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公開日:2015年12月16日
文献レビューの分類について解説。分類は6つ。①何に着目しているのか(焦点)、②何をしようとしているのか(目的)、③どのような立場で考えを述べるのか(視点)、④どこまでの範囲を扱ったのか(範囲)、⑤どのようにまとめたのか(構造化)、⑥誰に対して書いているのか(読み手)。レビューの1つであるresearch synthesisについても解説。
今年度(平成27年度)の科研費(奨励研究)[1]で大学からの中途退学に関連する文献を調べています。文献の量が多いので、文献を整理するときの参考にしようと思い、文献レビューの方法について書かれた文献を読んでみることにしました。中途退学関連の文献については、今回知った枠組みなどを使って知見を整理し、下記の連絡会[2]で報告予定です。
○文献レビューの分類
- 6つに分類できる
1. 焦点
- 研究の結果
- 研究の方法
- 理論
- 実践・応用
・ 上記の分類は相反するものではなく、複数を含むことも多い
2. 目的
- 統合(これが多い)
・ 一般化
- 複数の事例の中から共通に言えることを明らかにする
・ 対立の解消
- 事実についての相反する意見・主張に対して、新しい考え方で不一致を解消する
・ 共通の枠組み設定
- 論争となっていることについて、各研究の定義を確かめることなどによって、先行研究から何が言える/言えないのかをはっきりさせる
- 批評
・ 先行研究を通して結論を出したり、各研究を比較するのではなく、各研究が一定の基準に達しているかを見る
- 研究で用いられている手法の質・正確さなど
- 論争の中心の特定
・ その分野で何が議論の中心になっているかを特定する
- 過去の研究で議論になっているもの
- 今後の議論を促すもの
- その分野の発展を妨げている技術的な課題
3. 視点
- 中立的
- 特定の立場
※ 視点に関して、Psychological Bulletin誌では、以下の規則に従うことが望ましい
・ 自説を述べる、立場を支持しようとするときは、そのことを明示する
・ 先行研究の批判はバランスに配慮する
・ 過去の研究を一般化しようとするときは、同じ基準を用いる(後述の「メタ分析」など)
4. 範囲
- 網羅的
・ 全ての、もしくはほぼ全ての文献を基にして結論を出し、それら文献全てについて議論する
・ ある仮説を支持するのであれば、網羅的でないといけない(都合のよい文献だけを扱ってはいけない)
- 網羅的だが、引用は特定
・ 網羅的な文献調査を基にして結論を出すが、レビュー内に書かれるのは一部
- 代表的
・ その分野の多くの文献を代表する文献をいくつか挙げる
- 中心的
・ その分野の中心となる文献を集中的に扱う
・ 手法・考え方のきっかけとなったもの、問題の捉え方を変えたもの、重要な論争を引き起こしたものなど
5. 構造化(主題のまとめ方)
- 時系列
- 概念
- 手法
6. 読み手
- その分野を専門とする研究者
- 一般的な研究者
- 実務担当者・政策立案者
- 一般的な読者
・ 読み手をどのレベルとして想定するかで、専門用語の使い方などが異なる
- 上記1~6を明示すべき
○科学的な過程としてのResearch Synthesis
- Research synthesisはレビューの1つの種類
・ 特徴
- 焦点:研究の結果
- 目的:それら結果の統合
※ 参考:「"Research synthesis"に対応する日本語は?」(石井卓巳さん/筑波大学大学院)
- Research synthesisの段階
・ Research synthesisのモデル(Cooper, 1982)
- 5つの段階がある
・ 課題の整理
・ データ・文献収集
・ データの評価
・ 分析・解釈
・ 結果の提示
- 文献調査
・ 多くのレビュワーは手に入れやすい文献に頼りすぎている
・ 出版されていない研究を対象に含めるかという問題がある
- 出版されていない研究は、出版されているものより質が劣るというのは単純化しすぎ
・ 出版されていない研究で質が高いものもある
・ 逆に出版されていて質が低いものもある
・ 現在、厳密なresearch synthesisでは出版されている/いない両方の研究を含むことが慣例になっている
- 先行研究の分析と解釈
・ 「メタ分析」と文献レビューについて解説
- Glass(1976)が作った用語
・ 厳密な意味では統計的な手法を指す
- ただし、一般的にはresearch synthesisと同じ意味として使われる場合が多い
- メタ分析が不適当な場合の紹介
・ 年代によって概念・手法が変化している場合など
- 読み手がresearch synthesisの方法を評価できるように、十分な情報提供を行うことが必要