ホーム → 大学に関わる情報メモ → 「高等教育・質保証システムの概要 英国 第3版」(独立行政法人大学改革支援・学位授与機構)
公開日:2020年5月19日
本資料は英国の公的な各種情報・資料を基に作成した。構成は次の通り(第1~3章)。第1章:英国の基本情報。第2章:教育制度の概要(教育制度の全体像、中等教育制度の概要、高等教育制度の概要)。第3章:質保証制度の概要(英国の高等教育質保証制度の概略<設置認可制度、内部質保証、外部質保証>、質保証機関の概要<高等教育質保証機構(QAA)>)。
英国はイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの各地域で独自の教育制度・質保証制度を有している。本資料において、教育制度に関しては、高等教育資格の円滑な承認に資する情報を重点的にまとめている(英国の高等教育資格や高等教育への接続に関する情報等)。質保証制度に関しては、イングランドを中心に最新の質保証動向を反映した情報を掲載している(イングランドで2018年に高等教育機関の規制を担う学生局(OfS: Office for Students)が新設され、外部質保証制度に大きな変革が生じている)。
○ 英国の基本情報
- 質保証制度(イングランド)
・ 学生局(Office for Students:OfS)
- 高等教育・研究法に基づきイングランドの高等教育機関の規制・監督を行う
・ 高等教育機関登録制度
- 下記を希望する高等教育機関は制度への登録が必須
・ 公的資金交付
・ 学生ローンの受給
・ 海外留学生の受入れ
・ 学位授与権・大学名称使用権の付与
- 登録要件審査
・ 一部は、英国高等教育質保証機構(QAA)がOfSの委託を受ける
- 登録希望機関を対象に質・基準レビュー(Quality and Standards Review)を行う
・ OfSによる教育卓越性・学習成果評価枠組(TEF)の評価も行われている
○ 教育制度の概要
- 図1・2:学校教育制度系統図(イングランド、スコットランド)
- 高等教育資格を対象とする資格枠組
・ 2種類ある
- 「イングランド・ウェールズ・北アイルランド高等教育資格枠組」(FHEQ)
・ スコットランド以外の地域が対象
・ 所管機関はQAA
- 「スコットランド高等教育資格枠組」(FQHEIS)
・ スコットランドが対象
・ 英国の高等教育資格のレベルを定めている
- レベルごとに、代表的な資格を有する者に期待される達成度を記述
- 職業教育や中等教育等に関する資格を対象にした資格枠組
・ 3種類ある
- イングランド・北アイルランド規制資格枠組(RQF)
- ウェールズ単位・資格枠組(CQFW)
- スコットランド単位・資格枠組(SCQF)
- 表2:欧州資格枠組と英国の資格枠組の対応表
・ 上記の資格枠組のレベルと欧州資格枠組(EQF)のレベルの対応関係を示したもの
- 表3:英国内の資格枠組と欧州高等教育圏資格水準枠組(FQ-EHEA)の互換性
○ 中等教育制度の概要
<概要>
- 初等教育(Primary education)及び中等教育(Secondary education)は地域により就学年齢及び修学期間が定められている
・ 初等教育
- 概ね5歳から始まる
- 6~7年間
・ イングランドでは、5~11歳の6年間
・ 中等教育
- 6~7年間
・ イングランドでは、11~18歳の7年間
- 義務教育期間
・ イングランド以外の地域は16歳まで
- 16歳以降は任意で学習を継続する
・ 大学進学や就職等のそれぞれの進路に必要な教育資格の取得
・ イングランドは18歳まで
- 16~18歳の間は選択
・ 正規課程で学習を継続
・ 見習い制度(Apprenticeship)等
・ 非正規課程で教育を受けながら就労またはボランティア活動
- 中等教育で得られる資格
・ 通常、生徒は学校外の試験団体による試験を受験する
- その結果により得られた資格を基に次の進路に進む
・ イングランドの場合
- 大学進学希望者
・ まず通常16歳でGCSE(General Certificate of Secondary Education)を受験して当該資格を取得する
・ その後、さらに2年間の中等教育課程で学ぶ
- GCE Aレベル(General Certificate of Education Advanced Level[通称:Aレベル])等の大学入学資格の取得を目指す
・ 中等教育の最終段階(通常18歳)で受験する
- シックスフォーム、継続教育カレッジ等の学校で行われる
・ 自宅で学習することもできる
- ホームスクーリングが初等教育及び中等教育において正式に認められている
・ 学校外部の試験団体による試験の受験などで各教育機関の入学資格を取得すれば進学が可能
○ 高等教育制度の概要
<高等教育機関の概要>
- 高等教育機関の種類
・ 高等教育を提供する機関は、一般に「高等教育プロバイダー」(Higher education provider)と呼ばれる
- そのうち高等教育提供機関が「高等教育機関」(Higher Education Institution)とされる
・ 公的資金を受給する大学(university)等
※ "本概要では、特記しない限り、「代替教育プロバイダー」及び「継続教育カレッジ」を含む「高等教育プロバイダー」を便宜的に「高等教育機関」と表現する。"
・ 高等教育プロバイダーの種類
- 高等教育機関(Higher Education Institution:HEI)
・ 公的資金の交付対象となる高等教育提供機関
・ 継続教育カレッジを除く
- 代替教育プロバイダー(Alternative Provider:AP)
・ 公的資金の交付対象とならない高等教育提供機関
・ 継続教育カレッジを除く
- 継続教育カレッジ(Further Education College:FEC)
・ 1992年継続・高等教育法(Further and Higher Education Act 1992)により法人格を付与、または設立
・ 義務教育を終えた学生を対象に継続教育と高等教育を提供する教育機関
・ 公的資金の交付対象となることもある
・ 高等教育機関に分類される機関に付される名称
- 大学(university)
- ユニバーシティー・カレッジ(university college)
- 王立教育機関(royal academy、royal college 等)
- カレッジ(college)
- スクール(school)等
・ 代替教育プロバイダーに分類される機関に付される名称
- カレッジ、スクールの名称が目立つ
- 大学、ユニバーシティー・カレッジの名称を冠する機関も少数存在する
- 学位授与権
・ 高等教育機関における学位(degree)授与の権限は法的に管理されている
- 古くは国王の設立勅許状(Royal Charter)による
- 1992年継続・高等教育法等の制定後
・ 枢密院(Privy Council:国王の諮問機関)により、高等教育機関に学位授与権が付与されてきた
