ホーム → 大学に関わる情報メモ → 教学マネジメント特別委員会(第2回)議事録
公開日:2019年2月24日
「指針に具体的に盛り込むべき主な事項」を6つの柱として整理(①学修目標を具体化、②授業科目と教育課程、③成績評価、④学修成果の把握・可視化、⑤教学マネジメントを支える基盤、⑥情報の公表)。
指針の策定の考え方,指針に盛り込むべき事項,ロードマップについて委員が意見(学長などに対するトレーニング,国による学修成果の範囲と水準の枠組み,事項を構造化など)。
学修目標について委員が意見(DPと卒業の質保証との関係,成績評価の客観性の根拠となる枠組み,プログラムの適切性を学内でチェックできる体制,自前主義と標準化,ポリシー見直しの難しさ,高大接続の観点など)。
授業科目・教育課程について委員が意見(1学期に履修する科目数の多さ,理想論と無駄の哲学など)。
○ 平野大学改革推進室長
- 教学マネジメント指針の策定の考え方,具体的に盛り込むべき主な事項についてのコンセプトと柱立て
・ 指針の策定の考え方
- 三つの方針のガイドライン
・ 三つの方針に基づいて,組織的な教育,自己点検・評価を行う
・ そのことにより社会に対する説明責任を果たす,また,大学教育を実質化する
・ 各大学でその三つのポリシーというものを具体的にどのように回していくのかについては,個々の手法を掲げるにとどまっていた
- その結果,三つの方針の策定は進んだが,下記の指摘がある
・ 全ての大学においてPDCAサイクルの基点として内部質保証の根幹を担うだけの水準で定められているのかどうか
・ 三つの方針に基づく教学マネジメントの体制が確立されている状況とは言えないのではないか
・ 可視化の取組も必要
- 教育成果・学修成果を適切に発信して,社会に対する説明責任を果たしていくという観点
- この指針で示していること
・ 過去の答申等で示されている大学教育改革に関する手法を再整理する
- 教学マネジメントの確立,学修成果の可視化・情報公開の促進という観点
・ 社会に対する説明責任を果たしていける大学運営の具体的な在り方を示していく
・ 「指針に具体的に盛り込むべき主な事項の整理について」
- 6個の柱として整理
・ 考え方
- PDCAサイクルを各段階に応じて設定している項目
- 教学マネジメントを支える基盤となるべき項目
- 社会との接点というところに関する項目
・ 内容
① 学修目標を具体化する(ゴールを設定する)
・ プランに関わる部分
・ 卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)
- 教育の質保証に向けたPDCAサイクルの基点
- 学生の学修目標,卒業生の能力を保証するものとして機能するように,明確かつ具体的に定められることが共通理解となる必要がある
② 授業科目と教育課程
・ プランに関わる部分
・ ディプロマ・ポリシーの下にある学位プログラムを個々の授業科目が支える構造になることが必要
・ 科目の精選・統合も必要
・ 体系的な教育課程を編成する必要がある
- ディプロマ・ポリシーを効率的に実現する観点
③ 成績評価(①②に基づいて教育課程が実施された上で行うこと)
・ 成績評価の信頼性をどのように確保していくのか
- 大学教育の質の保証の根幹
- 学修成果の可視化を適切に行う上での前提
④ 学修成果の把握・可視化
・ 複数の情報を組み合わせた多元的な学修成果の把握と可視化が必要ではないか
- 学生がディプロマ・ポリシーに定める能力を身に付けていることをしっかり実感して,説明できるようにする
- 大学がその結果というものを踏まえて教育課程の改善に活用できるようにする
・ ①~④の円環構造を一定意識して構造を立てている
⑤ 教学マネジメントを支える基盤
・ ①~④の取組を実施する上では,教員・職員の能力の向上の進展が必要不可欠ではないか
- FD・SD
- 教学IR
⑥ 情報の公表
・ 大学教育の質に関する情報(大学全体の教育成果,教学に係る取組状況等)を様々な角度から示せるように把握・公表していくことが必要ではないか
- 社会からの評価と支援(信頼と支援)を得る好循環を形成するという観点
・ 6つの柱にどのような事項を盛り込むべきかについて,現段階で事項相互の関係を整理
- 中教審答申,各部会・ワーキングにおける議論,前回の本委員会での発言も参考に作成
- 資料中の白い丸は今回,中心的に議論を行っていただきたい事項,黒い丸は今後,各回で本格的に議論を行っていく機会があるだろうというもの
- 白い丸の項目について説明
・ 「学修目標の具体化」の柱にどのようなものが盛り込まれるべきかを整理
- 各大学の個性・特色が反映された三つの方針
