ホーム → IRなどについての文献メモ → 林隆之(2018).内部質保証システムの概念と要素:先行研究のレビューと「教育の内部質保証ガイドラインの定位」
公開日:2019年12月9日
内部質保証システムの概念と要素:先行研究のレビューと「教育の内部質保証に関するガイドライン」の定位(大学評価・学位授与機構学術情報リポジトリ)
[PDF]教育の内部質保証に関するガイドライン(大学評価・学位授与機構)
国外の先行研究などのレビューを通じて,内部質保証システムの概念や要素を明らかにする。また,それらと「教育の内部質保証に関するガイドライン」(大学評価・学位授与機構,2017)の関係を分析する。「ガイドライン」では,内部質保証システムを構成する要素を6つ提案している。「ガイドライン」は基準ではなく,一つの参照枠組みとして活用するもの。外形的に準拠するだけでは,教員が自らの活動として内部質保証に積極的に取り組むという状況は生まれない。内部質保証の定義はひとつではない。ただし,説明責任と改善の双方をあげているものが多い。また,方針や手続きを有する継続的なプロセスとして概念化している定義が多い。高等教育における質の概念についての主要な先行研究(Harvey & Green, 1993)では,質の概念を5つに分類している(①非凡さ/②完全性あるいは整合性/③目的適合性/④資金に見合う価値/⑤変容)。ステークホルダーは多様であり,それぞれのステークホルダーが重視する質の問題に応える必要がある。「質保証」と関連する用語として,「質向上」,「Institutional Effectiveness(IE)」,「質の文化」の3つがある。教育プログラム単位の点検・評価(レビュー)は内部質保証の核。[プログラム単位の質保証]と[機関や組織の単位での質保証]の関係を明確にすることが必要。
認証評価制度で内部質保証が重視されるようになった。しかし,内部質保証が具体的にどのような活動を指すのかは明確でなかった。そこで,大学評価・学位授与機構は2017年に「教育の内部質保証に関するガイドライン」を策定した。本稿では,主に国外の先行研究のレビューを通じて,内部質保証システムの概念や要素についての論点を明らにする。そして,日本の「ガイドライン」がその中でどのような位置づけにあるかを分析する。
欧州では,1990年代より内部質保証(internal quality assurance)という語を用いた議論が活発に行われている。また,2005年には『欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)』が策定されている。日本では,2016年に中央教育議会大学分科会「認証評価制度の充実に向けて(審議まとめ)」で「定期的な自己点検・評価の取組を踏まえた各大学における自主的・自律的な質保証への取組」という定義がなされた。
海外においては内部質保証システムに必要な要素を先行的に定めている文書(ガイドラインやマニュアル等)が存在している。日本の「ガイドライン」では,それらを参考に,内部質保証システムを構成する要素を6つ提案した。要素1:教育の内部質保証に関する方針と体制。要素2:教育プログラムのモニタリングとレビュー。要素3:教育プログラムの新設等の学内承認。要素4:教職員の能力の点検・評価と開発。要素5:学修環境・学生支援の点検・評価。要素6:大学や学部・研究科を単位とした教育研究活動の有効性の検証。なお,「ガイドライン」は基準ではない。実施者側の自由を許容し,工夫を促すものであり,一つの参照枠組みとして活用するもの。外形的に準拠するだけでは,教員が自らの活動として内部質保証に積極的に取り組むという状況は生まれない。
先行研究や用語集などで示された内部質保証の定義はひとつではない。ただし,説明責任と改善の双方をあげているものが多い。また,方針や手続きを有する継続的なプロセスとして概念化している定義が多い。どのような状態を保証するかについては,組織やプログラムの目的の達成,何らかの水準(最低限の要求水準/国における期待/特定の専門職業や学問分野に求められる水準など)を満たしていること,継続して向上すること自体など,種類がある。「ガイドライン」における内部質保証の定義は「大学が自律的な組織として,その使命や目的を実現するために,自らが行う教育及び研究,組織及び運営,ならびに施設及び設備の状況について継続的に点検・評価し,質の保証を行うとともに,絶えず改善・向上に取り組むことを指す」。なお,「ガイドライン」は全ての大学の内部質保証で準拠すべき普遍的なものというよりも,大学としてどのような内部質保証システムを形成していくかを自ら検討するために用いることが適切。
高等教育における質の概念について,参照されることが多い先行研究はHarvey & Green(1993)。質の概念を5つに分類している。①非凡さ(議論の余地なく他大学より特別/インプットやアウトプットが高水準で卓越/学位に求められる水準を満たしている),②完全性あるいは整合性(仕様に照らして無欠陥;絶対的な水準に照らすものではない),③目的適合性(仕様に照らして無欠陥なだけでなく,顧客(学生/政府/雇用者など)や大学自身の目的に適合),④資金に見合う価値(政府の公的投資のアカウンタビリティ),⑤変容(教育による学生への付加価値)。どの質概念を重視するかによって,内部質保証のモデルは異なるものになる。また,多様なステークホルダーに注意を払い,それぞれのステークホルダーが重視する質の問題に応える必要がある。
日本の大学評価では,③目的適合性の質概念が強く影響している。大学の個性化を進めるという文脈の中で,大学評価が求められてきたため(1998年大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について─競争的環境の中で個性が輝く大学─」;第三者評価の必要性をうたった答申)。この質概念のもとでは,内部質保証はPDCAサイクルを基本モデルにする傾向がある。その他の質概念について,日本では,①非凡さの「学位に求められる水準」の視点での質保証はこれまで十分に行われていない。日本学術会議「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準」を今後いかに用いるかが課題。⑤変容は,質的転換答申(中央教育審議会, 2012)が目指す「教育の質的転換」と親和性がある。
「質保証」と関連する3つの用語。「質向上」…広く使われる定義はないが,質保証は診断に相当し質向上はその後の処置に当たるなど。「Institutional Effectiveness(IE)」…大学単位での成果に焦点をおく,階層的な構造を前提とする,質向上計画の形で改善との結びつきを制度化など。「質の文化」…恒常的に質の向上を図る組織文化,「文化的・心理的要素」(価値・信念の共有)と「構造的・運営的要素」(個人の努力を連携させる明確なプロセス)。