- 近年のイングランド
・ 学生局(Office for Students:OfS)が学位授与権の管理を担うこととなった
- 2017年高等教育・研究法(Higher Education and Research Act 2017)に基づく
・ 学位授与権を有する高等教育機関
- 「Recognised body」と呼ばれる
- 3種類のいずれかの権限を有する
・ 研究学位授与権(Research degree awarding powers:RDAP)
・ 課程学位授与権(Taught degree awarding powers: TDAP)
・ ファウンデーション学位授与権(Foundation degree awarding powers:FDAP)
- 審査プロセス
・ 学位授与権の申請先
- イングランドではOfS
- 北アイルランド、スコットランド、ウェールズでは各地域の政府
・ 申請要件を満たしていると判断された申請機関は、次にQAAによるアセスメントを受ける
- QAAが指名した評価チームが訪問調査等を通じて申請機関を詳細に確認し、評価レポートをまとめる
- 学位授与権諮問委員会(Advisory Committee on Degree Awarding Powers)が評価レポートを考察
- その結果を基に、QAAがOfSまたは枢密院に助言を行う
・ 当該機関が学位授与権の取得要件を満たしているか
・ イングランドでは、初めて学位授与権が付与された機関には、3年間の期限付きの権限が付与される
- 高等教育の提供歴が3年に満たない機関に付与される権限は「New DAPs」と呼ばれる
- QAAによる定期的なモニタリングが必要となる
- 高等教育の提供歴が3年以上となった際には再度審査を受ける
・ 承認されれば「Full DAPs」と呼ばれる
・ さらに3年間の期限付きの権限が付与される
・ 当該期間満了時に再度審査の上、承認されると無期限の学位授与権が付与される
- 「大学」等の名称使用権
・ 「大学」(university)及び「ユニバーシティー・カレッジ」(university college)の名称が法的に管理されている
- 1998年教育・高等教育法(Teaching and Higher Education Act 1998)
・ 法律または設立勅許状により権限を付与されるか、枢密院から承認を得ることと規定された
- 近年のイングランド
・ 2017年高等教育・研究法
- OfSが名称使用の承認権限を有することとなった
・ 名称使用の承認要件は地域ごとに定めらているが、全般的には、学位授与権の取得、一定数以上の学生数等が求められる
- 審査プロセス
・ イングランドではOfSが審査を実施
- 特に申請された名称が適切か、「大学」の場合は必要な学生数を満たしているかを確認する
- 名称使用が承認された場合、申請機関は名称変更の手続きを行うこととなる
・ スコットランドでは枢密院が名称使用の承認可否を決定する
・ いずれの地域においても審査過程でQAAの助言を得ることとされている
- 高等教育機関数
・ 英国全土の高等教育機関(国からの公的資金を受ける機関)は、2017/18年度の時点で163校
- うち大学は143校
- 高等教育機関の約8割がイングランドに所在
・ 継続教育カレッジは336校
・ 高等教育機関及び継続教育カレッジで学ぶ学生数は約251万人(2017/18年度)
- 学部段階の学生が約194万人
- 大学院生が約57万人
・ 代替教育プロバイダーの機関数について、英国全土の正確な機関数は不明
- HESAの「Higher education providers」一覧には103校が掲載されている(2020年3月12日現在)
- 別の政府文書ではイングランドだけで690校の代替教育プロバイダーがあることが紹介されている
- 高等教育機関一覧
・ 各制度の中で整理されたものが複数存在する
- 学位授与権等を有する機関一覧、公的資金の交付対象機関一覧等
- 海外に置く英国高等教育機関の状況
・ 高等教育機関が英国外で提供する高等教育、いわゆる国境を越えた教育(TNE)は世界各地で展開されている
- 2017年度の参加学生数は225か国・地域、計693,695人)
・英国国内で学ぶ外国人留学生数(458,490人)を上回る規模となっている
・ 地域別の参加学生数
- アジアで学ぶ学生が全体の半数近くを占める
・ 参加する学位課程別
- 学士課程が約80%
- 大学院課程が約18%
・ 英国の139の高等教育機関がTNEの学生を有している
- 学生数上位10%の機関だけで全体の71%の学生を占める
・ 年度ごとの学生数は、近年約63~70万人の範囲で推移している
・ QAAの取り組み
- TNEレビュー
・ 英国の高等教育機関によるTNEプログラムの質保証として実施
- 「Characteristics Statement: Qualifications involving more than one degree-awarding body」(2020)を策定
・ 英国の大学が国内外の学位授与機関と共同で提供する教育の種類・特徴とその質保証の典型的な方法をまとめたもの
・ 英国の教育基準・質の遵守が求められる英国の大学が、国際的な共同教育を提供する際に本書を参照することが推奨されている
- 教育の提供場所を問わない
<高等教育機関への入学>
・ 入学資格
- 大学(学士課程)入学資格
・ 志願者は受験する各コースの入学要件を個別に確認することが必要となる
- 大学やカレッジの入学要件に関する国内の統一的なルールはない
- 各高等教育機関がコース等ごとに独自に定めている
・ 志願者がコースを修了しうる技能と知識を有しているかを適切に判断するため
・ 高等教育機関が独自の入学試験を実施することはさほど一般的ではない
- 志願者が保有する資格、コースへの適性、インタビュー等に基づいて入学可否が判断されることが多い
- ただしコースの分野によっては入学試験が課される場合もある
・ 学士課程への入学資格は多数存在する
- 最も一般的な学士課程入学資格
・ イングランド、北アイルランド及びウェールズでは「General Certificate of Education Advanced Level」(通称: A レベル)
・ スコットランドでは「Scottish Higher」
- 「BTEC Nationals」等の職業教育資格や、主に19歳以上の成人を取得対象とした「Access to HEDiploma」等の資格も受け入れられている。
- 海外からの留学生については、上記の資格以外に各国の高等教育入学資格も入学資格として考慮される
- 通常、英語能力の証明も入学要件として求められる
- 大学・カレッジ入学サービス(Universities and Colleges Admissions Service:UCAS)が提供するもの
・ 様々な資格やその成績を共通の得点システムで表した「UCAS Tariff」
