ホーム → IRなどについての文献メモ → 宮崎洋・佐々木康浩・前間孝久・木村孝・魚住剛一郎(2006).「見える化」実践のポイント.
公開日:2013年5月15日 最終更新日:2013年12月6日
見える化とは問題を顕在化させて問題解決を加速させること。見せる仕組みを作って満足するのではなく、改善のための動きにつなげる必要がある。また、わざわざ情報を取りに行くのではなく、情報が目に飛び込んでくる仕組みにしないといけない。見える化を円滑に進めるためには関係者が得をするようなフィードバックが必要。[誰かに管理されている]ではなく[自分が管理している]という意識を持ってもらうことが大切。
[情報]と[人が動こうと思う気持ち]をうまくつなげる方法を知りたいと思ったからです。
学生さんの毎日が楽しく充実したものになるように、様々なことを調べ、考えます。その情報を周囲の人に伝えたときに「やってみよう」と思ってもらう必要があります。そこで、うまく伝える仕組み、動こうと思ってもらえる仕組みについて詳しく知りたいと思い、読むことにしました。
また、Institutional Research(IR)関連の文献に[調査した結果を効果的に伝える方法]を扱っている章[1]を読み、相手に動いてもらう方法を詳しく知りたくなったことも、読もうと思ったきっかけです。
[1]Sanders, L., & Filkins, J. (2012). Effective reporting. In R. D. Howard, G. W. McLaughlin, & W. E. Knight, The handbook of institutional research. San Francisco: Jossey-Bass. pp.594-610.
読んだ感想は「今後の業務に活かせそう」です。何を見えるようにするか、どのような手順で進めるかについて書かれていたので、考えを伝えるときに使ってみようと思います。また、伝えるときだけではなく、相手から情報を提供してもらうとき(例:学内の取り組みを会議で報告してもらうとき)の仕組み作りにも応用してみようと思います。
ただし、大学と企業では目的や運営体制が違うので、企業で考え出された方法を大学で使うためには工夫が必要です[2]。大学に勤める前は企業で働いていましたので、両方の経験を活かして[情報]と[人が動こうと思う気持ち]をうまくつなげていきたいと思います。
[2]Fife, J. D., & Spangehl, S. D. (2012). Tools for improving institutional effectiveness. In R. D. Howard, G. W. McLaughlin, & W. E. Knight, The handbook of institutional research. San Francisco: Jossey-Bass. pp.656-672.
http://www.mri.co.jp/REPORT/JOURNAL/2006/jm06111508.pdf
※原文がPDFで公開されています[PDF]。
- 見える化とは問題を顕在化させて問題解決を加速させること
- ただ事象を見えるようにすることではない
・ 最近は業務分析・数値化・指標化だけで「見える化」とされることが増えている
・ 見えた結果を利用し、考えてアクションを起こすことが必要
- 見える化が注目されてきた背景
・ 事業環境が不確実になってきた
・ 見えない資産(知的資産など)の重要性が高まってきた
- 全く見えないものをマネジメントすることはできない
- 工場内の物流を可視化するポイント(『工場管理』2004年9月)
・ モノの状態・流れの可視化
・ 業務ルールの可視化
・ ルール変更の可視化
- 手法確立のステップ(『工場管理』2004年9月)
1. どんな仕組みで動いているのかわからない
2. どんな状態かわかる
3. どんな仕組みで動いているのかわかる、きちんと機能していることがわかる
4. ルールの変更が外部からでも可能でスムーズに機能する
- 見える化のポイント(伊藤,2004)
・ 「高い志と目標」が出発点:全ての活動の原動力
・ 内部管理による付加価値の向上が直接の目標
・ 目標を実現するために具体的に行うこと
- ムダの徹底排除
- 改善・向上活動
・ 働く=頭を使う
・ 経営活動とは問題設定と問題解決活動の積み重ね
- 問題設定(発見):ムダ(ギャップ)の顕在化
- 問題解決活動:ムダ取り
・ 見える仕組みを作る
- 例:目で見る管理、標準化、数値目標
・ その問題設定と問題解決活動は現場が主体的に行う
- 見える化をしようとして陥りやすいこと(遠藤,2005)
・ データベースを作って満足する
・ 数字だけを見て分かった気になる
・ 取り組みが生産現場だけに留まって他の企業活動に展開されない
・ 見える・見せる仕組みの構築ばかりで問題解決に結びつかない
- 本稿で定義する「見える化」
・ 当該事象を見えるようにするための目的が明確
・ 見えた結果が関係者のアクションに結びつく
・ タイムリーに「見える(目に飛び込んでくる)」状態や仕組みが構築されている
- 意識して「見る(情報を取りに行く)」のではない
・ 関係者が設定・評価・改善できる仕組みが構築され、機能している
- 何を見えるようにするのかについての分析の枠組み
・ まず全体像を体系的に理解することが必要
・ 誰に対して見える化するか
- 経営トップ
- マネージャー
- 現場担当者
・ 見える化によって何を見せるか
- 成果
- 業務プロセス
- 経営資源
- 顧客
・ 問題解決のアクションに結びつく一連の過程をどのように見える化するか
1. 現状を見えるようにする
2. 現状から問題を抽出する
3. 問題に対して解決策を検討して目標を設定する
4. 目標を共有できるようにする
5. 目標と現実のギャップを見えるようにする
6. 目標までの具体的なアクションを設定する
7. 目標に向けての行動を起こす
8. 目標に向けた到達状況を評価する
- 状況によって取るべきアプローチが異なる
・ 問題が顕在化しているのに解決活動が進まないときのアプローチ
・ 問題が顕在化できていないために解決活動が進まないときのアプローチ
- 見える化の意義の理解と共有
・ 関係者が得をするようなフィードバックがないと見える化はスムーズに進まない
- 誰かに管理されるのではなく、自分で管理するという意識が大切
・ 現場が作るモノサシが必要
・ ただし現場の独善にならないような仕掛けも必要
- 見える ⇒ 動いてみる ⇒ 成果を検証する ⇒ 改善する
・ その中でも、とにかく動いてみることが大切