外部質保証のメリットは第三者機関が作業に加わることによりアカウンタビリティが増す,外圧が得られるなど。デメリットは保守的で堅い基準によって教育のイノベーションが抑制されるなど。内部質保証により,質改善についての内的モチベーションをもつことが可能になる(効果的学習についての議論の活性化などの雰囲気の変化,コースの評価やモニタリングの実施など)。ただし,アカウンタビリティ重視のアプローチをとることにより,負担感が増し教員の意欲を下げる傾向がある。教員自身が内部質保証制度のオーナーシップを有することが重要。そのために,内部質保証の権限と責任を大学本部でなく学部やプログラム実施者に委譲する(各階層に質のマネジメントを推進・支援するリーダーシップ的役割を指定)。また,それぞれのレベルにおいて適切な自己評価を行うことが望ましい。
教育プログラム単位の点検・評価(レビュー)は内部質保証の核。海外における先行的なガイドラインでも重要な位置を占める。欧州では,アウトプットの標準(水準)やプロセスの完全性・整合性の保証が重要とされる。背景には,学生が国境を越えて移動するという文脈がある。日本では,プログラム単位で確認すべき事項も機関単位の第三者評価で扱われたことから,現時点でプログラム・レビューが広く実施されている状況ではない。ただし,近年,三つのポリシーに基づく大学教育の質的転換を促進する評価が求められるようになった。三つのポリシーは原則的に学位プログラム単位で策定されるため,プログラムを単位とした点検・評価を求めることにつながる。
プログラム単位の質保証とは別に,機関や組織のミッション実現の視点から,機関や組織の単位で活動や成果の有効性を確認することを求めうるかは一つの論点。米国SACS等のInstitutional Effectiveness概念においては,この点が明確。ESGでは明示的な項目としては書かれてはいない。日本では,機関別認証評価や国立大学法人評価など,大学や部局を単位にして各組織の目的を重視した評価を行ってきた。そのため,機関や組織の単位での有効性検証という考え方は受け入れられやすいと思われる。海外の状況とは逆で,教育プログラムを対象とする質保証の取り組みとの関係を明確にすることが必要となる。
■ はじめに
- 大学機関別認証評価
・ 2004年から始まった
・ 2017年に第三サイクルを迎える
- 認証評価制度の充実に向けて(審議まとめ)
・ 中央教育審議会大学分科会が2016に公表
・ 今後の評価制度の方向性
- 「各大学の自律的な改革サイクルとしての内部質保証機能を重視した評価制度」への転換
- しかし,内部質保証とは具体的にどのような活動を指すのかは明確でない
・ 何の質を対象に,いかに保証することが期待されているのか
・ 学内にどのようなシステムが必要か
- そこで「教育の内部質保証に関するガイドライン」が策定された
・ 「ガイドライン」は内部質保証の定義や,そのためのシステムの構成要素について提案したもの
- 質保証システムのあり方には様々な意見があり,一つのモデルを提案したものにすぎない
・ 大学改革支援・学位授与機構が内部質保証システムを検討する研究会を設置して策定した
- 本稿の目的
・ 内部質保証システムの概念や要素についての論点を明らかにする
- 主に国外の先行研究のレビューを通じて行う
・ 日本の「ガイドライン」がその中でどのような位置づけにあるかを分析する
- 欧州の状況
・ 1990年代より内部質保証(internal quality assurance)という語を用いた議論が活発に行われている
・ 2005年には『欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)』が策定された
- 策定により内部質保証が明確に求められた
- 今日まで先行研究が蓄積されてきている
※ 参考1(橋本注):欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG2015)(大学改革支援・学位授与機構;日本語訳)
※ 参考2(橋本注):内部質保証(大学改革支援・学位授与機構大学質保証ポータル;ESG2015についての概説あり)
- 本稿の流れ
・ 内部質保証の定義
- 何を対象にするのか,どのような状態の実現が求められるのか
・ 内部質保証の実際の効果,効果が発揮される要件
・ 内部質保証を実施する仕組み(内部質保証システム)の構成要素
■ 内部質保証の定義:「質」と「保証」の多義性から求められる内部質保証の柔軟性
- 「内部質保証」の定義
・ 認証評価制度の充実に向けて(審議まとめ)(中央教育議会大学分科会,2016)
- 「定期的な自己点検・評価の取組を踏まえた各大学における自主的・自律的な質保証への取組」
・ しかし,定義中の「質保証」という用語が具体的に何を意味するかは明確でない
・ 「学校教育法第百十条第二項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令の一部を改正する省令」
- 「教育研究活動等の改善を継続的に行う仕組みに関すること」を含むように改正されている
・ 認証評価機関が定める評価基準に共通して定めなければならない内容として改正
- これが内部質保証を指すと考えられる
- 質保証は改善の仕組みとなり,「保証」という用語を用いる意味が不明瞭
・ 国際的にも「質保証」という用語は明確な定義がなされずに使われることが多い(Williams and Harvey, 2015)
- さらに「内部質保証」になると,広く使われる定義はない
・ 先行研究や用語集などで示された「内部質保証」および「質保証」についての定義を表1に示す
- 内部質保証の定義はひとつではない
・ 点検や分析を含む自己評価活動であると定めるもの
・ 何らかの状況が実現されていることの保証という抽象的な表現のもの
・ それでも,方針や手続きを有する継続的なプロセスとして概念化している定義が多い
- 何の質か
・ プロセスの質の保証(Blackmur, 2010)
・ インプットからアウトカムの質の保証(Harveyの用語集)
- 対象のレベル
・ ファカルティレベルの活動(Weusthof, 1995)
・ 高等教育システム,高等教育機関,教育プログラムなど(Vlăsceanu et al., 2007)
- 質保証の目的
・ 説明責任と改善の双方をあげているものが多い
・ そのためにどのような状態を保証するかについては種類がある
- 組織やプログラムの目的の達成
- 何らかの水準を満たしていること
・ 最低限の要求水準
・ 国における期待
・ 高等教育一般や特定の専門職業や学問分野に求められる水準等
- 継続して向上すること自体
・ このように多様な説明がなされている
- そこで,まず「質」ならびに「保証」の定義について先行研究を踏まえて整理する
- その中での内部質保証のあり方を検討する
○ 「質」の多義性と内部質保証
- 高等教育における質の概念が多義的であることは,質保証研究において古くから存在する課題
- いくつかの概念分類が提案され,議論されてきた
・ Harvey & Green(1993)
- Harvey, L., & Green, D.(1993). Defining quality. Assessment & Evaluation in Higher Education, 18(1), 9-26.