- 異なる資格の成績が比較可能
・ 英国の約3割の高等教育機関では、入学要件を示す際にTariffポイントが活用されている
・ 既習歴の認定
- 学生の多様な学習経験や職務経験を正式な学習として認定する仕組みがある
・ Accreditation of prior learning:APL
・ Accreditation of prior certified learning:APCL
・ Accreditation of prior experiential learning:APEL 等
- 認定対象となるものに含まれるもの
・ 正規課程における従前の学習
・ 正規課程での途中段階の学習
・ 職務経験
・ 地域での活動等
- これらの既習歴が単位として認定されることで修学期間の短縮につながる
- 大学(学士課程)への編入学
・ いわゆる編入学は「top-up」という名称が付されたコースで実施されている場合がある
- 例:ファウンデーション学位(Foundation Degree)、高等全国ディプロマ(Higher National Diploma:HND)またはこれらと同等の資格を有する者
・ 同一または関連分野の学士課程の最終学年(3年次)に入学し、1年間の履修により学士の学位取得を目指すことができる
- 大学院入学資格
・ 修士課程への一般的な入学資格
- Honours Bachelor Degree(優等学士)
- Ordinary Bachelor Degree(普通学士)の学位では修士課程に入学できない
- 学士の学位取得後にGraduate CertificateやGraduate Diplomaを取得するといった経路もある
・ 博士課程への一般的な入学資格
- Taught Master's Degre
- Research Master's Degree
- Integrated Master's Degree
・ 入学者選抜
- 大学の学士課程への出願等の入学者選抜プロセス
・ UCASによるオンラインシステムで一括して管理される
- 大学院課程への出願方法
・ UCASのオンラインシステムを利用
・ 大学独自で出願を受け付ける
・ それらの併用等
- 学士課程入学プロセス
・ フルタイムの学士コース(undergraduate courses)への入学志願者
- UCASが提供する共通のオンラインシステムを通じて出願する
・ 一度に5コースまで(医学、歯学、獣医学のコースについては4コースまで)出願することが可能
・ 9月/10月入学を希望する志願者の出願期日は、例年、入学年の1月15日まで
・ オックスフォード大学・ケンブリッジ大学、または医学、歯学、獣医学の大部分のコースについては入学前年の10月15日まで
・ 出願に必要な情報
- 学歴、職歴等の志願者個人の詳細情報
- 志望動機や将来計画についてまとめた身上書(personal statement)
- 出身学校の教員等からの推薦書 等
- 出願時にAレベル等の大学入学資格試験の結果が確定していない場合は、推薦者が志願者の見込みの成績を推薦書に記載する必要がある
・ 各教育機関の合否決定方法
- 出願情報に基づき選考を行う
- 必要に応じて面接を実施する
・ イングランド・北アイルランド・ウェールズの通知時期
- Aレベル等の大学入学資格試験結果の発表前
・ そのため、その時点では条件付き合格(conditional offer)の扱い
・ 試験結果が入学要件を満たしたことが確認されれば、合格(unconditional offer)として正式に入学許可が下される
・ スコットランドの通知時期
- 6年次(18歳)に合格(unconditional offer)の通知を受け取る
・ 中等学校5年次(17歳)でハイヤーの資格を取得後に出願する
・ クリアリング(Clearing)
- 不合格等により進学先が未定の志願者が利用する
- その時点で欠員のあるコースに直接申請し、進学先を探す
- 例年7月から
<高等教育資格>
・ 代表的な高等教育修了資格(表11)
- 英国の各資格の取得要件は各高等教育機関の採用している制度により異なる
・ 英国の単位制度を採用している場合
・ 欧州単位互換制度(European Credit Transfer and Accumulation System:ECTS)を採用している場合
・ 単位制度を採用していない場合
・ 「見習い」(Apprenticeship)制度
- 16歳以上の学生を対象に幅広い分野で導入されている
- 就労と学業を組み合わせた制度
・ 学生は就労経験を積みながら、通学やオンラインで学習する
・ 特定の職業に必要なスキルや知識を習得する
- 就労によって賃金を得られるうえに、授業料は無償(政府と企業による負担)
- 種類は地域によって異なる
・ イングランドの例(4種類)
- GCSE5科目合格相当とされる「Intermediate apprenticeship」
- Aレベル2科目合格相当とされる「Advanced apprenticeship」
- HNDやファウンデーション学位といった資格取得を目指すことが可能な「Higher apprenticeship」
- 学位取得を目指す「Degree apprenticeship」
・ 就労の傍らパートタイムの学生として在籍する
・ 学士または修士の学位取得を目指す
- これらの学位はフルタイムの学習で取得する学士または修士の学位と同等と扱われる
・ 単位制度
- 1単位は10時間の概念的学習時間(notional hours of learning)で表される
・ 各行政区域で共通
・ 授業時間に限らず、自習、課題作成等の広義の学習が含まれる
- この概念はCATSをはじめとする英国の単位制度で広く適用されている
- 欧州単位互換制度(ECTS)との対応関係
・ 1ECTS単位は英国の2単位(CATS 等)と同等
・ 英国の代表的な高等教育資格の修了必要単位数に対応するECTS単位数がQAAの文書にまとめられている
・ CATSとは異なる独自の単位制度を用いている大学も多い
- 特にイングランドでは単位制度を用いていない大学もある
- スコットランド(SCQF及びFQHEIS)、ウェールズ(CQFW)の各資格枠組
・ 上記の概念的学習時間に基づいた、各資格の取得に必要な最低単位数が明示されている
- 当該地域のすべての高等教育機関に適用される
- イングランド及び北アイルランド
・ 英国の単位制度(CATS等)とECTS単位を用いる高等教育機関が混在する
- 英国の単位制度の場合は単位枠組を共通の指針として運用することが求められる
- イングランド、ウェールズ、北アイルランドの規制資格枠組(RQF)
・ 資格取得に必要な学習時間を「Total Qualification Time:TQT」として表している
・ 成績評価
- 学習成果の達成度に応じて100点法等で表される
・ 授与される高等教育資格には在学中の成績に基づき資格の格付けが付記される