・ 教学マネジメントの確立に当たって,最も重要なもの
・ 学修者本位の教育の質の向上を図るための出発点
- 特に「卒業認定・学位授与の方針」は,学生の学修目標,卒業生に最低限備わっている能力を保証するものとして機能すべき
・ 明確かつ具体的に定められることが必要
・ この方針を中心として,あらかじめ定められた手順によって大学教育の成果を点検・評価するということが求められる
・ 学修目標が具体化されていることは全ての出発点になる
- 各大学は,三つの方針のガイドラインの内容に留意することが必要
<①学修目標の具体化>
- 「卒業認定・学位授与の方針」
・ 在学生に対しては約束として,対外的には卒業生に最低限備わっている能力を保証するものとして機能すべきもの
・ 大学はこの方針において具体的かつ明確な目標を示す必要がある
・ 従前は,既存の教員組織を前提として組み立てられがちであったのではないか
・ 今後は,それぞれの大学の強みや特色を活かしつつ,学位プログラムとしてふさわしい明確な目標を設定する必要がある
- 学修者・社会のニーズというものにどのように応えることができるのかという観点
- 社会のニーズ
・ 産業界のニーズのみならず,国際社会や地域社会も含む幅広い領域のニーズ
・ 大学の主体的な姿勢が重要
- 強みや特色を活かしながら,大学が自らの手で新たなニーズを定義して創出していく
- 「卒業認定・学位授与の方針」
・ 学内だけではなく,関係する外部(産業界や地域社会)の意見や国際社会の動向も含めて作成することが適切な場合もあるのではないか
- 「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー)
・ 卒業生が「何ができるようになるのか」について,適切な分類の下,記載していくことが必要ではないか
- 専門分野に係る能力
- いわゆる普遍的なスキル,リテラシー
・ 「学生は○○することができる」といったような記述で能力を規定することが原則としては必要なのではないか
- 学生の学修目標として機能する
- 大学が事後的に客観的な評価ができるようにする
- 大学教育の成果の点検・評価
・ 教学マネジメントの確立にあたって必要
・ 学位プログラム共通の考え方や尺度にのっとって行う
・ その際,あらかじめ方針を定めておく必要がある
- 点検・評価の目的,達成すべき質的水準,具体的な実施方法
- グランドデザイン答申で取り上げられている,平成24年の答申ではアセスメント・ポリシーと称されていた
- 教学マネジメントを確立する上で必要なPDCAサイクル
・ 1回限りの営みではない
・ 積極的に課題を明らかにして次のサイクルへの改善につなげるということにこそ意味がある
・ 改めて自覚的になっておくということが必要ではないか
<②授業科目・教育課程>
- 「卒業認定・学位授与の方針」の下に学位プログラムがある
・ はじめに個々の授業科目があるのではない
・ それぞれの授業科目がそれを支える構造にならなければならない
- 同方針を効果的に実現する観点から体系的な教育課程が組織的に編成される必要がある
・ 『カリキュラムマップ』や『カリキュラムツリー』などの手法を活用することが考えられる
・ 密度の濃い主体的な学修を可能とする前提として科目の精選や統合
・ キャップ制やシラバスが適切に用いられ,きめ細やかな履修指導が行われる必要がある
- ディプロマ・ポリシーに定められた目標に何の科目が必要なのかを検討する
・ 同方針への貢献が見込まれない科目は,内容の見直しや取りやめを検討する必要があるのではないか
・ 「卒業認定・学位授与の方針」において観点別に示される「○○できるようになること」から逆算する
・ 必要な授業科目を開設し,体系的な教育課程を編成することが必要
・ 改めて強調することが極めて重要な観点
- 学生が一時に履修する授業科目数が過多
・ 学生が授業内外の学修に集中できない
・ ディプロマ・ポリシーに定めた目標を達成することは困難になる
・ 必修科目を適切に設定することが必要
- 学生の学修意欲を保ち,密度の濃い主体的な学修を可能とするため
・ 学生が同時に履修する科目数
- 諸外国の事例なども踏まえつつ,大胆に絞り込みを進めていくことが必要ではないか
- 学事暦の柔軟化(セメスター制の導入など)
・ 密度の濃い主体的な学修を可能とするという観点
・ 単にセメスターやクオーターを導入して単純に科目を分割することではない
・ 細分された授業科目を統合して,適切なボリュームを確保していくことが必要ではないか
- 1つの科目の中で講義,演習,実験など多様な学修形態を盛り込むことを促進
・ 細分化された授業科目というものを統合するという観点,密度がしっかり保たれるという観点