・ Harvey(1995)
・ Horsburgh(1998)
・ Vlăsceanu et al.(2007)
・ Harvey & Williams(2010a)
・ Martin & Stella(2011)
・ Elassy(2015)
・ Williams & Harvey(2015)
- それらの多くはHarvey and Green(1993)による概念分類を参照あるいは,それを若干変更した分類を提案している
- Harvey and Green(1993)による概念分類(5つ)
1. 非凡さ(exceptional)
- 例外的に優れていることを指す
- 種類が分かれる
a. 議論の余地なく他大学より特別であること(distinctiveness)
- 例:オックスフォード大学やケンブリッジ大学
b. インプットやアウトプットが高水準にあり卓越していること(excellence)
- 優秀な入学生や教育環境により優秀な卒業生が輩出されている
- プロセスは焦点に入らない
c. 学位に求められる水準を満たしていること
- アウトプットが最低限の水準を満たしていること
- 最低限の設定が高くなれば,優秀なものとなる
2. 完全性(perfection)あるいは整合性(consistency)
- 製造物やサービスが仕様(specification)に照らして無欠陥であることを意味する
- 絶対的な水準に照らすものではない
- プロセスの卓越性が求められる
・ プロセスの各段階に対して欠陥を生まないような管理責任を委譲した「質の文化」が重要となる
3. 目的適合性(fitness for purpose)
- 製造物やサービスがその目的にどの程度適合しているかで質が判断される
- 仕様に対して無欠陥であったとしても,それが目的と適合しなければ無意味
- 誰にとっての目的かについては二つの見方がある
・ 顧客にとっての目的
- 顧客の要求やニーズを満たしていることが質となる
- しかし,顧客とは学生,政府,雇用者など多様
- 学生が自己のニーズを長期的視点から詳述することができるのかという問題もある
・ 大学自身にとっての目的(ミッションへの適合性)
- 質の高い大学とは,自らのミッションを明確に記述し,それを効果的に達成している大学
- ただし,学内で質を管理するメカニズム(すなわち内部質保証)が機能していること自体が質と同義で取り扱われやすい
4. 資金に見合う価値(value for money)
- 投資効果
- 政府はこの定義を用いて,大学への公的投資のアカウンタビリティを果たそうとする
- 実績指標を用いたり,顧客からの大学選択の市場競争や大学ランキングが重要
5. 変容(transformation)
- 教育とは消費者である学生を変容するサービス活動という特徴を持つ
- この場合の質が意味すること
・ 学生の向上(教育による学生への付加価値)
・ 学生自身が教育あるいはその後の生活における意思決定に関わることができる能力を身に付ける
・ 上記の異なる質概念のどれを重視するかで,内部質保証のモデルも異なる
- 五つの質概念のうち,質保証機関は第三の「目的適合性」を重視する傾向がある(Horsburgh, 1998)
・ 個々の大学の目的に即した質保証を行うことが求められる
- 大学は政府等から独立した自律的な組織
- 高等教育のユニバーサル化により大学の多様化が進んだ
- 日本の大学評価でもこの質概念が強く影響している
・ 1998年大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について─競争的環境の中で個性が輝く大学─」
- 第三者評価の必要性をうたった
- 大学の個性化を進めるという文脈の中で,大学評価が求められてきた
・ 認証評価の導入以降に各認証評価機関が評価の方針としてうたってきたこと
- 「個性化」(大学改革支援・学位授与機構,日本高等教育評価機構)
- 「大学の理念・目的の実現に向けた取組の重視」(大学基準協会)
・ この質概念のもとでは,内部質保証はPDCAサイクルを基本モデルにする傾向がある
- 計画は大学の目的やミッションを出発点とするため,「目的適合性」の考え方と整合する
・ 中央教育審議会(2008)「学士課程教育の構築に向けて」の質保証に関する章で現状課題とされること
- 「(自己点検・評価が)PDCAサイクルを稼動させるに至っていない場合もある」
・ PDCAサイクルの稼働が質保証であるという考えを暗に示している
- 大学自身が目的や計画をたてて振り返りを行うもの
・ 外部からの介入もなく,大学にとって受け入れやすい仕組み
・ しかし,立てた計画自体が他のステークホルダーからみて妥当なものであるのか(fitness of purpose)を確認する視点は弱くなる
- 別の質概念の考え方
・ 質保証において特定の標準(standard)が満たされていることを重視
- 上記の五つの質概念のうち,二つの分類に対応
・ 第一概念の「非凡さ」内の最後の種類であるアウトプットの水準(1c)
- 学位の授与(アウトプット)は下記の能力を身につけていることを確実にする
・ 国として各学位に求める能力
・ 関連する学問分野で各学位に求める能力
・ 卒業生が就くことが想定される専門職業に必要な能力
- 内部質保証として求められること(典型的には英国の質保証機関QAA)
・ [各プログラムが授与する学位]が枠組みや基準に適合していることを学内で確認する
- 国家資格枠組み(Qualifications Frameworks)
- 学問分野ごとの参照基準(Subject Benchmark Statements)
・ 専門職団体(Professional, statutory and regulatory bodies: PSRBs)による外部レビューを受審して要求事項への適合性を確認する
- 日本ではこのような視点での質保証はこれまで十分には行われていない
・ 日本には国家資格枠組みは存在しない
・ 認証評価では次のことは求めてこなかった
- 教育プログラムごとに分野の参照基準との適合性を確認すること
- 学内での確認
- 「標準」という見方は第三概念にもある
・ 卒業生が仕様に照らして無欠陥であるだけは不十分で,教育プロセスの質が定められた水準に適合している必要がある
・ 英国の内部質保証で求められること
- プログラムごとに仕様書(Programme Specification)を設定する
- 教育の提供プロセスやその管理について「質の規範(Quality Code)」に示された基準を遵守する
- その状況が外部質保証で確認される
・ 日本の認証評価
- 各認証評価機関の基準(大学設置基準を含む)の遵守を確認する
- 内部質保証はそのような外部質保証(第三者評価)に対応する自己評価が大きな部分を占める
・ 政府が公的資金の効率的活用や選択的配分を求めれば,第四概念に基づく質保証が行われる
- 外部質保証においては,コストとの比較を行うことは多くない
- ただし,定量的な実績指標を用いた比較などが求められる
- 英国のTeaching Excellence Framework(2017年から実施)
・ 学生調査の結果や就職率などの指標を踏まえつつ,委員会による判定が行われている
・ 日本の国立大学法人評価における教育水準の現況分析は,これに近い
- いくつかの参考指標と自己評価書類を見て評価者が段階判定する
- 内部質保証では,そのような第三者評価での指標や基準を踏まえつつ,学内での定期的な実績確認をすることに焦点がおかれる
・ 第五概念の学生の「変容」が主たる質概念であるべき(Horsburgh, 1998)との指摘もある
- 学生が知識やスキルを獲得するアプローチの進化,教育内容や方法のイノベーションが必要
・ 急速に変化する社会や産業構造に対応できる学生を育成するため