- 優等学士の学位(Honours Bachelor Degree)
・ 表12:優等学士学位授与時の成績分類と在学中の成績(4段階)
- 1st(First):70-100%
- 2:1(Upper second):60-69%
- 2:2(Lower second):50-59%
- 3rd(Third):40-49%
- 修士の学位(Master's Degree)
・ 典型的な分類(高等教育機関により異なる)
- Distinction:70-100%
- Merit:60-69%
- Pass:50-59%
- 成績に関する近年の課題
・ イングランドでは、優等学士の学位に関する成績インフレが大きな問題として取り上げられている
- OfS等の関係機関は不測の要因が含まれていると結論付け、成績インフレの検証やインフレ抑制策の検討を進めている
・ ディプロマ・サプリメント
- 高等教育機関が学位記等の高等教育修了証に添付する補足書類
・ 学生が取得した高等教育資格の内容を示した文書
- 2種類が利用されている
・ EUのモデル(Europass)に準拠したもの
・ 高等教育達成レポート(Higher Education Achievement Report:HEAR)
- 英国大学協会(Universities UK:UUK)及び高等教育カレッジ連合(GuildHE)が中心となって開発した英国独自のもの
- EU モデルとは異なる特徴がみられる
・ 当該高等教育機関によって承認された学術面以外の学習成果(non-academic achievement)の情報が記載可能な様式となっているなど
- 発行は各高等教育機関に委ねられている
<高等教育の国際的展開の状況>
・ 英国内で国境を越えた教育(TNE)を提供しているのは、主に米国とフランスの高等教育機関
・ 海外の大学等のブランチキャンパスは、大半がロンドン周辺に集中している
- ビジネスとマネジメント分野の学位を提供しているものが多い
・ TNEプログラムの英国内での登録及び適格認定の受審は義務ではない
- 海外大学等のTNEに特化した法律は存在しない
- ただし、海外大学等が英国の公的資金の交付や学生ローンの利用を希望する場合には、英国各地域の規制に基づく必要がある
<高等教育関係機関>
・ 高等教育所管官庁
- 英国の各地域に、高等教育を所管する官庁がある
・ [イングランド]教育省 (Department for Education)
・ スコットランド政府 (Scottish Government)
・ ウェールズ政府 (Welsh Government)
・ 北アイルランド教育省 (Department of Education):初等・中等教育
・ 北アイルランド経済省(Department for the Economy):高等教育・継続教育
・ 質保証機関
- 高等教育質保証機構(Quality Assurance Agency for Higher Education:QAA)
・ 英国の全域で高等教育の質保証に関する活動を行っている
・ 国内情報センター(NIC)
- UK NARIC
・ 英国が締結する「欧州地域の高等教育に関する資格承認規約」(通称:リスボン承認規約)に基づいて教育省から指定(業務委託)されている
・ その他
- 大学入学出願サービスを行う機関
・ 大学・カレッジ入学サービス(Universities and Colleges Admissions Service [UCAS])
- 資金配分機関
・ [イングランド]学生局(Office for Students:OfS)
・ スコットランド財政カウンシル(Scottish Funding Council:SFC)
・ ウェールズ高等教育財政カウンシル(Higher Education Funding Council for Wales:hefcw)
・ 北アイルランド経済省(Department for the Economy)
○ 質保証制度の概要
- 英国の高等教育質保証制度の概略
・ 地域ごとに独自の制度が存在する
・ 高等教育機関の質を評価する法定義務を各地域の資金配分・規制機関や学生局(Office for Students:OfS)が負っている
- 北アイルランド以外の地域における実際の評価業務
・ 英国高等教育質保証機構(QAA)をはじめとする独立した質保証の専門機関に委託されている
・ 表15:英国の高等教育質保証制度の概要(下記項目についてイングランド/スコットランド/ウェールズ/北アイルランドの状況を記載)
- 質保証制度
- 高等教育質保証の法定責任機関
- 根拠法令
- 代表的な評価制度
- レビューの実施主体
- 評価の目的・対象
- 評価の形態
- 評価サイクル
- クオリティ・コードの適用箇所
・ 上記の評価制度に加えて、イングランドで実施されていること
- OfSが教育卓越性・学習成果評価枠組(Teaching Excellence and Student Outcomes Framework:TEF)を実施している
・ 高等教育機関登録簿の登録要件と位置付けられている
・ その他に行われていること
- 国境を越えた教育(Transnational education:TNE)レビュー
- 資金配分機関による研究卓越性枠組(Research Excellence Framework:REF)
- 職能団体等が行う専門職教育アクレディテーション
- クオリティ・コード
・ 英国のすべての高等教育機関(高等教育機関、代替教育プロバイダー、継続教育カレッジすべて)が遵守しなければならない教育の基準と質に関する原則
- 公益や学生の利益を保護し、高等教育の質に対する信頼を守るため
- 教育の提供場所が国内か海外かを問わない
・ 質保証のための英国常設委員会(UK Standing Committee for Quality Assessment:UKSCQA)からの委託を受けてQAAが策定した
・ 2012-13学事年度から導入された
・ 高等教育機関の質を評価する際の基本的要件として、英国各地域で共通的に用いられている
・ 構成
- 期待事項(Expectations)
・ 学位や資格の基準の設計・維持、そして提供する高等教育の質の管理のために高等教育機関が達成すべき成果
- プラクティス(Practices)
・ 期待事項を実現するための下支えとして、学生に有益な成果を提供するための効果的な業務の実施方法
・ 区分(2つ)
- コアプラクティス(Core Practices)
・ 英国の全高等教育機関がその基準と質を保証する中で行わなければならない
・ 英国のすべての地域の高等教育機関に適用される
- コモンプラクティス(Common Practices)
・ 各高等教育機関の使命、規制の文脈、学生の要望に沿って行わなければならない
・ イングランドを除く3地域の高等教育機関に適用される
・ 表16:クオリティ・コードの内容
- 基準に関する期待事項
- 質に関する期待事項