・ ICTの活用やアクティブ・ラーニングへの転換も念頭に置く
・ 「考える」,「話す」,「行動する」など多様な学びをもたらすな工夫が求められるのではないか
・ 教員の負担にも関わる
- TAなどによるサポートも重要ではないか
<③成績評価>
- 成績評価の信頼性を確保
・ 大学教育の質保証の根幹
・ 学修成果の可視化を適切に行う上での前提
・ 各授業科目の到達目標に照らした達成状況を「ルーブリック」等を用いて適切に判断することが重要
・ GPA
- 国際的な通用性を踏まえた運用を確保
- 信頼性を確保するために算定方法や分布を公表する必要があるのではないか
<④学修成果の把握・可視化>
- 各学生が「卒業認定・学位授与の方針」に定める能力を身に付けることができていることを実感
- そのことをエビデンスをもって説明できるようにすることが必要ではないか」
- 大学が教育課程の改善に活用できるように,学修成果の把握と可視化が行われることが必要ではないか
- 学修成果の可視化に係る各情報
・ 今後,共通理解となるような形で指針において示していく必要があるのではないか
- 各大学の実態(把握する意義やその活用の在り方,定義や数値の算出方法等)を踏まえる
・ 複数の情報を組み合わせた多元的な活用の在り方,分かりやすい形での表示について検討する必要がある
<⑤教学マネジメントを支える基盤>
- 教員・職員の能力の向上は,大学が教育の成果を最大化するために欠くべからざる課題
- FD・SDの実質化が必要
・ 新任の教員や,実務経験のある教員に対するFDの実施を促進する必要があるのではないか
・ 教学のIRについて,学長などの理解を促進し,人材の育成をしっかり進めていく必要があるのではないか
<⑥情報公表>
- 社会からの評価と支援を得るという好循環を形成するという観点
・ 各大学が,地域社会や産業界,大学進学者等の大学の外部の声や期待を意識
・ 積極的に説明責任を果たしていく
・ 大学全体の教育成果や教学に係る取組状況の大学教育の質に係る情報を把握・公表していくことが重要ではないか
・ 共通理解となるような形で指針において示す必要があるのではないか
- 各大学の実態(把握する意義,活用の在り方,定義,数値の算出方法,分かりやすい公表方法等)を踏まえる
- 教学マネジメント特別委員会の審議のロードマップ
・ 今期の大学分科会は2月14日をもって任期満了
・ 本日の会議(第2回)は①「学修目標の具体化」と②「授業科目・教育課程」
・ 3月以降に③~⑥を順次,柱に沿って検討し,最終的に⑦「教学マネジメント指針案の提示・省令改正案の提示」
- 第10期の大学分科会において本委員会の設置が認められた後に行う
○ 両角委員
- 資料2に明確に入れた方がよい点
・ 大学の学長,副学長に対するトレーニング(「教学マネジメントを支える基盤」に関すること)
・ 情報公開を支える基盤的なものをできるだけ共有化
- 大学は自前主義に走り過ぎるところがある
○ 深堀委員
- 教学マネジメントを支える基盤として,社会の環境についても整理して言及する必要がある
・ 教学マネジメントについて検討する以上,国として高等教育資格枠組みを設定する必要がある
- 学生に修得させたい学問分野の学修成果の範囲と水準について,何を基準にどう判断していくのか
- 分野別参照基準も,高等教育資格枠組みに沿って定義することが求められる
- 学修成果が適切な水準かどうか,一体それを誰がどう判断するのかについて,国としてのマスタープランがないことは非常に大きな問題
- 教学マネジメントを進めるためには,取組が評価される環境を整えなければ,十分な協力は得られない
・ 労力を掛けて教学マネジメントを整えても甲斐のない社会の仕組みになっている
・ 例えば,JABEEが定着して社会的に高く評価されているかというと,必ずしもそうではない状況
- 技術者認定の負担が非常に重い
- 国際的な通用性のある教育課程を準備することの意義が大学教員の側で十分に理解されていない場合がある
- 非常に大きなコストを掛けて質保証を行ったところで,それを社会の側が十分に評価していない
- 授業科目・教育課程に関する事項
・ 日本では4年間の大学教育が厳密に4年間を掛けて実施されている状況ではない
- 124単位を修得するためには4年間が必要だが,就職活動等で実質的には3年間しか時間がとれていない
・ 教学マネジメントに真面目に取り組んでいくために,外部環境をどのように整えていくのかという議論をきっちりと行っていただきたい
○ 佐藤(浩)委員
- 項目をシステムとして運用する必要がある
・ 事項の列挙だけをすると外部評価や補助金獲得のためのポイント稼ぎのゲームになってしまう印象がある