- このような変革は,教員自身が定める目的への適合性や,既存の標準への適合性からは生まれない
- 質保証とは学生の変容プロセスの実現を保証すること
・ 重要になること
- 学生からのフィードバック
- 学生の評価への参画
・ 教育内容
- 学生の主体的な選択を可能とするカリキュラム構成
・ 教育方法に求められること
- 批判的思考力を養成する方法
- このような質概念は「教育の質的転換」と親和性がある
・ いわゆる質的転換答申(中央教育審議会, 2012)が目指すもの
- 内部質保証が焦点をおくこと
・ 教育の質的転換を実現するための教育改革を保証する
・ 学生の変容というアウトカムを保証する
- 以上のような質概念と内部質保証の焦点を表2に整理
- どの質概念を重視して内部質保証を形成することが望ましいのか
・ Harvey and Green(1993)
- ステークホルダーによって,どのような質概念を用いるかは異なる
- そのため,各ステークホルダーが有する質判断の基準を明確にし,異なる視点を広く考慮すべき
・ Iacovidou et al.(2009)
- 学生と教員では大学の質として重視する事項が異なる
・ Beerkens and Udam(2017)
- エストニアにおけるフォーカスグループインタビュー
- ステークホルダーによって異なる質への期待が存在する
・ Becket and Brookes(2006)
- Oxford Brookes Universityにおける内部質保証システムを分析
- 質保証システムを構成する要素はそれぞれ異なるステークホルダーが有する異なる質概念を用いている
・ 学生による授業評価
・ 学生によるプログラム評価
・ 大学間での学生サーベイ
・ 外部審査員による評価
・ 年次プログラム・レビュー
・ QAAによる評価 など
- 外部質保証であれば,質保証機関あるいは国がその時々に高等教育に対して重視している事項を反映した質概念が選ばれやすい
・ Beerkens(2015)
- 欧州での過去10年間の高等教育の質
・ 国の経済的競争力や卒業生の雇用市場の視点から定義された傾向がある
・ その結果,質保証システムは次第に卒業生のコンピテンシーに注力するようになった
・ 外部質保証は国と高等教育機関との関係を規定する政策的行為(Dill & Beerkens, 2010)
- 内部質保は,外部質保証へ対応するシステムを内部で実現するだけではない
・ 多様なステークホルダーに注意を払い,それぞれのステークホルダーが重視する質の問題に応える必要がある(Beerkens, 2015)
- 入学希望者
- 学費を支払う在学生やその保護者
- 学生が就職する産業界や専門職能団体
- 将来的に大学の支援者となる可能性ある卒業生
- 大学が立地する地域社会
- 大学を構成する学内の教職員 など
・ その場合には,多様な質概念に対応した複合的なものとすることが望ましい
- 特定のステークホルダーによる質概念に焦点をおくのではない
・ 日本の状況
- 大学基準協会(2015)が行ったアンケート調査
・ 大学は受審する認証評価機関が用いている定義をもとに内部質保証を理解している傾向がある
・ 大学自らが内部質保証を定義している状況にはない
○ 「保証」に含まれる内容
- 「保証」という語で包含される範囲
・ 点検やその結果の活用によって,目的や水準が達成されていることを確保し,それによりアカウンタビリティと改善に資すること
- 表1の各種定義から総じて言った場合の範囲
・ しかし,「保証」という語を用いながらも,実際には他の語の意味も包含して使われることがある
- 3つの関連する語と「質保証」との関係
・ 質向上
- 広く使われる定義はない
- Brown(2014)※Williams and Harvey(2015)における引用
・ 「教育方法の改善を,研究,ベンチマーク,質保証,その他の経験や実践の交換から得られる情報やアイディアに基づいて行うこと」
- Elassy(2015), Williams and Harvey(2015)
・ 質保証と質向上は,二分されるものでなく,つながりのある概念として捉える見方が多い
- 質保証は診断に相当し,質向上はその後の処置に当たる
- 質保証は多様な活動を包含する大きな概念であり,その一部が質向上
- 質保証にはレトロスペクティブな質保証とプロスペクティブな質保証があり,後者が質向上にあたる
- ESGにおいても,質保証と質向上は相互関連するものとされる
・ 「本文書(ESG)中で「質保証」という用語を使うときには,継続的改善サイクルに含まれる全ての活動(つまり,保証と向上の活動)を指す」
- ENQAによる欧州各国の質保証機関への調査でも,質保証と質向上の双方が重要であると回答している機関が多い(Costes et al., 2008)
- 質保証という語を用いつつ質向上概念を含んでいるのが最近の共通的状況
・ Institutional Effectiveness(IE)
- 米国で内部質保証と関連ある概念として使われている(Welsh and Metcalf, 2003a; 小湊・佐藤, 2014)
- IEは米国の地域アクレディテーション団体の一つであるSACS(Southern Association of Colleges and Schools)が1985年より使用している
・ 基準2.5
- 高等教育機関は継続的で統合的な機関全体での調査研究に基づく計画や評価プロセスを実施(基準2.5)
・ 機関のミッション,目標,アウトカムの体系に基づくもの
・ 機関の質の継続的な改善につながる
・ 機関がそのミッションを有効に達成していることを示すもの
・ 基準3.3
- 高等教育機関が行うこと
・ 期待されるアウトカムを定める
・ それらのアウトカムをどの程度達成しているかを評価する
・ 改善の証拠を提供する
- それらは,以下の各領域の分析結果にもとづいて行う
・ 学修成果を含む教育プログラム
・ 事務管理部門の支援サービス
・ 教務・学生支援サービス
・ 大学のミッションの範囲内での研究
・ ミッションの範囲内でのコミュニティサービス
・ さらにSACSの基準は「質向上計画(Quality Enhancement Plan: QEP)」を作成することを求めている
- QEPを主導,実施,完了するために策定が求められること
・ 体制・資源等の能力
・ 組織構成員の幅広い関与
・ QEP達成を評価しうる目標や計画
・ この考えでは,IEは必ずしも教育に限定されず,機関のミッションに基づく実績を各領域について測定する
- アセスメントの対象によって名称が異なる(藤原,2015)
・ プログラムである場合は「プログラム・レビュー」
・ 機関である場合は「Institutional Effectiveness」
- 典型的なIE(Welsh and Metcalf, 2003a; 2003b)
・ 学生の学修成果アセスメント
・ プログラム・レビュー
・ 戦略計画
・ パフォーマンススコアカード
・ ベンチマーキング
・ 質の測定を含むもの
- 定義を踏まえれば,IEを内部質保証システムの一つの形態とみることもできる
・ 質保証という用語と比べた場合の特徴
- 大学単位での成果に焦点をおいている
- 階層的な構造を前提としている
・ 個々の教育プログラムや事務部門の分析結果を用いる
- 質向上計画の形で改善との結びつきを制度化している など
・ 質の文化
- European University Association(2006)
・ 恒常的に質の向上を図る組織文化
・ 2つの要素により特徴づけられる
A. 文化的・心理的要素
・ 質に関する価値・信念・期待・責務を共有している
B. 構造的・運営的要素
・ 質を向上し,各個人の努力を連携させることを目指す明確なプロセスを有する