※以下の説明では、主にイングランドにおける高等教育質保証制度に焦点を当てる。
- 設置認可制度
・ 設立年により異なる
- 1992年以前に設立した大学
・ 枢密院の助言に基づく国王の設立勅許状(Royal Charter)及び個別の規程を根拠に運営されている
- 1992年以降の大学や高等教育機関の多く
・ 政府が定めた規程に基づき運営されている
・ 学位授与権や「大学」等の名称使用権(University Title)の取得を希望する高等教育機関
- OfS(イングランドのみ)や枢密院(イングランド以外の地域)からの承認を受けなければならない
・ 高等教育機関が公的資金の交付等を希望する場合
- 当該機関が所在する地域の資金配分機関や規制機関が求める要件を満たす必要がある
- OfSによる高等教育機関登録制度
・ 2018年4月から始動した
・ OfSが管理する高等教育機関登録制度への登録が公的資金の交付要件となっている
- OfS
・ 2018年に独立公共機関として設立
- 2017年成立の高等教育・研究法(Higher Education and Research Act)に基づく
- OfS設立以前
・ イングランド高等教育財政カウンシル(Higher Education Funding Council for England:HEFCE)が公的資金交付のための高等教育機関登録制度を管理していた
・ 登録要件を審査する際に参照されるデータ
- OfSが自ら収集するデータ
- QAAが各高等教育機関を対象に実施する質・基準レビューの評価結果
・ 公的資金の交付を希望するか否かに関わらず、下記の事項を一つでも希望する場合には登録が必要
- 政府からの教育・研究助成等の公的資金の交付
- 学生支援金の受給
- 内務省(Home Office)へのTier4学生ビザを使った海外留学生の受入申請
- 学位授与権の取得申請
- 「大学」(university)または「ユニバーシティー・カレッジ」(university college)」の名称使用権(title)の取得申請
・ 本制度への登録は任意のため、未登録の機関も高等教育を提供することは可能
- 公的資金の交付を希望しないなど
- 登録機関数は394(2020年2月20日現在)
・ 登録要件
- OfSに申請書と必要なエビデンスを提出する
- 登録のための最低要件を満たしていることを示さなくてはならない
・ 教育の質
・ 学生保護
・ 学生支援
・ 財政の持続性
・ 健全なガバナンスとマネジメント 等
- 要件は2種類ある
・ 一般要件(Initial and general ongoing conditions)
- 新規登録及び登録継続のため
- 項目
・ 様々なバックグラウンドを持つ学生に向けた高等教育への進学及び学習機会の提供
・ すべての学生に向けた教育の質、信頼できる基準、高い学習成果
・ すべての学生の利益保護
・ 財政的な持続可能性
・ 良好なガバナンス
・ 学生への情報提供
・ 授業料及び資金調達に関する説明責任
・ 個別要件(Specific ongoing conditions)
- 登録された機関に対し必要に応じて設定される登録継続のため
・ 登録カテゴリー
- 高等教育機関は2種類から選択することができる
・ Approved (fee cap)
- 承認[基準額以上の授業料設定可]
- 上限額まで授業料の引き上げを行うために必要なこと
・ 「アクセス・参加プラン」(Access and participation plan)を策定する
- 社会的・経済的に恵まれない学生の学習機会を改善する方法を示した計画
・ OfSから承認される
- Approved(fee cap)の高等教育機関のみOfSから公的資金が交付される
・ Approved
- 承認[授業料設定は基準額が上限]
- 教育卓越性・学習成果評価枠組(TEF)の称号の有無によって金額が異なる
・ Approved (fee cap)に登録された機関のみが基準額を超えて上限額まで授業料の引き上げが可能となる
- 審査及び登録後のモニタリング
・ 新規登録を希望する高等教育機関は、OfSに申請書と必要なエビデンスを提出する
- OfSは申請内容が新規登録要件を満たしているかどうか審査を行う
・ OfSやHESA等が保有する情報を基にする
・ 一部の要件については当該機関から提出されたエビデンスに基づき審査する
- あわせて、OfSは当該機関が今後登録要件に違反するリスクがどの程度見込まれるかリスクアセスメントを行う
- 登録後も要件充足を維持できるかどうかを判定する
・ 最終的な決定
- 申請機関の登録可否とともに、一般要件のみを課すか、あるいは個別要件も課すべきかを決定する
・ 個別要件が適用される例:財政の持続性維持のための行動計画に不安がある場合
・ 登録されたすべての高等教育機関はOfSによるモニタリングを受ける
- 一般要件(該当する場合は加えて個別要件)を継続して満たしているか
・ モニタリングでOfSが用いる情報
- 「リード指標」(Lead indicators)
・ 高等教育機関の環境や活動に変化が生じた合図となりうる各種のデータ・情報で構成される
- 全学生数とその増減傾向(予期しない学生数の増加や減少に注目)
- 様々な特徴を持った学生の出願、合格、入学の状況
- 入学要件及び出願に必要な資格の詳細に関する変更
- 学修継続率及び卒業率
- 教育卓越性・学習成果評価枠組(TEF)の結果
- 学位及び学生の学習成果(学生の特徴による成績の差、成績インフレの状況を含む)
- 高等教育独立仲裁局(OIA)に寄せられた学生からの不服申立ての件数、性質、傾向
- 卒業生の進路状況、特に専門職への就職や大学院進学の状況
- 年次の財務報告・及び財務予測に基づく、財政的健全性・持続可能性に関する複合的な指標
・ OfSはその合図を高等教育機関のリスク把握に役立てる
- 高等教育機関からOfSへの報告事項
- 内部告発等
・ OfSは毎年、高等教育機関を無作為に抽出して(例:全体の5%)登録継続要件を満たしているかどうかを確認
・ OfSはモニタリング効果を検証するためのサンプル調査を行う
- 要件違反等への対応
・ 登録機関が登録継続のための一般要件もしくは個別要件のいずれかにおいて違反の疑いが明らかになった場合
- OfSが当該機関に対して講じる措置
・ モニタリングの強化
・ 追加の個別要件の適用
・ OfSと当該機関のスタッフが解決に向けて協働する
・ 違反状態にあることが明らかとなった場合
- OfSは当該機関に罰金、登録停止または登録抹消のいずれかの措置を講じる
○ 内部質保証
- 英国の高等教育機関は自律的組織として、当該機関が授与する学位・資格の質と基準に対する責任を有している
- 各高等教育機関の内部質保証活動
・ 授与する学位・資格が国として求める質・基準をどのように満たしているかを示すために行われるもの
- QAAのクオリティ・コード
・ 内部質保証活動のための最も重要な指針とされている
