その利ざやで運営している
・ その中で振興を図りながら財政基盤を充実しようというのは非常に自己矛盾に陥るのではないか
⇒ 財政基盤が脆弱だから国からの財政支援をきちんとしてあげなさい,というお話は私学部長あるいは高等教育局長,事務次官のお力で是非それをお願いしたい(河田委員)
○ 河田委員
- 国立大学法人の監事というものも,非常にうまくいっていないし,問題点がきわめて多い
・ 大学のガバナンス改革の会議,「組織運営部会」のときにも問題になった
- できるだけ常勤監事を必須化し,かつその中で教学に関する監査を行い,あるいは教授会をチェックすることが重要
・ 監事の職務内容,勤務体制などを法的に定義すべき
- レッドゾーンという言葉に余り左右されないでほしい
・ 民間の企業のようにレッドが貼られれば,もう駄目だというわけでは全くない
・ 例えば大手の大規模大学であっても,医学部の病院を建て替えるということで何百億かを外部資金の融資で受ければ,すぐにD3になる
・ きちっとした学生数を確保し,そして新しい学科なり学部なりに,うまく改組転換していけばレッドは解消できる
○ 清水委員
- ガバナンスのシステムの問題は,私立のみならず国立にとっても同じ
- 私学については,どんな形でのステークホルダーに対する対応,対応の制度的仕組みがあったらいいのか
・ 国立の場合は,法制度を通じて,国(文部科学大臣)の目標,計画,評価における関与というシステムを作ってきた
⇒ ステークホルダーに対しては大学として,今何をやって,これから何をしようとしているかということについて常にアナウンスをしていく必要がある(水戸委員)
- 学生に対して
・ 一番重要なステークホルダー
・ 満足度調査や授業アンケート調査を行い,その結果抽出される課題と当該課題の解決状況を学生に還元するという形が必要
- OB会,父母会、OB会、取引先企業、地域の団体などに対して
・ 現在大学が何をやっているか,長期ビジョンや毎年の計画やその履行状況に還元していく
- 長期ビジョンについて毎年度の達成状況をアニュアルレポートで出している
- 監事をシステムとして考えた場合に,大学執行部などと監事が意見交換の中で,大学の戦略を立て実行していくために、制度をどう工夫していけばよいか
- 事業団法に経営の「監督」という条項を入れなければできないという主張について
・ 事業団が非常に中間的な団体としての性格を超えるか超えないかというのは大きな分水嶺
・ そのため、そこはもう少しグレーゾーンのところがあっていいのではないか
○ 西井委員
- 水戸委員資料の経営判断指標や再生研究会の報告(12・13ページ)
・ 10年ほど前に私学事業団でまとめた
・ 当時と現在とでどう情勢が変化しているか
- 当時は自由競争と規制緩和が強調されていた(小泉改革の真っただ中)
- 大学についても競争と情報公開を徹底させ,強いところを伸ばし弱いところを整理させようとする優勝劣敗の考え方が強く出ていた
- 経営困難な大学に対しては,基本的には学校の自主性と自己責任を強調する形で報告をまとめた
- 大学の自己責任に任せて,自分で判断して,早めに撤退することが基本で,それを支援する緩やかな仕組みが構想された
- その支援を私学団体にも期待し,事業団にも円滑な整理を支援する役割を発揮させることが提起された
- 現在は財政悪化が進み、また段階的に強力な指導ができる体制になっている
- 破綻する恐れのある大学の数が増えると想定される時代に,自己責任と自主的な撤収を私立大学に任せるだけではなく,外からの一定の支援と誘導の仕組みを強化する必要もある
○ 小出委員
- 私学事業団の機能の強化・拡充について検討をお願いしたい
・ 実現しようとすると特殊法人横並びの様々な規制が存在している
- 定員や資金面の制約等
- 理事長,理事,評議員,監事の三者の「目的一致の動き」(建学の精神の具現のための協調的な関係)についても強化の方向で検討をお願いしたい