- 「文化的・心理的要素」と「構造的・運営的要素」の違い
・ 文化的・心理的要素
- 組織の文化や構成員の心理にかかわるものであり,内部質保証の概念には直接的には入っていない
・ 構造的・運営的要素
- 内部質保証の定義に近い
- 欧州大学協会(EUA)が行った「質の文化」に関する調査研究プロジェクトの結論(Vettori, 2012)
・ 質の文化と内部質保証は同一のものではない
・ 内部質保証は質の文化の一部
・ 質の文化は大学内のコミュニティに共有されている価値や行為に根ざすもの
・ 歴史的に形成されてきた現象
- ESGにおいては,質保証と質向上は質の文化の発展を支援しうるものと整理されている
・ 現時点では,質保証に包含される範囲は柔軟性をもって考えるべき
- 現状では質保証には質向上を含むことが多い
- Institutional Effectivenessおよび「質の文化」それぞれで示された内容に含まれること
・ どこまでを内部質保証という語に含めて考えるべきかは確定していない
○ 「ガイドライン」における内部質保証の定義
- 「内部質保証」の定義
・ 「大学が自律的な組織として,その使命や目的を実現するために,自らが行う教育及び研究,組織及び運営,ならびに施設及び設備の状況について継続的に点検・評価し,質の保証を行うとともに,絶えず改善・向上に取り組むことを指す」
- 「教育の内部質保証」(内部質保証の対象を教育に絞った場合)の定義
・ 「大学の教育研究活動の質や学生の学修成果の水準等を自ら継続的に保証することを指す」
・ 「教育研究活動の質保証のためには,それぞれの教育プログラムの編成・実施に責任をもつ組織が,そのプログラムにおける教育研究への取組状況や,プログラムにおける学修成果を定期的に分析・評価し,その結果に基づいて,改善・向上を図ることが必要である」
・ 「その上で,大学各教育プログラムにおけるこうした取組を把握し,改革・改善の仕組みが機能していること,ならびにそれによって,大学が設定した教育の質が確保されていることを保証することが必要である」
・ 「また,この状況を大学が社会に説明することも重要である」
- これまでの質や保証の概念整理に基づいた場合の定義
・ 上記の「内部質保証」の定義
- 目的適合性の質概念を中心にしつつ,質保証に質向上も含むものとなっている
・ 上記の「教育の内部質保証」
- プログラム単位での水準への適合性の保証と向上を求めている(非凡さの質概念の最後の種類;1c)
- プログラム実施者に権限委譲したうえで,教育の取組状況の質や学習成果の双方を点検することを求めている
・ 学習成果は完全性および学生の変容の質概念を部分的に含むと考えられる
- さらに,それを通じて大学が設定した質を確保している
・ その点で,大学全体の有効性を確認すること(Institutional Effectiveness)をも含む
- 定義の文章にいくつかの質概念を含むことは,たとえば「目的適合性」を特に重視した定義よりは望ましい
・ 前述のように,多様なステークホルダーの存在を前提に複数の質概念を包含することが望ましいとした場合
- しかし,上記の定義には含まれていないものがある
・ 学生等の顧客満足度
・ 資金に見う価値のような質概念
・ 教育の質的転換のような教育改革(明示的には含んでいない)
・ 「質の文化」に相当するような組織文化や心理の醸成
- それらは「ガイドライン」内の個別の事項の説明の中に一部関連する記載がなされているにとどまる
- 「ガイドライン」は全ての大学の内部質保証で準拠すべき普遍的なものというよりも次のような使い方が適切
・ 大学が参照しながら,大学としてどのような質を想定し,重視し,複合的な内部質保証システムを形成していくかを自ら検討する
■ 内部質保証が機能する要件
- 内部質保証は,その定義の多様さにも関わらず,今では大学にとって重要事項となっている
・ Sursock and Smidt(2010)
- 欧州大学協会(EUA)が2010年に欧州の高等教育機関に対して行った調査
・ 21世紀初頭の十年間における最も重要な変化
- 60%の高等教育機関が,機関内部での質のプロセスの促進をあげていた(一番高い項目)
・ Sursock(2015)
- 欧州大学協会の2015年調査
・ 高等教育機関にとって質保証が最も重要な改革であるとの回答が73%であった
- しかし,内部質保証が導入されることでどのような効果があり,その効果の実現のためにはどのような条件が必要であるのは明確でない
- そこで,先行研究からそれらの点を検討する
○ 内部質保証の必要性と効果
- 外部質保証だけでなく内部質保証が必要と考えられている理由
・ Kis(2005)が先行研究を分析
- 外部質保証のメリット
・ 第三者機関が作業に加わることによりアカウンタビリティが増す
・ 自己改善が効果的に行える
- 高等教育機関間でのデータ相互参照や外部質保証機関からの評価作業支援によって可能になる
・ 学内で作業負担の多い自己評価作業に取り組むための外圧が得られる
・ 外部質保証機関により多様なステークホルダーに対して透明で信頼のある情報を提供できる
・ 自己評価が単に自己を肯定する結果になることを防ぐ
- 外部質保証が中心になることのデメリット
・ 保守的で堅い基準によって教育のイノベーションが抑制される
・ 標準化や官僚主義化が生じて柔軟性が損なわれる
・ コストがかかる
・ 計略的な行為が生じる など
- 内部質保証のメリット
・ 改善が必要なこと(ニーズ)を把握し,焦点を定め,改善を実現する手段について知識を得ることができる
・ 質改善についての内的モチベーションをもつことが可能になる
・ 外部質保証と内部質保証のどちらか一方ではなく,両者が必要
- European University Association(2006)
・ 外部質保証はアカウンタビリティと改善の双方を目的とするが,同時に実現するのは実際には困難
・ バランスをとるべき
- 内部質保証により改善を行う
- 外部質保証によりアカウンタビリティに貢献する
- 内部質保証による実際の効果
・ 質保証全般について,その効果やインパクトについての研究は少ないと指摘されてきた(Harvey and Williams, 2010b; Williams and Harvey, 2015)
・ 外部質保証の効果についてはいくつかの先行研究がある(Askling, 1997; Stensaker, 2003; Stensaker and Leiber, 2015; Westerheijden et al., 2007)
- 外部質保証の効果
・ 内部質保証が形成されるという効果と,内部質保証がもたらす効果の双方が含まれる
・ 欧州・アジアのオーディット型の外部質保証の分析結果(Dill, 2000)
- 機関内の質保証システムの開発を促進する
- 教育や学修成果の改善を機関の課題としてとらえる
- 各レベルで教育や学修成果の責任を明確にする
- リーダーが「質の文化」を形成することを促進する
- 教員間で教育や学修成果の改善のための議論や共同を促進する
- 機関間で優良事例や情報共有がなされる
- 質保証に注意が払われていることを社会に説明する
・ ノルウェーの外部質保証の効果について質問紙調査をした結果(Stensaker et al., 2011)
- 新たな学内手続きの構築
- 教員間での学修・教授についての議論の活性化
- 学修・教育の質保証および質への効果
・ それらを総じて言った場合の効果
- 内部質保証に相当する学内での質保証の手続きや責任体制を構築する
- 「質の文化」の形成にもつながるような教員間の議論を促進する
- 学修・教授を改善する効果を持つ
- 社会への説明を果たす
・ 内部質保証だけを取り上げた場合の効果
- Baldwin(1997)