・ 基準及び質に関する「期待事項」及び効果的な実践方法をまとめた「プラクティス」で構成される
・ 実践のための具体的な助言書(「Advice and Guidance」)も用意されている
- 12のテーマがある
・ Admissions, Recruitement and Widening Access(学生選抜・入学・教育機会拡大)
・ Assessment(学習の評価)
・ Concerns, Complaints and Appeals(不服申立て)
・ Course Design and Development(コースの設計・開発)
・ Enabling Student Achievement(学生の達成支援)
・ External Expertise(学外の知見の活用)
・ Learning and Teaching(学習・教育)
・ Monitoring and Evaluation(モニタリング・評価)
・ Partnerships(パートナーシップ)
・ Research Degrees(研究学位)
・ Student Engagement(学生参画)
・ Work-Based Learning(学外実習)
- 通常、学内には内部質保証活動のための体制が常設される
・ 新たにコースを設置する際の設計・承認や、既設コースの見直し・廃止・変更をはじめとする種々の取組が実施されている
- 学外からの内部質保証活動への参画
・ 英国における内部質保証活動の特長
- 学外の専門的意見を積極的に取り入れている
・ 学外試験委員(external examiner)
- 英国の伝統的な制度
- 高等教育機関の基準、特に学生の学習成果について独立・公平な立場から意見を述べる役割を担う
・ 学外試験委員としての経験と専門領域の同業者・同僚(ピア)としてのインプットが期待されている
- 当該機関が公正で一貫した評価の方針・プロセスを実行しているかどうか
・ 学習の評価の誠実性・厳密性を確保するため
- 国の基準や他の高等教育機関と比較して当該機関の質・基準はどの程度か
- 学生の質保証動への参画
・ 高等教育機関の内部質保証プロセスへの学生参画も、英国の内部質保証活動の特長の一つ
- 学生は質の保証・向上のための中心的な役割が期待されている
・ 入学者選抜
・ コース設計
・ 教育・学習方法
・ 学生支援
・ 成績評価
・ 進学
- クオリティ・コードのコアプラクティス及びコモンプラクティスにおいてその旨が明記されている
・ QAAが高等教育機関に対して、学生参画の実践に関する助言をまとめている
- 学内の意思決定プロセスや質保証活動に学生をどのように参画させるかを戦略としてまとめる
- 高等教育機関と学生代表組織(学生団体)の間で学生参画に関する合意書を締結する
- 意思決定組織に学生代表を他のメンバーと対等な立場で迎える
- 学生の意見を幅広く収集するための仕組みを適切に構築する
- 学内の様々なレベルの意思決定組織に学生代表を適切に配置するよう支援する
- 学生代表の役割について理解を深めるための学生向け研修を実施する
・ QAAの質・基準レビュー
- 受審機関に在籍する学生が学生意見書(student submission)を作成する
- 訪問調査時にレビューチームとの面談に参加する
○ 外部質保証
- イングランドではQAAによる「質・基準レビュー」(Quality and Standards Review)が行われている
・ OfSが管理する高等教育機関登録制度の一部として実施
・ 登録を希望する高等教育機関を対象に質と基準に関する登録要件に基づく評価が行われている
- OfSによる「教育卓越性・学習成果評価枠組」(TEF)が行われている
・ 2019年から高等教育機関登録制度において機関の新規登録及び登録継続の要件を満たしていることを客観的に証明する役割も担うようになった
- 質・基準レビュー
・ 実施主体
- OfSからの委託を受け、QAAが実施
・ 評価の目的
- OfSが高等教育機関登録制度において機関の新規登録及び登録継続の可否を判断する根拠の提供
・ 周期
- 問題がある機関には随時実施(OfSのモニタリングで問題が見つかった機関に対するレビュー)
- 登録機関は毎年OfSが少数の高等教育機関を無作為抽出して実施するサンプル調査の対象となる場合がある
・ 評価基準
- クオリティ・コード(コアプラクティスのみ)
・ 質・基準レビューの結果を基に、OfSが行うこと
- 各高等教育機関がOfSの高等教育機関登録制度の登録要件Bに含まれるB1、B2、B4、B5の各要件を満たしているかどうかを判断する
・ B1
- すべての学生に質の高い学術体験を提供する
- 学生の学習成果が信頼できる方法で測定できるように入念に設計されたコースを提供しなければならない
・ B2
- すべての学生が、入学から修了までを通して、高等教育で成功を収めその恩恵を享受できるよう、必要な支援を提供しなければならない
・ B4
- 学生に授与した資格が、授与時点及び授与後も継続的に、高等教育業界で認められた基準に沿った価値を有することを確保しなければならない
・ B5
- 高等教育資格枠組のレベル4以上に示される学術基準を満たすコースを提供しなければならない
・ 質・基準レビューは2種類の機関別レビュー
- 高等教育機関登録制度への新規登録機関向け
- 登録済機関のうちOfSのモニタリングで問題等が見つかった機関向け
・ 評価の実施体制
- QAAが任命した外部専門家からなるレビューチームにより実施される
- レビュー対象となる高等教育機関の特性に合わせて各レビューチームの規模と構成が調整される
・ 当該高等教育機関が提供するコースの学問分野の専門家
・ 学務支援や質保証等に知見を有する者
・ 学生団体の代表者
・ 評価の実施体制プロセス
- 準備段階
・ 高等教育機関がQAAにレビューに必要な情報を提出
・ QAAと高等教育機関がレビューに関し個別の事前協議
・ QAAがレビューチームを編成し、高等教育機関との間でレビューの日程等を確定
・ 高等教育機関がレビュー実施手数料を納付
- 提出書類(第0週)
・ 高等教育機関が提出書類と根拠資料をアップロード
・ 当該機関の在学生が学生意見書をアップロード
- 学生意見書は訪問調査開始1週間前までならいつでも提出
- 初期評価(第2週まで)
・ レビューチームが初期評価(提出書類に基づく書面調査)を実施し、追加の根拠資料の要否を検討
- 根拠資料の追加提出(第4週まで)
・ 高等教育機関が追加の根拠資料をアップロード
- 分析と訪問調査の詳細策定(第6週まで)
・ レビューチームが追加の根拠資料を分析
・ 必要に応じて追加で助言を求める
・ 訪問調査の詳細を決定
- 訪問調査(第9週まで)
・ レビューチームが高等教育機関へ訪問調査
- レビュー報告書案の作成(第11週まで)
・ レビュー報告書案を高等教育機関に送付
- 高等教育機関からのコメント(第12週まで)
・ 高等教育機関がレビュー報告書案に対するコメントを提出
