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沖清豪(2010).大学における情報の発信とIR(Institutional Research) 大学マネジメント, 6(6), 8-17.

公開日:2014年4月23日 

概要

IRとは大きな枠組みで言えば、整理・分析・立案をするサイクル。IRは 5つに類型化できる(学生の様子の調査・検証、教育改善、外部資金の獲得、大学の運営、評価対応)。IRで行うことはその大学でIRに何を求めているかで決まる。目的・対象をはっきりと限定することが必要。IRについて考えるときは、何のためにIRをしているのか、最低限これだけできればいいということを決める。

読もうと思った理由・感想

IRについての情報を整理したいと思い、読んでみました。

ここ半年ほど、主に学習支援やラーニングコモンズなどについて書かれた文献を読んでいました。IRを使って何かをより良いものにしていくときには、その対象のことを深く知っておくことが役に立つと思ったからです。

それらの文献を読むのが一区切りついたので、改めてIRについて書かれた文献を読むことにしました。

IRとは何をするものなのか(整理・分析・立案をするサイクル、5つの類型化)、なぜ求められているのか(評価対応・経営改善・教育改善)、どのような歴史的経緯があったのか(アメリカでのリテンション率向上策)など、IRについて、わかりやすく簡潔に整理されていました。

また、何のためにIRをしているのかをはっきりとさせ、最低限これだけできればいいということを決めることの大切さが書かれていて、参考になります。IRはデータを根拠にして物事をより良いものにしていく活動なので、対象になる範囲はとても広くなります。時間・人手などの資源が限られている場合、IRで何が良くなるかを考えるとともに、扱う範囲が際限なく広がっていかないように気を配っておくことも必要になりそうです。

詳細

   - 情報発信のために最初に考えること
     ・ 情報を作るのか、手に入れるのか
   - 次に考えること
     ・ どのような情報をどのように収集するのか
     ・ どう活用して外に出すのか、もしくは出さないで学内で活用するのか
   - IRとは大きな枠組みで言えば、整理・分析・立案をするサイクル
   - 私立大学を対象にした調査の結果
     ・ 2008年に実施
     ・ 学生の教育効果の検証へのニーズが多い
       - どのくらい成績を上げたか
       - 情緒的な発達をどのように促しているか
     ・ 一方で多様なニーズがある
     ・ 5つに類型化できる
       - 学生の様子の調査・検証
       - 教育改善
       - 外部資金の獲得
       - 大学の運営
         ・ 中長期計画
         ・ 支出・政策立案
       - 評価対応
         ・ 認証評価
         ・ 自己点検評価
   - なぜ今IRが求められているのか
     ・ 評価対応
     ・ 経営改善への指標、政策立案
     ・ 教育改善
   - IRの歴史的経緯
     ・ 1970年頃にアメリカで本格化
       - リテンション率(学生がどれだけ次の学年に進級したのかを示す数値)を上げることが課題だった
       - そのためには教育の効果を学生自身に理解してもらう必要があった
       - 自校だけではなく、自校と似た他大学のデータと比べて自校の良いところ、弱点を考えて行く必要があった
   - 教育改善機能
     ・ アウトカム評価
       - その大学で学生に何を期待し、どんな力をつけさせたいか、その力がついているかを考えることになる
     ・ 他大学との比較
       - 自己点検評価、認証評価などの他大学のデータを自校と比較しながら読む
         ・ 自校と似た規模・学部構造の他大学が望ましい
     ・ 資金獲得
       - 他大学の優れた事例を分析する人の存在が必要
     ・ 学生調査
       - 大規模な学生調査に参加し、データを分析することを通じて、自校の特徴を把握する
     ・ 学内状況の共有・活用
       - 集めっぱなしで終わらせない
         ・ 提供する側が疲れてしまう
       - 提供して分析されるとどういうメリットがあるのかを分かってもらうことが重要
   - 海外の事例
     ・ 情報を集めるということがIRの最低限の機能
       - 場合によっては、それだけでいい
       - その大学でIRに何を求めているかで決まる
     ・ 本格的な大学全体のプランニングまでするのであれば人材を集め、作業量もすごく多い状況になる
       - ペンシルバニア州立大学
         ・ 10人以上の構成
         ・ マスター以上の人材
     ・ アメリカのIR部局が必ずしないといけないこと
       - IPEDSへの情報提供
         ・ アメリカの高等教育機関のミニマムな条件
   - IR担当部局だけでIR業務を行うと疲弊が進むだけ
     ・ IRを機能として考えて機能を分散させていくかが重要
     ・ できるだけ小規模にやりながら、どうやってうまく情報という利益を得るか
       - 目的・対象をはっきりと限定することが必要
       - 網羅的にやろうとするから混乱し、無駄になる
   - IRについて考えるときのポイント
     ・ 自分たちのミッション
     ・ 何のためにIRをしているのか
     ・ どういうことを目標とするのか
       - まずは最低限これだけできればいいということを決める
       - どこまでプラスアルファできるかを考える
     ・ できないことに資本を投下しないということも1つの考え

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