・ 豪州のMonash Universityの事例
- コース認証方法がより厳格化した
- 教育・学習に関する学生の視点を重視するようになった
- 効果的学習についての議論の活性化などの雰囲気の変化
- Tavares et al.(2016)
・ ポルトガルにおける内部質保証導入の影響を調査した(教員への質問紙調査)
- 教員は内部質保証の負担を感じながらも,教育の質について関心を持つようになった
- Meade(1995)
・ オーストラリアのGriffith大学の事例
- 質改善のシステムが大学を「学習する組織」(Senge, 1990)に変えている
・ 各階層に質のマネジメントを推進・支援するリーダーシップ的役割を指定
- 担当別の副学長や副学部長など
・ 質の促進のための委員会組織を形成する
・ 優良事例を共有するためのフォーラムや出版物などを構築
・ 教育,研究の質に関するマネジメント計画の策定
・ コースの評価やモニタリングの実施
・ 他大学とのベンチマーキング
・ ネットワーキングによる優良事例の情報共有
- 内部質保証と外部質保証の効果が重なって生じること
・ 教員が教育の質の視点や学生視点を持つ
・ 「質の文化」につながるような教員間での情報共有や議論の活性化
・ 組織的な学習
・ プログラムやコースの認証や点検・評価が厳格に行われるようになる
・ しかし,測定の難しさもあり,実証的に示した先行研究は見られない
○ 内部質保証が機能する要件
- 内部質保証に対して教員からの賛同や支持が得られないという分析
・ Newton(2000)
- 英国の大学における教員へのインタビュー調査
・ 内部および外部質保証をコンプライアンスの儀式とみる
・ アカウンタビリティ重視のアプローチをとることにより,教育改革に関与している教員の意欲を下げる傾向がある
・ 学内でも外部監査的なアプローチをとれば,負担感が増す
・ 教員は自身が信頼できる者とは認められておらず,管理運営者や学外者により管理されているという感覚をもつ
・ Welsh and Metcal(2003b)
- Institutional Effectiveness(IE)を対象にした分析
・ IEへの抵抗が大きくなる場合の特徴
- テニュアや学問の自由に対する攻撃と認識している
- ビジネス的な価値観に迎合し,官僚主義に陥るものと認識している
・ Tavares et al.(2016),Williams and Harvey(2015)
- 質保証が日常業務になることに失敗する場合の特徴
・ 教員が内部質保証は自身の具体的な教育活動に連結していない人為的なものであると感じる
- 教員自身が内部質保証に賛同・参加・支援する要件
・ 教員自身が内部質保証制度を所有する(オーナーシップを有する)
- そのために必要になること
・ 内部質保証の実施責任を大学本部でなく学部やプログラム実施者に委譲する
・ 内部質保証やそこでの質の定義が教員の教育活動と直接的に関係する
- Coyle(2003)
・ 自律性とアカウンタビリティのバランスが必要
・ 英国のLondon Guildhall Universityがポリテクから大学へ昇格する中での,内部質保証の変化
- 各学科(department)や事務部門の自律性向上
- 定期的なレビューを導入
- レビューも次第に自己評価を監査(オーディット)するものへと移行
- Horsburgh(1998)
・ ニュージーランドと英国の事例
・ 内部質保証が学生の変容という質概念に対していかに貢献するかを検討
- 変容のためには,学修・教育のイノベーションが必要
- 大学が自己の「有効性」を再定義
- 教員チームに責任を委譲する
・ そのことにより,改善をいかに定義し,改善やプログラムの向上をいかにモニタするかを定義させる
- Welsh and Metcalf(2003a)
・ IEが教員からの支援を得るための要件(4つ)
- 伝統的なアカデミックの質概念よりも,アウトカム志向の質概念を教員が有している
- 内部で質を改善しようとするモチベーターがある
- IEが組織の仕組みに統合されているという実施の深さ
- 構成員が参加している程度
・ リーダーシップ
- 学長だけでなく,内部質保証システムの全てのレベルそれぞれにおけるリーダーシップが重要
・ Weusthof(1995)
- 米国での自己評価の成功要因の先行研究
- 学長や他のリーダーの態度,構成員のモチベーション,組織の文脈の3つが影響する
・ Bendermacher et al.(2017)
- 「質の文化」の要件には,リーダーシップ,パートナーシップ,コミュニケーションがある
・ リーダーは質の文化を形成するために,中心的な推進力となる
- 資源配分,責任の明確化,パートナーシップの形成など
・ その上で,コミュニケーションを通じて,質の価値観や評価結果の共有をはかる
・ 各構成員の間で内部質保証の所有感を形成していく
・ 自己評価能力の向上
- 権限と責任を委譲する場合には,そのレベルにおいて適切な自己評価を行うことが望まれる
・ Weusthof(1995)
- オランダでの事例
・ 評価結果の活用に有効に機能する条件
- ファカルティが自己評価の能力やデータを有し,かつ,自己評価実施の目的を明確にしている場合
・ Tavares et al.(2016)
- 内部質保証でよい結果が得られた場合の特徴
・ 教員が内部質保証の開発に関与
・ IRのような情報が教育に活用されている
・ 先行研究から得られた上記の要件は,「教員が賛同し支援する内部質保証」を実現するためのもの
- しかし,ステークホルダーは教員以外にも多様に存在する
- 上記のような要件により,全てのステークホルダーが望む内部質保証が実現されるとは言えない
・ Stensaker and Leiber(2015)
- 教員が支援する内部質保証システムは,「同僚平等型大学」の特性を強化する
・ それぞれの大学がどのような経営を志向するかにより,必要となる内部質保証の要件も異なる
- 「官僚型大学」
・ 体系的なルールや規制,レポーティングの仕組みが形成される
・ 大学の運営が専門化する
- 「政治型大学」
・ 多様なステークホルダーの参画を促しバランスを模索
- 「無秩序型大学」
・ ボトムアップにより多様な教育のイノベーションを促す
■ 内部質保証システムを構成する要素
○ 構成要素の全体構造
- 以上のように内部質保証の定義や機能する要件には多様な見方がある
- 具体的な内部質保証の仕組み(システム)に共通的な要素ものを検討する
- 内部質保証システムを構成する要素について包括的に議論した先行研究はみられない
- ただし,海外においては内部質保証システムに必要な要素を先行的に定めている文書(ガイドラインやマニュアル等)は存在している
・ European Association for Quality Assurance in Higher Education et al.(2015). Standards and Guidelines for Quality Assurance in the European Higher Education Area(ESG).
・ ASEAN University Network.(2006). The Manual for the Implementation of the AUN-QA Guidelines.
・ Quality Assurance Agency(2011-2013). UK Quality Code for Higher Educaiton.
・ Southern Association of Colleges and Schools (2011). The Principles of Accreditation: Foundation for Quality Enhancement.