- 最終報告書(第14週まで)
・ QAAがレビュー報告書の最終版をOfSに提出
・ レビューの所要期間
- 高等教育機関登録制度の新規登録機関向け
・ 対象機関からQAAへの書類提出を起点とすると通常14週間(約3か月半)
- 登録済機関向けのレビュー
・ 問題が見つかった箇所に焦点があてられるという性質上、レビューの所要期間は対象機関により異なる
・ 評価結果及び結果の公表
- レビューチームはコアプラクティスの項目ごとに判定を下す
・ 「コアプラクティスに適合している」(「meets the Core practice」)
・ 「コアプラクティスに適合していない」(「does not meet the Core practice」)
- あわせて、レビューチームはエビデンス等に基づいて各項目の判定の信頼性を提示する
・ 高(high)・中(moderate)・低(low)の3段階
- その後、レビュー報告書はQAAからOfSに提出され、登録の可否についての検討が行われる
・ 新規登録機関の場合
- OfSが当該高等教育機関の登録可否を決定
- その後、レビュー報告書がQAAのウェブサイトにて公表される
・ 登録済機関の場合
- レビュー結果は公表されない
- QAAのレビュー報告書掲載ページ
・ https://www.qaa.ac.uk/reviewing-higher-education/quality-assurance-reports
- 教育卓越性・学習成果評価枠組(TEF)
・ 概要
- 実施主体
・ OfS
- 評価の目的
・ 学生の進路選択に関する情報提供
・ 教育重視志向の醸成
・ 教育の卓越性の承認と報奨
・ 産業界からの学生の知識、スキル、理解に対する需要への対応
- 周期
・ 高等教育機関が提供するデータの年数によって評価結果の有効期間が1~3年間の中で決定される
- 評価基準
・ TEF独自の評価基準
・ 高等教育機関の受審は任意
- ただし、2019年8月1日以降は、OfSの高等教育機関登録制度の継続登録要件(要件B6)として、TEFの受審が求められることとなった
- それによっての受審が事実上必須となった高等教育機関
・ 高等教育機関登録制度に登録済のイングランドの高等教育機関
・ 「色」による格付け(金、銀、銅)
- 学生の大学進学先の選択等に役立つ情報を提供
- 色を問わず、TEFの称号を獲得した機関は授業料の引き上げが可能となる
・ そのインセンティブを提供することよって、各機関に競争を促している
・ 評価の観点
- 3つの観点及び指標(metric)※観点>コア指標>データの情報源
・ 「教育の質」(Teaching Quality)
- コースの教育内容に対する学生満足度(全国学生調査)
- 成績評価と指導教員からのフィードックに対する学生満足度(全国学生調査)
・ 「学習環境」(Learning Environment)
- 学習支援に対する学生満足度(全国学生調査)
- 学生定着率(HESA及び学生の個別学習記録)
・ 「学生の成果及び学習の効果」(Students Outcomes and Learning Gain)
- 就職または進学の状況(就職状況調査;修了後6か月の修了者が対象)
- 高度技能職への就職または進学の状況(就職状況調査;修了後6か月の修了者が対象)
・ 以上のコア指標のほかに、補足指標(Supplementary Metrics)が設定されている
・ 評価実施体制・プロセス(2018-19年の実施回(TEF Year 4))
- 評価グループ(3名程度)による高等教育機関の審査
- 評価員全員が一堂に会し、1グループの規模を拡大して(9名程度)審査を実施
- TEFパネルへの提言を作成
- 評価グループからの提言を受け、TEFパネルが格付けを最終判定
・ 評価結果
- 「色」による格付け(金、銀、銅)
・ TEFの実施2年目に当たる2016-17年(TEF Year 2)から開始
・ 条件付きのTEFの称号(Provisional Awards)もある
- 称号付与の要件を満たしているものの、格付けに必要なデータが不十分であった場合
・ 格付けの分布
- 参加機関の20-30%が金、50-60%が銀、20%が銅となることが想定されている
- 分布に収めるために格付けの判断が左右されることはない
- TEFの称号の有効期間は1~3年
・ 高等教育機関がTEFの評価に用いられるデータを何年分用意できたかにより決定される
- 例:用意できたデータが1年分の場合、称号の有効期間は1年間
- 学生が進学先を決定する際に参照されている
- 公開されるウェブサイト
・ OfS
・ 大学入学情報を提供するUCASやUnistats
○ その他の評価
- 国境を越えた教育(Transnational Education:TNE)のレビュー
・ 実施主体
- QAAが実施
・ 英国大学協会(Universities UK:UUK)及び高等教育カレッジ連合(GuildHE)からの委託を受けて実施
・ ブランチキャンパス、協定校、遠隔教育等を通じて英国外で提供されている英国の高等教育を対象に行われる
・ 学術的な質と基準を保証し、さらなる改善を促すための評価プロセス
・ 評価の目的
- 受入国の政府、関係団体、学生に対し英国の高等教育の質を保証し、相互理解や信頼を高める機会を提供する
・ 評価の周期、基準、実施体制
- 毎年一つの国(または地域)がレビューの対象として選定される
- クオリティ・コードの期待事項、特に他機関との連携に関する原則を遵守しているかの確認が行われる
- 評価チーム
・ QAAによって選出された3人の同業者・同僚(ピア)で構成される
・ QAAの国際レビューマネジャーが監督する
・ プロセス
- 当該国・地域にあるすべての英国学位授与機関を対象に調査が行われる
・ レビュー対象国・地域における英国のTNE の規模を把握するため
・ 当該国・地域での英国のTNE の規模が大きい場合
- その調査の結果等を基に代表的な高等教育機関がレビューのサンプルとして選出される
・ 当該機関が提供する高等教育資格のレベル、英国内のキャンパスの所在地域、優良事例等が考慮される
- 書面調査・訪問調査を受ける
・ 高等教育機関からの提出書類を基に行われる
・ 追加書類の要求が必要か、そして英国またはレビュー対象国のどちらでレビューのための訪問調査が行われるか決定される
・ 遠隔地の場合は訪問調査の代わりにビデオ会議が実施されることもある
・ 訪問調査の対象数は、平均的に英国にある本キャンパスから2機関、受入国にある海外キャンパスから8~10機関が想定されている
- 上記のレビューに加え、TNEの課題や国際共同教育プログラムといった特定のテーマに関するケーススタディも同時並行で実施される
・ 評価結果およびその活用
- 最終的にまとめられるレビュー報告書(3つ)
・ 対象国の概要をまとめた報告書
・ 各高等教育機関のTNE質保証評価書
・ ケーススタディ報告書
- QAAのウェブサイトで公表される