・ ばらばらに運用するのではなくて,改めて教学マネジメントのシステムということを強調した方がいい
- そこで4層モデル(同心円状)を提起
・ 各層
- 第1層:学習レベル
- 第2層:ミクロの教育レベル
- 第3層:ミドルの教育レベル
- 第4層:マクロの教育レベル
・ 4層にPDCAの各段階を設定して,今回の挙げられている16項目をプロット
・ そうするとPに関わるもの,Cに関わるものが多く並んでいるということが分かる
・ 6つの柱は位相の異なるものが列挙されている
・ 構造を理解しないままにそれぞれの項目をつぶしていくというような形になると,結果としてはシステムとして運用がなされないということがまた繰り返される
○ 大森委員
- 指針に盛り込むべき事項
・ 認証評価等に関しては別のところで議論されるものの,教学マネジメントは内部質保証の根幹をなすもの
・ 認証評価と教学マネジメントの関係がある程度言及されてないと現場がやりづらい
- それぞれの担当部署で頑張ってくださいではなく,一体的なものとして取り組む
- ロードマップ
・ 学修成果の可視化にもっと時間を割いてもよいのではないか
- 授業科目や教育課程は現場で理解をしながら進めている
- 学修成果の可視化は各大学が模索中
○ 吉見委員
- 教学マネジメントを支える仕組みとして,学部を超えた標準化の仕組み,あるいは大学を超えた標準化の仕組みを整備することが大変重要
・ それぞれの大学・学部は自前主義に陥る
○ 林委員
- 教学マネジメント指針の策定
・ 今までほかの委員が述べたことと同じ
- 教学マネジメント
・ 要素が挙がっているが,マネジメントの体制,学内の仕組みについての言及がほとんどない
・ 教学マネジメントの仕組みは内部質保証システムとイコール
・ 別のものを作るのはよくない
・ 欧州では欧州全体の共通の内部質保証のガイドライン(欧州ESG)を作っている
- プログラムを単位とする質保証が核であると言っている
・ 大学の中で新しいプログラムをどうやって作って学内で承認するか
・ 既存のプログラムをどうやって学内でレビューするか など
・ 原則的にはプログラム単位で検討すべきことはプログラム単位であるということを述べていただきたい
・ 内部質保証の仕組みがどうあるべきかは議論いただきたい
・ 階層構造が意識される必要がある
- 授業レベル,プログラムレベル,学部あるいは大学の単位によるチェック,認証評価機関によるチェック
- プログラムを横断したような事項のマネジメント
・ 共通教育や大学の教育の国際化 など
- 教学マネジメントのシステムと内部質保証のシステムを一体のものとして考えて,指針の中では理想的な像を示していくことが必要
・ 自己点検評価委員会が学内のチェックをする一方,別の委員会が学修目標の具体化などをチェックするような大学の事例が多い
○ 日比谷座長
- 教学マネジメントについての共通理解,内部質保証との関係が重要なポイント
- 第3回の委員会では少し見取り図のようなものを提案できればよいと思っている
○ 平野大学改革推進室長
- 教学マネジメントの階層構造が資料に明示化されていなかった
- 今後,どういう単位でサイクルが回るのかが分かりやすいように示すことを考えていく
○ 小林(雅)副座長
- 事務局で付け加えて考えていただきたいこと
・ 全体像のたたき台を作っていただく
- 「大道具」の方は上位概念で見えにくく,まさしく可視化する対象
- 「小道具」の方は,分かりやすいから,可視化されているから,こういうふうにばらばらと出てくる
・ ここで議論すべきことと議論しなくていいことをはっきりさせてほしい
- ガバナンスやフレームワークなどは議論の対象になるのか
○ 益戸委員
- 質保証は社会から適切に評価されていないのではという点について
- 大学のステークホルダーでもある,民間企業の立場から述べる
- 経営改革に積極的な企業は,きちっとしたジョブ・ディスクリプションを作成している
・ 仕事の責任は何か,何をすると評価されて,何を頑張っても駄目なのかなどをはっきりさせている
・ ジョブ・ディスクリプションを遂行する前提は,どんな事が出来るかという能力,そして,何に適性があるか
- 採用時にもらう成績表
・ 成績表を見ても,Aそのものの価値がわからない
- 授業に良く出ていたのか,試験の成績が良かったからか
- その科目でどこまで到達したのかなど,能力判定には使えない
- 大学によっても,同じ大学の中の学部同士での違いも不透明
・ 面接重視に偏りがちとなり,学生の過剰な売り込みも起こりがち
・ 企業は面接で適性の部分だけ見て,成績からある一定の想像をして合否判断をする
・ そこにミスマッチの原因があるのではないか