- 日本の「ガイドライン」では,これらを参考に,内部質保証システムを構成する要素を6つ提案した(表3)
・ 要素1:教育の内部質保証に関する方針と体制
- 大学として内部質保証をいかに実施するかを定めた枠組みの設定
- 全体的な責任体制や実施体制の構築
・ 要素2:教育プログラムのモニタリングとレビュー
- 大学が提供する教育プログラムを対象とした質保証
・ 要素3:教育プログラムの新設等の学内承認
- 大学が提供する教育プログラムを対象とした質保証
・ 要素4:教職員の能力の点検・評価と開発
- 教育活動を実施あるいは支援する教職員の質保証
・ 要素5:学修環境・学生支援の点検・評価
- 教育や学習を支え,有効なものにするためのノンアカデミックの基盤についての質保証
・ 要素6:大学や学部・研究科を単位とした教育研究活動の有効性の検証
- 各種の質保証の結果を総合
- 大学あるいは学部・研究科の教育活動が組織全体として有効に機能しているかを確認する質保証
- 以下では, 6つの構成要素のうちで主要なものについて,その必要性と留意すべき論点を先行研究から検討する
○ 主要な構成要素の論点
- 内部質保証に関する方針と体制
・ 望ましいこと
- 前述のように,内部質保証には複数の質概念を包含するシステムを構築する
・ 必要なこと
- 大学がそれぞれの質概念や質保証の目的に基づいて独自のシステムを構築する柔軟性を認める
- 外部から内部質保証が実現されていることが確認できるようにする
- 大学自身がどのような質概念を基にした質保証・向上を実施しようとしているのか等を方針や規則などの形で明文化する
・ 内部質保証の方針
- ESG2015年版でも第1項目として挙げられている
- ほとんどの大学で作成されている
・ Sursock(2015)
- EUAによる調査では,欧州の高等教育機関のうち,質保証に関する何らかの方針を有する機関は84%
- 方針も質保証プロセスもない機関は1%のみ
- ただし,「方針」の中にどのような内容が含まれるのが良いかについて実証的な分析はない
- 期待されること
・ 少なくとも質保証の具体的な手続きが明確にされる
・ それにより,内部質保証の各種の定義にみられたような「継続して」実施される仕組みが作られる
- 「ガイドライン」の要素の細項目では1-1が対応
- 大学運営の専門化という「官僚型大学」の特性の効果を有する
- 形骸化すると「同僚平等型大学」を志向する教員からは教育活動から切り離された官僚的取り組みとして,賛同が得られなくなる
・ 方針だけでなく体制が重要
- 質保証に取り組むための資源配分や責任の明確化が重要となる
・ 内部質保証に関するリーダーシップの必要性
- 組織階層ごとに質保証の責任を委譲することも重要
・ リーダーシップは各組織階層において必要
- 「質の文化」の視点から重要なこと(Harvey and Green, 1993)
・ リーダーだけでなく,組織を構成する全ての者が質に責任を有するという考えを共有する
- 「ガイドライン」でも階層的な責任体制の明確化などを重要事項として指摘している(1-2)
- しかし,質の文化としては重要であっても内部質保証システムの要素としてガイドラインに記載して構築を促進することは難しい
・ 組織文化や個人の心理に関わるため
- リーダーシップに基づくコミュニケーション
- パートナーシップ
- 教員による質保証の所有感(オーナーシップ)の確保
- そのため,大学内での実際の運用がより重要となる
- 先行研究で指摘されていること(「ガイドライン」の内容と対応している)
・ 異なる質概念を有するステークホルダーが参画することで各ステークホルダーにとって意味のある質保証が行われる必要がある
- 「ガイドライン」では1-5が対応
・ IRのような情報収集・分析の機能が必要
- 自己分析能力の向上が質保証の有効性に影響する
- 「ガイドライン」では1-4が対応
・ 評価結果や優良事例を組織的に学習する体制が必要
- 「ガイドライン」では2-4が対応
・ 把握された内容をもとに改善に結びつける体制や仕組みが必要
- 質保証には質向上の意味を含む
- 「ガイドライン」では1-1, 1-2が対応
・ 枠組みを定めていることが望まれる
- 各種の質保証活動の結果やそこで把握された情報を,誰がいかに確認し,改善方策や目的・計画の見直し等に活用するか
- 米国SACSのinstitutional Effectivenessでは質向上計画(QEP)の作成を求めている
○ 教育プログラムを対象とする点検・評価
- 教育プログラム単位の点検・評価(レビュー)は海外における先行的なガイドラインでも重要な位置を占める
・ ESG2015年版
- 教育プログラムの質保証について,レビューと新設の承認を二つの項目に分けて強調している(EQUIP project, 2016)
- 特にプログラム・レビューは内部質保証の核であるとも認識されている(Gover et al., 2015)
・ 1990年代の欧州
- 各国に質保証を導入するパイロットプロジェクトをEUが支援
- その際,プログラム単位の外部質保証に焦点を置いていた
・ 2003年に行われた,欧州各国の質保証機関が対象の調査(The Danish Evaluation Institute, 2003)
- プログラム単位の質保証を実施:83%
- 機関単位の質保証を実施:53%
・ その後,外部質保証が機関単位にシフトしてきた
- ESG策定とも並行して,プログラムの質保証を学内で行うようになった
・ 2012年に行われた,欧州各国の質保証機関が対象の調査(Grifoll et al., 2012)
- プログラム単位の質保証を実施:84%
- 機関単位の質保証を実施:72% ※2003年調査と比べて増加
・ 欧州で重要とされることと,その文脈
- アウトプットの標準(水準)やプロセスの完全性・整合性の保証
- そのために教育プログラムの内部質保証を行う
・ 各分野の学位に適合した水準となっているか
・ 教育方法が適切であるか
- 学生が国境を越えて移動するという文脈がある
- 日本の状況
・ 現時点でプログラム・レビューが大学内で広く実施されている状況ではない
・ 欧州と異なり,プログラム単位の外部質保証を経ずに,2004年より機関別認証評価を導入した
・ そのため,本来はプログラム単位で確認すべき事項も機関単位の第三者評価にて扱われた
- 教育の具体的な内容が十分に確認される構造ではなかった
・ しかし,三つのポリシーに基づく大学教育の質的転換を促進する評価を求められるようになった
- 中央教育審議会の審議まとめ(2016)
・ 三つのポリシーは原則的には学位プログラム単位で策定される
・ 質概念をプログラム単位の水準や完全性・整合性,ならびに学生の変容を含むように拡大している
・ プログラムを単位とした点検・評価を求めることにつながる
- プログラム単位の質保証が行われるようになることで期待されること
・ 教員自身が内部質保証を教育の改善に直結したものと考えられるようになる
・ そのことで,内部質保証が有効に機能する
- プログラム・レビュー実施における論点
・ 外部参照基準の活用
- 「ガイドライン」では2-5が対応
- 水準に関する質概念を重視する場合に求められること
・ プログラムで身に付ける能力が,当該分野で期待される能力や関連する専門職業で期待される能力と整合
- 英国の状況
・ プログラムの新設承認やレビューにおいて,Subject Benchmark Statementsを参照することが求められる
- 1990年代にポリテクニクが大学へ昇格
- 大学や提供される教育プログラムの内容が多様化
- 教育の質,特に学位の水準について疑念が生じた
- 1995年から試行的に卒業生が持つべき資質のプロフィールを開発する作業が行われた
- デアリングレポート(1997年)で求められたこと
・ 各大学でプログラムごとに期待されるアウトカムを示した仕様書(Programme Specification)を作る
・ 専門家チームにより分野別の最低限の標準を開発する
- QAA主導によって2000年よりSubject Benchmark Statementsが各分野で段階的に作成されていった
・ Subject Benchmark Statementsの活用が有意義な場面(Bellingham, 2008)
- プログラムを新たに開発するとき,その承認を学内で得るとき
- 外部試験官システム
- 定期的なプログラム・レビュー
- 英国外の人に英国の教育水準を伝えるとき