- レビューの開始から報告書の公表までの所要期間は、通常34週間(約7か月半)
- QAAのTNE評価結果掲載ページ
・ https://www.qaa.ac.uk/international/transnational-education-review
- 研究評価
・ 研究卓越性枠組(Research Excellence Framework:REF)
- 1986年に始まった研究評価(Research Assessment Exercise:RAE)の経験を踏まえて導入された
- 研究費の大半については、REFの評価結果を基に配分が決定される
・ 実施主体
- 英国の4つの資金配分機関
・ Research England
・ Scottish Funding Council
・ Higher Education Funding Council for Wales
・ Department for the Economy, Northern Ireland
- 実際の評価プロセスは各分野の研究者等の専門家が担う
・ 目的
- 英国の高等教育全体としての継続的な研究基盤づくりを目指す
- 研究への公費投入に対する説明責任を果たす
- 研究の実績や評判を測る物差しとなる情報を高等教育界や社会に提供する
- 選択に基づく研究費の配分について周知する
・ 周期
- 概ね6年
・ 第1回のREFは2013年から2014年にかけて実施された
・ 次回(第2回)のREFは2020年から2021年にかけて実施される予定
・ 評価実施体制・プロセス
- 4つの学問領域別の評価委員会
・ その下に、34の分野(Unit of Assessment: UoA)ごとの評価部会が編成される
- 評価を担当する専門評価員
・ 豊富な知見を有する研究者
・ 民間や行政等の業務で大学の研究を利用する者
・ 海外の有識者
- 高等教育機関は分野(UoA)ごとに書類を提出して評価を受ける
・ 評価基準
- 専門評価員が高等教育機関から提出された書類ごとに3つの要素を評価する※要素>指標>評価結果に占める割合
・ 研究のアウトプット(Outputs)
- 独創性、重要性、厳密さ(60%)
・ 研究の社会へのインパクト(Impact)
- 到達度、重要性(25%)
・ 研究環境(Environment)
- 活力、持続可能性(10%)
・ 評価結果及びその活用
- 5段階で表される
・ 4つ星(4*: world-leading )
・ 3つ星(3*: internationally excellent)
・ 2つ星(2*: recognised internationally)
・ 1つ星(1*: recognised nationally)
・ 1つ星に満たない分類不可(Unclassified)
- 各高等教育機関の分野ごとに公表される情報
・ 要素別結果(各要素の5段階の構成比率)
・ 総合結果(3要素を総合し各要素のウェイトを加味した5段階の構成比率)
・ 例:A大学の臨床医学分野の総合結果は、[4*]15%、[3*]35%、[2*]39%、[1*]11%、[分類不可]0%
- 評価結果はREFのウェブサイトに掲載される
・ REF 2014評価結果掲載ページ
- https://results.ref.ac.uk/(S(t2jctciq4eekullq1qyjvbrn))/
- 職能団体等による専門職教育アクレディテーション
・ 専門資格や職業資格の取得に結び付く教育プログラムを提供している場合(工学、法学、建築学、医学等)
- 関係職能団体・法規制団体・監督団体(Professional, regulatory, or statutory body)による評価を受審する
- それにより、当該プログラムが専門基準を満たしているか適格認定(accreditation)を受ける仕組みがある
・ 実施団体の例
- 医学分野:General Medical Council (GMC)
- 機械工学分野:Institution of Mechanical Engineers(IMechE)
・ 職能団体等が行う適格認定を受けたプログラム
- 関連団体により職業訓練の第一段階として正式に認められる
- 当該プログラムの修了をもって資格試験が免除されるケースがある
・ 英国の高等教育コースを評価する関係職能団体・法規制団体・監督団体のリスト
- https://www.hesa.ac.uk/collection/c19061/accreditation_list
○ 質保証機関の概要:高等教育質保証機構(QAA)
- 英国高等教育質保証機構(QAA)
・ 英国の代表的な高等教育質保証機関
・ 英国内のすべての地域で高等教育の質保証に携わっている
・ イングランドにおいては教育大臣の指定機関
- OfSの高等教育機関登録制度における登録要件の審査の一部である「質・基準レビュー」を実施している
・ 概要(2020年3月現在)
- 機関名
・ 高等教育質保証機構(Quality Assurance Agency for Higher Education: QAA)
- 組織の性格
・ 独立機関
・ 有限会社の法人格を有し、税制上の優遇措置を受ける慈善団体
- 設立年
・ 1997年
- 使命
・ 英国の高等教育(国外で提供される英国高等教育を含む)の基準を保持し、質を改善すること
- 所在地
・ 【本部】グロスター(イングランド)
・ 【支部】グラスゴー(スコットランド)、カーディフ(ウェールズ)、ロンドン(イングランド)
- 組織体制
・ 理事会(Board):17 名の委員(学生1名及び全国学生ユニオンの代表者1名含む)
・ 機構長(Chief Executive)
・ 組織体制の詳細:https://www.qaa.ac.uk/about-us
- 主な事業内容
・ 英国の高等教育基準の策定・管理(クオリティ・コードの開発等)
・ 高等教育進学準備課程ディプロマの基準の策定・管理
・ 質と基準に関する大学、カレッジ、高等教育関連機関、政府への助言・支援
・ 学位授与権、大学名称使用権の申請に対する政府への助言
・ 英国の高等教育(国外で提供される英国高等教育を含む)のレビューの実施と報告書の公表
・ 高等教育の学術基準と質に関する意見申立て・懸念事項に対する調査
・ 高等教育機関の内部質保証活動支援のためのトレーニング、ガイダンス等
・ 英国及び国際的な高等教育の質保証の発展のためのコンサルティング、トレーニング、国際的なサービス活動
- 国際組織加盟状況
・ 欧州高等教育質保証協会(ENQA)
・ 高等教育質保証機関の国際ネットワーク(International Network for Qualit Assurance Agencies in Higher Education:INQAAHE)
・ 米国高等教育アクレディテーション協議会国際質グループ(CHEA International Quality Group:CIQG)
- ウェブサイト
・ https://www.qaa.ac.uk/en