- 「対外的には卒業生に最低限備わっている能力を保証するものとして機能すべきであり」は重要
- 時代を支える人材育成の過程・方法は,企業だけでなくアカデミアの皆さんも早い段階から一緒になってお考え頂きたい
○ 沖委員
- 資料2の中でフェーズに分けて話をするというのが大前提になる
- 「学修目標の具体化」は特にフェーズが混在している
- 一番大きな問題は,科目の到達目標のレベル
・ 科目の到達目標がひどいレベルのものが多い
・ DPとのマッピングができない,ツリーもできない,体系性も整合性も保証されない
・ もっと大きな問題は,到達目標がいいかげんに書かれているために,成績評価がいいかげんになること
・ 成績評価が到達目標の達成度の評価になっていない
・ そのため到達目標からマッピングされるDPもいい加減になるし,GPAも信頼できない
- 授業の到達目標を明確にすること,具体的に何ができるようになるかをしっかりと書いていただき,それを評価する,それが成績評価だということをしっかりご理解いただけるようにすることが重要
○ 大森委員
- DPと,卒業の質保証との関係について
- DPが達成されてないとやっぱり卒業させるわけにはいかないということの理解でいいのか
・ 124単位取って4年間在籍しているのに,DPが達成できてないがために卒業させませんということが起こるのか
- もしそうだとすると,チェックしたら学生のあれが足りてない,じゃあカリキュラム改善しましょうというレベルの話ではなくなる
・ 足りてないということがあっちゃいけない(全員が卒業できない)ということ
- DPからブレークダウンしてカリキュラムを作ろうという議論
・ カリキュラムで単位が取れているということは,DPが達成できているはず
・ だとすると,DPをチェックするという必要がどうなってくるのか
- どなたか教えていただけると有り難い
○ 清水委員
- GPAと卒業判定
・ 認証評価でGPAが一定以上でないと卒業できないという大学があった
- 日本の卒業制度というのは,124単位の修得と修業年限の組み合わせになっている
- そこをクリアしていれば卒業できるはず
- GPAが足りないから卒業させないというのは,法的な根拠がないので,結局それは関係ないという結論になった
・ 今のDPも同じで,現時点ではそれで卒業をさせないというのは法的には無理だと思う
○ 沖委員
- 単位がそろえば卒業というのが大前提
- ただ,ほかの国においては,例えばGPAに即して,あるいはまたほかの基準も含めて,卒業証書にランクがあるというようなところもあり得る
- その意味で,DPというのはどちらかというとそういう種類の目標になろうかなという気はしている
・ 例えば医学部医学科などで,卒業はしたけれど,国家試験に落ちてしまったというような状況もそうではないか
- 大学全体として機関レベル若しくはプログラムレベルでDPの達成度を測るということと同時に,個人レベルでも測っていくということが今後必要になってくるのではないか
- DPを定める際に重要なこと
・ 指標と基準を事前に決めておいた上で,学生が卒業する時点でどの程度達成したかを評価する
○ 深堀委員
- チューニングに限らず,イギリスの高等教育質保証も同様に,内部質保証システムが非常に重視されている
・ 授業科目レベルの具体的な学習成果とプログラムレベルの抽象的な学修成果のひも付けが非常に厳格に検討されている特徴がある
・ プログラムレベルの学修成果にひも付いた授業の単位を取れば卒業が認定される仕組みになっている
- 成績評価の客観性を主張するためには,客観性の根拠となる枠組みが共有される必要がある
・ 国が成績評価の客観性を求めるのであれば,そのマスタープランとなる基準を示さなければならない
- 何をもって適切な水準の学修成果ということについての考え方が共有されていない
- そのため,授業科目の学習成果とプログラムレベルの学修成果をどうひも付ければよいのかということについて具体的なイメージが持てない
- それを鍛えるための研修の機会もほとんど提供されてこなかった
- 何を基準にどういう活動に取り組めばそれが達成できるのかということについてのサポートを十分に提供していく必要がある
・ 仕組みの議論を併せてしないと,一方的に大学にばかり責任を押し付けることにならないか
○ 林委員
- 学修目標の具体化に関する事項
・ 学位の授与について
- 大学やプログラムの多様性は当然ながら十分に尊重する
- 一方で,学位のレベル,学位に付記している分野にふさわしいかというレベルでの確認を促さないと,モラルハザードが起きかねない
・ 現状のカリキュラムを維持させることを前提にした学修目標を立ててしまうことがあり得る
