ホーム → IRなどについての文献メモ → 内田千代子(2011).大学生の中途退学の実態と対策~国立大学の調査から~
公開日:2014年6月1日
全国の国立大学の休学・退学・留年・死亡調査を集計・分析(毎年40万人前後の学生が対象)。休学率は2.41%、退学率は1.28%、留年率は5.35%(全て男女全体の値)。調査を始めた1978年から休学・退学・留年率は上昇曲線を描いてきたが、2000年前後から休学・留年率は減少傾向、退学率は横ばいから減少傾向。退学理由は昔も今も消極的理群が圧倒的に多く、10年前よりも「進路再考」の割合が増えている。学力の多様化により、新学期に勉強についていけない悩みから抑うつ的になる。よってメンタルヘルス支援のみでは不十分で、学習支援も必要。
IRによって何か学内の状態を改善しようとするときに、よく取り組まれるのが退学率です。[例えば1,2,3]
改善するということは、現状を詳しく知り、その状況を望ましいものに変えていくことになります。そして、現状を詳しく知るためには、現状が一般的な状況と比べてどれくらい良いのか、または悪いのかを知る必要があります。そこで、一般的な状況についての情報を知っておこうと思い、読むことにしました。
- 全国の国立大学の休学・退学・留年・死亡調査を集計・分析
・ 国立大学法人保健管理施設協議会事務局として実施
・ 同意が得られた各大学担当部署に回答を依頼
- 学生数統計調査
- 休・退学理由についての実態調査
- 死亡実態調査
・ 毎年40万人前後の学生が対象
- 2008年度の結果
・ 在籍学生総数
- 382,690人
・ 国立大学82校中70校の85%が参加
・ 男女比は65:32
・ 休学率
- 全体:2.41%
- 男子:2.44%
- 女子:2.34%
・ 退学率
- 全体:1.28%
- 男子:1.53%
- 女子:0.81%
・ 留年率
- 全体:5.35%
- 男子:6.59%
- 女子:3.06%
- 経年推移
・ 調査を始めた1978年から休学・退学・留年率は上昇曲線を描いてきた
・ 2000年前後から休学・留年率は減少傾向、退学率は横ばいから減少傾向
・ 調査当初から退学率は女子<男子
- 考えられる要因
・ 大学進学率は女子<男子なので女子は男子よりも選別されている
・ 女子が就職に不利な面があるため、就職しやすい好条件を整える
・ 他者の助けを求めて柔軟に問題解決を図ろうとする傾向がある
・ 退学理由
- 昔も今も消極的理群が圧倒的に多い
- 10年前よりも「進路再考」の割合が増えている
・ 1つの学部を卒業し、1か所に勤め続けるという単純な進路ばかりではなくなってきている
- 4年制理系男子の退学率が高い
・ 一度つまづくと前に進みにくくなる
・ コミュニケーションをとるのが苦手
- 退学理由のグループ分け
・ 身体疾患群
・ 精神障害群
・ 消極的理由群
・ 積極的理由群
- 消極的・積極的は本人の主観とは関係なし
- 大学教育路線上に残るか離れるかで分類
・ 他大学受験の場合は積極的
・ 4年制から短大・専門学校に行く場合は消極的
・ 環境要因群
・ 不詳
- 学力低下と大学の大衆化
・ 学力の多様化→新学期に勉強についていけない悩みから抑うつ的になる
・ よってメンタルヘルス支援のみでは不十分で、学習支援も必要