・ とくに1992年以降に大学に昇格した高等教育機関で教えられることが多い専門職分野で作成に好意的(Williams, 2010)
- 分野自体の存在を示すため
・ ロンドン大学ではSubject Benchmark Statementsにあわせて必要な分野の教員人事が行われた事例あり
- 日本の状況
・ 国家資格枠組みに相当するものは存在しない
- ただし,日本学術会議により「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準」が策定されている
- 今後,それらをいかに用いるかが課題
・ 水準を保証するためにプログラム・レビューに外部の視点をいかに入れるか
- 「ガイドライン」では2-6が対応
- 学内だけでは,当該プログラムの専門分野の知識をもち,かつ,プログラム実施者でない者を見つけるのは難しい
- 外部者がレビューに加わることで可能になること
・ 各分野の専門知識をもった者が学修成果やカリキュラムの点検を行う
- 専門職分野における分野別第三者評価を活用する
・ プログラム・レビューとの関係をいかに調整するかは大学が考えるべき一つの論点
○ 組織の有効性の検証
- プログラム単位の質保証でなく,機関や組織の単位
・ 機関や組織のミッション実現の視点から,活動や成果の有効性を確認することを求めうるかは一つの論点
- 米国SACS等のInstitutional Effectiveness概念においては,この点が明確
- ESGでは明示的な項目としては書かれてはいない
- 欧州では機関としてのアイデンティティが弱く,プログラム中心で質保証が形成されてきたとの指摘(Sursock, 2012)
- しかし,英国でも階層構造のもとで内部質保証体制を構築し,大学としての有効性の確認をしている例がある
・ マンチェスター大学の例
- 毎年プログラム単位のデータ確認などのモニタリング
- 5~6年ごとにスクール単位でのレビュー
- ファカルティごとに毎年作成する教育・学習のモニタリング
- 大学単位で財務や教育,研究を含む年次実績レビュー
・ バーミンガム大学の例
- スクール単位でその内部のプログラム群について毎年レビュー
- 5年ごとにスクール単位の教育・研究・管理運営のレビュー
- 理事会では大学全体の点検をKPI等を用いて随時行っている
- 内部質保証の中で組織の有効性検証をどの程度扱うか
・ 質保証の定義にも関わるため,柔軟性をもって考えるべき
・ 日本の文脈
- 大学や部局を単位に,各組織の目的を重視した評価をこれまで行ってきた
・ 機関別認証評価や国立大学法人評価など
- そのため,日本では内部質保証にこのような有効性検証を含める考え方は受け入れられやすいと考えられる
- 逆に上記の教育プログラムを対象とする質保証の取り組みとの関係を明確にすることが必要となる
- 「ガイドライン」でモデルとして上述の構成要素を構造的に示した(図1)
・ 大学は,さまざまな教育プログラムを提供している
- 大学の使命や目的を実現するために,学部・研究科等の教育研究上の基本的組織を設置している
・ そのため,教育プログラムレベルでの定期的な点検・評価は,機関の有効性の視点からも重要となる(要素2)
- プログラム・レビューの結果や改善計画書
・ 学部・研究科
- 質保証に責任を有する委員会等に提出される
- 委員会等によりプログラムに対して改善指示が出される
- その後に改善結果が確認される
・ 大学全体
- 学部・研究科ごとの結果がとりまとめられる
- 大学全体の教育ならびにその他の諸活動の有効性の検証がなされる(要素6)
・ 大学の使命,目的,戦略目標に基づいて適切に行われ,成果をあげているかなど
- その他の検証
・ 教職員の能力の保証や開発(要素4)
- 教職員の評価
- ファカルティ・ディベロップメント(FD)
- スタッフディベロップメント(SD) など
・ 学修環境や学生支援のレビュー(要素5 )
・ 共通教育や全学のテーマ別レビュー
- 各レベルでの内部質保証の結果の活用
・ 外部質保証のための自己評価の材料
- 「ガイドライン」で示している図1のような構造は一つの例
・ 内部質保証システムの設計は大学それぞれ
- プログラム・レビューを行う単位
・ プログラム単位(例:上述の英国の2大学)
・ プログラム群を擁するファカルティ単位
- 階層構造の段階
- 教育以外の活動を含めた自己点検・評価を行うか
- 日々のKPIの確認を行うか
- 日本の国立大学では,中期目標・計画の実績管理を内部質保証の一つと考えることも可能
・ 階層性をもったシステムを自由度をもって構築することが望まれる
■ おわりに:日本における内部質保証の課題と「ガイドライン」による促進のあり方
- 本稿で確認したこと
・ 内部質保証に関するこれまでの海外での先行研究のレビュー
・ 「ガイドライン」が示した定義や構成要素
- 妥当なものであるのか
- 検討が必要な点は何か
- 質・保証ともその概念は多義的
・ 先行研究から指摘されたこと
- 特定のステークホルダーが有する概念に限定することは適切でない
- 日本のこれまでの大学評価の傾向
・ 目的適合性の質概念が中心
・ 大学評価導入時の政策的文脈(大学の個性化など)には適合していた
・ しかし,大学以外のステークホルダーからみれば質が保証されているとは見られないかもしれない
- 質の概念を拡大して内部質保証システムを構築することが必要
・ 近年の「三つの方針」と学修成果重視の傾向や「教育の質的転換」などの議論
・ 分野ごとの学位の水準の確保や,学生のエンパワーメントなど
- 「ガイドライン」内の定義は目的適合性よりは広いが,多数の質概念のうちの一部を含むのみとなっている
- 内部質保証システムを構成する要素については,概ね国際的に共通した考え方がある
・ まず質概念の多様性を踏まえて大学自身が質保証の方針を策定することが必要
・ リーダシップやIRなどの体制構築も有効性確保のために必要
- ESGなどでプログラム・レビューが内部質保証の核であるとされていることは,日本にとっては重要な変更を求めることになる
・ 日本では定期的なレビューという形での実施は現時点ではあまり見られない
- プログラム単位の自己点検は部分的に行われている
・ 学生や卒業生を対象とする調査
・ カリキュラムの体系性の検討などの取り組み
・ 今後の課題
- 水準や学修成果の確保の点からプログラム・レビューを今後いかに導入するか
- 外部の参照基準や外部評価を活用していくか
- 日本における大学のミッションや目的を踏まえた有効性の検証
・ これまでの大学評価の経緯を踏まえると,内部質保証の中で扱うことも十分に考えられる
・ ESG等では明示的でなく,どこまでを内部質保証に含めるべきかは確定していない
- 「ガイドライン」の活用の仕方
・ 学内の制度や体制などの仕組みについて言及している
・ しかし,記述が少ないところがある
- 「質の文化」に必要なリーダーシップ
- 教員の質保証の所有感(オーナーシップ)
- 教育内容それ自体のイノベーション促進
- 質保証を行う個別の手法(学修成果の測定方法等)
・ 記述が少ない理由はシステムの構築のための参照文書であるため
・ 外形的に準拠するだけでは,必ずしも教員が自らの活動として内部質保証に積極的に取り組むという状況は生まれない可能性がある
- 「ガイドライン」という文書の特徴
・ 基準とは異なる
・ 実施者側の自由を許容し,工夫を促すもの
- たとえばESGについてみても2段階の自由度を持っている
- EU加盟国は強制ではないがこれに沿った国内政策を実施することが推奨される
- ガイドライン作成側はその実施状況を定期的にモニタし優良事例の普及を図る
- 各国はESGに準拠する独自の質保証の国内基準を策定する
・ さらに,各大学はその国内基準を踏まえて,内部質保証の仕組みを自由度をもって構築する
・ ポルトガルとチェコ共和国の4大学についてESG2005年版の影響を分析(Kohoutek et al., 2017)
- 国によってESGの内容が国内基準へと反映される仕方は異なっていた
- 国内基準がESGに準拠していないように見えても,大学の実態としてESGが求める状態に近い状況が存在している場合もある
- これに則せば,「ガイドライン」は外形的な準拠を厳密に求めるべきものではなく,一つの参照枠組み
・ 実態として準拠しているかの情報をモニタする
・ ガイドラインに記載されている内容を超える優良事例の普及を図る
・ ガイドラインの存在により広く議論をするための言語を共有
・ 各大学の取組を相互に学習していくことを促進