- プログラム実施者が自ら学修目標を立てて,その達成を確認するという構造になっているため
・ PDCAサイクルの考え方自体は別に否定するものではないが,教育の改善につながらないようなことがあり得る
- Pとして学修目標を立てるとチェックしたことが免罪符になってしまう
・ 学修目標を立てる際に必要なこと
- 各プログラムが授与する学位に対しても十分なものであることを,まずプログラム実施者自身が説明できるようにする
・ 可能な限り何らかの参照基準を用いる
- 各プログラムが適切な学修目標を立てていることをちゃんと学内でチェックすることができるようなことを促しておく
○ 松下委員
- 考えている仕組み
・ ある程度抽象度を保った上で,それを評価する際のいろんな仕組みのところで具体的に評価できるようにする
・ 各カリキュラム・各授業科目に落としていったときに,ある明確さ,具体性を保つ
- 自前主義の非効率性,標準化と多様性の折り合いについて
・ 実際には既にかなりの標準化が進んでいるのではないか
・ 実質的には,認証評価の評価基準とか分析項目がある意味,標準化の枠組みとして機能しているのではないか
- 例えば,京大で3ポリシーを見直しているときに判断基準にしているのは,認証評価の大学評価基準や分析項目
○ 森委員
- DPに関しては,抽象度が高いものにならざるを得ないだろうと思う
- 汎用的技能とか授業横断的な資質・能力をも含めて明示化することが重要
- 内部質保証を前提に,質向上の話にしていかなければいけない
・ PDCAのAが欠けていることに非常に違和感を感じる
・ 学生の学びの現状を学内で共通しつつ,学内のアクションへの一歩として位置付けるような形で見せられたらいいと思う
- 成績評価
・ ミクロ,ミドル,マクロと責任主体を明らかにした上で3層構造でレベルを分けた議論をすることによって混乱が防げる
○ 清水委員
- 学修目標について
・ 山梨県立大学の事例
○ 浅野委員
- 学修目標の見直し,具体化は教育プログラムが一つのキーになる
・ 実際にやってみると,単位が大きすぎるというケースがある
- 例:理学,工学で,同じ学位の下に複数カリキュラムが設定されている
・ カリキュラムを基本単位としてポリシーを作っていかないと,学修成果の測定・把握において,支障が出てくる
- 抽象度が高い学習目標の達成度を測ることはできないし,仮にできたとしても,個々の学科やコースレベルではあまり意味のないものになりがち
・ カリキュラム単位で学習目標を定め,それに応じてポリシーを策定し,具体的なポリシーの達成度を把握していく,このプロセスが重要であると考えている
・ DPをどのように作るかを考える前に,どの単位(学科,コース,またはカリキュラム)で策定するかが先決事項と捉えている
・ 山形大学の事例
- 6学部,22の教育プログラム
- 教育プログラムの単位を最初に決めた
- その後,大学全体のポリシーを整理した
- 学部レベルのポリシーは敢えて設定しなかった
・ 学位単位にしてしまうと曖昧になるし,実際それが実質的な効果を持ちえない
- そこで教育プログラム(カリキュラム)単位まで落とし込むということを最初に行った
- 策定したポリシーの見直しを行う際の構造的な問題
・ 学生に対して示しているため容易に途中で変更できない
・ 入学年度ごとに違うポリシーでいくとなると非常に管理が煩雑になる
- ポリシーとカリキュラムあるいは科目の対応をどうするか
・ 日本の場合
- 科目の学習目標は個々の担当教員が設定するケースが多いのが現状
・ アメリカの場合
- コースカタログという形で,学部・コースの目標までは全て決まっている
・ コースで提供している科目の目標などはコース全体の位置づけを考えたうえで決められている
- 担当教員はそのコースの目標を前提に,自分がどういう授業方法でそれを具現化するのかということを考えることになる
・ 日本のようにDPを決めて,その先は先生方が個人の判断で授業の目的を書いているという流れだと,体系性や整合性のコントロールは難しい
○ 小林(浩)委員
- 大学の外からの目線
- 偏差値を見ていたのがだんだんランキングを見るようになってきて,ほかに見るものがないみたいな状況
- 参照基準みたいなものが全然社会には伝わっていない
・ 経営学位を取ったということは,どこまでできているのかというのを社会の人は誰も知らない
- 高大接続の観点
・ これまでの知識・技能重視型から学力の3要素に変わる
・ 2022年,現在の小学校6年生が高校に入学したときからカリキュラムが大きく変わっていく
・ うちの大学に入るには学力の3要素でこれを準備してきてくださいというのを公表する
