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Cooper, H.(2003). Editorial. Psychological bulletin, 129, 3-9.

公開日:2015年12月16日 

概要

文献レビューの分類について解説。分類は6つ。①何に着目しているのか(焦点)、②何をしようとしているのか(目的)、③どのような立場で考えを述べるのか(視点)、④どこまでの範囲を扱ったのか(範囲)、⑤どのようにまとめたのか(構造化)、⑥誰に対して書いているのか(読み手)。レビューの1つであるresearch synthesisについても解説。

読もうと思った理由・感想

今年度(平成27年度)の科研費(奨励研究)[1]で大学からの中途退学に関連する文献を調べています。文献の量が多いので、文献を整理するときの参考にしようと思い、文献レビューの方法について書かれた文献を読んでみることにしました。中途退学関連の文献については、今回知った枠組みなどを使って知見を整理し、下記の連絡会[2]で報告予定です。

詳細

 ○文献レビューの分類
   - 6つに分類できる
     1. 焦点
       - 研究の結果
       - 研究の方法
       - 理論
       - 実践・応用
         ・ 上記の分類は相反するものではなく、複数を含むことも多い
     2. 目的
       - 統合(これが多い)
         ・ 一般化
           - 複数の事例の中から共通に言えることを明らかにする
         ・ 対立の解消
           - 事実についての相反する意見・主張に対して、新しい考え方で不一致を解消する
         ・ 共通の枠組み設定
           - 論争となっていることについて、各研究の定義を確かめることなどによって、先行研究から何が言える/言えないのかをはっきりさせる
       - 批評
         ・ 先行研究を通して結論を出したり、各研究を比較するのではなく、各研究が一定の基準に達しているかを見る
           - 研究で用いられている手法の質・正確さなど
       - 論争の中心の特定
         ・ その分野で何が議論の中心になっているかを特定する
           - 過去の研究で議論になっているもの
           - 今後の議論を促すもの
           - その分野の発展を妨げている技術的な課題
     3. 視点
       - 中立的
       - 特定の立場
       ※ 視点に関して、Psychological Bulletin誌では、以下の規則に従うことが望ましい
         ・ 自説を述べる、立場を支持しようとするときは、そのことを明示する
         ・ 先行研究の批判はバランスに配慮する
         ・ 過去の研究を一般化しようとするときは、同じ基準を用いる(後述の「メタ分析」など)
     4. 範囲
       - 網羅的
         ・ 全ての、もしくはほぼ全ての文献を基にして結論を出し、それら文献全てについて議論する
         ・ ある仮説を支持するのであれば、網羅的でないといけない(都合のよい文献だけを扱ってはいけない)
       - 網羅的だが、引用は特定
         ・ 網羅的な文献調査を基にして結論を出すが、レビュー内に書かれるのは一部
       - 代表的
         ・ その分野の多くの文献を代表する文献をいくつか挙げる
       - 中心的
         ・ その分野の中心となる文献を集中的に扱う
         ・ 手法・考え方のきっかけとなったもの、問題の捉え方を変えたもの、重要な論争を引き起こしたものなど
     5. 構造化(主題のまとめ方)
       - 時系列
       - 概念
       - 手法
     6. 読み手
       - その分野を専門とする研究者
       - 一般的な研究者
       - 実務担当者・政策立案者
       - 一般的な読者
         ・ 読み手をどのレベルとして想定するかで、専門用語の使い方などが異なる
   - 上記1~6を明示すべき

 ○科学的な過程としてのResearch Synthesis
   - Research synthesisはレビューの1つの種類
     ・ 特徴
       - 焦点:研究の結果
       - 目的:それら結果の統合
     ※ 参考:「"Research synthesis"に対応する日本語は?」(石井卓巳さん/筑波大学大学院)
   - Research synthesisの段階
     ・ Research synthesisのモデル(Cooper, 1982)
       - 5つの段階がある
         ・ 課題の整理
         ・ データ・文献収集
         ・ データの評価
         ・ 分析・解釈
         ・ 結果の提示
   - 文献調査
     ・ 多くのレビュワーは手に入れやすい文献に頼りすぎている
     ・ 出版されていない研究を対象に含めるかという問題がある
       - 出版されていない研究は、出版されているものより質が劣るというのは単純化しすぎ
         ・ 出版されていない研究で質が高いものもある
         ・ 逆に出版されていて質が低いものもある
     ・ 現在、厳密なresearch synthesisでは出版されている/いない両方の研究を含むことが慣例になっている
   - 先行研究の分析と解釈
     ・ 「メタ分析」と文献レビューについて解説
       - Glass(1976)が作った用語
         ・ 厳密な意味では統計的な手法を指す
       - ただし、一般的にはresearch synthesisと同じ意味として使われる場合が多い
       - メタ分析が不適当な場合の紹介
         ・ 年代によって概念・手法が変化している場合など
   - 読み手がresearch synthesisの方法を評価できるように、十分な情報提供を行うことが必要

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