・ それが高校の先生に伝わって,社会に伝わって,それで大学を選ぶようになるはず
・ そこからの継続性というところが何もつながっていないんじゃないかなという感じがしている
・ 高校まで育ってきた子どもをどうやって大学で引き継いで育てていくのか,社会に送り出すのかという視点が学修目標にあってもいいのではないか
○ 溝上委員
- 大学の個別の学修目標あるいは指標を立ててのアセスメントを非常に大事にしつつも,標準化を入れていかないと進まない
・ 大学は信頼を大分失っている
・ 個別的な水準においては,大学が独自にアセスメントしていくしかない
・ 抽象度の高いところは汎用的に見ていく
- 社会は見たいし,社会に見せなければならない
- それで初めて社会との関係とか信頼が修復されていく
・ 標準化を下手に進めると非常に乱暴な話になる
・ ディプロマ・ポリシーの中で大きくは結構共通する項目がどの大学にもある
- その部分について,共通の項目あるいは同じような形で尋ねていく形で部分的に標準化していくことを考えている
・ 18,20歳を過ぎた学生の能力や資質は客観的な標準レベルの能力テストでそんなに大きく上がるものではない
- 大学を標準化し,並べるような乱暴な序列になってはいけない
- 能力偏差値のようなものにしてはいけない
・ コミュニケーションはこれぐらいだけれども,思考力はこうだとか,そういう感じで示していく
- 世の中も全ての次元において100点だとは思っていない
○ 吉見委員
- 最大の問題は,1人の学生が1学期に履修する科目数の多さ
・ 日米の履修科目数の違い
- 日本では,多くの大学で1人の学生が1学期に10~12,場合によっては14
・ 4年間の総計は70科目とか80科目になる
・ 4年生になったときに,1年生で何を勉強したか,何の科目をとったのかを忘れてしまう
・ 教員サイドからしても,教える科目数が多いために,一つ一つの科目に対して準備が十分にできない,TAの配置も不十分になる
- 米国では,トップレベルのユニバーシティーであれば4~5科目
・ 学修時間
- 日本の学生が勉強しないのは不真面目だからではなく,カリキュラムが勉強をさせる構造になっていないから
- 1週間に10も12も14も科目を履修していたら,予習や復習の時間が確保できない
- 仮に12科目を履修していて,各科目で2つの課題が出されると1週間の課題は24,これは不可能
- 不可能なことを要求すれば,途中で嫌になり全部放棄
- 科目が多いということは,一つ一つの科目が軽いということ
- 1単位か2単位の科目ということは,学生の視点からすれば,簡単に捨てることができるということ
・ 厳しい要求をする先生がいたらば,その先生は面倒くさいから,その先生の科目は途中で捨てるという行動になる
- 1つの科目の単位数が4単位ないし6単位ともっと重ければ,学生は簡単に捨てられない
・ 先生が要求するリクワイアメントに従って一生懸命勉強する
・ 日米の学生たちの勉強の仕方の差にもなってくる
・ 1つの科目が週に1コマということについて
- 1週間に一度しか先生とは会わない
- それで深い学修などできるはずがない
- 米国であれば,1週間に2回か3回会う
・ 2回か3回のうち1回はTAがディスカッションする授業
・ 教学マネジメントの基本的な方向性として,深く学ぶ体制を作っていこうとしている
- そうであれば,一つ一つの科目が軽いという部分を何とかしないと変わり得ない
- 具体的には,1科目当たりの単位数を増やす
・ つまり,1単位ないし2単位の科目をなくして,4単位以上の科目を基本にする体制に変えていく
○ 川並委員
- 科目数の問題は,免許・資格にも影響する
・ 免許・資格について問題が出ると法律が改正されて,そのたびに取得単位が増える
・ 省庁間の調整がうまくいかないと,そのまま更に付加されてしまっているのではないか
・ 特に短期大学は免許・資格を取って社会に出ていく学生が多いので,その辺も含めて検討していただきたい
○ 佐藤(浩)委員
- 事務局への質問
・ 「密度の濃い主体的な学修を可能とする観点から,セメスター制の導入など学事暦の柔軟化」という文言(3ページの下の丸)
・ ここでなぜセメスターだけを取り上げたのか
→ 「など」というところでほかのものも当然読み得るというつもりで書いた,セメスターだけを推しているというものではない(平野大学改革推進室長)
・ 現状としては,多分,セメスター制が多いため,それを導入するというのはちょっと現実的にはずれているかなという印象
- 書くのであれば具体的に書いた方がいい
○ 溝上委員
- 深い学びになっていかない授業
・ 先生方の授業力とかそういったことの問題ももちろんある
・ 他方で,単位制度・システムの問題の方も結構ある
- つまり時間が短い
- 90分の中でいろいろ工面する力量の高い先生だったらいろいろやれるが,多くの先生方はなかなかできない
- ゼミや卒業研究など,同じ教員,同じ学生たちで,多くの時間・情報が共有・蓄積されて心が動く
・ 心も動いてお互いの共有知も増えて学修が深くなっていくというのは制度の一つの在り方
- 複数回授業の形でディープにやっていくということが教学マネジメントの質保証にもつながっていく
○ 松下委員
- 週複数回授業を本気でしようと思えば,大学設置基準の見直しが必要ではないか
・ 大学設置基準では授業科目を授業形態ごとに割り振るような形になっている
- 講義,実験,実習,演習,それぞれを1~2単位ずつ
・ MITの例
- 1つの「電子回路」といった授業科目に12単位があてられている
- その12単位に,講義,ラボ,レシテーションをどのように割り振ってもいい
・ 4・4・4や,3・2・7
・ 講義科目と演習科目,実験科目などがうまくつながるようにカリキュラム上で工夫しようとすると自前主義の努力に委ねることになる
- 設置基準も含めて見直す覚悟が必要になる
○ 平野大学改革推進室長
- 設置基準の第21条に単位の規定がある
・ 講義,演習については云々,実験については云々というようなことが書いてある
・ 第3号で,講義,演習,また実験,実習,実技以外のものとして,規定がある
- 「一の授業科目について,講義,演習,実験,実習又は実技のうち二以上の方法の併用により行う場合については,その組み合わせに応じ,前二号に規定する基準を考慮して大学が定める時間の授業をもつて一単位とする」
- これは,2つ以上の方法を組み合わせて多様な形の授業形態が必要ではないかという議論を反映して改正がされたもの
- もしかしたらまだ余り活用されていない項目なのかもしれない
→ ただ,それは一単位の中での工夫(松下委員)
○ 清水委員
- 教学マネジメントの基盤辺りには単位制度の運用というものを入れておいた方がいい
○ 伹野委員
- 今回の教育改革の大きなポイントは,学修者主体の教育に転換すること
- 学修者主体とは,「何を教えたか」から,「何を学んで,何を身に付けたか」ということ
・ この点をシラバスにどのように反映させるかが重要
- 何を教えたかという教員目線,学校目線の教育体制にどのように学修者目線を取り込むかの議論も必要
○ 小林(雅)副座長
- 1コマの時間について
・ スタンフォード大学を例にとると,非常に柔軟なカリキュラムを組んでいる
- 語学学修というのは大体45分
- そうかと思うと,ゼミが90分,場合によっては180分
- ただ,学生にとっては非常にとりにくいという逆の問題も出る
・ いろいろな考え方があって,それを使っていけばいい
- きょうの議論というのはどっちかというと,こういうふうになればいいよねという理想論になってしまっている
・ 教育の議論というのは大体そういうのが多い
・ ディプロマ・ポリシーにひも付けられてカリキュラムができて,科目が決まるという前提の話が今回の議論で出ていた
・ 現実にはそれは非常に難しい
・ できない場合どうするかという担保が必要
- その場合,今まで大学がそれをどういう形で担保をとってきたかと考えると,これは無駄の哲学,あるいは「遊び」
・ 余計なものを入れておくことによって,何かができなかった場合にそれを担保にしてきたという歴史がある
・ 大学が,それに安住していたことも事実
- 無駄でいいんだというふうになってしまうと,科目数はどんどん増えるというようなことが起きてきた
- その辺はもう考え直さなければいけない時期に来ている
・ ただ,そういったこともあるということを一応念頭に置いて議論する必要がある
- ディプロマ・ポリシーから逆算して,必要な授業科目を開設し,体系的に教育課程を編成することが必要,ということについて
・ 理想論としてはそのとおり
・ それが本当にできるかというと,かなり難しい
・ 「同方針への貢献が見込まれない科目については,内容の見直しや取りやめを検討する必要もある」はかなりきつい書き方
- 重複した無駄な科目を置いたり,何のためにやっているか分からないような科目があるということは,論外
- ある程度こういったことを許容していかないと大学というのは動いていかない
- 「必要がある」というと,そういうものはどんどん切っていけというふうに聞こえるので,その辺は少し考えた方がいい
○ 日比谷座長
- 次回は,「カリキュラム編成の高度化」,「柔軟な学事暦の運用」をテーマにする
- 各委員には,履修系統図など,所属大学の事例について資料提供をお願いしたい
・ それらを並べてみるといった試みをしようと思っている